傾聴力とは?|仕事に欠かせない傾聴力を鍛えるコツを紹介!

傾聴力とは?|仕事に欠かせない傾聴力を鍛えるコツを紹介!

傾聴力とは、相手の話を深く聴くときに用いるコミュニケーション技法を指します。

 

仕事で成果をあげるうえでは、コミュニケーションを通じて相手(お客さま・メンバー・上司など)と信頼関係を築くことが重要です。そして、信頼関係を築くうえで役立つのが、「傾聴力」です。傾聴と普通の「聞く」はどう違うのでしょうか。また、傾聴力とは、どうすれば高められるものなのでしょうか。

 

本記事では、まず、傾聴力の概要と3つの種類、傾聴力がビジネスで大切とされる理由を解説します。傾聴力を高める研修を提供している研修会社としての知見も踏まえて、傾聴力を身につけるために実践したい5つのトレーニング方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

<目次>

傾聴力とは?

傾聴力とは?

 

傾聴力は、相手の話を深く聴くときに用いるコミュニケーション技法のことです。傾聴という場合、私たちが日常的によく使う「聞く」ではなく、「聴く」の漢字を用います。傾聴の具体的な特徴は、「聞く」との違いを知ることでイメージしやすくなります。

 

普通の「聞く」と「傾聴」の違い

まず、小学館の「日本国語大辞典」では、「聞く」を以下のように解説しています。

  • 音を耳で感じる取る
  • 自然に耳に入ってくる
  • 聞いて知る

上記の解説を読むと「聞く」は、自分のまわりに生じている音や話が「耳に入ってくる」状態と解釈できます。一方で、「傾聴(聴く)」は、受動的に聞くのではなく、能動的に聴く姿勢を指し、相手と深いコミュニケーションを取るための聴き方です。

たとえば、あるメンバーが「資格試験に不合格だったこと」と上司に報告したと仮定します。不合格を報告した場合、上司のスタンスが「聞く」と「聴く」のどちらかで、そのあとの反応やコミュニケーションの取り方が以下のように大きく変わってくるかもしれません。

  • ・「聞く」:
  • ⇒不合格だったという「事実(情報)」を知った状態
  • ⇒「報告ありがとう、次も頑張ってね!」でサラッと会話が終わることも……
  •  
  • ・「聴く」:
  • ⇒不合格にともなう相手の「悔しさ・悲しみ」などの気持ちにも共感する状態
  • ⇒「あんなに頑張ったのにそれは悔しいね。私はこれからも応援しているよ……。」と、次につながるフィードバックなどを行える

出典:「聞く」と「聴く」(NHK文化放送研究所)

傾聴力が高い人の特徴

米国の心理学者でカウンセリングの大家であるカール・ロジャースは、後述する高いレベルの傾聴(積極的傾聴)ができる人には、以下の3要素があるとしています。

 

◆共感的理解◆
共感的理解とは、相手の話を、相手の立場に立って、相手の感情に共感しながら理解しようとする姿勢です。「耳」で聞くより、「心」で聴き、相手の感情を味わう感覚です。

 

なお、共感するとは、相手の感情や受け止め方に同意することではなく、あくまで相手の感情をともに味わうことを意味します。たとえば、「それは怒って当然だよ」が同意なのに対して、「(あなたは)怒らずにいられなかったんだね」というのが共感です。

 

◆無条件の肯定的関心◆
無条件の肯定的関心とは、相手の話を、善悪の判断や好き嫌いの評価を入れずに受け入れる姿勢です。

 

自分の考えと合わなくても、相手の話を否定することなく、どうしてそのような考えに至ったのか?という「背景」などに関心を持ちます。そうすることで、相手は「自分の話が受け入れられている」と安心できます。

 

◆自己一致◆
自己一致は、心理学において純粋性や実感と認識の一致と呼ばれるものです。

 

話し手の深い感情・考えをくみとるには、聴き手自身も自分の気持ちを誤魔化さない姿勢が必要です。聴き手がありのままの自分を受け入れられていて、防衛的や虚勢的にならず、率直かつ安定的な気持ちで相手と向き合えている状態が自己一致です。

 

相手の話を受け入れたり深掘りしたりするには、聴き手のフラットな精神状態が必要ということです。

3種類の傾聴とは?

