OJT実施のポイントは?Off-JTとの組み合わせるコツを徹底解説

更新:2023/07/28

作成:2021/10/20

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

OJT実施のポイントは?Off-JTとの組み合わせるコツを徹底解説

OJTは、ほぼすべての組織で実施されている研修手法です。実際の業務を通じて研修を受けることで、新入社員が実践的なノウハウやスキルを身に付けることが可能です。一方で、OJT指導者の指導スキルに依存しやすい点や体系的な知識の習得が難しい側面もあります。

 

記事では、OJTで得られる効果やOJTを成功させるポイント、Off-JTとの組み合わせ方をわかりやすく解説しています。「もっとOJTの質を高めたい」「OJTの課題をクリアにして、マニュアル整備に役立てたい」という方はぜひご覧ください。

 

<目次>

OJTとは?

パソコンを使った研修

OJTとは「オン・ザ・ジョブ・トレーニング(On the Job Training)」の略称で、実際の職場で実務を通して教育を行なう方法の一つです。

 

現場で行なわれている業務の手順やフロー等を実際に見ながら指導を受けられるため、座学よりも実践的なノウハウやスキルを身に付けることができます。

 

OJTの最も基本的な指導法として知られているのは、「4段階職業指導法」といわれるもので、多くのOJT現場で無意識に実践されています。

 

<4段階職業指導法>
  • 「やってみせる(Show)」
  • 「やってみせたことを説明する(Tell)」
  • 「実際にやらせてみる(Do)」
  • 「やったことを確認し、追加で指導する(Check)」

 

また、OJTと対になる教育手法が、実務の場を離れて研修を行なうOff-JT(Off the Job Training)です。Off-JTは座学やグループワーク、アクティブラーニングなどの手法で、現場を離れた場所で研修や教育を行なうやり方です。

 

Off-JTでは、社員や幹部等が講師を務めることもありますし、教育研修会社や他社等、外部から講師を招いて実施することも多くあります。

 

Off-JTは現場から離れて集中的に学ぶため、体系的な知識を得る、振り返りや内省等をしっかりと実施する、役職や実務から離れてコミュニケーションを深めるといったメリットがあります。

 

一方で、「実務から離れている」ため、極端にいうと「机上の空論」や「知識だけ」になってしまったり、現場で実践されなかったりする点への対策が必要です。

 

OJTで実務上必要なスキルを学び、Off-JTで体系的な知識を学んだり、振り返りをしたりすることで、双方のメリットが活かされた質の高い社員教育を実現させることが大切です。

 

OJTのメリットと注意点

本章ではOJTが持つメリットと課題について、詳しく見ていきます。

 

 

OJTで得られる効果

OJTでは、実務を通して実業務に必要な知識が学べるため、座学では得がたい実地でのスキルや実践的なノウハウを身に付けられる点が大きなメリットです。

 

一般的な業務知識だけでなく、社内で本当に必要なスキルや独自のルール、実践のちょっとしたコツ等が理解しやすいです。また、理解の相違やミスがあった場合でも、即座にフィードバックしたり、改善点を伝えたりすることも可能です。

 

また、OJTは1対1もしくは少人数で行なわれることが多いため、学習者の習熟度に応じて教育内容を調整できる点もOJTの魅力です。業務に慣れるスピードや理解度には個人差があるため、個人の能力や理解度に合わせた指導が実施できます。1対1や少人数で指導にあたるからこそ、きめ細かなフォローも可能です。

 

また、教える側にとっても通常業務の流れを見直したり、改善点に気付いたりする良い機会になるでしょう。OJT指導者や上司とコミュニケーションを取ることで、職場で早期に良好な人間関係を構築する際にも効果を発揮します。

 

OJTでは基本的に研修で使用する会場を押さえたり、外部から講師を招いたりする必要もなく、業務時間内に研修を実施するため、会場代や人件費などのコスト削減も可能です。

 

 

OJTの課題や留意点

OJTにはさまざまな効果やメリットがある一方で、以下のような課題や留意点もあります。まず、座学による研修に比べると、OJTで学べる知識は実践的な内容がメインとなるため、体系的な知識や全体観が抜け落ちがちです。

 

そのため、「なぜそれが必要か」「どのようにスキルアップするのが望ましいか」といった点の理解が進まないまま、実務のみに終始してしまうケースも予想されます。

 

