
中間管理職が持つ「上からの指示」と「現場の実情」の間で板挟みになるというジレンマに課題を抱える組織は多く、中間管理職の教育に関して相談いただくことは多々あります。まずは中間管理職の重要性と育成のポイントを概略で確認しておきます。
「強い中間管理職」が経営の実行力を支える
中間管理職というポジションは、とりわけ労働集約型の事業を行う企業にとっては、事業運営、組織の成長戦略を実行する「要」というべき位置を占めます。業界やチームの規模によりますが、営業や販売系の中間管理職であれば、年間で1億円~10億円規模の売上責任を持つことが多いでしょう。
企業の事業計画、利益計画を達成していくうえで中間管理職のパフォーマンスがもたらす影響は大きなものがあります。
また、店舗や拠点型のビジネスであれば、中間管理職の計画的な教育・定着ができないと新店舗を出せない、既存店長を次のステージにあげられない、既存店舗(拠点)売上が崩れるなど、事業計画そのものが破綻をきたすことも頻繁にあります。
「次のリーダー」に対するOJTを主導する役割
「現場での育成を通じて、次の中間管理職を育てる」のも中間管理職の役割です。従って、中間管理職のレベルが上がっていけば、次の中間管理職がどんどん育つ好循環が生まれます。「強い組織=強い中間管理職」といえるでしょう。
逆に中間管理職の育成がうまくいっていない企業では、中間管理職のレベルが低いことで、次世代が育たない、それどころか後進を潰してしまうということも起こりえます。中間管理職のレベルが低いと、若手や新人に企業方針が伝わらない、キャリアプランを示せないこともありがちです。結果的に離職率の上昇に繋がり、ますます次のリーダー育成が困難になっていくという悪循環にはまっていくこともありえます。
プレイヤーとは異なるスキルが求められる
中間管理職の教育における難しさは冒頭で触れた通り、「名選手、名監督ならず」という点に尽きます。つまり、「自分で成果をあげること」と「他人を動かして(組織の)成果をあげる」ことは異なるスキルなのです。
プレイヤーと管理職で必要なスキルの違いは「カッツ理論」で説明することがイメージしやすいです。カッツ理論は「下位の管理職からミドルマネジメント、経営者層へと上がっていく中で求めるスキルが変わっていく」ことを示した理論ですが、プレイヤーと管理職で必要なスキルの違いを理解するうえでも役に立ちます。
カッツ理論では、「能力(スキル)」を以下の3つに分類し、「上位(経営者層)に上がっていくほど、ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルを求められる割合が大きくなる」と説明しています。
- コンセプチュアルスキル :ビジョンを描いたり、ツボを押さえたりする力
- ヒューマンスキル :人間関係、信頼関係をつくるスキル
- テクニカルスキル :実務をこなす能力
新入社員から管理職、経営層まで、それぞれの階層で必要なテクニカルスキルはあります。ただ、階層が上がっていくにつれて、成果をあげるためには、テクニカルスキルよりもヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルの重要度が上がっていくという理論です。
自分の力で成果をつくる「プレイヤー」と、他人を動かして組織の成果をつくる「管理職」の違いもここにあります。職位があがると、自分が業務を進めるテクニカルスキル以上に、周囲の人と信頼関係を築き動かしていくヒューマンスキルや、ビジョンを示してメンバーを鼓舞するコンセプチュアルスキルが必要になってきます。その転換ポイントが「中間管理職」です。
従って、中間管理職の教育において「ステージ変化の自覚」と「新たなスキルの習得」が非常に重要です。