コミュニケーション力やチームワーク、チームビルディングを促進する手法として、ゲームの要素を取り入れたコミュニケーション研修が注目されています。
なぜ、ゲーム要素を取り入れた研修が効果的なのでしょうか? また、研修には具体的にどういったゲームを取り入れられるのでしょうか? 記事ではこうした疑問にお答えしたうえで、ゲームを取り入れたコミュニケーション研修の実例と選び方や実施のポイントを紹介します。
<目次>
コミュニケーション研修にゲームを取り入れる効果
コミュニケーション研修は、社員のコミュニケーション力を磨いたり、チームワークの強化、チームビルディングを行なったりすることを目的に実施されます。
コミュニケーション研修にゲームを取り入れると、なぜコミュニケーション力の強化やチームビルディングが進むのでしょうか。2つの視点で、ゲーム型研修の効果を紹介します。
自然なコミュニケーションが誘発される
ゲーム型研修を進めるなかでは、お互いにコミュニケーションを取る場面がたびたび発生します。座学研修のロールプレイングのように、「では、お互いに向かい合って……」といった強制的なものではなく、ゲームを進める過程で自然にコミュニケーションが発生する仕掛けになっているので、より自然なコミュニケーションが誘発されるのがポイントです。
自然なコミュニケーションを通じて、メンバーそれぞれの性格や特性をお互いに深く理解することで、日々の仕事のなかでもより適切な関わり方が可能になります。また、自分のコミュニケーションを振り返るうえでも、非常に有効です。
知識ではなく体感する
ゲーム型研修の多くは、体感型です。体感型であることは、ゲームを用いたコミュニケーション研修が目的達成につながる大きな理由です。体を動かしたり頭を使ったりしながら実際に体験することで、コミュニケーションやチームワークの方法論が、知識ではなく体感として浸透しやすくなります。
前述したような振り返りでも、ゲーム中の自然なコミュニケーションだからこそ、“普段の癖”がよく現れます。そのため、参加者にコミュニケーションや思考の癖を見直してもらううえで、納得感をもって進めることができます。
コミュニケーション研修に取り入れられる!おすすめのゲーム15選
コミュニケーション研修で取り入れられるゲームを15個ピックアップしました。概要と期待できる効果を簡単に紹介します。
人狼
「人狼」は、「村人」と村人に化けた「人狼」のチームに分かれて、推理や説得を通して勝利を目指すゲームです。村人チームは、全員が村人のふりをしているメンバーのなかから、誰が人狼なのかを探し出します。人狼チームは、自分の正体がばれないように巧みに嘘をつきます。
人狼ゲームを用いたコミュニケーショントレーニングは、対人関係を円滑にするスキルや自己主張スキルの促進効果が期待できるという研究結果も出ています。
基本ルール以外にさまざまなバリエーションがあり、1ゲーム10分程度で完結する「ワンナイト人狼」というルールもあるので、研修の目的やタイムスケジュールに応じて柔軟に取り入れることができるでしょう。
NASAゲーム
「NASAゲーム」は、チームメンバーとの合意形成を行なうゲームとして非常に有名なゲームです。ゲームは「月に不時着してしまった宇宙飛行士」という設定で、320km離れた母船へと戻るために、手元のアイテムに対して優先順位を決めていきます。
個人で優先順位をつけた後にチームで話し合い、なるべく妥協なく、合意のうえでチームとしての優先順位をつけていきます。NASAによる模範解答に最も近い解答を出したチームが優勝です。
チームでの話し合いにおいて、明確にそれぞれのコミュニケーションの癖が出るため、運営側からフィードバックしたり、後から振り返りを行なったりすると有効です。
意見が対立したときに、単なる多数決や諦めで結果を決めるのではなく、しっかりと話し合って合意を形成する力が身につきます。
ペーパータワー
「ペーパータワー」は、その名のとおり「紙のタワー」を作り上げるゲームです。クラフト紙等を用いて、チームごとに制限時間内にできるだけ高いタワーを作り上げます。
