ジェネレーションギャップとは、世代による価値観・文化・常識・思想などの差(ズレ)を指す言葉です。
多様な世代が働く職場では、生まれ育った時代や環境が違う以上、必ずジェネレーションギャップが生じます。したがって、組織内のコミュニケーションやチームワークを円滑にするためには、ジェネレーションギャップへの理解と適切な対応がとても大切です。
本記事では、まず、ジェネレーションギャップの概要、職場で生じやすいジェネレーションギャップの事例、世代ごとの特徴を確認します。確認したうえで、ジェネレーションギャップ問題への対処と解決のポイントを解説します。
<目次>
ジェネレーションギャップとは?
ジェネレーションギャップとは、世代(年代)によって価値観・文化・常識・思想などにズレが生じることです。
ジェネレーションギャップは日本語では、世代間ギャップと呼ぶ場合もあります。本章でいう世代は、生まれた年が近い集団という意味のほかに、特定の時代を反映する価値観・行動様式を共有する集団を指すこともあります。
ジェネレーションギャップは、各時代に実施されていた教育や社会環境、技術革新などの影響を受けるものです。たとえば、上の世代は、新たに登場した技術などを認識はしていても、子供の頃から新しい技術を当たり前に使ってきた世代の感覚や価値観とは、ズレが生じます。
たとえば、いまの30歳前後(2023年時点)は小学校や中学校の頃から自分のスマートフォンを持ち、友達とLINEのメッセージやLINE通話でやり取りしていた人が大半です。大学でのアルバイトや就職するまで固定電話を使ったことがない人も普通にいます。
30歳前後でスマートフォンやLINEでの通話を当たり前にしてきた世代にとっては、電話がかかってきた時点で 「誰から誰宛の電話か?」ということはわかっているのが当たり前であり、電話をとったときに「はい、○○です」と名乗ることは常識ではありません。
職場で感じやすいジェネレーションギャップの事例
職場における代表的なジェネレーションギャップには、以下のようなものがあります。
電話対応の得意・不得意
まず、スマートフォンなどが普及する前の時代は、自宅に固定電話があることが当たり前でした。したがって、電話を取って名乗る、保留して誰かにつなぐといった行為は比較的馴染があるものです。
しかし、近年では、前述のとおり、いまの若手は子供の頃からスマートフォンでのやりとりが当たり前であり、また、メッセージでのやりとり頻度も多くなりました。
こうしたなかで、固定電話でのコミュニケーションや、そもそも電話に苦手意識を持つ若手が増えています。新人業務の一つとしてありがちな「電話対応」などに、上の世代が思うよりも抵抗感を示す新人も増えています。
報告方法の違い
報告方法の違いも、LINEなどのメッセージアプリの普及によって生じるものです。
たとえば、スマートフォンの普及前から仕事をしてきた世代は、報連相(報告・連絡・相談)に対して“口頭で行なうべきもの”という固定概念を持っていることが多いです。
一方で、いまどきの若い世代は、テキストメッセージでのコミュニケーションに慣れているため、LINEやチャットでの報連相に対して、以下のようなイメージを持っていることもあります。
- テキストメッセージのほうが、早く気付いてもらえるだろう……
- テキストメッセージのほうが、上司の仕事の邪魔にならないだろう……
- 口頭よりテキストメッセージのほうが伝えやすい……
また、なかには、上記のように上司に気を遣い、あえてテキストメッセージでの報連相を選択する人も存在します。
そうすると、たとえば、体調不良の連絡や相談事項などに対して、「最低でも電話でするのが当たり前だろう!一方的に、メッセージだけ送ってくるとは何だ!?」と思う上の世代もいるでしょう。
仕事と私生活の優先度合い
近年、内閣府によるワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の推進の影響や、終身雇用が崩壊するなかで、仕事よりも私生活を優先する若手も増えています。
- 残業はあまりしたくない……
- 無理をするぐらいなら、給料はそこそこで良い……
- 管理職になるより、プライベートを充実させたい…… など
HRドクターを運営する株式会社ジェイックの「就職するうえで大切にしたいこと」調査でも、「ワークライフバランスを大切にできるか」が全体の2位になった一方で、専門スキルや知識、年収アップなどの項目は、ワークライフバランスよりも下になっています。
一方で、昭和世代は、「個人の都合よりも組織(企業)の都合を優先すべき」「仕事で急用が入ったら個人の用事は断ってでも対応する」といった感覚を持っている人も多いでしょう。
「どちらが良い悪い」ではなく、仕事の姿勢などの「当たり前の感覚が違う」ということがジェネレーションギャップであり、衝突の原因になったりします。
参考:就職するうえで大切にしたいこと調査 1位は「職場の人間関係」2位は「ワークライフバランス」 (株式会社ジェイック)