傾聴には、3種類の段階があります。それぞれの状態を詳しく見ていきましょう。

 

受動的傾聴

受動的傾聴とは、相手の話に耳を傾け、真摯に受け止める状態です。具体的には、相手が自分の考えや内面を話しやすいように、「相手のために聴くこと」に意識を置きます。

 

そのうえで、目を合わせたり、話の流れに合わせて相づちをうったりすることで、相手が話しやすい環境が整っていくでしょう。

反射的傾聴

受動的傾聴より一歩踏み込んだものです。具体的には、以下のような方法で「自分が相手の話を聴いていること」を伝える傾聴の状態です。

  • オウム返し
  • 別な言葉での言い換え
  • 相手の話の要約 など

聴き手が話し手の内容・表現を繰り返すと、相手に共感理解を示せます。こうした反応を見た話し手は、「自分の言いたいことをちゃんと理解してくれている」と実感できます。

 

結果として、受動的傾聴よりも信頼関係の構築が可能になるのが反射的傾聴です。

積極的傾聴

受動的傾聴・反射的傾聴より、さらに一歩踏み込んだものが積極的傾聴です。積極的傾聴は、聴き手が主体的に働きかけて、話し手を深く理解する方法になります。

 

積極的傾聴が目指すところは、話し手の本音や思考を促す深いコミュニケーションです。真摯な姿勢とともに高度なテクニックや経験が求められますが、積極的傾聴を実践することで、相手との信頼関係を構築しやすくなります。

 

そのため、積極的傾聴は、メンバーとの対立解消や1on1、商談内プロセスなどで特に効果的なものとなります。

具体的には、受動的傾聴・反射的傾聴を実践した状態で、以下のように必要に応じて質問を行なったり、話し手の想いに言葉を添えたりします。

  • ・上司A:「企業K様の回線トラブルは解決したのかな?」
  • ・部下B:「はい、一昨日にようやく解決しました。ただ、回線の復旧までに15時間もかかったので、少しお客様に怒られてしまいました……。(上司Aは頷きながら話を聴く(受動的傾聴))」
  • ・上司A:「復旧までに15時間か……。(反射的傾聴)それは、けっこう早い復旧だったんじゃない? (積極的傾聴)」
  • ・部下B:「そうなんです!!15時間も回線が止まったので、企業K様にご迷惑をおかけしたのは確かなのですが……。15時間は、自分のなかでもかなり早い復旧だったと感じています。」
  • ・上司A:「そうだね、僕もかなり早いと思うよ。(反射的傾聴)Bくんは最近、自己啓発でネットワーク系資格や社内副業に挑戦してるよね?今回の対応は、日々の努力の賜物じゃないかな?(積極的傾聴)」
  • ・部下B:「はい!!実は、今回のトラブルは、社内副業でお世話になってるC先輩のチームで出た事例だったんです。その対処方法を覚えていたので、今回の15時間につながったと思っています。」
  • ・上司A:「そうか、Cくんのところでの学びが役に立ったのか。(反射的傾聴)回線トラブルはなるべく避けたいけど、Bくんにとっては、今回の件が成長を実感する良い機会になったのかもしれないね。これからも社内副業と試験勉強頑張ってね。僕は応援するよ。」

積極的傾聴では、聴き手が上司Aのように「それは、けっこう早い復旧だったんじゃない?」や「今回の対応は、日々の努力の賜物かな?」と主体的な働きかけをすることで、話し手(部下B)の背景にある以下のようなことを深く理解できるようになります。

  • なぜ15時間で復旧できたのか?
  • 15時間で復旧できた理由は何なのか?
  • 自己啓発の成果は出ているのか? など

こうした働きかけは、さらなる共感的理解や肯定的関心につながり、聴き手と話し手の信頼関係へとつながっていきます。

傾聴力がビジネスで大切な理由

傾聴力がビジネスで大切な理由

 

近年では、業務のIT化や自動化が進むなかで、ビジネスにおける傾聴力が特に重要となってきています。業務がIT化・自動化されているからこそ、人と人のコミュニケーションや信頼関係が大切になっているのです。

 

相手と信頼関係を築く

高い傾聴力をもってコミュニケーションすると、相手は以下のような感覚からこちらを信頼し、心を開いてくれるようになります。

  • 自分の話をちゃんと聴いてくれている
  • 自分に関心を持ってくれている
  • 自分を否定しない人だ など

仕事で成果をあげるうえで、一緒に働くメンバーやお客様と信頼関係を築くことは欠かせません。

 

