社内コミュニケーションの活性化は、社員のエンゲージメント向上や業務効率、生産性アップなど、数々のメリットをもたらします。企業として、取り組む意義は非常に大きいでしょう。
コミュニケーション活性化のための手法は数多く存在します。しかし、個別の施策を導入する前に、そもそもコミュニケーションが活性化しやすい組織風土であるかを見直すことも重要です。記事では、組織風土の改革の方法も含めて、組織コミュニケーション活性化に向けた取り組みと施策例を紹介します。
<目次>
- 社内コミュニケーションの活性化が求められる理由
- 社内コミュニケーション活性化で得られる効果
- 社内コミュニケーションの活性化を決定付けるのは組織風土
- 社内コミュニケーション活性化に役立つ具体的施策10選
- まとめ
社内コミュニケーションの活性化が求められる理由
なぜ今、声高に社内コミュニケーションの必要性が叫ばれているのでしょうか。主な背景は次の3つです。
知識労働の増加
まずは、組織における知識労働の増加です。そして、現代ではビジネス上の課題は高度化・複雑化しています。結果として、Aの問題を解決するにはBとCの知見が必要というように、1つの部門だけでは課題を解決できないケースが増えているのです。
各メンバーの専門性や知見を取り入れ、成果を最大化したり、イノベーションを起こしたりすることが求められる時代だといえるでしょう。組織内における情報の共有と連携の重要性が増しているのです。
解決のためには、職位や経験に関係なく、率直な意見や懸念、自分の無知などを安心して開示できる場の形成が必要です。
以上のように本音を前提としたコミュニケーションが活性化されている状態をつくることを心理的安全性の確保と呼びます。
働く価値観や意識の多様化
中途採用者や外国人労働者の増加、キャリアプランの多様化などにより、働く人の価値観や意識も多様化しています。日本で長く大事にされてきた「あうんの呼吸」で理解し合うことは難しくなっているといえるでしょう。
たとえば、全員が「上司に仕事を任されたらやる気が高まる」わけではありませんし、「自分自身が腹落ちしないと行動できない」人もいるなど、モチベーションの源泉は一人ひとり異なってきています。
価値観の多様化とダイバーシティーが進むなかで、価値観や意識の違いによる衝突が起こりやすくなっているという指摘もあります。つまり、画一的なマネジメントは、限界がきているといわざるを得ません。働く人同士での相互理解が重要であり、そのために社内コミュニケーションの活性化が欠かせないのです。
テレワークの普及
テレワーク下では一般的に、コミュニケーションの量と質が低下する傾向にあります。
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令された直後、2020年の春に実施された労働者調査では、テレワークで感じたデメリットとして、45.3%が「社内コミュニケーションが減った」と回答しています。さらに、「上司・部下・同僚とのコミュニケーションがとりにくい」と回答した割合は、37.7%でした。
テレワーク下では、オフィスにいるときのように「部下のバタバタしている空気」を感じることはできませんし、コミュニケーション手段もチャットや電話会議などに限定されます。
特に、メインの手段であるチャットでは簡潔なやり取りが好まれるため、事務的な報連相に終始し、感情的な部分の相談はしづらくなりがちです。テレワーク下では、一つひとつのコミュニケーションから得られる情報が薄くなってしまう分、回数を増やすなどしてカバーする必要があるのです。
社内コミュニケーション活性化で得られる効果
社内コミュニケーションを活性化することで、企業が得られる4つの効果を紹介します。
人材の定着・育成
社内コミュニケーションを活発にすると、社員同士の意思疎通や業務上の連携がスムーズになります。チーム意識や信頼関係の強化により、多くの社員にとって居心地がよく働きやすい環境になれば、人材の定着率も上がります。
質問や相談などのコミュニケーションが活発になれば、社員の能力も伸びていくでしょう。結果的に、社員が成長する土壌が醸成されます。
エンゲージメント向上
