経営陣と人事が知らないとマズい!若手の退職を防ぎ、活躍に導く考え方と具体的方法

更新:2023/07/28

作成:2020/09/10

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

経営陣と人事が知らないとマズい!若手の退職を防ぎ、活躍に導く考え方と具体的方法

本レポートは2020年7月28日におこなわれたウェビナーの記録をレポート化したものです。レポート内の表現は口語になっておりますので、予めご了承ください。

 

【登壇者】
株式会社ジェイック シニアマネージャー 中條賢士郎

 

<目次>

挨拶

株式会社ジェイック主催、新人受け入れセミナーを開催いたします。講師の中條賢士朗です。よろしくお願いいたします。

 

簡単に自己紹介の方をさせていただきます。私は新卒で2010年から2013年まで、エンジニアリング会社で、営業と設計、施工管理をしておりました。新卒で入社した会社で2年10カ月働いた後、1年ほどフリーターをして、海外を周ったりしていました。その後、2015年にジェイックに入社いたしました。

 

少し自慢になりますが、1年目に社長賞を受賞、2年目に横浜支店の支店長に抜擢、3年目にマネージャーに昇格しました。また、チームメンバーも歴代最高記録で新人賞を受賞、2018年にもトップセールス賞と社長賞を受賞。違う女性メンバーも、女性初・外国籍初の個人売上で1億円を突破して、社長賞を受賞しました。

 

現在は、これまでに培ってきた若手の就職支援の中で、またメンバーのマネジメントをしてきた経験を生かして、中小企業の“新人を育てて結果を出し続けられる”リーダーを育てる教育プログラム、リーダーカレッジ事業の責任者をしております。今日は、“若手を受け入れて定着させ活躍させる”ために何が必要か?というテーマで60分お話しさせていただきます。

直属の上司が理由で辞める

早速、本日の内容の方に入っていきます。まずは「未経験若手人材の退職理由」というところからお話させていただきます。

 

これまで採用支援事業に携わってきて分かった“ダントツで多い未経験若手の退職理由”は何かというところをお伝えします。圧倒的な比率で多い退職理由は「人間関係があまりうまくいかなかった」であるということが現実です。

 

人間関係、具体的に誰との人間関係かというと、「直属の上司」です。会社に伝えている退職理由はさておき、本音としては“直属の上司と合わない”ということで退職してしまう若手が非常に多いのです。

 

直属の上司の次は、「若手の5メートル以内にいる方」です。例えば、先輩ですとか、あるいはパートのおばちゃんというのもたまに入ってきます。この直属の上司、そして、若手の周囲5メートル以内にいる人のコミュニケーションが若手の定着を左右する大きな要因です。

若手が定着しない上司の特徴

では、どういう上司だと若手が退職する可能性が高いかというと、「こういった上司あるいはマネージャーだと若手があんまり続かないじゃないのかな」という上司像が4つあります。

 

1つ目が、上司が他人にあまり興味がない。後輩にも興味がない、部下にも興味がないという形です。

 

2つ目が、上司がそもそもの目標達成に興味がない。チームを勝たせるということに対してもあまり興味がない。

 

3つ目は上司が“成長”ということにあまり興味がない。仕事以外に大事なものがあるという形です。

 

そして、4つ目は上司が自社の魅力に語れない。それどころか愚痴や会社の悪口を言っているとかっていう形です。上記のような4つのパターンは、そもそもリーダーにしてはいけないパターンですが、意外と存在してしまっているのも事実です…

 

また、育て方、という点で見ると、退職リスクの高いリーダー、あるいは上司というのは、2パターンあります。

 

1つ目は、「昭和的なマネージャー」です。特徴でいうと、体育会系な気質で上下関係が好き、また、“教える”のではなく、“見ろ・真似ろ・盗め”みたいな、ちょっとこう若手からすると“質問もしにくい”というマネージャーです。

 

「俺の時代はこれだけ大変だった」とか「ソレに比べて今の時代はぬるいよな」とか、「俺の時代は○○だった」といった時代の比較、自分自慢の口癖が結構多い傾向があります。

 

そして、2つ目はトップセールスマネージャーです。意外に思う方もいるかも知れませんが、営業としてトップセールスだったという方は、部下育成が苦手な方は意外に多い傾向にあります。

 

特徴としては、要求基準が高い。そして、上司は「要求基準が高いことにもあまり気づいていない」という形です。

 

自分自身が“出来た”ので、出来ない人の気持ちがあまり分かりません。もちろん努力されてきたわけですが、本人ができてしまうからこそ、「こんな俺でもできた、だからお前でもできる!」というプレッシャーを部下にかけがちです。

 

論外の4タイプは置いておいて、本人はそれなりにマジメなのに、若手がなかなか定着しにくい上司像の典型、昭和的なマネージャー、そして、トップセールスマネージャー、この2つのタイプです。こういった上司ですと、なかなか若手が定着・活躍することが難しいと感じています。

 

ここまで、若手の退職理由となるのは上司である、そして、大きく分けて2タイプの上司、昭和的なマネージャーかトップセールスマネージャーだと、若手が定着、活躍することが難しいというところをお話させていただきました。

未経験若手人材の特徴

では、次に未経験若手人材ってそもそもどういう特徴を持っているのかをお伝えさせていただきます。当社の場合、主に既卒・フリーター層の就職支援を行っておりますが、新卒や第二新卒の方でも共通する部分があるかと思いますので、ぜひ参考にしてください。

 

まず今どきの若手にとっては、「どんな仕事をするのかよりも、誰と一緒に仕事をするのか」がとても重要になっています。“仕事内容”よりも“一緒に働く人”、この影響力がとても大きくなっています。ある意味では、アルバイトと同じ感覚かも知れません。

 

アルバイトが楽しいと言っている学生は、深掘りすると、結局は一緒に働く仲間が楽しい、仕事以外でも一緒に遊んでいるとか、仕事の後に飲みに行くのが楽しいと言います。それと同じ感覚です。

 

べつに若者と仲良くなって、プライベートで一緒に遊ぶ必要はないのですが、それだけ、“上司”や“人間関係”の重要度が増しているということです。

新人の上司が気を付けるべきこと

上司が重要ということを繰り返し述べてきましたが、私自身が上司として新卒や若手、外国籍までを受け入れて育ててきた中で、大切にしてきたある言葉があります。この言葉に出会ってから、私自身も育成やマネジメントに対するバラダイムが変わったなと感じています。その言葉とは何かというと、

 

『人がそうするには、それなりの理由がある』

 

