
採用戦略を策定するうえで、基本形として役立つフレームワークは、SWOT分析、3C分析、4C分析の3つです。経営戦略やマーケティングのフレームワークとしても定番中の定番であり、非常に汎用性が高いものです。
3つのフレームワークは、既に知っているという方も多いかと思います。ここではフレームワーク自体の解説は簡単にとどめ、採用戦略や採用活動の中でどう使うかに主眼をおいて解説していきます。
3C分析
3C分析は「Customer(市場/顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」、3つの頭文字をあわせたものです。マーケティングを考える際の基本的な環境要因を整理するためのフレームワークです。
採用のフレームワークとして使ううえでは、Customer(市場/顧客)は「ターゲット人材(設定したペルソナ)」、Competitor(競合)は「採用における競合、ターゲット人材の併願先」、Company(自社)は「職場としての自社、また働く中で得られる体験や経験」です。
3C分析を行ううえで重要なのは「Customer」をはじめに設定し、Customer(設定したペルソナ)から見たときのCompetitor(採用競合)、Company(職場としての自社)を考えることです。
例えば、採用競合は必ずしも同業他社だけとは限りません。異業種が競合になることも頻繁にあります。また、「Customerから見たときの採用競合の魅力」を書きだせますか。採用競合企業の求人原稿や募集要項、採用サイトをしっかりチェックしたことがあるという人事の方は意外と少ないのではないでしょうか。
「Customerから見たときの自社」も同様です。採用活動は意外と自社中心に考えてしまいがちです。魅力の抽出や採用原稿の作成も「うちの会社の魅力って何だろう?」という視点で考えてしまいがちです。間違ってはいないのですが、重要なことは「採用ターゲットから見たときの魅力」です。
3C分析の構造は当たり前と言えるものですが、ペルソナ設定をしっかり行って、「ペルソナから見たときの採用競合と自社」をしっかり考えると発見があります。
Customerについても深く考えていくと「設定したペルソナは就職/転職市場にどれぐらいいるのか?(多いのか?少ないのか?)」「どんなきっかけで市場に出てくるのか?」「市場でどんな活動をしているのか?」「どんなニーズがあるのか?」など、採用ターゲットやペルソナの理解が深まっていくでしょう。
なお、3C分析は、「自社」「採りたい候補者(個人名)」「候補者が受けている採用競合(個社名)」というミクロなスケールで使うことも非常に有効です。
この場合は、
- 候補者の会社選びの基準(譲れない条件や選ぶ軸)
- 候補者から見た自社への志望度、評価ポイント
- 候補者から見た採用競合の志望度、評価ポイント
などに視点をおいて状況を整理します。整理することで、競合に打ち勝つための施策、候補者に情報提供することなどが見えてくるでしょう。俯瞰してマクロに捉えたり、逆にミクロに突き詰めたりなど、視座の高さを調整することが容易になるのは、フレームワークを利用することのメリットです。
SWOT分析
SWOT分析は、経営戦略や事業戦略を思考するときに、よく使われるフレームワークです。
自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)、市場変化における機会(Opportunity)と脅威(Threat)、4つの頭文字を取ったものです。まず「内部環境(自社の強みと弱み)」を書き出し、次に「外部環境(市場変化における機会と脅威)」を洗い出します。
そのうえで、
- 強み×機会=強みを生かして機会を獲得する
- 強み×脅威=強みを生かして脅威を打破する、強みが無効化するリスクへの対策
- 弱み×機会=機会を獲得するうえでのリスクへの対策
- 弱み×脅威=リスクを許容範囲に抑える、回避すべき競争の確認
といった視点で思考を深めていきます。
SWOT分析は採用戦略では2つの視点で使うことが出来ます。1つは経営戦略や事業戦略で利用する場合と同じく、「自社の将来性や成長性」を整理する視点です。応募者からすれば「応募先の企業が今後成長するのか?」は重要な関心事です。もちろん経営レベルにおいてSWOT分析はなされているでしょうが、採用活動を行う「採用メッセージを整理する」視点で改めてSWOT分析をすることは有効です。