「どうやって紙を積み上げるか」「切ったり折ったりするべきか」といった作戦を練ったり、うまくいかないときに互いを気遣ってチームの雰囲気やモチベーションを保ったりすることで、チームでコミュニケーションを取りながら課題を乗り越えていくことの難しさと楽しさを体験できます。
NASAゲームと同じようにコミュニケーションの癖を振り返り、内省するうえでも非常に有効です。
条件プレゼン
「条件プレゼン」では、いくつかのグループに分かれて、事前に与えられたキーワードやテーマをもとにプレゼンを実施します。一番おもしろい、優れたプレゼンを行なったグループが勝ちです。
「想像力・発想力をフルに使ってさまざまなアイデアを出し合い、チーム内でコミュニケーションを取りながら最終的に1つの案に絞り込む」という企画のプロセスを体験できます。
ビズストーム
「ビズストーム」は、メンバー一人ひとりが企業の経営者となって業績を競い合うゲームです。経営を疑似体験することにより、経営戦略やマーケティング戦略の重要性を短時間で体感できます。
従来のリアル版に加えてオンライン版もリリースされており、感染症拡大防止のためにオンラインで実施したり、全国に参加者がいたりする場合におすすめです。
公式サイト:https://bizstorm.jp/
バースデイライン
「バースデイライン」は、10分前後で完結する手軽なコミュニケーションゲームです。
参加者はいくつかのグループに分かれて、グループ内で誕生日の日付順に前から並び替わります。ただし、ゲーム中に参加者は一切言葉を発してはいけません。筆談も禁止で、言葉を使わずにいかにうまくコミュニケーションを取れるかが試されます。
非言語コミュニケーションの難しさと大切さが学べるゲームで、研修の最初等にアイスブレイクやチームビルディングを目的として実施することもできます。
マナーストーリー
「マナーストーリー」は、ストーリーに沿ったクイズ形式で楽しくビジネスマナーを習得できるゲームです。ビジネスマナーを問うクイズに答えることでストーリーが進み、一定以上不正解になるとゲームオーバーになります。
受け身になりがちなマナー研修にゲーム要素を加えることで、参加者の集中力を維持する効果が見込めます。専用キットを用いて行ないますが、キットは購入だけでなくレンタルも可能です。
公式サイト:https://heart-quake.com/article.php?p=5900
マネジメントゲームMG
「マネジメントゲームMG」は、40年前、まだベンチャー企業だったソニーが開発したボードゲームです。効果的な研修ゲームとして、今も国内外で高い人気を集めています。
ゲームでは、決算書の読み書き等の実務的なノウハウも含めて経営を疑似体験でき、経営に必要な意識や視点をしっかり学んでもらいたいときにおすすめです。近年、オンライン版も登場しました。
公式サイト:https://mg-online.jp/
The 商社
「The 商社」は、3〜6人ほどでチームを組み、チームを1つの会社(商社)と見立てて、他チームとの交渉を繰り返しながら自社を拡大させていくゲームです。
他チームとの利害を調整するという交渉のプロセスを経て、「Win-Win」の関係を成り立たせることの重要性に気付くことができます。ゲームをうまく進めるにはチーム内の意見をまとめることも重要なので、合意形成のプロセスやリーダーシップの発揮を学ぶこともできます。
公式サイト:https://www.projectdesign.co.jp/the-shosha
The Team
「The Team」では、ゲーム内で上司役・部下役を交互に体験することで、2つの視点からコミュニケーションにおける課題を発見できるカードゲームです。
なぜ「報・連・相」が大切なのか、なぜ部下にビジョンを伝える必要があるのか等、実際のビジネスで「部下」と「上司」、それぞれに求められることの意味を実感できるため、新入社員研修はもちろんのこと、マネージャー層向け研修でも活用できるゲームです。
公式サイト:https://www.projectdesign.co.jp/the-team
働き方改革ゲーム
「働き方改革ゲーム」は、現在日本が国をあげて取り組んでいる働き方改革を、自分ごととしてとらえられるビジネスゲームです。参加者はいくつかの部門に分かれて、働き方改革に関連する数回の意思決定を経て、自社を強くすることを目指します。