という言葉です。上司として、若手を見るうえで、「彼ら彼女ら出てくる言葉や行動だけを事実として受け止めるのではなく、その言葉や行動の背景を受け止めてあげることがとても大事だ」ということです。

 

例えば、部下に対して「なんで、こんなに自信がないんだ」「なんでこんなにこの子、自己肯定感が低いだろう」「なぜこんなに上司に対してが警戒心が強いんだ」「なぜ平気で嘘をつくんだ」「なぜこんなに素直じゃないんだろう」と悩まれた経験はないでしょうか。

 

私は何度もあります。悩みすぎて、帰りの電車でも悶々として、気づいたら最寄り駅についている、あるいは、休日もその部下のことが頭から離れず、奥さんから『私の話聞いてる!?』と突っ込まれたりしたことが何度もあります。同じように若手の育成を悩まれてる上司の方は多いんじゃないのかなと思います。

若者の自己肯定感が低い理由

先ほどの悩みに対して「若手の自信がない」「新人の自己肯定感が低い」「部下の警戒心が強い」というのは、じつは結果だと思うんです、対人関係は“結果で悩む”と答えがないので、より辛くなります、大事なことは、結果の原因、背景を探ってあげること。それができると、気持ちが楽になる、という経験を私は数多くしました。

 

多くの場合、対人関係における“結果”はその人の反応です。ここで悩む、ここに介入しようとすると、多くの場合、うまくいきません。

 

『人がそうするには、それなりの理由がある』を思い出していただき、相手が持つ“それなりの理由”、つまり背景を、質問と傾聴の繰り返しで把握して受け止めることがとても大事だと思います。

 

例えば、先程の「自己肯定感が…」「警戒心が…」といった結果に対して、どんな原因、どんな背景があったのかを聞いてみると、親子関係や家庭環境であることも多くありました。

 

例えば、親子関係のなかで愛情が満たされていないとか、いじめられた経験があって自分の意見を言えなくなったとか、学歴に自信を持てず劣等感を抱くようになったとか、スポーツで挫折して自信を喪失してしまったとか、あるいは病気や怪我によって被害者意識とか人のせいにしてしまうようになった。
とかですね。

 

5年間で延べ1,800人ほどと面談したと思いますが、対人関係は何かしらの背景・原因があるな、ということが分かりました。

今時の若者との正しい接し方

先ほどお伝えした通り、「結果だけにフォーカスする」となかなか辛くなりました。そうではなく、「相手がそうする、それなりの理由はなんだろう」と、背景を質問と傾聴の繰り返しによって掘ってあげると、意外と原因が出てきます。

 

それを理解して、受け止めてあげることが非常に大事になってくるなと思います。

 

繰り返しになりますが、結果だけにフォーカスすると、お互いに辛い。しかし、背景を理解できると、お互いに楽になります。行動の結果を見て判断するのではなく、行動の背景を理解してあげると、理解された若手は安心感を抱きます。「この上司には相談してみようかな」という気持ちになります。

 

われわれリーダー、あるいは上司も、「こういう理由でこういう行動を起こすんだ」という“それなりの理由”を理解しておくと、やっぱり対応の仕方、言葉づかいとか、そういったものが変わります。

 

そして、相手が“一歩”踏み出しやすくなります。若者の成長は“一歩”の積み重ねです。しかし、結果にフォーカスするととても辛くなる。解が何もない、一歩がなくなる、というのが、私の経験から得た学びです。

心のコップの話

ここで「心のコップ」の話をしたいと思います。マインド面の話です。

 

いま部下のマインドが良い状態なのか、悪い状態なのか。マインドがどういう状態なのかを「心のコップ」で表現します。たとえば、“コップが上を向いていて水で溢れかえった”状態は理想です。

 

コップが上を向いていて、水が溢れかえっている状態はどんなことも受け止められるし、どんなことも学びとして入っていく状態で、自然と笑顔になったり、自然と力が発揮されたりします。

 

しかし、社会に出る前、あるいは社会人になった後、挫折や失敗を経験することによってだんだん、心のコップは“斜め”になっていきます。

 

そして、斜めで止まらず、コップが下を向き始めると中身の水は空っぽになります。そして、下を向いていますので、新しい水;学びや知識を入れようとしても、まったく何も入りません。

 

最後には、“パリンと割れた”状態になってしまいます。人には心のコップがあって、いま、そのコップは上を向いて水で溢れかえっている状態なのか? 斜めなのか? 下を向いてしまうって何も入らない状態なのか? ヒビが入っているのか? 割れてしまっているのか?

 

今自分が関わっているメンバーが、あるいは若手が、どんなコップの状態なのかを理解することは、とても大事です。

若手のマネジメントで大事なこと

心のコップが上を向いていて水が溢れかえった状態であれば、マネジメントは簡単です。なにを伝えても心に刺さって学びになります。どんな指示をしても行動変容してくれます。

 

しかし、コップが下を向いている、あるいはヒビが入っている、あるいは割れた状態だと、大変です。どんなことを言っても、なかなか納得しなかったり、言い訳をしたりします。

 

ここで、無理やり言うことを聞かせる、相手に指摘する、相手を正そうとするのではなく、まずはコップを上に向けることが大事です。

 

コップを上に向けて水で溢れた状態にしないと、なかなか行動変容しない、次のステージに行かないというのが、私が見てきた若手の特徴です。

 

コップにはいろいろな状態があるので、いかにコップを上に向けて、水で溢れかえった状態にできるか、ここがとても大事です。その方法の一つが、傾聴によって相手が持つ“それなりの理由”の背景を知って、受け止めて、相手の安心感を作ることです。

 

それによって、心のコップを徐々に、徐々に戻すという作業がリーダーにとってとても大切な仕事になってくるのかなと感じています。若手にとって、安心感が強まれば強まるほど心のコップは上を向いていきます。

 

「安心感」とはどういうことかと言うと、「このリーダーは私のことを理解してくれているな」と思えている状態、あるいは「自分のことを受け止めてくれている、理解しようとしてくれているな」、そう思える状態が、若手にとっての安心感であり、こうやって若手から思ってもらえる上司であることがとても重要です。

 

何故なら、この安心感が高まれば高まるほど、若手の心のコップは上を向き、水が溢れかえった状態になり、マネジメントは簡単になり、若手は成長し、成果もあがります。

 

従って、若手をマネジメントする上で「安心感を高める」ことはとても大事になってきます。その手段が先程お伝えした質問と傾聴の繰り返しであり、そこで出てきた情報、“それなりの理由”をきちんと受け止めてあげることが、リーダーにとって、とても大事な仕事になってきます。