また、OJTは1対1で先輩社員等が指導に当たるため、学習効果が指導者の指導スキルに依存しやすい側面もあります。OJT指導者は必ずしも教えることがうまいとは限りませんし、学習者と良好な人間関係を築けない場合もあります。

 

また、実施が現場に任されがちなため、行き当たりばったりの指導になったり、時には指導者の実務が多忙で放置されてしまったりする可能性もあります。

 

OJTを効果的にするためには、上記のような課題や留意点を把握したうえで、

  • OJT計画の準備フォーマットを作成して運用する
  • 採用が多い職種等であれば、基本的な指導や教育内容のマニュアルを作成する
  • OJT指導者に丸投げせず、人事部門や上司からもケアする仕組みを作る
  • 信頼できる社員を指導者として選定する
  • OJT指導者に対して「教え方」等のトレーニングを実施する

といったことが大切です。

 

また、指導・運用を整備していったとしても、OJTだけでは断片的な知識・スキルに偏りがちとなりますので、必要に応じてOff-JTと組み合わせていくことが必須です。

 

OJTを成功させる指導のポイント

新入社員の指導風景

OJTの効果と課題をふまえたうえで、本章ではOJTを成功させるためのポイントを詳しく解説します。

 

 

明確なゴールを設定する

OJTの目的は、新人が実務をできるように育成して、「一人前」へと成長させることにあります。「そのうち慣れるだろう」「とりあえず必要な業務を順次教えていけばいいか」「まずは雑用からやっておいてもらおう」等と行き当たりばったり、なんとなく指導してしまうと新人の成長に時間がかかり、効果的なOJTとはなりません。

 

「一人前」の状態を具体的に「いつまでに、どのような成果を上げられるようになるか」「そのためにどのようなスキルが必要か」等で明確にして、設定したゴールへ到達するためのフローを策定することが大切です。

 

 

ゴールまでの過程を分解してミニゴールを設定する

効果的なOJTを実施するためには、上述のとおり、具体的なゴールを設定し、そこから、いくつかの成長ステップへと分解していくのが効果的です。最終的なゴールとは別に、ステップごとにミニゴールを設定し、各ミニゴールに達成するまでの期間も設定するとよいでしょう。

 

OJTの具体的なゴールとなる「いつまでにどのような成果を上げられるようになるか」「そのためにどのようなスキルをどのレベルまで身に付ける必要があるか」を、どのような順番でスキルを身に付けていくか?で分解したものがOJTの成長ステップです。

 

そして、各ステップで「どのようなスキルを身に付けるのか」「ステップを身に付けるプロセスでどのような成果や結果を残すか」といったミニゴールを設定します。最終ゴールと成長ステップ、ステップごとのミニゴールがOJTの全体像となります。

 

全体計画を「成長目標・計画」という形で整理して学習者とも共有すると、OJTの効果が高まります。

 

 

OJT担当者一人に丸投げせず上司や人事からも支援を行なう

OJTは1対1もしくは少人数でやるからこそ、新人の吸収ペースや理解度に応じて柔軟に内容を変更できる利点があります。一方で、OJT現場が分散するため、各OJT指導者の育成スキルや熱意、コミュニケーションの相性等によって育成効果が左右されます。

 

最悪の場合、育成効果が減るどころか、OJT担当者と学習者の人間関係等によっては、退職リスク等につながるケースも懸念されます。担当者ごとに生じる指導のばらつきを減らし、OJTがブラックボックス化することを防ぐ。同時に、OJT担当者の負荷を減らすうえでも、「指導体制」を整えることが大切です。

 

OJTをOJT担当者一人に丸投げせず、人事担当者や現場の上長等が連携してサポートすることが望ましいですが、OJTで複数の人がバラバラに指導すると、教わる本人が混乱してしまいます。

 

したがって、実務に関することは基本的にOJT担当者に任せる一方で、例えば中期的なキャリアや仕事の意味付けは上司から、メンタル的なケアや状況把握は人事担当者が定期面談を実施してサポートする、といった分担が有効です。

 

 

OJT担当者のトレーニングを実施する

「プレーヤーとして実務ができるのだから、後輩に教えることもできるだろう」と、OJT担当者へいきなり指導を任せないことも重要です。OJTの質を底上げするためには、担当者の指導スキルを育成することも大切です。OJT計画の作成や教え方のスキル、動機付けに関する理解等のトレーニングが効果的です。

