若手の退職理由と優秀人材を引き留めるために企業が取り組むべき3つのこと

更新:2024/02/06

作成:2021/06/01

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

若手の退職理由と優秀人材を引き留めるために企業が取り組むべき3つのこと

若手の退職に悩んでいる企業は年々増えつつあります。今までも退職がなかったわけではありませんが、近年若手の考え方や価値観に大きな変化も起きており、変化を捉えられない企業では「突然退職を告げられてしまう」ことが増えて、どうしたら良いか分からないことが増えています。

 

記事では、若手社員が退職する主な理由と、若手の退職防止を考えるうえで知っておくべき価値観、優秀人材を引き留めるために企業が取り組めることの3点を紹介します。

 

<目次>

若手が退職する3つの理由

理由① 理想と現実のギャップ「リアリティショック」

若手が退職する最も大きな理由は、理想と現実のギャップである「リアリティショック」です。

 

特に新型コロナウイルスが感染爆発する前の就職・採用市場は「売り手市場」でした。そのため、採用活動では自社の良いところをアピールして採用活動を展開していました。決して嘘を吐いていたわけではないにしろ、厳しい部分や泥臭い部分などをあまり出さずに採用活動している企業も多かったでしょう。

 

結果として、「就職活動中に思い描いていた入社後のイメージ」と「実際に入社した時の現実」に大きなギャップが生まれ、退職に繋がっていきます。たとえば、入社前は何でも挑戦できる風土があると思っていたのに、入社してみたら「朝鮮の前にまずは1から仕事を覚えなさい」と言われてしまった。若手のエース社員と面談して入社して早々に活躍できると思っていたが、実際には膨大な知識を覚える必要もあるし泥臭い仕事ばかりだった等です。

 

なお、不況下における採用活動であれば「リアリティショック」がなくなるわけではありません。確かに採用活動の中で良い面ばかりをアピールすることは減ります。一方で、自社の業績が厳しい時、受け入れず現場は一種の非常事態モードになっています。通常時よりも厳しい教育やコミュニケーションが行われたり、現場の雰囲気もゆとりがなくなっていたりすることも多々あり、やはり結果として「リアリティショック」が生まれます。

 

理由② 「上司」との人間関係、「上司」の仕事ぶり

退職の理由について、「人は会社を去るのではなく、上司のもとを去るのだ」という言葉があります。つまり、多くの若手は「仕事内容」や「会社環境」への不満よりも「上司との人間関係」への不満が引き金となって退職を決めるのです。

 

また、最近では「上司との人間関係」と併せて「上司の仕事ぶり」が退職を考える理由になることも増えています。若手から見た時、上司は「●年後のロールモデル」です。従って、上司の仕事ぶりを見て、「●年後にこうはなりたくない」と思うと、それが退職を考える引き金になることもがあります。

 

 

理由③ 仕事に対する「価値観」のギャップ

仕事に何を求めるのかは、今どきの若手と40代以上では大きく異なっています。もちろん個人差はありますが、全体的な傾向として、この10年ほどで、新人・若手の仕事に対する価値観は大きく変わっています。特にこの数年では「序列を作るよりもフラットな関係」「仕事中心の生き方を嫌う」「根性や気合よりもスマートに片づけたい」といった新たな価値観が完全に浸透しました。

 

そんな新人や若手の上司が、「昇進や昇格することが正義」「仕事のためにプライベートを我慢するのは当然」「気合と根性で頑張る」といった価値観を持ち、新人や若手にも押し付ける指導をすると、若手から上司への尊敬が失われ、人間関係が壊れるきっかけとなります。

 

今の若手は転職することに抵抗感がありませんし、フリーランスなどの働き方にも不安がありません。従って、会社や上司の価値観についていけない、会社の将来性がないと感じると、昔よりも簡単に退職する(転職する)選択肢を取るようになっています。

 

退職理由に関しては以下の記事でランキング形式で詳しく解説しています。

知っておきたい若手の「常識」

若手の退職防止を考えるうえで、知っておきたい若手の退職や仕事に対する価値観を3つ紹介します。

 

 

新常識① 退職を視野に入れて就職する

HRドクターを運営しているジェイックでは、2003年から新卒採用を続けています。その中で、2019年入社式での出来事です。代表の佐藤が入社した新入社員たちに「ジェイックでずっと働いていこうと考えている人は?」と質問しました。佐藤は場を温めるために多少冗談を含めながら質問したのですが、結果、手を挙げたのは0人でした。