 

マネジメントの世界で、「何を言うかより誰が言うか」という言葉があります。つまり、正しいことを言っても、誰が言うかによって、相手が動くか動かないかは変わる、ということです。上司の仕事は、何を言うかではなく、誰が言うかにおいて、“相手が動こうと思う誰”に選ばれることです。

 

言い方を変えると、「あの上司がいるから頑張ってみよう」とか、「あの上司が言うならやってみよう」とか、「あの上司みたいになりたい」とか、「あの上司を越えてみたい」とか「あの上司を驚かせてみたい」とか、そういう上司として選ばれることです。それが、上司、あるいはリーダーの仕事だと思っています。

部下の若手に興味・関心を持つ、モチベーションを上げる

初めにお伝えしておくと、部下の若手に興味・関心を持つという話は、無理やり興味、関心を持とうという根性論的な話ではありません。もちろん持てたらいいと思います、ただ、後述しますが、仕組みと仕掛けが大切です。

 

今回、一番言いたいことはこれです。仕組みと仕掛けで動かす、というところがポイントかなと個人的に思っています。無理やり人に、しかも、あまりよく知らない人に興味、関心を持つのは難しいです。だから、仕組みと仕掛けて回す、というのがポイントです。

 

もう1つ。5年間で1,800名の若手と本気で向き合ってきて分かりましたが、若手が定着、活躍する上で一番重要な要素は、彼らのモチベーションです。このモチベーションの話をすると、「知ってるよ」とよく言われます。知っていますよね。でも、大事なのは、「しているか」どうかです。「若手のモチベーションを上げているかどうか」が大事です。

 

モチベーションが大事なことは、みんな知っています。では、モチベーションを上げているか、意図的にあげているか、戦略的にあげているかと訊かれると、言葉に詰まるところかも知れません。しかし、モチベーションが高いか低いかで、若手の定着活躍は変わってきます。

 

と言っても、「モチベーションが高い方を採用しよう」という話ではありません。モチベーションは意図的に戦略的に高めることができます。先ほどの興味・関心と同じで、これがポイントです。

 

なぜモチベーションの高い低いが生じるのか、ある企業では若手のモチベーションがいつも高い、ある企業では若手のモチベーションが低い、なぜ企業によってモチベーションの高い低いが生じるのか、その違い、プロセスを解説します。

若手のモチベーションが高くなる企業の特徴

モチベーションが高くなる企業では、どんなサイクルが起こっているのか。まず若手のモチベーションが高い企業で、なぜ、若手のモチベーションが上がっているのかというと、「先輩や上司のことが好き」「この人たちのためにも頑張りたい」という愛社精神であることが大半です。モチベーションが高い方の共通点として、基本的に愛社精神が強いです。

 

これを更に掘っていきます。では、なぜ愛社精神が高まるのか?愛社精神は放っておいたら自然に上がるというものではないです。愛社精神がなぜ上がるか?それが、次です。

 

先ほどの話と少し重複するように聞こえるかもしれませんが、愛社精神があげるときは「周囲から気にかけてもらえている」という感じる状態があります。

 

「先輩上司から気にかけてもらえている、大切にされている」と感じている状態です。「大切にされているな」と思うと、人は自然と感謝と共に愛社精神が高まってきて、「この会社のために」とか「先輩・上司のためにも頑張らなきゃ」という気持ちになり、モチベーションが高まっていくのです。

 

モチベーションが高いと、人は自分で考えて、自分で行動するようになります。若手が自分で考えて、自分で行動するようになると、先輩や上司はそういう若手を「もっと応援したい」とか、「成長させたい」とか、「サポートしたい」という気持ちになるので、その若手には成果が出やすい環境が自然と整ってきます

 

成果が出ると、本人の中では、成長実感が満たされて、「もっと出世したい」とか、「こんな仕事をやってみたい」となります。これが、若手の定着・活躍に影響してきます。

 

入り口となる、“周囲から気にかけてもらっている」というのがどういう状態かというと、一言でいうと、「安心感のある状態」です。心理的安全性が確保されているという形です。人は、「自分が気にかけてもらえている」とか「大切にされている」と思うと安心感を抱きます。

 

安心感が増すと、会社のことや先輩・上司を好きになる余裕が生まれ、愛社精神が高まり、愛社精神が上がるとモチベーションが高くなる。モチベーションが高くなると、自分で考えて自分で行動する、つまり、主体性が発揮されます。

 

そして、主体性を発揮している若者は、先輩や上司から応援されるので、成果を出しやすく、成長実感を得やすかったりとか、会社の中での居場所や役割が徐々に明確になってきたりする。そして、次なる目標がどんどん出てくる。この好循環のサイクルを作れるかどうかが大事です。

 

言い方を変えると、このサイクルを作れている企業では、若手が定着して活躍しています。

モチベーションが低いサイクル

一方で、モチベーションが低い全然高まってこない若手は、どういうサイクルに入るかというと、もう悪循環です。まずモチベーションが低い背景は、愛社精神が弱い状態です。言い方を変えると、「会社のことがあまり好きじゃない」「上司・先輩があまり好きじゃない」

 

では、なぜ好きじゃないかと言うと、「そもそも周囲から気にかけてもらえていない」「相手にされてない」「関わってもらう頻度が少ない」という状態になっていることが多いです。

 

周囲から気にかけてもらえていないと、大切にされていないと感じます。自分が大切にされていない中で愛社精神が上がることってほぼないので、モチベーションも限りなく低くなります。モチベーションが低いとどうなるかというと、自分で考えて行動したりしない
です。
そういう若手に対して、先輩や上司もあまりサポートに入らないので、成果が出にくくなる。成果が出ないうえに、周囲から気にかけてもらえないと、不安や不信感が増してくる。「ここに居てはいけないんじゃないか」とか、「嫌われてるんじゃないか」、とか、「何で私って大切にされないだろう」とかですね。

 

そして、何をやっていいかわからないと思う感情が生じると、それに伴って不安や不信感も、どんどん大きくなってくる。

 

モチベーションが上がらずに、指示待ちになる。不安や不信でいっぱいですから、指示されたことすらもちゃんとやらない、できなくなる。結局どうなるかというと、居場所がなくなる。そして、退職するというサイクルです。

上司が選ぶか、若手が選ぶか

若手が定着・活躍する企業と、退職する企業様の差は、「若手のモチベーション」がカギを握っていて、モチベーションの背景には、愛社精神の高い・低いがある。愛社精神の高い・低いは、気にかけてられているか、大切にされているかに左右される。

