生じやすい課題を踏まえた上で、50代社員にとってキャリア研修が重要になる理由を「会社視点」と「個人視点(本人視点)」に分けてそれぞれ解説します。
【会社視点①】キャリア自律の促し
50代社員にとって、キャリア研修が重要となる1つ目の理由は、会社としてキャリア自律を促したいという事情があります。
キャリア自律とは、一言でいうと、自分のキャリアに対して主体的に考えて行動できるということです。
この数十年で、日本の大手企業は年功序列と終身雇用から、成果主義とジョブ型へと一気に切り替わってきています。その中で、採用から今まで年功序列と終身雇用を前提に過ごしてきた50代社員の意識変革を促す必要があるという背景があります。
50代社員が主体的にキャリア自律できれば、若手の指導や後継者育成にも貢献し、組織の生産性や競争力も向上するでしょう。そのための方法のひとつとして、50代社員のキャリア研修は重要な役割を果たします。
【会社視点②】リスキリングへの意識付け
会社・組織の観点から、50代社員のキャリア研修が重要になる2つ目の理由は、「リスキリングへの意識付け」です。
リスキリングとは、自分の持っているスキルや知識が時代に合っているかどうかを常に見直し、必要に応じて新しい技術や知識を身につけることです。
現在、社会情勢や市場環境は急速に変化しています。例えば、コロナ禍でオンラインでの仕事や学習が増えたことで、オンラインコミュニケーションのスキルが求められるようになりました。また、環境問題や人口減少などの課題に対応するために、持続可能なビジネスモデルやイノベーションを生み出す能力も必要になっています。
急速なAI技術の進展やDX化、SDGsに代表される持続可能なビジネスモデルやイノベーションの創出は、今やほとんどの企業の経営課題・経営戦略として何かしら組み込まれていることでしょう。こうした新時代に対応したスキルやノウハウは、今まで考えられなかった新たな領域で成果を上げるまたとない機会です。
一方で、これまでの仕事成果を支えてきた業務経験や技能に固執するあまり、新しい技術や知識に適応できなければ、今後は今までのような成果を期待できない可能性は十分に考えられます。つまり、50代社員にリスキリングへの意識付けを促して、時代に即したスキルや知識にリニューアルしてもらえるかどうかは、企業の競争力や生産性に直結するということでもあるのです。
その点で、リスキリングへの意識付けという意味においても、50代社員のキャリア研修に大きな期待がかかっています。
【個人視点①】役職定年や定年後のキャリアの備え
ここからは、50代社員本人の視点からキャリア研修の意義を見ていきましょう。
組織で働き続けてきた人の多くが、50歳前後を境に意識するようになるのが、役職定年や定年後のキャリアです。
50代になると、役職定年等で役職や仕事内容が変わったり、給与が減ったりすることもあります。また、定年退職後には、年金受給までの間の稼ぎをどうするかといったことも検討しなければなりません。
しかし、これまで会社から言われるままに同じ仕事を続けている人の場合、「定年後、自分はどのように働きたいのか?」「そもそも組織で働く必要があるのか?」「働くことで得られるものは何か?」といった、会社の要請とは離れたキャリアプランを想像することは、なかなか難しいものです。
自分のキャリア資産を棚卸しし、自分の強みや価値観を見直し、新しい働き方やライフプランを深く考えることが求められるからです。だからこそ、専門家や仲間と一緒に自己分析やキャリアプランニングを進めたり、自分の可能性や目標を広げて考えたり、助言を受けながら具体的な行動計画を策定するキャリア研修が、50代社員にとって大きな助けになります。
50代社員のキャリア研修は、役職定年や定年後のキャリアの備えだけでなく、仕事へのモチベーションや満足度を高めることにもつながります。自分のキャリアに責任を持ち、主体的に働くことで、ポジティブな気持ちでキャリアを考える上でも効果を発揮するでしょう。
【個人視点②】仕事に対する意義付けや役割創造を考えるきっかけ
50代社員本人にとってのキャリア研修には、仕事に対する意義付けや役割創造を考えるきっかけとしても重要な役目があります。
お伝えしたように、50代前後では、仕事に対する意義付けや自分の存在価値を見失ってしまう人も少なくありません。例えば、若手社員の指導を任されたり、新しい技術や知識を学ばなければならなかったりすると、自分の仕事の価値や貢献度が低いと感じたり、自分の能力や適性に不安を抱いたりするケースがあります。
また、会社の方針や戦略が変わったり、組織構成が変化したりすると、仕事の意味や目的がわからなくなったり、自分の役割や責任が曖昧になったと感じる人も出てくるでしょう。
キャリア研修のワークセッションを通じて、自分の仕事が会社や社会にどういう価値を提供しているのか?自分の強みや特徴を今後どう活かせるのか?などを考え、ディスカッションすることで、仕事への満足感や誇りを取り戻すこともできるでしょう。
【個人視点③】会社の期待と自分のキャリアプランのすり合わせ
50代になると、会社と期待と本人の自己認識にギャップが生じやすくなるというのは、前章でお伝えした通りです。
例えば、会社は経験や知識を活かして、後進の育成や、新しい分野に挑戦することを期待しているかもしれません。しかし、50代社員からすると、自分の得意な分野や業務に専念したいと思っているかもしれません。また、会社は定年後も自社で働き続けることを望んでいる一方で、50代社員は定年後に起業やボランティア活動をしたいと考えているかもしれません。
このような、会社と50代社員間のキャリアをめぐるギャップは、コミュニケーションや望ましい働き方の障害にもなってしまいます。キャリア研修の中で、会社と社員の期待と認識を共有したり、双方にとってより良い解決策を探すワークセッションをしたりすることを通じて、ギャップを埋めることも期待できるでしょう。