ゲームを通じて、自分自身がどのような組織を作りたいか、何を大事にして働いているのかを考えることもできます。働き方改革を推進する立場にあるマネージャー層だけでなく、若手社員にもおすすめです。
公式サイト:https://www.projectdesign.co.jp/work-style-reform
The Shop
「The Shop」は、「お客様に支持されるお店」を作ることを目標として店舗の経営を行なうシミュレーションゲームです。1〜6人でチームを組み、経営のビジョンを設定し、経営の打ち手を選んで店舗の収益を増やしていきます。
ビジネスを俯瞰的に見るスキルや、経営方針を実践するための適切なコミュニケーションスキルが養われるため、店長候補や新任店長、マネージャー、スーパーバイザー向けの研修で活用できるゲームです。
公式サイト:https://www.projectdesign.co.jp/the-shop
The Manager
「The Manager」は、企業経営シミュレーションゲームです。ゲーム内では、財務諸表を軸として資金調達や人材への投資を行ない、企業の成長を目指します。
利益を上げるサイクルを効率的に回す方法や、チームの財務体質を正確に把握する方法等、高度な内容を学べるゲームです。また、リーダーとしての主体性や責任感、マネジメント能力等も身につけられます。
公式サイト:https://www.projectdesign.co.jp/the-manager
ジェスチャーゲーム
回答者が与えられたお題をジェスチャーで伝え、ほかのメンバーがそのジェスチャーを見て正解を導き出すという、TV番組等でもお馴染みのゲームです。数名で1つのチームを組み、チーム対抗で制限時間内にいくつ正解できるかを競います。
きわめてシンプルなゲームですが、積極的に伝えようとする力、限られた情報から答えを導き出す発想力等が鍛えられます。
レゴ®シリアスプレイ®
「レゴ®シリアスプレイ®」は、レゴ・ブロックで作品を作ることで、メンバーそれぞれの本音を引き出し、共有するゲームです。各々が「自分自身の核心」や「業務」等をテーマに作品を作り、それを使って物語を紡ぎ、ほかのメンバーに自分の内観を伝えます。
ビジネスにおいては論理が最優先されがちですが、感性で物事をとらえ直し、それをまた論理で考えてみると、問題解決につながることがあります。
お互いを深く知ることによるチームビルディングの効果だけでなく、組織のビジョン作りや新たな戦略の立案にも役立つゲームです。
公式サイト:http://www.seriousplay.jp/
選び方と実施のポイント
ゲーム型研修でよくある失敗では「ゲームをやって楽しかった」というだけで研修が終わってしまい、実際の業務への反映ができていないというケースです。
研修にゲームを取り入れる場合、「ゲームにおける学びを実際の仕事にどうつなげるか」が大切なポイントです。まず「研修を通じて何を得たいのか?」という研修の目的や、ゲームを行なう意図を明確にしてから、目的・意図に適したプログラムを選ぶことが重要です。
そして、研修内容を業務に活かしてもらうためには、研修を実施した後の振り返りが重要です。「ゲームで得られた経験や体験をこれからの仕事にどうつなげるのか」、必ず参加者一人ひとりに言語化してもらいましょう。できれば「何を実践するか」まで、行動を明確に落とし込んで、フォローアップすることがおすすめです。
まとめ
コミュニケーション研修やチームビルディング研修は、ゲームの要素を取り入れることで、効果性が高まったり、体や頭を使って体感することで教育効果が高まったりします。
記事では、ゲーム型研修の事例を15個紹介しました、研修にゲームの要素を取り入れるにあたっては、研修で学んだ内容を業務に反映させられるよう、研修目的に合わせたプログラム選定、仕事へのブリッジング、実施後のフォローアップ等が重要です。
下記から、社員研修を企画するうえでのポイントをまとめた資料がダウンロード可能です。企業の状況に合わせた研修を企画するためのヒントやコツを紹介していますので、研修企画立案にぜひお役立てください。