 

そして、モチベーションによって、主体性を発揮するのか、指示待ちになるのかが決まり、その姿勢によって、先輩や上司からサポート体制が変わる。サポート体制の違いの中で、どんどん成長していって、夢や目標を持ち始める若手と、居場所を得られなくて何となく嫌になってやめてしまう若手に分かれる。

 

この2つのサイクルがあるな、というのが、私が学んできたものです。

 

結果的に、若手が定着・活躍している企業というのは、「この上司のために頑張ろう」「どうしたらこの上司みたいになれるだろう」と、若手が上司を選んでいる。

 

一方で、若手が退職している企業というのは、上司は選ばれていないのに、上司が「この子は使える」「この子を使えない」という形で部下を選んでしまっているという違いがあるなと感じています。

 

繰り返しになりますが、若手が定着・活躍する上で、一番大切な要素は「モチベーション」です。では、モチベーションを上げる上で一番重要なことは何かというと「環境」です。「能力」ではありません。

 

モチベーションを個人の能力だけであげるというのは、なかなか難しいなと思っています。やはり、モチベーションは、個人が置かれた環境、配属された環境に左右される部分があります。とくにセルフマネジメント力がまだ弱い若手はそうです。自力でモチベーションをあげ続けることは難しい。

 

配属された環境、誰が上司か、上司がどういう環境を作っているか、そこがとても重要になってきます。

子どもがすくすく育つ家庭環境と若手がすくすく育つ職場環境は同じ

先ほどの話を踏まえて、子供がすくすく育つ家庭環境と若手がすくすく育つ職場環境、これは一致しているなと感じています。ちょっと想像しにくいかもしれませんが、今の御社の職場環境を、仮に家庭環境だとして、そこに自分の子供を置いてみる。仮に置いたとして、その子供がすくすく育つイメージを持つことができますか?

 

頭の中で、これをシミュレーションすることはすごく大事だと思っていて、「子供がすくすく育つ家庭環境」と「若手がすくすく職場環境」で求められていることは一緒で、やっぱり「安心感」ということ。

 

根っこで安心感があるからこそ、親の言うことを聞くし、自分で挑戦してみるし、叱られていても親のところに返ってくる。職場も同じだと思います。

定着率が高い企業の取り組み

若手を育てるうえでモチベーションと安心感の大切さ、ということを伝えてきましたが、では、定着・活躍している会社はどんな取り組みをしているのか。3つのポイントを事例でお伝えします。

 

先ほど、モチベーションが高い若手の成長サイクルを説明しました。背景に、まず安心感、心理的安全性が確保されている。だから、若手に気持ちの余裕が生まれて、「この会社のために頑張りたい「この先輩」上司のために頑張りたい」という気持ちが作られている。

 

だから、モチベーションが高い。モチベーションが高いと自然と主体性が発揮される。そうすると、周りの先輩・上司も可愛がりたくなるので、成果が出でやすい。成果が出てくれば、成長実感も持ちやすく、居場所や役割、会社での目標が徐々に明確になってくる。

 

この成長サイクルを作れている企業は、具体的にどんな方法、どんな手段を使ってこのサイクルを作ることができているのか、具体的な事例をお伝えさせていただきます。

 

まず安心感、心理的安全性を確保する上で、やっぱり一番大事な施策は何かというと、「接触頻度」です。当たり前の話ですが、接種頻度をマネジメントできているかは、とても大事です。顔をあわせる度に、小言を言う、叱る、否定するといった接触は論外ですが、通常であれば、接触頻度が多ければ多いほど、相手の安心感は上がってきます。

 

「職場で挨拶が大事だ!」というのも、自然に接触頻度を増やす好機だからです。一方で、接触頻度が少ない、あるいは放置気味になると、若手、とくに新人のうちは、どんどん不安や不信が増していきます。

 

従って、リーダーや上司は接触頻度をマネジメントすることがすごく大事です。メンバー全員の接触頻度を管理することは難しいかも知れません。ただ、入社してきた新人、育てたい若手、ちょっと気になる相手、数人であれば、管理できるでしょう。

 

1日1回以上は、目先の業務指示以外でコミュニケーションを取る、相手に質問をしてみる、そんな形で、接触頻度をキープしましょう。

 

一番大事な接触頻度、というところをお伝えしたうえで、ここからは「新人」の定着・活躍というところで、入社初日からの接触頻度を作ったり、歓迎ムードを伝えたりして、若手の“安心感”をつくるための仕掛けや仕組みをいくつか紹介します。

入社初日の重要性

最初は入社した初日の演出です。初日、歓迎ムードを凄く出して「あなたのことを待っていましたよ」と伝える、「拍手で迎える」という企業がありますが、最高の状態で初日を迎えられますね。

 

また、意外と大事なのが、初日(なんなら入社1週間ぐらい)は、ランチを誰と行くかを決めておくことです。逆に悲惨なのは、「初日のランチから独り」とか、「一か月二か月ずっと一人でした」という状態です。

 

ランチの時というのは、職場にいる、仕事している中で、ふと「余裕ができる」時間です。その時間が、職場の人と喋ってお互いのことを知りあう時間になるか、一人で「居場所がないな…」と感じる時間になるか、その積み重ねは大差を生みます。

組織図を有効活用する

次のポイントは、入社ガイダンスで「組織図をうまく使う」ということです。

 

組織図を見せる上で、「こんなに人がいるんだよ」みたいな話は、あんまり意味がないです。大事なことは、「あなたにはこういうことを期待して内定を出したよ」、そして、「3年後はこういうことができるようになって欲しい」、あるいは、「こういうポジションに居てほしい」、「5年後にはこうなってほしい」、「10年後にはこうなれる」という形で、組織図を使いながら、採用理由や期待事項、未来のビジョンを伝えることです。

 

これが出来ている会社というのは、若手がモチベーション高く働けていることが多いです。

ブラザー・シスター制度の導入

次に、ブラザー制度、シスター制度の導入という形で、これはおススメです。入社して、いきなり上司や直属の先輩、リーダーに相談するというのは、若手にとっては、けっこうハードルが高いところがあります。

 

では、ブラザー・シスターというのは何かと言うと、「他部署のお兄ちゃんやお姉ちゃん」です。ジェイックの場合は、入社して6か月間が任期。月で3,000円ぐらいの手当てを出して、月1回はランチか食事に行くというミッションを与えます。

 

ポイントは、直属のOJT指導者や同じ部署ではなく、他部署の年齢の近いお兄ちゃんやお姉ちゃんを付けることです。

 

