新入社員が抱えがちな悩みのなかで特に大きいのが、コミュニケーションに関する問題です。
円滑なコミュニケーションは、新入社員が仕事を覚え、チームに馴染み、成果をあげる、そして、成長していくうえで欠かせないものです。では、新入社員は具体的にどのようなコミュニケーションの悩みを抱えるものなのでしょうか?
記事では、意識調査のデータなどからコミュニケーションや人間関係の悩みを抱えがちな新入社員の実情を紹介します。そのうえで、新入社員が抱えるコミュニケーションの悩みや不安の詳細、また、悩みを解消するために企業側にできる対策を解説します。
<目次>
人間関係やコミュニケーションに関する悩みは大きい
まず、新入社員がコミュニケーションや人間関係の悩みを抱える現状は、各社・各団体のアンケート結果などを見るとイメージしやすいでしょう。
リクルートマネジメントソリューションズによる「2021年 新入社員意識調査」では、仕事・職場生活をするうえでの不安(最大3つ回答)に関する質問に対して、人間関係・コミュニケーションに関する3つの不安が入っています。
- 【3位】先輩・同僚とうまくやっていけるか(38.6%)
- 【6位】上司とうまくやっていけるか(22.7%)
- 【9位】会社の風土が自分に合ったものか(8.9%)
一方で、2021年の新入社員における「働きたい職場の特徴」に関する質問の1位~3位には以下のような人間関係やコミュニケーションに関する内容で占められています。
- 【1位】お互いに助けあう(68.4%)
- 【2位】アットホーム(46.8%)
- 【3位】お互いに個性を尊重する(44.9%)
2つのデータを見ると、いまどきの新入社員は、人間関係の良い職場を求める一方で、人間関係やコミュニケーションに不安や悩みを感じている実情が見えてきます。
日本労働調査組合による「新社会人の勤務意識に関するアンケート」でも、入社した会社で働き続ける場合の懸念 1位に「人間関係」が入っています。また、同調査の結果では、仮に退職するとした場合の懸念や不安の3位も「人間関係」となっています。
紹介したリクルートマネジメントソリューションズと日本労働調査組合の調査結果から総合的に考えても、やはり多くの新入社員は人間関係やコミュニケーションの不安を抱えており、これらの悩みが離職原因にもつながるといえるでしょう。
新入社員の離職を防ぐとともに、新入社員が持っている能力をきちんと発揮して活躍できるようにするには、コミュニケーションの悩みを解消することが非常に大切になります。
出典:2021年 新入社員意識調査(リクルートマネジメントソリューションズ)
出典:新入社員の勤務意識に関するアンケート(日本労働調査組合)
新入社員が抱えるコミュニケーションに関する悩み・不安
前章でコミュニケーションに関する悩みが多いことを紹介しましたが、具体的にどのような悩みを抱えやすいのかを知らなければ、適切なフォローやサポートができません。本章では、新入社員が悩みやすいコミュニケーションの問題を紹介します。
ビジネスコミュニケーションや敬語に不安がある
ビジネスコミュニケーションとは、上司・先輩・同僚、取引先、お客さまなどとの間で行なう仕事上のコミュニケーションです。
ビジネスコミュニケーションは、ビジネスをスムーズに進行するうえで欠かせない要素です。ビジネスでは、学生時代の友達との雑談とは違い、信頼関係の構築、情報を的確にやり取りするロジカルコミュニケーションなどが求められます。
そして、それらの前提として一定の「敬語」が必要です。一言一句間違えない必要はありませんが、それでも基本的な敬語を使えないと信頼関係の構築が難しく、企業に対する悪印象にも繋がりかねません。
一方で、新入社員は敬語などをあまり使わず過ごしてきた人が多いでしょう。敬語が必要だとわかっていても、敬語を使い慣れていないため、思うように言葉が出てこないこともあります。正しい敬語が使えているか・通じているか不安を抱える新入社員も多いはずです。
そういった心配からコミュニケーションが億劫になり、コミュニケーション頻度が落ちるというのが、初期の新入社員に多い傾向です。
先輩や上司に萎縮してしまう
続いて報連相(報告・連絡・相談)したいことがあっても、上司や先輩が怖くて話しかけられない状態です。具体的には、以下のようなことを言われるのではないかと心配な状態を指します。
- 「こんなこともわからないの?」
- 「何度も同じ質問をするんじゃないよ!」
- 「そんなことをいちいち報告するなよ!」 など
最近の新入社員は「見られ方」を気にする傾向が強くなっています。結果として、ネガティブに受け止められるのではないかという不安から報連相が止まってしまうのです。
また、上記のような不安まで行かなくても、先輩や上司が忙しそうに仕事をしている場合、「邪魔をしては悪いのではないか?」と変に気を遣ってしまい、声をかけられなくなってしまう新入社員も多くいます。
職場に馴染めているか心配になる
最後に、本人としては上司や先輩との距離を縮めたいと思っているものの自分がチームの一員として認めてもらえているのかわからない状態です。認められていない・居場所がないのではないかという印象を持っていると、やはり上司・先輩への遠慮・萎縮から報連相が滞ってしまいます。
上司・先輩側としては「我々は新入社員を歓迎している、受け入れている」と思っている一方で、新人は「いつまで経っても溶け込めない」と感じているケースもあります。
新入社員のコミュニケーションの悩みを解消するには?
