本章では、企業で多く用いられている代表的な人材育成の方法を7つ紹介します。
Off-JT(Off the Job Training)
Off-JTは、現場業務と切り離して行なう育成方法です。Off-JTは、集合研修やセミナーなどの形式で行なうのが一般的です。
Off-JTのメリットは大きく以下の3つです。
一つ目は、知識や理論を体系的に学べる点、二つ目は一度に複数人を教育できる点です。そして三つ目は、社内での関係性を構築できる点です。同じ研修を受講することで今まで知らなかったその人の特徴や、議論を通じて考え方を理解することができ、お互いの関係性を強化することができます。
逆にデメリットとしては、受講者が業務から離れるため、その間は担当業務が一時的にストップしてしまうこと、また、実務とのブリッジングや実践をきちんと設計しないと単なる知識のインプットで終わってしまって効果が薄くなる点です。
OJT(On the Job Training)
OJTは、現場での実践を通して業務知識や能力を身に付けることを目的とした人材育成の方法です。OJTのメリットは、現場の実務の中で、実践的なスキルや経験を積めることです。実際の業務では、想定外の事態も生じることがあります。マニュアル等には書かれていない現場に即したノウハウを体得できるのもOJTのメリットといえます。
逆にデメリットとしては、OJT担当者の知識や力量で教育の質が左右されやすい、知識が断片的・具体的になるため応用が利きづらいこと等です。
OJTとOff-JTのより詳細なメリットとデメリット、また組み合わせや実践のポイントを、以下の関連記事で解説しています。
OJD(On the Job Development)
OJDはOn the Job Developmentの略で、職場の人材育成の方法の一つです。OJDは、現場での実践を通して業務知識や能力を身に付けるという点では、先ほど紹介したOJTと共通しています。
ただし、OJTが新人や異動者等を対象に当面の職務遂行に必要な技術を習得することに主眼を置いているのに対して、OJDは社員が将来求められる能力、特にマネジメントや経営能力の開発を目的としている点が、両者の大きな違いです。つまり、OJDはOJTよりも長い時間軸で、「現場経験を通じて社員のキャリア開発を支援する」人材育成の考え方です。
OJDが注目を浴びるようになった背景には、若手社員の早期離職を課題とする企業等が増えていることがあります。OJDを通じて、マネジメントや次のステージを意識させる配置等を計画的に行っていくことで若手社員の能力向上を後押しすると共に、成長機会や将来的なビジョンを描けるようにすることで会社に対する愛着やロイヤリティの向上、定着率UPに繋げるという狙いがあります。
自己啓発(Self Development)
自己啓発は、自分の仕事に役立てるために、社員が自発的に行なう学習をいいます。自己啓発には、書籍や勉強会での学びの他、資格取得への挑戦などが挙げられます。
自己啓発は個人がプライベートで取り組む活動であり、受講費用などが実施のハードルになります。そこで、検定代や書籍購入費を補助するなど、社員の自己啓発に対する支援を行なうなどの形で人材育成の施策として組み込む企業も多くあります。
メンター制度
メンター制度とは、知識や経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員に対して1on1等を通じてフォローする制度を指します。メンター制度では、同部署の先輩だと話しづらくなってしまうなどの懸念があるため、他部署の人材等をメンターにアテンドすることが一般的です。
メンター制度のメリットとしては、他部署や他チームの先輩社員がメンターとなることで、働くなかでのリアルな悩みの相談がしやすくなる、キャリアについての視野が広がるなどが挙げられます。
また、メンター制度の変形的な制度として、新入社員等に対して、年の近い先輩が、ブラザー(兄)やシスター(姉)となって新入社員のケアやフォローをする「ブラザー・シスター制度」を導入している企業も増えています。
研修や学習支援等だけではなく、組織内の交流やコミュニケーションの活性化を通じて、キャリア開発や課題解決を支援するような取り組みも人材育成のひとつと言えるでしょう。
MBO(目標管理制度)
MBOは目標管理制度と呼ばれ、経営学者であるドラッカーが提唱したマネジメントの仕組みです。一般的には「組織と個人で合意する目標設定を行い、目標に対してどれだけ成果をあげたか?で人事評価を実施する」形になります。
MBOは単なる人事評価制度ではなく、キチンと運用すれば、上司が「目標設定・計画立案・実行・振り返り」というPDCAサイクルの運用をサポートしながら実務的な人材育成を行うことができます。
MBOを導入する企業も非常に多いですが、本質を理解せずに運用すると、人事評価のために運用される“形だけのMBO”になりがちです。効果を上げるためのMBOのポイントは以下の記事で解説していますので、ご興味あればご覧ください。
コーチング
実務を通じた人材育成の中で、最近当たり前の概念になってきているのが「コーチング」の概念です。教える側が主体となって知識を伝えたりアドバイスしたりする「ティーチング」に対して、「コーチング」は、適切な質問によって相手から答えを引き出す指導方法です。
自分で考えて答えを導き出すため納得感が高く行動につながりやすい、「答え」ではなく「問い」を教えることで部下の自走する能力が高まる等のメリットからコーチングは注目を集めています。
コーチングは、前述の6つの方法とは少し概念が異なり、人材育成の種類というよりは、より具体的な手法の話です。しかしコーチングは、成長への動機付けや自立を促進するうえで欠かせない育成手法です。OJTやOJD、MBO等を運用していくうえでも重要な考え方となるため、本節で紹介しました。
なお、ティーチングとコーチングは、Off-JTとOJTのように絶対的な優劣があるわけではなく、両方にメリットデメリットがありますので、うまく使い分けていくことが大切です。
ティーチングとコーチングの使い分けやコーチングの具体的な活用方法は以下の記事で解説しています。ご興味あればご覧ください。