社内コミュニケーションが活発で、同僚や部署のメンバーとの関係が強固であると、組織内に一体感が生まれ、組織へのエンゲージメントも高くなります。
また、意見を気兼ねなく述べられ、自分の提案が取り入れられ、組織や事業の成果につながっているという感覚は、社員の主体性を促進し、エンゲージメントにも良い影響を与えます。
業務効率・生産性の向上
不明点や疑問点、アイデアなどを遠慮なく質問したり相談できたりする環境であれば、上司は必要なタイミングで的確な指示を出せます。
ミスやトラブルも未然に防ぎやすくなり、業務効率化のためのアイデアも積極的に提案されるようになるでしょう。最終的に、組織全体の生産性が向上します。
顧客満足度の向上
上述したように、社内コミュニケーションの活性化は、人材育成の促進やエンゲージメント向上、業務効率アップなどに大きく寄与します。
質の高い業務遂行が可能になれば、顧客に提供できる価値も向上し、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
顧客満足度の向上は社員に誇りと自信を与え、さらにエンゲージメントが向上するというように、好循環が生まれていきます。
イノベーションの創出
多様な価値観や経験はコミュニケーションが少ない状態ではすれ違いや衝突の原因にもなりますが、コミュニケーションが活発化すればイノベーションを生み出す源泉となります。
優れたアイデアは、オフィス内のコミュニケーションでのみ生まれるとは限りません。
他部署の社員と交流する機会や気軽に雑談を行なえる場の提供、オンラインコミュニケーションツールの導入など、オフサイトも含めて社員同士がつながれる環境の整備も大切です。
社内コミュニケーションの活性化を決定付けるのは組織風土
社内コミュニケーションの活性化には、社員同士のやり取りを促進する組織風土を形成することが先決です。組織風土が形成されていない状態で、細かな施策を実行しても効果は薄いでしょう。
形成すべき組織風土は、価値観や意見の違いを客観的に受け止めるマインド、相手を理解しようとする姿勢、共通目的や目標の認識、価値観の多様性をイノベーションの源泉としてとらえる考え方などです。
上記を組織内に浸透させる方法の一つに、「7つの習慣®」というメソッドがあります。タイトルのとおり、効果性を発揮するための7つの習慣をまとめたもので、シンプルかつ実践的であることから、多くの企業で人材育成や組織改革に活用されています。
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでも、自社で「7つの習慣®」を導入し、社風の劇的な改善に成功した経験を踏まえて、顧客にも研修として提供しています。
「7つの習慣®」は、基礎原則である「パラダイム」と「インサイドアウト」、「パラダイムシフト」という3つの基礎概念をベースに、7つの習慣を提案しています。
- 第1の習慣:「主体的である」
- 第2の習慣:「終わりを思い描くことから始める」
- 第3の習慣:「最優先事項を優先する」
- 第4の習慣:「Win-Winを考える」
- 第5の習慣:「まず理解に徹し、そして理解される」
- 第6の習慣:「シナジーを創り出す」
- 第7の習慣:「刃を研ぐ」
以下の記事で詳しく解説していますので、ご興味あればご覧ください。書籍『7つの習慣』の概要を理解できます。
社内コミュニケーション活性化に役立つ具体的施策10選
コミュニケーションが活性化する組織風土の醸成と並行して、個別の施策を検討していくとよいでしょう。社員間の交流に役立つ10個の具体施策を紹介しますので、参考にしてください。
朝礼やランチ交流会
朝礼やランチ交流会は、社内コミュニケーションを促す取り組みの代表例です。朝礼は、管理職からの一方的な業務連絡ではなく、双方向なやり取りの場にしましょう。司会役を持ち回りにして社員に担当してもらうのも手です。
また、ランチ交流会は、夜の外出は難しい子育て中の社員でも参加できる、飲み会と比べて開催費用を抑えられるなどのメリットがあります。普段の業務では接点がない社員同士を組み合わせるシャッフルランチの形式で開催するとよいでしょう。
業務の意見交換会
チームや部署内で業務の意見交換会を実施して、普段困っていることや提案、アイデアなどを共有し合うのもおすすめです。