実際の採用場面においては「どんな機会があり、自社の成長にどう繋がるのか?」というプラスのメッセージを発信する、逆に「こういう脅威があると思いますが、どう対応しようと考えていますか?」という応募者の問いに対する答え、2つの観点で準備しましょう。
採用戦略でSWOT分析のフレームワークを使うもう1つの視点は「自社の採用」を整理するという視点です。“自社の採用力”と“採用競合・採用市場の変化”という視点で、内部環境と外部環境を整理しましょう。
内部環境である“自社の採用力”は
- 母集団形成力:自社の知名度、社会的なステータス、求人原稿の制作力etc
- 口説き力:仕事のやりがい、キャリアパス、社風、職場の環境、待遇、人事や面接官の魅力度etc
2つの観点で強みと弱みを考えてみましょう。また、“採用競合・採用市場の変化”は、所属業界や採用職種の人気度、業界規模の推移や注目度、成長したりマスコミに取り上げられたりする採用競合の存在、また求人倍率の動向などになります。
自社の強み/弱み、採用市場や競合動向の機会/脅威、2つの軸を掛け合わせて考えていくと、どこで勝ちに行くか、逆に戦ってはいけないところはどこか、また手を打つべきところも見えてくるでしょう。
4C分析
4Cは商品・サービスの販売におけるCustomer Value(顧客から見た価値)、Customer Cost(顧客がかけるコスト)、Convenience(顧客から見た利便性)、Communication(顧客とのコミュニケーション)という4つの要素を整理したものです。マーケティングを考える基本と言われる4Pのフレームワークを「顧客視点」で再構成したものが4Cです。
- Product ⇒ Customer Value
製品・サービス ⇒ 購入・利用することで得られる価値、解決・実現するもの
- Price ⇒ Customer Cost
価格 ⇒ 購入・利用することの負担(費用・手間・時間・評判etc)
- Place ⇒ Convenience
流通 ⇒ 購入・利用のしやすさ
- Promotion ⇒ Communication
販促 ⇒ 情報の伝えられ方、得やすさ
4Pは「売り手」の視点で構成されていましたが、顧客中心で思考するために再構成したものが4C「買い手」です。採用戦略においては、4C分析は計画の詳細設計、採用プロセスを考えていくうえで有効です。また、カスタマージャーニーと組み合わせて考えると更に効果的でしょう。
「Cuntomer Valur(顧客価値)」は「採用ターゲット(ペルソナ)自社で働くことで得られる体験・経験の価値」です。自己成長、実力に見合った昇進や昇格、ワクワクする仕事の機会、一緒に働ける相手、採用市場における自分の価値、待遇、ワークライフバランスなど、“魅力の抽出”を考える際に役立ちます。
「Cuntomer Cost(顧客にとっての経費)」は、「ペルソナから見た入社後に向けたリスク・懸念点」です。本当はブラックかもしれない、市場価値が身につかないかもしれない、転勤になるかもしれない、給与が上がらないかもしれない、といった懸案事項が考えられます。現実的に採用ターゲット(ペルソナ)が懸念に思いそうなことがあれば、採用プロセス内でどうやって解消するかを設計する必要があります。
「Convinience(顧客利便性)」は「自社への応募しやすさ」です。逆に「自社への応募過程で発生する負担」と考えてもいいかもしれません。例えば、必要な書類の準備、説明会や面接に行く時間や費用、説明会の拘束時間、また、応募時に入力しないといけないフォームの項目数、面接調整のスピードなどもConvinienceの1つです。応募者にとって出来るだけConvinienceであることが採用成功に繋がります。
「Communication(コミュニケーション)」は「応募前におけるコミュニケーションのチャネルや伝えられるメッセージ」、また「応募後のコミュニケーションチャネルやタッチポイント、メッセージ内容」です。
例えば、応募前であれば、出来るだけ多くのコミュニケーションチャネルを使った方が採用ターゲットが受け取れる可能性は広がりますし、採用ターゲットがよく使う・信頼しているチャネル上で伝えられた方が効果的です。また応募後はどれだけスピーディーかつ「個」に向けたメッセージを受け取れるか、また応募者が馴染んでいる、使うことが楽なコミュニケーションチャネルを使うことも重要です。
このように4C分析のフレームワークは、採用戦略においては採用計画の詳細を詰めていくフェーズに役立ちます。