 

今の若手は入社する時点から「この会社で一生働いていこう」とは考えていません。会社が自分の人生を守ってくれる「終身雇用」への期待は全くありませんし、だからこそ、ある意味ではドライに「何かあれば会社を離れよう」と端から考えています。

 

昔と比べると、終身雇用だからこそ我慢する・耐えるといった感覚はなくなっています。従って、毎年ある程度の人数を採用している会社であれば、退職率0%というのは現実的なものではなくなっているように感じます。

 

退職率0%を目指すというのではなく、「ムダな退職」をなくすことが、これからの組織運営を考えるうえでは重要です。「ムダな退職」とは、人間関係やハラスメントによる退職、会社に対する諦めや不満による退職です。「ムダな退職」をなくし、逆に前向きに退職していく層は気持ちよく送り出して退職後も関係性を維持することが大切な時代になっています。

 

 

新常識② 「入社3年は頑張る」は時代遅れ

新人や若手に対して「石の上にも3年!入社3年は頑張ろう!」というメッセージを送る方がいます。若手育成や転職支援に携わるうえで、“3年は頑張る”こと自体は非常に理に適っていると感じます。一方で、今の若手に届くメッセージではなくなっています。

 

前述の通り、今の若手は「将来のために今を我慢する、嫌でも耐える」という価値観はなくなってきています。決してやる気がなかったり、忍耐力がなくなっていたりするわけではありません。ただし、未来の保証がない中で、納得いく理由や根拠がなく、成長実感ややりがいもない状態で、“新人だから我慢しろ”と言われても全く刺さりません。

 

“新人だから”雑用をやらせるような指導は通用しなくなっており、「なぜあなたにこの仕事をやってもらうのか?」「この仕事をすることでどういうメリットがあるのか?」を論理的に、かつ相手の価値観にも合わせて説明することが求められています。

 

 

新常識③ 「就職=結婚」と考える若手はいない

昔は「就職=結婚」とも言われましたが、今の若手に通じる価値観ではありません。過去の「就職=結婚」には、“婚姻届けに判を押して夫婦になったからには、多少のことはお互いに我慢するものだ”といった意味合いも込められています。

 

しかし、1つ目2つ目の新常識でも紹介した通り、今の若手にとって会社との関係はそんなに重いものでもありません。今の時代は離婚することが当たり前になっているように、仕事も転職することが当たり前になっています。

 

そんな価値観の中で、受け入れた会社や上司が「多少のことは我慢するものだ」と押し付けがましい態度を取ると、若手の気持ちやモチベーションはすっと冷めていきます。そして、水面下で気持ちが固まっていき、「もう別れましょう」と退職届を出してくるのが今どきの若手です。

 

優秀な若手を引き留めるために企業が取り組める3つのこと

若手の価値観も踏まえて、「優秀人材を引き留めるためにはどうすれば良いでしょうか。どんなスタンスや考え方が大切か、またムダな退職を減らし、優秀な若手を引き留めるためにはどうすればいいのか、5つのポイントを解説します。

 

 

採用のやり方を見直す

“リアリスティックジョブプレビュー”という採用用語を聞かれたことはあるでしょうか。直訳すると“現実的な仕事情報の事前開示”となります。退職要因としてご紹介した“リアリティショック”が生じないようにするための、施策です。入社前に仕事の厳しい部分や泥臭い部分などをしっかりと伝えることで、入社後のミスマッチを防ぐことを目的に行う施策です。

 

世の中に「完璧な会社」はありません。しかし、働いたことのない新人はある意味で「完璧な会社」という幻想を追って就職活動をしています。そして、入社を決めた時には「完璧な会社に近い」という高い期待を胸に抱いて意思決定します。だからこそ、入社してみたら現実と大きく違ったということが起こるのです。

 

現実的にも新卒の口コミサイト利用率が50%近くなった現在、自社のきれいな部分だけど広告して採用することは限りなく不可能に近づいてきています。どこでどんな厳しさや現実を伝えていくかの設計は必要ですが、先行段階、そして内定・内定承諾段階で順を追って、厳しさや現実もしっかりと応募者に伝えていきましょう。

 