何か悩みがあったりとか、些細な疑問とか、リーダーや直属の先輩には聞きにくかったりすること、これをプラザやシスターに聞ける状態をつくることで、スッキリした状態で、仕事に取り組める。何か具体的に教えることではなく、サポーターとして、とても大事な役割で、ジェイックでも、とても機能している制度の一つだと感じます。

 

なお、“心のコップ”が下を向いていたり、ひびが入っていたりするお兄ちゃん、お姉ちゃんをメンターに付けると、気づいたら新人も一緒に退職していく可能性があるので、誰をお兄ちゃん姉ちゃんにするかはとても大事です。分かりやすく言うと、メンターにしていいのは、「それなりの結果を出していて、かつコップが上を向いて、水が溢れかえっている社員」です。

 

こういう社員をメンターにすると、新人のコップも似た状態になっていきます。誰を任命するかっていうのがとても大事なので、気をつけていただきたいなと思います。

歓迎会で重要なのは中身

どの企業でも新人が入社した時の歓迎会はかなりやっています。私たちも採用支援をする側として側としては、歓迎会の開催自体はとても安心できるのですが、中身に若干問題がある場合もあるなと感じます。何かというと、若手、入社した新人が入れない話題で盛り上げっているケースです。

 

さらに、内容が職場の人間関係とか、愚痴な場合は、「歓迎会」ではなく、単なる職場の飲み会ですね。

私がいいなと思っている企業では、入社したに新人にいろいろと話を聞いて、チーム対抗戦のクイズ形式にして、「その子を知る時間」にしています。入社した子が主役の時間を作れている歓迎会は、ものすごく素晴らしい時間になっていて、その後もすくすく育っている印象があります。

 

ただ、儀礼的に「歓迎会」をやるのではなく、入社した子が主役で、その子を知る時間を作る。いまでいうと、zoomなどでのオンライン歓迎会も増えていますが、クイズやブレイクアウトセッションを使って、同じように「歓迎する時間」を作っている企業はさすがですね。

 

歓迎会に限らず、入社した新人に名刺を渡す等も同じですね。できた名刺を事務的に渡すのではなく、ちょっと部署のメンバー全員をあつめて、こう野球やサッカー等で円陣を組んで監督がひとこと言うみたいなシチュエーションが大事ですね。

 

「これでお前も○○社の看板を背負って仕事するんだな」みたいな台詞が必要かどうかは分かりませんが、何かこう、“みんなの前で渡してあげる”というシチュエーションはとても大事だなと思っています。

出すだけの日報に意味はない

次に、日報や週報です。日報や週報も、たくさんの企業が実施しており、とくに「入社一年間は必ず出す」等としている企業も多いですね。

 

ここでも大事なことは、日報を出させ続けて、何の返信もしないとか、何のリアクションもないと、若手は「これ、誰が見てるんだろう…」「何のためにしているんだろう」となって、優先順位が必ず下がります。そうすると、ただ形だけ出すことになり、まったく意味がないものになってしまいます。

 

理想は「良い学びをしてるね」とか、「ここがとても印象的だったよ」という形で返信をしてあげること。

 

“見てくれている”ことが伝わると、「もっとちゃんと書かなきゃ」とか、「もっとしっかり学びを書かなきゃ」という思いが出てきます。

だからこそ日報や週報は、ただ出させるのではなく、リアクションする、“見ている”というシグナルをだせるかどうかがとても大事です。

 

やはり見られていると、書く内容がより丁寧になります。そして、一日の学びや気づきを丁寧に書けば書くほど、自分の理解も深まり、やっぱり成長が早くなります。

 

ただ出させるだけではなく、内容に対して「良かったよ」とか、「ここの部分をもう少し教えて」とか、リアクションを取れるかどうかで、成長スピードが変わります。

初成約時の祝い方

入社後でいうと、とくに営業職の場合、「初成約」のときも大事です。初成約というのは、たいていの場合、不安の中で頑張って、でも、先輩・上司の力を借りて、同行してもらって、商談も先輩や上司が大半は喋っているようなものです。

 

そうすると、「自分の成約ではあるけど、私ひとりでやったわけではなくて、先輩・上司の力を借りたから、自分でやったとは言えない…」みたいな遠慮の気持ちがあります。

 

そこを、全面的に「お前が頑張った」から、「お前、すごいよ」という形で認めてあげる。ジェイックでは、新人の初成約の時、上司や指導担当が全社員にメールで初成約の報告をする文化があります。

 

そうすると、やっぱり、新人もすごく嬉しい、「ようやく会社の一員になれた」とか、「この会社でもっと頑張りたい」みたいな気持ちになる傾向がとても強いです。

 

だから、こういうのを普段からおこなっている企業というのは、若手がすごく定着していて、かつ活躍して幹部候補になっているな、という印象を受けています。

愛社精神を高める方法

次のポイント、「愛社精神を高める」の中身にも入っていきます。まず、「勉強会」は、最初のうちは定期的に実施した方がいいと思います。

 

勉強会をやっていない企業は、先輩や上司に同行してもらう中で学んでいく、と実践型で学ばせている企業が多いです。もちろん、これはこれでいいのですが、リスクもあります。

 

なぜかと言うと、先輩によって、やっていることとか、大事にしていることが意外と違ったりするので、情報の整理が非常に難しい。基礎や体系を身に付けた上で、いろいろな先輩の同行にいくと、「この先輩はこれを大事にしているんだ」「この人が言っているのは、ここの部分か」といった形で繋がってくる部分があります。

 

しかし、基礎や体系がない状態、土台ができていない中で、あちこちの先輩に同行しても、あまり情報が繋がってこない、形になってこないことがあるので、まずはしっかり土台の部分をつくるのが勉強会です。

 

たとえば営業でいえば、商品知識や基礎をしっかりとインプットして土台を作った上で、いろいろ先輩に同行させる。そうすると、「営業での伝え方はこうなんだ」「ヒアリングはこういう訊き方をするんだ」と、だんだん形になって繋がってくる。

 

点と点が繋がって、線になっていく。ただ、この基礎となる勉強会を飛ばして、いきなり先輩の同行だけをさせると、うまくいかない。最初は勉強会というのを定期的にやるべきだなと感じます。

良い顧客の声を聞かせる

次に、顧客の声です。自社で取引しているお客さまの声、当然、良い声も悪い声もあると思いますが、最初のうちは徹底的に「良い声」を共有することが大事です。

 

「うちの会社のあの商品によって、これだけ喜んでくれているお客様がいるんだ」とか、「自社の存在価値」とか、そういったものを学ぶうえでは、顧客の声は非常に大切です。

 