企業への帰属意識
近年では終身雇用が崩壊して転職が当たり前となるなかで、企業への帰属意識(エンゲージメント)も過去より低くなっている傾向があります。
昭和の時代は、年功序列と終身雇用が当たり前だったからこそ、極端に書けば「企業はメンバーの人生を保証する。保証する代わりメンバーは企業に従属する」といった一種の上下関係的な愛社精神が存在しました。
しかし、近年では、大企業であっても倒産するという認識は当たり前のものであり、企業買収や事業売却なども普通に行なわれるようになるなかで、「企業の言うことに従う(従う代わりに企業は自分の身を守ってくれる)」という価値観自体が薄れています。
そのため、現在では、上記のような変化を前提として、ミッションやビジョン、コミュニティーとしての価値などを軸としたエンゲージメント向上への取り組みが必要となっています。
マネジメントするうえでも、「企業(上司)の指示に一方的に従わせる」(従うことが当たり前である)という感覚を持ってマネジメントすると、ギャップを感じたり、トラブルが起こったりすることが多いでしょう。
世代ごとの特徴
世代ごとの特徴は、あくまで一般論であり、当然、個人による違いがあります。したがって、「○○世代は○○である」とひとまとめにすることは暴論です。ただし、本章まで述べてきたとおり、生まれ育った環境による世代の傾向や常識があることも事実です。
以降で各世代の特徴を紹介しますが、紹介する特徴は「自分と違う世代を理解する入り口」の一つとしてとらえていただければ幸いです。
バブル世代
日本経済が好景気(バブル)だった時代に、社会人になった世代のことです。バブル世代は、1965年~1970年頃に生まれており、2023年時点の年齢は50代の半ばになります。
バブル世代が就職した当時は、終身雇用や年功序列が当たり前の時代でした。また、当時は、右肩上がりの成長が続くと思われていた時代になります。
上記の理由でバブル世代は、昭和の愛社精神を持った最後の世代であり、組織へのエンゲージメントなども高い特徴があります。また、終身雇用が当たり前であったため、“転職”に対して少しネガティブな感覚も残っていたりする人も多いでしょう。
一般論として、バブル世代は、コミュニケーション力が高く、世渡り上手な人が多い傾向があります。ただ、戦後を経験した少し上の世代からは、忍耐力の低さや甘えが指摘されることも多いでしょう。
氷河期世代
氷河期世代とは、バブル経済が崩壊し、日本全体が社会的に就職難になった就職氷河期(1993年~2005年頃)に就職活動をしていた世代のことです。1970年~1982年頃に生まれているため、2023年時点の年齢は40~50歳ぐらいになります。
氷河期世代の特徴は、不安定で辛い時代を経験しているため、真面目で堅実、タフといった傾向があります。ただ、「就職がなかなか決まらない」などの経験を繰り返しているため、人によっては、自信を失っていることもあります。氷河期世代は、ポジティブなバブル世代とはある意味で真逆ともいえるでしょう。
ゆとり世代
教育指導要綱の改訂によって、2002年~2011年にかけて義務教育(ゆとり教育)を受けた世代のことです。ゆとり世代は、1987年4月2日生まれから2004年4月1日生まれの世代であり、2023年時点では19歳~36歳ぐらいになります。
ゆとり教育では、多種多様な経験を通じて人間性を豊かにする“ゆとり”が大切にされていました。ゆとり尊重の結果、“学力低下”と“私立一貫校への進学”といった教育の二極化が生まれることになります。
ゆとり世代には、失敗を恐れる指示待ち・私生活優先の人が多い一方で、良い“ゆとり”によって、野球の大谷翔平やフィギュアスケートの羽生結弦などの成功者も生まれています。
ゆとり世代は、そもそも対象世代がかなり幅広いため、ひとくくりにすることは少し無理があります。ただ、上の世代と異なる教育を受けてきたことによるジェネレーションギャップは多少あると考えてよいでしょう。
さとり世代
さとり世代は、1987年頃~2004年に生まれており、時代的には先述のゆとり世代と完全に被っています。なお、ゆとり世代を“ゆとり前期”、さとり世代を“ゆとり後期”を指して使い分けることも多くあります。
さとり世代の大きな特徴は、1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災などの自然災害や、バブル崩壊後の不安定かつ厳しい経済状況を経験するなかで、金銭的な裕福さよりも穏やかで安定した生活を求めるようになっている点です。
また、右肩上がりの経済成長を知らない、また、リーマンショックなどで大企業が倒産したりリストラしたりするのを見てきた世代でもあり、本章まで紹介した上の世代と比べると、企業やキャリアなどに対して一種の“冷めた目線”を持っている傾向があります。
Z世代
