女性管理職研修のポイントは?女性特有の悩みや必要なスキルを解説

更新:2023/12/22

作成:2021/07/02

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

女性管理職研修のポイントは?女性特有の悩みや必要なスキルを解説

金融大手のゴールドマンサックスが「欧米における新規株式公開の引受業務では、上場希望企業に最低1名は女性取締役の選任を求める」と発表したように、女性リーダーや管理職の登用は世界的に求められています。

 

日本国内でも女性役員の比率目標などが大手企業などから発表されていますが、一方で、日本は世界的に見ても女性活躍が遅れているという現状があります。

 

記事では、女性管理職に生じやすい悩みを紹介したうえで、女性管理職研修を実施する目的や女性管理職に求められるスキルやマインドセット、効果性の高い女性管理職研修を実施するためのポイントを簡単に紹介します。

<目次>

女性管理職の悩み

疲れている女性社員

日本では、女性管理職の比率が世界的に見ても低く、以下のような女性管理職特有の悩みや課題が発生する傾向があります。

 

 

ロールモデルがいない

日本国内では、まだまだ女性管理職が少ない企業が多いでしょう。特に「女性管理職にとってロールモデルとなる女性管理職」は少ない傾向があります。女性管理職がいるとしても、必ずしも後進女性のロールモデルになるとは限らないところが難しいポイントです。

 

 

「女性だから」という意識の存在

男性管理職の場合、「自分は男性だから……」と思うことはあまりありません。一方で、女性管理職の場合は、まだ比率が少ないなかで「自分は女性だから……」と思ってしまう機会は多い傾向にあります。

 

また、管理職になった女性には、後進へのロールモデルとなりたい意識も働きますし、「これだから女は……」と思われてしまいたくない意識が生まれやすいものです。その結果、育休などの制度が企業にあったとしても、女性管理職になると今まで以上に利用しにくくなる傾向もあります。

 

結婚や出産を諦めたり、ライフイベントを優先しにくいと感じたりする女性も多いのです。このように、女性管理職の場合、プレイヤー層以上にライフイベントの変化が重いものになりがちな傾向もあります。

 

 

メンバーの管理と自らの業務の両立

管理職になると、自分の業務だけでなくメンバーのマネジメントもする必要があり、責任と業務負荷は重くなりがちです。あくまで一般論ですが、女性は責任感が強く、リスクを避ける安全動機も高い傾向があります。

 

したがって、メンバーの管理と業務の両立、ライフイベントと仕事の両立を考えたとき、責任をもってやりたいからこそ管理職になる、また管理職になった後も悩むことが多い傾向があります。

 

女性管理職の研修を実施するときには、多くの方が上記のような悩みを抱えていることも念頭におき、研修内容や構成を考える必要があります。

女性管理職研修の目的

女性管理職研修を行なう目的をあらためて確認しておきましょう。

 

 

仕事に対する価値観の違いを踏まえて効果的な研修を行なう

一般論ですが、男性と女性では、仕事の価値観で以下の違いがあるとされています。

 

  • 男性 :地位や出世につながる「縦のつながり」を重視する
  • 女性 :周りとの「横のつながり」や仕事の中身を重視する

 

米ラドガーズ大学のラドマン教授の研究によると、男性と女性では周囲から見られたときの「望ましい姿」も真逆であるとされています。

 

男性の望ましい姿 :好戦的・積極的など
女性の望ましい姿 :友好的・優しいなど

 

このように、男女の違いに目を向けると、男女同時に研修を行なうよりも、女性のみで女性に合った内容で研修を行なったほうが、効果的だということです。

 

 

社会的に急務とされる女性管理職を育成する

社会的に、女性管理職の育成は急務となっています。

 

監査や税務等のアカウンティングサービスをグローバルに提供している太陽グラントソントンでは、非上場企業を中心とする中堅企業経営者の意識調査結果を公表しています。グラントソントン加盟主要29ヵ国が実施する世界同時調査です。

 

調査結果によると、経営幹部の女性比率は、アジア太平洋地域を除く地域では既に30%を超えていることがわかります。一方で日本は、緩やかに上昇はしているものの、他国から比べると低水準で大きく引き離された15%という状況です。

 

上記のように、日本国内での女性活躍は世界的にも遅れており、改善を求められています。また、冒頭でも紹介したとおり、ゴールドマンサックスは「現時点では欧米に限るものの、女性取締役がいない企業の公開業務は引き受けない」等とも発表しています。

 

また国内でも、女性活躍推進法の成立にともない、各社でも女性管理職比率を上げることが急務になっています。女性活躍推進法では、「女性労働者の採用や昇進などの機会を促進すること」を求めており、社員

 

 

「女性の能力を引き出せる女性管理職」を増やす

これも一般論になりますが、女性には、男性とは異なる以下のような「強み」があります。

 

  • 聞き上手
  • 高い共感力
  • 細やかさ

など

 

しかし、女性の場合、仕事と家庭を両立出来るかの不安から本人が昇進・昇格を望まなかったり、企業側の支援が遅れていることで能力を発揮できていなかったりすることもあります。

 

ソニー生命による「女性活躍に関する意識調査2020

 

また、女性メンバー自身が、自分の強みや高い能力に気付いていないこともあります。したがって、女性管理職研修には、組織内で働く「女性の能力を引き出せる管理職」を増やし、女性のキャリア形成を促進させていく効果もあります。

 

管理職研修の内容と必要性は、以下の記事で紹介しているので参考にしてください。

 

女性管理職に必要なマインドセットやスキル

グッドサインをする女性

女性管理職に求められるスキルをいくつか紹介していきましょう。

 

 