それによって、若手にとって、商品・サービスへの自信になったり、自己肯定感が上がったり、“私もこういう声をもらえるようになりたい”というモチベーションになったりします。

 

顧客の声はできるだけ多く集めて、ポジティブな声を若手に聞かせるというのはとても大切だと思います。

考え方の教育

そして、考え方の教育になります。考え方とは「自社の存在・介在価値」です。“自社は何のために存在しているのか”、“社会の中でどんな役割を果たしているのか”、“自社を必要としているお客さんはどんな人たちなのか”とか、“世の中でどんな貢献を果たしているのか”といった社会の中での役割や貢献です。

 

自社の存在価値、介在価値が何なのか?ということ、その考えをきちんと教育する必要があります。

考え方の教育がしっかりしていると、軸がしっかりします。

 

そうすると、仕事でこう苦しくなった時とか、業績が不安定になった時、しっかり軸に沿って、“ここで自分ができることは何だろう”とか、“どんな能力を補えば、この状況から抜け出せるか”とか、“顧客のために何ができるだろう”とか、心を強く考えられます。

 

どうしたら心も強くできるのか、ポイントは、考え方の教育をしっかりしているかどうかです。自社が、自分の存在価値、介在価値が何なのかをしっかり把握していれば、なかなかぶれなくなります。

 

この軸がないと、ちょっと苦しくなったら逃げてしまう、楽な方に流れてしまう傾向があります。だからこそ、最初の段階で「考え方」という部分の教育をしっかりおこなう必要があると感じます。

「報連相がされない」のは上司の責任

若手が仕事の中で、一番最初に壁にぶつかるのは、報連相、報告・連絡・相談だと思っています。まだ、上司や先輩と関係性がない。その中で、「こんなことを報告する必要があるのかな」とか、「なにか言われたら嫌だな」とか、「関わるの怖いな」という形で報連相を避けることも多い。

これはリーダーや上司の責任だと思います。

 

「なぜ報告・連絡・相談をおこなう必要があるのか」

「報告・連絡・相談がどれだけ大事なのか」という意味、あるいは「どういう情報だったらすぐにしてほしい」、「こういうことだったら、まだいい」というルールを明確化することによって、若手を道に迷わせない。そういう状態をリーダーが作れるかどうかが、とても大事になってきます。

 

基本的に初めのうちはどんな些細なことも報連相させる。報連相させる理由づけとして、「報連相は自分を守るためにおこなうもの」と先に伝えると効果的です。

 

「先輩やリーダーは、若手助けることができる。でも、事後に報告されたら助けることはできない。自分を守るために、先輩や上司が助けられる状態を確保するために、すぐに報連相するんだよ」という伝え方をする。

担当業務以外を任せる時の対応

最近の若手は、プライベートを自由にしたい。だからこそ、本来の担当業務じゃないことを任せるときには、「何のためにそれをおこなうのか」という目的を伝える、かつ優先順位を伝える、そして、求める完成度を伝えることがとても大事です。

 

若手は自信がないので「100%にしなきゃ持っていっちゃいけない」となりがちなのですが、若手のレベルで100%になることは永遠にない。そして、工数を使って、ときには不満をため込む。もう「完成度は一度50%でいいよ、60%でいいよ」という部分をちゃんと伝えてあげる。

 

また納期を的確に伝える、ここを伝えることによって、迷わせない。すっきりした状態で仕事をさせるということもリーダーの役割だなと思っています。

 

入社した新人に雑用的なものをいろいろと任せることは多いと思います。ただ、本来の担当職務以外の仕事を任せる、ここで意外とトラブルが起こったりします。

 

担当業務以外を任せるときは、報連相のルールを明確に指示することも大事。とくに最初の段階では、お互いの信頼関係を築く上で、とても大切だなと思っています。

部下のレビュー

若手が定着、活躍している企業は、メンバーに対する対応がマメで、定期的にレビュー、いわゆる1on1をする。これは最初の頃、とても大事になってくると思います。

 

彼らの話を傾聴して、ちゃんと質問する。最悪なレビューは、上司が話す。上司が話せば話すほど、若手の心が離れていく、これを繰り返しているケース。

 

2,3回繰り返すと、「この人に話しても無駄なんだな」と若手は諦めてしまいます。レビューは基本的に部下の話を聞き、質問し、部下に答えさせる時間であって、上司は我慢して、あまり話さないようにすることが大事。そして、若手が頑張ってきたこと、できるようになったことを承認する。

 

また、業務上で少し距離があり、細かく把握できていない場合には、レビューの前に周りから情報を集めて、頑張ってきたこと、できるようになったことを承認できるようにしておく。これもポイントです。

 

また、部下が話してくれたことに関しては、感謝を伝える。極端には一日一回は「ありがとう」を伝えるぐらいでもいいかなと思います。大事なことは、“上司は味方であり、伴走者である”という立ち位置を明確に若手に伝えられるかどうかです。

 

どういうことかと言うと、普通の若手は、「上司あるいはリーダーは、自分の味方、成長の伴走者である」という認識は最初ないです。どういう捉え方しているかというと、「評価者」です。評価する人、怖い人、ダメだししてくる人。若手に評価者だと思われている限り、あまり若手の成長は加速しないです。

 

「君がこうなりたい、君がなし得たいものを実現するためにサポートさせてくれ」みたいな立ち位置であるという認識を持たせることがとても大事です。上司に対して心のガードが高いかどうかということですね。警戒して、ガードが高ければ高いほど、やっぱり若手の成長が遅れていくと感じます。

価値観や送りたい人生を把握する

もう一つ、若手の部下が持っている価値観や送りたい人生を把握すると、質問や傾聴がしやすくなる。そして、相手の価値観や送りたい人生を理解した上で、会社・仕事との合致点を見出してあげる。

 

「君はそんなことを大事にしてるのね」「将来的にそういうキャリアを描いているんだね」「うちの会社でこういう部分は実現できるよ」「会社の目標と君の価値観、あるいは送りたい人生って、ここが一致してるね」ということを伝えてあげる。

 

自分の人生と仕事、ここが合致してくると、若手はいい動きをします。とくに自分の望む人生に対する道筋や叶える方法を明示してあげると、「この人は味方でいてくれる」とか、「仲間なんだな」っていう感情が芽生えてくるので、心のガードを突破する上ではとても大切です。

 

合致点を見出してあげたりとか、君の送りたい人生を一緒に走っていってあげたりというスタンスを取れるかどうかはとても大事です。上司が“評価者”という認識になっている限り、なかなかwin-winな関係をつくることは難しいなと思います。

 

認識を変えるためには、若手の話を聴くこと。若手が定着・活躍している企業様は、必ず若手の話を傾聴しています。

若手の実績は上司次第

最後は問いかけになりますが、

御社の中で若手のモチベーションを気にかけているリーダーはいますか?