単なる無駄話や愚痴で終わらないよう、ファシリテーターを立てて有意義なものとしましょう。ポイントは、できるだけ現場の意見に耳を傾けること、異論や反対意見も一つの意見として尊重して、頭ごなしに否定しないことの2つです。
クラブ活動
クラブ活動は、社員間のプライベート接点を生み出す有効な施策です。
実際に多くの企業でも、運動部や美術部、軽音部、茶道部など、アウトドアからインドアまで、さまざまなクラブ活動を行なっています。企業から補助を出しているケースも多いでしょう。
設立の際には、組織内における目的を明確にしたうえで、運用ルールを設けましょう。たとえば、「活動は業務時間外で行なう」「活動内容を社内SNSにアップするなどして内容をオープンにする」などのルールは必要です。
社内イベント
社内イベントは、歓送迎会のほか、社内旅行や運動会、社員の家族も交えて行なうBBQ大会などがあります。業務上は接することがない経営陣や社員同士の距離を縮められ、社員の慰労やリフレッシュにもなる施策です。
テレワーク下では、オンライン飲み会を開催する例も増えています。ほかに、業務時間内に行なわれる創立記念式典や講演会なども広義では社内イベントの一種といえるでしょう。
経営層との交流
一般的に、企業の規模が大きくなるほど、一般社員と経営層との距離は遠くなります。経営層との交流の方法には、役員と社員とのランチ会を開催する、部署の飲み会に担当役員を招く、社内報の特集として社長と若手社員との座談会を行なうなどの方法があります。
座談会やランチ会は、社員が話しやすいように4~5人程度の少人数で行なうのがコツです。
ブラザーシスター制度
ブラザーシスター制度は、年齢の近い男性社員や女性社員が新入社員の指導役・相談役に付き、業務を指導したり社会生活の不安に対してアドバイスしたりするものです。
世代の近い社員に、ちょっとした悩みや相談ができる制度であり、新人の定着化に有効です。
業務上のしがらみがなく自由に聞きやすい存在として、他部署の社員をアサインすることがおすすめです。異なる部署の社員をアサインすることで部門間のコミュニケーション活性化にも役立ちます。
1on1導入
1on1とは、上司と部下が1対1で行なうミーティングで、上司と部下の信頼関係の構築や部下の成長促進に効果的とされる施策です。
1回30分程度の短いミーティングを継続的に行なう、部下の話に耳を傾ける、部下の価値観やキャリアビジョンといった重要なテーマを選ぶなどが実施のポイントです。
部門を超えた人事異動
部門を超えた人事異動には、長い目で見て本人のキャリア形成に役立つ、部門間の橋渡しになる人材を育成できるなどのメリットがあります。実施にあたっては、異動期間や回数などの基本方針を定めたり、本人の希望を尊重したりすることが大事です。
社内SNS・グループウェア
社員同士のコミュニケーションには、社内SNSやグループウェアなどのオンラインツールも大いに役立ちます。チャット機能などが付いており、特にテレワーク下での効率的なやり取りや情報共有に便利です。
企業で活用されているサービスの例には、Slack、Chatwork、Talknoteなどがあります。
サンクスカード・ピアボーナス
サンクスカードやピアボーナスは、社員同士のポジティブなコミュニケーションを活性化させてくれます。
サンクスカードとは、日々の貢献や行動に対して、社員同士で感謝や賞賛を贈り合うものです。ピアボーナスでは、感謝や賞賛のメッセージに加えて、少額のインセンティブを贈れます。
運営にはアプリ・ツールを使うと便利です。サンクスカードではRECOG、ピアボーナスではUniposなどのツールが有名です。こうしたアプリやツールを活用することで、組織内に賞賛し合う文化が醸成されれば、心理的安全性も確保されるでしょう。
まとめ
社員同士のコミュニケーションが円滑になることで、上司や部下、同僚、顧客など、業務上のすべての関係が良好になっていきます。
ポジティブなコミュニケーションには業務へのエネルギーを高める力があり、企業の成長には欠かせません。
立場に関係なく自由に発言できる、異なる価値観を受け入れるといった社内のコミュニケーションが活性化しやすい組織風土を形成し、同時に記事内で紹介したような個別施策を実践していきましょう。