「悩みすぎない」

先述のとおり、管理職になると責任が重くなる一方で、自分一人の努力では仕事や成果をカバーできなくなります。同時に、管理職になる年代は、家庭でも結婚、出産、育児などのライフイベントが進む年代でもあります。また、女性には生理周期などによるパフォーマンスへの影響もあります。

 

一般的な傾向として責任感と安全動機が強い女性が管理職として活躍するうえでは、上記のような問題や状況に「悩みすぎない」、ある種の「割り切り」も大切になります。

 

 

「コミュニケーション力を活かす」

女性は、男性のように縦のつながりにこだわりすぎず、公正でフラットなコミュニケーションで、メンバーの目標や悩みなどを引き出せる強みを持っていることが多いでしょう。

 

また、女性のコミュニケーションスキルは、「メンバーがどうなりたいのか?」の意思や現状の悩みを引き出し、パフォーマンス向上のサポートに役立つ傾向があります。

 

また“縦の関係”を重視する男性が「恐れ多い」と感じがちな経営層とも率直な話ができる傾向があるのも女性管理職の特徴です。

 

 

「女性の視点を活かしたマネジメント」

女性は、上から力強く組織を引っ張る男性とは異なり、「しなやかなマネジメント」が得意です。

 

業界再編や異常気象、新型コロナウイルスなどの影響で市場環境が劇的に変わる今の時代は、チームに次々と起こる課題について、メンバーの理解や共感を得ながら前へと進む「しなやかなマネジメントやリーダーシップ」は求められる要素です。

 

また、女性は観察力が高いという特徴もあります。女性管理職がチームを取り巻く市場環境やメンバー一人ひとりの変化を観察して把握することで、変化を早期に捉えて手を打っていくことも可能になるでしょう。

 

一方で、一般的に管理職の姿勢や考え方は男性的なイメージが強い傾向もあります。企業が自社のマネジメントに女性の視点を取り入れるうえでは、「管理職像」の再定義をする必要もあるかも知れません。女性管理職研修を通じて、女性たち自身が「管理職のモデル」を再定義して捉え直すような取り組みも有効でしょう。

 

 

女性が働きやすい環境を整えるスキル

日本では、少子化の影響で、多くの企業が慢性的な人手不足に直面しています。人手不足の問題では、女性が働きやすい環境を整え、妊娠や出産による離職者を減らすことも有効な解決策の一つです。

 

女性管理職には、女性のライフステージとキャリアの悩みを相談できるメンター的な役割を担える利点もあります。同性のメンバーや後輩の話に耳を傾けながら、ワーキングマザーなどの現状に合った仕組みや環境整備ができるのは、女性管理職ならではの役割です。

女性管理職研修の内容や実施のポイント

女性管理職研修を行なうときには、以下の点に注意をしながら準備や実施をしていくと良いでしょう。

 

 

女性が活躍できる環境を整える

先述のデータのとおり、多くの女性は、キャリアアップや管理職になることにたくさんの不安を抱え、消極的な傾向があります。

 

したがって、活躍する女性管理職を増やしたい場合、研修だけでなく女性管理職が活躍できる環境自体を整える必要があります。女性の場合、特に仕事と家庭の両立が大事なポイントにです。

 

研修が効果を上げる前提として「自社の管理職を女性にとっても魅力的なポジションにしていく」取り組みが大切です。

 

 

女性管理職に必要なスキルを強化する

社内環境が整ったら、女性の潜在能力を引き出しながら女性管理職に必要なスキルを強化していきましょう。女性向けの研修では、自分の強みを活かした自分らしい管理職(リーダー)像を見つけてもらうことが効果的です。

 

人材の多様化により、求められるリーダー像は変化しています。ですので、自身の特徴や強みを把握してもらい、リーダーとしての自信をつけてもらうアプローチがおススメです。

 

 

女性講師の外部研修を活用する

社内に女性管理職やロールモデルがいない、男性しか管理職のマネジメントを教えられる人がいない場合、外部の女性講師研修と組み合わせる方法もおススメです。

 

特に管理職経験がある女性講師の研修は、女性管理職としての働き方や強み、家庭との両立などにポジティブなイメージを抱き、実現するマインドセットをするうえでも役立ちます。自社の女性管理職にとって“社外のロールモデル”となるような女性講師が見つかれば最適です。

 

 

オンライン研修を活用する

子育て中のワーキングマザーの場合、泊まりがけの研修参加などは難しい可能性もあります。また、時短勤務などで時間的な制限も生じやすい場合もあるでしょう。

 

女性ならではの事情に配慮するには、自宅で受講できるオンライン研修の活用もおススメです。女性管理職になることに消極的な女性が多い実情も考えると、負担なく管理職の基本スキルを学べる仕組みは大切なポイントでしょう。

 

なお、女性に限定しない一般的な管理職研修の実施ポイントや盛り込むべきプログラム内容は、以下の記事も参考にしてください。

まとめ

女性管理職を育てるには、女性ならではの価値観や特性に目を向けたうえで、女性の能力を引き出すための女性管理職研修を実施するのが効果的です。

 

また、女性管理職の活躍を促進していきたいのであれば、結婚・妊娠・出産などのライフイベントへの対応やワークライフバランスを取りやすい勤務制度などの環境を整えることも大切です。

 

日本では女性管理職の比率が低く、世界的にも非常に遅れている状況があります。少子化が進行していくことを考えれば、女性が管理職として活躍できる環境を作ることは経営上でも重要なテーマになるでしょう。

 

また、女性の管理職の効果や女性の活躍を増やす環境づくりと施策のポイントは以下の記事で解説しているので参考にしてください。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
・ニューノーマルで迎える21卒に備える! 明暗分かれた20卒育成の成功/失敗談~
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