モチベーションが重要だと、リーダーや上司が認識できていますか?

御社の環境は、若手がモチベーション高い状態で働ける環境ですか?

若手のモチベーションが高くなる仕組みを作っていますか?

若手に安心感を作れていますか?

愛社精神を意図的に高められていますか?

期待を伝えていますか?

若手に成長実感を持たせられていますか?

そういう環境であることが本人は認識していますか?

あるいは若手が放置気味になっていませんか?

 

少しまとめに入っていきます。断言しますが、若手の実績は上司次第です。

若手を定着、活躍させる上でのキーマンは上司です。上司の存在が欠かせません。リーダーの存在が欠かせません。

 

若手にとって安心感を持てる上司なのか。部下から選ばれた上司なのか、若手のモチベーションを意図的に高められる、仕組みで高められる上司なのか、ここが大切なポイントです。

 

では、上司にはどんな力が必要になってくるか、どういう能力が求められているか。それは、若手と向き合い、質問と傾聴する力、若手をきちんと受け止めて、理解してあげる力です。結果には必ず原因があり、理由があります。「人がそうするには、それなりの理由がある」のです。

 

背景に必ず何かしらがあります。背景を理解しにいった上で、アプローチを変えられるかどうかがとても大事になってきます。また、もう一つ必要な力は、若手を承認し、安心感を醸成できる力、これには、一時停止して感情的にならない力が必要です。

 

冷静に、常に最善の伝えられる言葉を選ぶ、そのために自分を一時停止させることがとても大事です。

 

前提として、リーダー・上司は自責、自分の責任で考える、自分事として捉える。他人のせいにしない。そうしてチームのビジョンを示す力、会社の目標と若手を結びつける力、あとは、若手を理解した上でその目標に向かって一緒に走るっていう力。

 

リーダーは評価者ではなく、伴走者、あなたの実現した夢や目標をかなえるためにサポートするために存在しているという立ち位置を確保できるかどうか、結果として安心感を確保できるかどうか、これによってwin-win関係を築けるかどうか?そういう力がとても必要になってきます。

 

時間とコストをかけて採用した新卒や若手を配属する先の上司、いまいる若手社員の上司は、必要な力をどこまで持っていますか。若手の活躍は、上司の成長から始まります。

 

基本的に組織の発展においては、まず上司が成長することがとても大事だと思っています、ドラッカーも、「リーダーと普通の人たちの距離は一定である」と、リーダーが成長しなければ、下は成長しない、と言っています。上司が成長することによって、リーダーが成長することによって、若手は定着して活躍できます。

リーダーカレッジの紹介

繰り返しになりますが、まず初めに上司が成長する、これが組織の発展において、とても大事だなと思っています。いま私が担当しているリーダーカレッジ事業は、上司の成長に特化した研修を提供しています。少しだけご紹介させてください。

 

リーダーカレッジはリーダー研修、マネジャー研修で、3つのコンテンツから成り立ちます。これは皆さんの会社でリーダー、マネージャー研修を考えるうえでも参考になるんじゃないかと思います。

 

まず1つ目は、リーダーとしての人格、人間性や物事の考え方を磨く研修。リーダーカレッジでは、「7つの習慣®」です。ご存じの通り、世界3000万部を超える大ベストセラーで、成長と成功の原理原則が書かれています。

 

人格や人間性は目に見えない部分、人を1本の木に例えるなら「根っこ」です。根っこが強くて、地中深くまで根差している木はそう簡単にやすやすとは折れません。台風が来ようが、大風が吹こうが、揺るぎなく、しっかりと同じ場所でスタンスを取ります。これが周囲からの信頼に繋がります。

 

また、「根っこ」がしっかりしているからこそ、しっかりを地中から水分や養分を地上へと送り、葉を茂らせ、実をつけます。この「実」こそが、成果です。

 

大切な根っこの部分、これは人間でいう人格、物事の考え方や人間性の部分です。ここを磨くことが、まず初めにとても大事です。

 

次にリーダー、マネージャーが磨くべきことは実行力です。リーダー、マネージャーの仕事は組織の成果をあげることです。つまり、目標達成です。ここは目に見える部分ですね。

 

目標達成というのはマインドとスキルです。目標を自分ごととして取り組むマインド、達成に向けた施策の思考力、タスクブレイク、目標達成に向けた習慣、自分自身やチームを良い状態にコンディションするスキルなどが必要です。リーダーカレッジでは、ユニクロや野村證券、キリンビール等でも取り入れられている目標達成の技術「原田メソッド」で、目標達成力を身に付けます。

 

最後に、コミュニケーション力です。リーダー、マネージャーの仕事は他人を動かして組織の成果をあげることです。同時に、メンバーを育成することです。

 

ここに向けたコミュニケーションが必要です。とくに大事なのは、「褒める力と叱る力」、また「質問する力と聴く力」です。言い古された話ですが、「怒る」と「叱る」は違います。

 

成果や成長に向けて、ちゃんと叱っていますか?という話です。また、同時に褒めていますか、「承認」とか「感謝」とか「プロセスを褒める」とか、しっかりとしていますか、という話です。また、これまで何度もお伝えしましたが、「人がそうするには、それなりの理由がある」、その背景を理解することが深い信頼関係に繋がります。

 

それには、質問すること、聴くことが必要です。また、モチベーションをあげるためには、コーチング的な技術が必要です。これも質問と傾聴です。

 

人間性や人格を高める、成果を出すための目標達成スキルを磨く、周囲を動かしメンバーを育てるコミュニケーション力を身に付ける、リーダーやマネージャーの育成には、この3つが必要です。リーダーカレッジは、1年かけて、この3つを身に付けるプログラムです。

 

リーダーカレッジに限らず、リーダーやマネージャー研修をするときには、この3つのコンテンツを意識してみてください。

 

また、リーダーやマネージャー研修で何より大事なのは実践です。「知っている」ことは意味があります、「している」ことが大事です。している、そして、成果をあげていることが大事です。知ったうえで、実践する。それによって、仕事での体験を通じて、学ぶんです。

 