上述のとおり、知識労働や感情労働が増えているからこそ、仕事で関わる人(お客様・メンバー・取引先 など)と信頼関係を築くことの重要性は高まっています。

問題解決する

人と仕事するうえでは、立場の違いによる意見の対立が生じたり、感情的なぶつかり合いが生じたりすることがあります。

 

特に物事がうまくいかなかったりするときには、感情的な対立なども生じやすいですし、関わるメンバーの感情も高ぶったりネガティブに触れたりすることも多くなるでしょう。

 

こうした状況で問題解決するには、論理的なアプローチと同時に、感情の対立やストレスを解消していくことが必要です。
傾聴力は、人と対立したときに、相手の感情でつながるような深い信頼関係を築き、感情面の問題を解決するうえで欠かせないスキルとなります。

 

傾聴力は、問題解決の前面に立つビジネスリーダーにとって必要な不可欠なスキルです。

影響力を発揮する

たとえば、リーダーの傾聴力が著しく低い場合、リーダーはメンバーに対して、以下のような対応や姿勢をとってしまいがちになります。

  • メンバーの話を聞かない
  • メンバーの顔をつぶす
  • 自分の主張や指示ばかりを押し付ける など

上記のような対応を続けていると、メンバーは「自分は大事にされていない」と感じるようになり、結果的に信頼関係が壊れ、次第にリーダーの話に耳を傾けなくなってしまいます。

 

ビジネスをするうえで周囲に影響力を与える人間になるには、「まず理解に徹し、そして理解される」のが大原則です。相手を理解するためには、高い傾聴を通じたコミュニケーションや、信頼関係の構築が大切になってきます。

傾聴力を身に付けるトレーニング5選

高い傾聴力によって深いコミュニケーションや信頼関係の構築につなげていくには、人と話をするうえでの「あり方(人格・人徳)」と「やり方(技術・テクニック)」の両方を磨いていくことが大切です。

 

ただ、「あり方」を磨くには、それなりの時間がかかってきます。そのため、本章では、「やり方」の部分から傾聴力を高められる5つのトレーニングを紹介していきます。

 

会話の割合を「3:7」にする

まず、自分ばかりが一方的に話してばかりいては、傾聴力は高まりません。そこで、最初に意識したいのが、会話の割合を「自分3:相手7」にすることです。

 

「自分3:相手7」の割合で話をすると、「話をしなさすぎかも?」という体感になることもあるでしょう。最初は難しいかもしれませんが、「自分3:相手7」の割合を意識しながら話す習慣を持つことが、傾聴力を高める第一歩になります。

相手の話に集中する

次は、聴き方のポイントです。傾聴力を高めるうえで大切になるのが、自分の経験や価値観などのフィルターを通さず、相手の話に耳を傾けることになります。そこで注意すべきなのが、「自叙伝的な聞き方をしていないか?」ということです。

 

たとえば、資格試験に不合格になった部下と上司の間で、以下の会話があったと仮定します。

  • ・部下A:「先週の資格試験、不合格でした。たくさん勉強したのに残念です。」
  • ・上司B:「そうなんだ。“たくさん”とは、何時間ぐらい勉強したの?」
  • ・部下A:「一日1時間ぐらいですかね。休日は2時間ぐらいです。」
  • ・上司B:「それじゃ足りないよ。僕なんて一日2時間、週末は3時間やってたよ。」
  • ・部下A:「それはすごいですね。」
  • ・上司B:「すごくないよ。Aくんはね、時間の使い方が下手なんだよ。○○業務でもそうでしょ……。」

上司Bには、傾聴力の高い人の特徴である「共感的理解」や「無条件の肯定的関心」がありません。上司Bの傾聴力が下がっている理由は、“自叙伝的な聞き方”をしてしまっているからとなります。

自叙伝的な聞き方とは、相手の話を真剣に聞いているのではなく、「次に何を質問しようか」「何をアドバイスしようか」「どうせこういうことだろ」と自分勝手に思考して、身を入れずに相手の話を聞いている状態です。

 