Z世代は、1990年代~2012年頃に生まれた世代です。最近入社してきた新人や若手が、Z世代にあたります。Z世代における最大の特徴は、インターネットやスマートフォンなどと慣れ親しんだ“ソーシャルネイティブ”である点です。
Z世代には、物質的には満ち足りた時代に育ってきた人も多いです。そのため、社会問題への関心や多様性・インクルージョンへの意識が高い特徴があります。
また、さとり世代と同様に現実主義者であり、働き方改革後の世代でもあるため、夢より生活の安定を重視する傾向が高かったり、組織への帰属意識が高まりづらかったりもします。
ジェネレーションギャップ問題への対処と解決のポイント
ジェネレーションギャップに適切に対処できないと、たとえば、上司と部下などのコミュニケーションや信頼関係の構築に支障が出ます。そのため、職場で生じるジェネレーションギャップに対しては、以下のポイントを押さえながら適切に対応することが必要です。
ジェネレーションギャップは絶対に生じる
まず、幅広い年代のメンバーがいる企業・組織の場合、ジェネレーションギャップは必ず生じるものです。「生まれ育った環境が違う以上、常識や価値観の違いは生じるもの」という前提でジェネレーションギャップをとらえ、対応していくことが大切になります。
上司の理解が大切
組織のジェネレーションギャップ問題に取り組むうえで大切なことは、組織内で権限を持っている上司側が、新しい世代の価値観を理解しようとすることです。
たとえば、同じオフィスで働いているにもかかわらず、報連相を社内チャットで送信してくる若手がいたと仮定します。若手は、先ほど少し触れたとおり、「上司の仕事の邪魔をしないように……」や「チャットのほうが早く気付いてもらえる……」などの配慮から、あえてチャットでのコミュニケーションを選択している可能性もあるでしょう。
上司からすると、チャット偏重の価値観は理解できないことかもしれません。しかし、まずは、相手がチャットの報連相を行なう理由や背景に関心を持ち、“理解する姿勢”を見せることが大切です。
そうすることで、「自分のことをわかってもらえた・興味を持ってもらえた」などの想いから信頼関係が生まれ、上司側の価値観を伝えたり、職場でのコミュニケーションルールなどを伝えたりしやすくなるでしょう。
相手に合わせて調整する
すべてを価値観や考え方を組織や上司の「常識」に合わせようと思うと、うまくいきません。上司の「常識」を無理強いすれば、メンバーの反発やモチベーション低下、離職につながることもあるでしょう。
特に、いまからの組織は、Z世代が占める割合が多くなっていきます。こうしたなかで、チームビルディングを進めていくには、組織の常識も進化させて、メンバー間の価値観のバランスをうまく取り続ける必要があります。
大切な価値観は妥協しない
たとえば、自社の企業理念につながる価値観や、ビジネスで成果をあげるために不可欠な部分では妥協しないことも大切です。先ほどは「相手に合わせて調整する」ことも大切と紹介しましたが、大事なのはメリハリです。
ただし、妥協しない部分を指示して徹底するには、やはり企業や上司の指示を受け入れてもらえるだけの良好な信頼関係が大切になってきます。そのためにも、まずは、上司が若手の価値観を理解し、信頼関係を築き、信頼したうえで、妥協できない価値観などを共有していくことが重要です。
きちんと理由を説明する
たとえば、「報連相は口頭でしなさい!」といきなり注意しても、ソーシャルネイティブのZ世代などは、理由を理解できません。理由を理解・納得できなければ、反発する気持ちも生まれやすいでしょう。特に過去と異なり、企業への帰属意識が薄い中で、権限や圧力を押し切ろうとするとうまくいきません。
理解できない問題を防ぐには、若手と異なる価値観の指示や依頼する際には、「窮屈・古いと思われるかもしれないが、なぜ強制するか?なぜ必要なのか?」を論理的、また相手目線できちんと説明することが大切です。
論理的な説明、また、相手にとってメリットデメリットを説明して「たしかに○○のほうが効率的だ!」と腹落ちしてもらうことで、組織にとって必要な価値観を受け入れ実践してもらうことが必要でしょう。
まとめ
ジェネレーションギャップとは、世代(年代)によって価値観・文化・常識・思想などにズレが生じることです。幅広い世代が働く職場であれば、以下のようなジェネレーションギャップが絶対に起こるものです。
たとえば、以下のようなものはジェネレーションギャップになりやすいでしょう。
- 電話対応の得意・不得意
- 報告方法の違い
- 仕事と私生活の優先度合い
- 企業への帰属意識
ジェネレーションギャップによる問題を最小限にするには、以下のような工夫や配慮がポイントになってきます。
- 上司が理解しようとする姿勢を持つ
- 相手に合わせて調整する
- 大切な価値観は妥協しない
- きちんと理由を説明する
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