リーダーカレッジはだから1年間のプログラムです。1か月に1回学ぶ、学んだら実践する、実践したら次の回で振り返って、知識を知恵にする。このサイクルを動かすタイムスペースラーニングがリーダーカレッジのポイントです。興味があれば、ぜひ詳細をお問い合わせください。

心のコップが上を向いている求職者を見抜くポイント

最後に、採用戦略の部分をお話ししたいと思います。「どういう人を採るべきか」という部分なんですが、基本的にマインド重視でいくべきだと思っています。

 

心のコップが上を向いていて、水が溢れかえっている人ですね。こういう人を採ると、入社後に適切な環境があれば、ぐんぐん成長します。逆に、多少能力があってもコップが下を向いている人、何ならひびが入っている人、こういう人を採ると入社後の育成は大変です。

かなり力量がある上司ではないと、育てるのが大変です。

 

では、心のコップが上を向いていて、水が溢れ返っている方って、どういう特徴があるのか、どうやって面接で見抜くかです。大きくは4つの特徴があります。

 

1つ目は、「笑顔」です。コップが上を向いている人は、自然に笑顔が出てきます。逆にいうと、作り笑顔、口は笑っているけど、目は笑っていない、こんな人はちょっと危険です。

 

2つ目は、「リアクション」です。相手が言っている時にうなずくとか、しっかり聞いてくれているなというリアクション。ここはマインドとこう関係しています。リアクション力が高ければ高いほど、マインドはいい状態なんじゃないかなと思います。

 

3つ目は、「フレッシュさ」です。これは表現しにくいのですが(笑、見た目というよりも心のフレッシュさ。「なんか君といると元気をもらえるな」とか、「すごくいい雰囲気になる」とか、そういうフレッシュさは心の状態が現れます。

 

4つ目は、「素直さ」です。例えば、こちらからフィードバックなどをしたときに、「素直にちゃんと聞き入れているな」とか、「受け止めているな」とか、「入社した後も、素直にこう吸収して仕事してくれそうだな」という素直さです。

 

心のコップが上を向いていて、水が溢れかえっている状態というのは、自然と笑顔があったりとか、やたらとリアクションしてくれたりとか、話し手としても、フレッシュさを感じたりとか、伸びそうな素直さを感じたりとかします。口から出てくる言葉も、やっぱりネガティブな言葉よりもポジティブな言葉が多いです。

 

明るい話題が多いとか、楽しくなるような、「こう一緒に飲みに行っても楽しそうだな」と思うような雰囲気。ポジティブな内容が多いなということです。

初期教育で重要なこと

では、採用した若手をどういうふうに教育していったらいいか、初期教育で大切なことは何かというと「マインド」です。「一生懸命さ」や「感謝」、感謝は両親、家族に対してはもちろん、やっぱり会社に対して、上司に対して、先輩に対して、顧客に対して。すべてにおいて感謝の気持ちを、すべてにおいて思いやりの気持ちを。

 

人を不快にさせない最低限のビジネスマナーだとかも、やっぱりマインドから来るものかなと思います。

 

初期教育において「マインド」はとても大事です。なぜかと言うと、マインドがいいというのは、言い方を変えると、心のコップが上を向いてる状態です。

 

マインドが良ければ、後から、スキルはいくらでも付けられます。知識やスキルは、後から幾らでも付いてくるので、マインドが良い状態させ作れれば、なんとかなります。

 

そして、マインドをよくできて、かつ、そこからスキルを身につけたら、持続的な成長ができます。

 

一方で、マインドが悪い、言い方を変えると、心のコップが下を向いている状態だと、いくらスキルをつけても、「なんか性格が悪そうだな」とか、「中身がないんだよな」とか、「なにか小手先の言葉だけで、思いがないんだよな」とか、「一緒に仕事して、また仕事したいと思わないんだな」とか、相手が思ってしまう可能性が高いです。

 

繰り返しますが、なぜ初期教育でマインドが大事なのかというと、マインドが良ければ、コップが上を向いた状態にすることが出来れば、何でも入る、後からスキルは幾らでもついてきます
その結果、持続的な成長ができます。

 

一方で、マインドの教育しない、マインドを高めていない、コップが下を向いた状態で、スキルだけを身に付けさせても、やっぱり対人関係において、お客さんから可愛がられない、チャンスに巡り合えなくて、短期的な成長で終わってしまうというのが結論です。

仕事の基礎の基礎サービス

最後に少しだけ宣伝をすると、ジェイックは新入社員や若手に対して、こういうマインド、人間性の教育をするプロです。

 

若手向けに自分の人生といまの仕事をちゃんと紐づけて主体性を引き出す研修、目標に対する意味付けをしたうえで達成力・やり切る力をレベルアップさせる研修、強みを活かして成果をあげることを学ぶ研修、などを提供しています。

 

また、初期研修として一番大事な新人研修。学生から社会人へのマインドセットをして、心のコップを上に向ける「仕事の基礎の基礎」という研修、それに加えてプロフェッショナルとしての心構えをセットする「新入社員研修PRO」という研修を対面・オンラインで提供しています。

 

多くの社員教育会社は、新人や若手研修というのは、1年のうちにわずかな期間、3月の終わりから4月の中旬までの1か月ぐらいだけ集中的にバッとやって、残りの期間はあまりやっていません。

 

しかし、ジェイックは既卒や中退者向けの就職支援講座を全国で運営しており、それこそ毎日のように「心のコップを上に向ける」「ビジネスベーシックを身に付ける」研修をやっています。

 

例えば、オンラインでの若手研修でも、4月から7月までに延べ500日を超える研修をやっています。4か月で500日、1ヵ月で124日、毎日4か所で新人・若手研修をやり続けているようなイメージです。

 

そこで蓄積してきたノウハウは膨大ですので、新人や若手の研修でお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

 

最後までセミナーにご参加いただき、ありがとうございます。「人がそうするには、それなりの理由がある」を忘れずに、若手を理解して、モチベーションを高め、定着・活躍させる。

 

それをできる仕組みと仕掛け、そして、上司を育てて、いい組織をつくってください。今日の話が何か参考になれば幸いです。

ありがとうございました。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
・ニューノーマルで迎える21卒に備える! 明暗分かれた20卒育成の成功/失敗談~
・コロナ禍で就職を決めた21卒の受け入れ&育成ポイント
・ゆとり世代の特徴と育成ポイント
・新人の特徴と育成のポイント 主体性を持った新人を育てる新時代の学ばせ方
・“新人・若手が活躍する組織”は何が違う?社員のエンゲージメントを高める組織づくり
・エンゲージメント革命 社員の“強み”を組織の“強さ”に繋げるポイント
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