自分たちの“弱み”をさらけ出し、理想に向けてこういう取り組みをしていると話すことは、応募者にとって“誠実さ”として捉えてもらえる部分もあります。「こういう良さもあるが、こういう現実もある。改善の取り組みもしており、我々を選んでもらえるのであれば、さらに一緒に良くしていきたい」というメッセージを発しながら採用活動を行うと、ミスマッチとリアリティショックを防ぐことができ、退職防止に繋がります。

 

初期研修でリアリティショックに対するマインドセットを行う

採用活動をどれだけ改善しても、リアリティショックをゼロにすることはできません。働いたことがない新人であれば、仕事に対する幻想や誤解は必ず生じます。リアリティショックが特に生じやすいのは、「現場配属からの数か月」です。

 

従って、リアリティショックに対する心構えを、リアリティショックが起きる前、初期研修の間にしっかりと伝えることが重要です。リアリティショックが起こってから、対応しようとしても遅いです。若手が「聞いていた話と違う!」と思うと会社への不信感が生じます。そこから、「現実ではギャップがあるものだよ」と伝えても効果は大きく薄れしまいます。必ず初期研修で“生じるギャップに対する心構え”を伝えましょう。

 

 

若手の価値観を理解したうえでマネジメントする

若手の退職を防ぐためには、マネジメントを強化することも大事です。今の若手は、昔とは価値観が大きく異なります。

 

上司が「昇進・昇格したいなら努力だ」「仕事中心に考えるのが当たり前だ。プライベートは我慢しろ」「成果を上げたいなら犠牲が必要だ」といった価値観を押し付けると、若手のエンゲージメントは一気に下がります。(上記のような価値観が悪いわけではありません。ただ、今の若手は会社や上司から価値観を押し付けられることを嫌います)

 

今の若手は「周囲に貢献したい」「みなで楽しく働いて成果を上げたい」「上司は上から指導するより伴走して欲しい」といった価値観が強くなっています。上司が若手の価値観を理解したうえでマネジメントしていく重要性は過去よりも高まっています。

 

フォローアップを仕組化する

「上司のマネジメント力がより重要になっている」と紹介しましたが、実際の組織においては、マネジメント力や人材育成力はバラつくのが当たり前です。従って、組織として、上司のマネジメント力だけに依存せず、仕組みとしてマネジメント力を底上げするような取り組みも大切です。

 

最近では、特に1on1ミーティングやモチベーション調査などの仕組みを取り入れる企業が増えています。1on1ミーティングは、部下がテーマを設定する形で、上司と部下の定期的なコミュニケーション(面談)を取る仕組み、モチベーション調査はメンバーのモチベーションやエンゲージメントを定期的に調査して、落ちている部門やメンバーに対して手を打つための仕掛けです。

 

若手のキャリアプランを描く

成長ややりがいに求める若手に対しては、キャリアプランを一緒に作ることも大事です。今の若手は「会社が一生養ってくれる」とは思っていませんので、自己成長やキャリアに対して以前よりも敏感になっています。また、キャリアに対する方も多様化しており、社内で昇進や昇格することだけが望むキャリアではなくなっています。

 

若手と対話する中でキャリアに対する価値観を把握して、社内でロールモデルになるような人を紹介してあげる、理想的なキャリアを共に描いてあげることが大切です。“理想的なキャリアプラン”は未来に対する希望です。未来に対する希望があるからこそ、若手は努力しようと思うのです。

 

“理想的なキャリアプラン”を描くことは若手の定着促進だけでなく、“このキャリアプランを実現するために、こういう成長が必要、この経験を積む必要がある”と仕事の指導をしやすくなる側面があります。今の若手に対しては、“あなたにとってこの仕事に取り組みメリットや意味”を丁寧に伝えることが大切です。キャリアプランを描くことで、メリットや意味を伝えやすくなる効果があります。

 

おわりに

コストをかけて採用して手間をかけて育成した若手が退職することは、組織にとって大きな損失です。転職が当たり前になった現代においては、退職をゼロにすることは現実的ではなくなっている部分もあります。しかし、採用のやり方やマネジメント等で防げる“ムダな退職”を減らすことは非常に大切です。

 

リアリティショック、上司との人間関係、価値観のギャップといった若手の退職理由と価値観を知ったうえで、採用活動の進め方、ギャップに対するマインドセット、上司のマネジメント力強化、フォローアップの仕組化、キャリアプランの構築などに取り組めば、若手の退職は減らすことができます。本記事が参考になれば幸いです。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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