 

また、必ずしも担当者と学習者が同じようなタイプとは限りません。性格特性やコミュニケーションタイプに応じて指導方法を変えるスキルを教えることも有効です。コミュニケーションタイプに関する基礎的な理解があると、人間関係でのつまずきも生じにくくなります。

 

 

フィードバックを重視する

ゴールの設定や指導者のサポート体制、指導に関するトレーニングに加え、日々のOJT結果をフィードバックすることは何よりも重要です。フィードバックは、OJT担当者と学習者、また、OJT担当者と上司・人事、2つの関係性で行なわれることが望ましいでしょう。

 

「何ができたか」「何ができなかったか」「次の成長目標は何か」「どこがうまくいっているか」「どこに懸念があるか」等の情報を随時共有することで、学習者とOJT担当者双方の成長が促されます。

 

OJTとOff-JTをうまく組み合わせるコツ

新人育成は、OJTとOff-JTをうまく組み合わせることで効果的になります。本章では、OJTとOff-JTをうまく組み合わせるコツも紹介します。

 

 

初めにOff-JTで体系的な知識やスキルを教える

OJTを実施する前に、Off-JTで全体像や体系的な知識、基礎スキルを学んでからOJTに進むことで、いきなり現場に入るよりもOJTの吸収度を高めることができます。

 

OJTで経験することになる業務の縦と横のつながりや工程など、しっかりと業務の「全体像」がイメージできるように指導することが大切です。また、実務における共通言語をOff-JTで共有しておくと、OJTでの指導もスムーズに進めやすくなります。

 

 

Off-JTの記憶が薄れないうちに「実務」として体験させる

Off-JTで全体像を学んだら、学んだ記憶が薄れないうちにOJTで「実務」として体験させることが有効です。Off-JTでインプットした知識や学習内容を、OJTで実体験としてトレースできるようにすることで、しっかり知識やスキルを定着させるようにしましょう。

 

 

ロールプレイング大会などのOff-JTを適宜差し込む

OJTをマンネリ化させず、また指導者の力量に依存させないためにも、OJTの合間にロールプレイング大会などのOff-JTを適宜差し込む方法も効果的です。

 

短時間で良いですので、ロールプレイング、振り返り(リフレクション)、事例共有という3つのOff-JTをOJTのなかに組み込むと成長スピードが早まります。

 

 

節目のタイミングでもOff-JTを実施する

OJT終了時や、入社1年など、節目となるタイミングでOff-JTを実施することもおススメです。節目のOff-JTは新しい知識を学ぶことよりも、半年間や1年などのまとまった期間を振り返り、成長実感を得るとともに、今後に向けて目標設定を実施して、モチベーションを高めることがおススメです。

 

 

マイクロラーニングを活用する

Off-JTは半日や1日といったまとまった時間の研修だけでなく、数分~数十分のマイクロラーニングを意識することが有効です。オンラインや動画を使ったマイクロラーニングをうまく活用することで、コストを抑えながら、効果的な学習環境を作ることができます。

 

市販のe-learningサービスもありますし、成功事例やトレンドの共有など、社内のノウハウをオンラインや動画で共有することもおススメです。

 

Off-JTはまとまった時間の研修を節目で実施することも有効ですが、短時間での学びを高頻度でやる(マイクロラーニング)ことも学習効果を高めます。

 

まとめ

OJTでは、現場での実務指導を通じて、新人を一人前に育成することが目的です。OJTは実務ノウハウを身に付けられる一方で、体系的な知識習得がしにくい、OJT担当者の意欲や力量に依存する等の課題もあります。

 

効果的なOJTを実施するためには、OJTの実施計画をきちんと作ること、実施マニュアルの整備やOJT担当者の育成スキル向上、OJT担当者だけでなく上司・人事などがフォローを分担することなどがポイントです。

 

また、OJTとOff-JTをうまく組み合わせることも新人の育成スピードを高めるうえでは有効です。

 

OJTとOff-JTを上手く組み合わせるコツは、

  • 体系的な知識やスキルをOff-JTで学んだあと、すぐOJTで実務として体験する
  • ロールプレイング、振り返り、事例共有という3つのOff-JTを小まめに実施する
  • 節目のタイミングでのOff-JT

等です。

 

ぜひ記事の内容を参考に、効果性の高いOJTを実施して、新人の戦力化スピードを速めてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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