まずはここから。「共通言語づくり」4つのアプローチ
「共通言語」と聞くと、何か特別な言葉を創り出す必要があるように感じるかもしれませんが、そうではありません。大切なのは、私たちが普段何気なく使っている言葉の解像度を、対話を通じて上げていくことです。そのための具体的なアプローチとして、私は4つの「型」を提案しています。
①似ているイメージを見つける:アナロジーで思考の入り口を作る
最初のアプローチは、アナロジー(類比)、つまり「〇〇のようなもの」という比喩を使って、メンバーが持つイメージを引き出す方法です。これは、対話の入り口として非常に有効です。
たとえば、「あなたにとって、この会社はどのようなイメージですか?」と問いかけてみましょう。ある人は「航海を続ける船のようだ」と答えるかもしれません。共通の目的のために協力し合うイメージです。また別の人は「統率の取れた軍隊のようだ」と答えるかもしれません。階層構造や規律を重んじるイメージでしょう。
このように、同じ「会社」という言葉でも、人によって全く異なるイメージを持っていることに気づくことができます。イメージのズレを自覚することが、共通言語づくりの重要な第一歩となるのです。
②意味が似ている言葉同士の違いを明確にする:「尊重」と「甘やかす」はどう違う?
次に有効なのが、意味の似ている言葉の違いを明確にしていくアプローチです。私たちは無意識に、これらの言葉を曖昧なまま使ってしまいがちです。
たとえば、マネジメントの文脈でよく使われる「部下を尊重すること」と「部下を甘やかすこと」。2つの違いをチームで話し合ってみるとどうでしょうか。
- 尊重すること:相手の自律性を育むことを目的とし、相手の立場や意図を汲みつつも、自分の判断基準から助言を与えること。
- 甘やかすこと:相手の欲求を無条件に満たし、短期的な満足を与えること。
このように言葉の輪郭をはっきりさせることで、「いま自分が行っているサポートは、果たして『尊重』だろうか、それとも単なる『甘やかし』になっているだろうか」と、自分たちの行動を客観的に振り返るための基準が生まれます。
③1つの言葉に含まれている意味の違いを識別する:「新しい」の解釈違い
一つの言葉が違った意味やイメージで使われる言葉にも注意が必要です。たとえば、経営層から「何か新しいことをしよう」という号令が出たとします。「新しい」は、どんな意味合いで使われているでしょうか。
ある人は「世界初の革新的なものを生み出すこと」と捉えるかもしれません。一方で、別の人は「自社では初めての試み」と解釈するかもしれませんし、「他業界で成功している事例を自社に導入すること」と考える人もいるでしょう。
もしこの「新しい」の解釈がバラバラのままプロジェクトが進めば、メンバーの目指す方向は当然ずれてしまいます。「私たちが目指す『新しさ』とは、どのレベルのことか?」を最初に議論し、共有する。この一手間が、チームの力を結集させる上で極めて重要になるのです。
④まだ名前のない現象や感覚に名前をつける:「察してスルー」「炎上予備軍」
最後のアプローチは、組織の中で「なんとなくみんなが感じているけれど、まだ言葉になっていない現象」に名前をつけることです。
たとえば、会議で意図や背景が曖昧な情報に対して、あえて深掘りせずに表面的な理解で終わらせてしまう行為。これに「察してスルー」と名付けてみる。あるいは、近い将来トラブルに発展しそうなリスクを抱えたプロジェクトを「炎上予備軍」と呼んでみる。
このように名前をつけることで、これまで「個人の感覚」だったものが「チームの共通認識」へと変わります。「『察してスルー』せずに、ちゃんと確認しましょう」「あの案件は『炎上予備軍』だから、早めに手を打ちましょう」といったように、課題解決に向けた具体的なコミュニケーションが生まれやすくなるのです。