新入社員の抱えるコミュニケーションの問題は、ここまで紹介したとおり、必ずしも新人本人だけの問題や原因で起こるわけではありません。また、上司や先輩への萎縮・遠慮はある程度やむを得ない事象だともいえます。
したがって、新入社員が抱えるコミュニケーションの不安や悩みを解消するには、組織としてコミュニケーションに支障が出ない環境や仕組みを整えて、新入社員一人ひとりのケアやフォローをしていく必要があります。本章では、組織としてできる3つの対策を紹介します。
研修体制の確立
新入社員は、先日まで学生だった若者です。彼・彼女たちは、アルバイトやサークルなどで敬語を使う機会はあっても、終日敬語だけで話すような経験はほとんどありません。
学生時代にアルバイト・サークルなどの活動をしていた新入社員も飲食業などが多く、敬語の利用頻度は低かったり、10歳20歳上のビジネスパーソンと仕事した経験がある人は少なかったりします。
また、学内でのサークルやゼミなどでも、3・4年生になれば、敬語を使う場面は減ってきて、学外での活動をしていなければ、敬語に慣れていないのはある意味、当然といえます。
新入社員のこうした実情を考えると、仕事で使うビジネスコミュニケーションや基本的な敬語は、Off‐JT研修などでカバーしていく必要があります。
敬語やビジネスコミュニケーションは、さほど自社固有のものは生じません。したがって、外部の公開セミナーや研修会社に依頼することがおすすめです。HRドクターを運営する研修会社ジェイックが提供する新入社員研修「仕事の基礎の基礎」などにも敬語やビジネスコミュニケーションが含まれます。
受け入れ体制の整備
たとえば、チームメンバーが新入社員の配属を当日まで知らなかったり、興味を持たなかったりすれば、新人が組織に馴染むことは難しいでしょう。新入社員を受け入れ組織に馴染ませるために、以下のような仕組みを用意することが大切です。
- 歓迎会
- ブラザー・シスター制度
- 入社後の定期面談 など
こういった仕組みは「オンボーディング」と呼ばれる受け入れ態勢の整備プロセスのひとつとして実施するとよいでしょう。
OJT担当である上司・先輩の教育スキル向上
OJT担当である上司・先輩は、新入社員にとって最も身近な人物です。教える側に問題があると新入社員が委縮してしまい、仕事を覚えチームに馴染むことが難しくなってしまいます。
新入社員の価値観は、生まれ育った時代環境に応じて緩やかに変化していくものです。一方で新入社員を受け入れる上司・先輩社員からすれば、新入社員の価値観は理解し難いかもしれません。
OJTなどの教育はそもそも、新入社員に仕事を覚えてもらい、チームに馴染んでもらうことが目的です。そのため、新入社員を受け入れるときには、上司・先輩の価値観を押し付けるのではなく、相手の理解に徹することが大切です。
新入社員のコミュニケーションに関する悩みも、上司や先輩社員も自分が新入社員の頃には体験したはずです。しかし、数年、数十年が経ってしまうとすっかり忘れてしまいがちです。
「それぐらいは自分で声かけろよ」「“いつでも声かけてね”と伝えたのだから声をかけてこないほうが悪い」と切り捨てるのではなく、新入社員の声をかけづらい感情を理解しましょう。そして、以下のような仕組みで解決することが有効です。
- 朝礼と夕礼などで報連相を確認する時間をつくる
- 「5分悩んで答えが出なければ相談する」など決めてしまう
- 上司から報連相を取りに行く
新入社員のコミュニケーションの悩みは時間とともにある程度解決するものです。初期のころに上記のような丁寧なケアをしてあげることで、コミュニケーション量が増えて、敬語に関しても人間関係に関しても、コミュニケーションを妨げていた心理的ハードルは自然と解消されていきます。
まとめ
新入社員の多くが以下のような人間関係やコミュニケーションに関する悩みを抱えています。
- ビジネスコミュニケーションや敬語に不安がある
- 先輩や上司が怖くて萎縮してしまう
- 職場に馴染めているか心配になる
新入社員におけるコミュニケーションの悩みの解消には、組織として以下の対策を実施するのがおすすめです。
- 研修体制の確立
- 受け入れ体制の整備
- OJT担当である上司・先輩の教育スキル向上
繰り返しになりますが、初期に丁寧なケアをしてあげることで、新入社員のコミュニケーション量は増えて、コミュニケーションを妨げていた心理的ハードルは自然と解消されていくものです。逆に、初期に躓いてしまうとその後も尾を引きます。
課題を感じていらっしゃるようであれば、記事の内容を参考にぜひ対策を講じてください。