上記の部下Aは、もしかすると「試験に落ちて悔しい」という想いを受け入れて欲しかったかもしれません。一方で上司Bは「何が原因だったか」「どうすればいいか」など、自分本位で思考してアドバイスしています。

 

上司Bに悪気はないかもしれませんが、上記の対応では、部下は「自分を受け入れてくれている・肯定してもらえている」とは思えません。

 

傾聴で勘違いされやすいポイントは、自分の意見や想いを「伝えるために聴く」のではないということです。自分の経験や価値観によるフィルターを通さず、自分の価値観を押し付けようともせず、「ただ理解する・聴く」に徹することが大切になります。

ミラーリングで相手に親近感を持たせる

ミラーリングは、以下のような非言語的な要素を相手に合わせることで、相手が話しやすくする手法です。

  • 話す姿勢
  • ボディランゲージ
  • 座り方
  • 手振り
  • 身振り
  • 手足の位置
  • 呼吸
  • 選考
  • 表情 など

ただし、ミラーリングのやりすぎが相手に気付かれた場合、不快感・警戒感を与えることになりかねません。ミラーリングを実施するときには、やり過ぎないように注意しましょう。

バックトラッキングで安心感を与える

バックトラッキングとは、いわゆる“オウム返し”のことです。相手が「先日の試験、合格しました!」と報告してきたのに対して、「試験、合格したんだね!」と返すのがバックトラッキングです。

 

バックトラッキングすることで、相手は「自分の話が相手に届いている」と安心感を持つことができるようになります。

 

また、バックトラッキングによる安心感によって、たとえば、「前回はダメだったんで、今回は絶対に受かりたいと思っていたので……」など、続く話が引き出されることもあるでしょう。

 

バックトラッキングする内容には、以下の3種類があります。

  • 相手が話した事実
  • 相手の気持ち
  • 相手が話した内容の要約

たとえば、前述した「先日の試験、合格しました!」と報告してきたのに対して、「試験、合格したんだね!」と返すのが事実のバックトラッキングです。

 

加えて、相手の様子なども踏まえて、「試験合格したんだ!うれしそうだね!」と返すのが事実+気持ちのバックトラッキングになります。

 

気持ちをバックトラッキングすることで、相手はより深く話が届いている、わかってもらえている感覚が得られます。

 

ただし、すべての話をバックトラッキングしていると、話が前に進まない、話している側も鬱陶しくなってしまうことがあります。
そのため、相手のいくつかのセンテンスなどをまとめて、「こうでこうだったんだね」と要約して返すこともバックトラッキングの一つです。

相手に見えている世界や感情を確認する

たとえば、部下からの報告「試験に合格した」の事実だけにフォーカスすると、報告内容への反応は「それは良かったね!おめでとう!」などに限られてしまいます。一方で、以下のように背景にある世界や感情に視点を変えると、深い反応や質問ができるようになるでしょう。

  • ・感情:「3回目の挑戦だもんね、かなりうれしいでしょう?すごく頑張っていたもんね!」
  • ・世界:「A試験に合格したってことは、次はB試験を目指すのかな?」

上記のポイントは、「相手の」感情や見えている世界を想像することになります。

まとめ

傾聴力は、メンバーやお客様との信頼関係の構築や、チームに影響力をもたらすうえで大切なスキルです。傾聴には、以下3つの段階があり、下に行くほど相手との深いコミュニケーションにつながっていきます。

  • レベル1:受動的傾聴
  • レベル2:反射的傾聴
  • レベル3:積極的傾聴

なお、傾聴力を高めるには以下3つの要素を押さえることがポイントです。

  • 共感的理解(相手の感情に共感しながら聴く)
  • 無条件の肯定的関心(賛否や是非を判断せずに聴く)
  • 自己一致(自分自身が安定した精神状態で聴く)

傾聴力を身につけるには、以下5つのコツやトレーニングを実践するのがおすすめとなります。

  • 会話の割合を「7:3」にする
  • 相手の話に集中する
  • ミラーリングで相手に親近感を持たせる
  • バックトラッキングで安心感を与える
  • 相手に見えている世界や感情を確認する

ただし、上記は一種のテクニックでもあるため、安定した精神状態で相手の話に共感するには、基礎となる人格を磨くことも大切です。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、人格と傾聴力を磨く研修プログラムを提供しています。研修に興味がある人は、以下のページから資料をダウンロードしてみてください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
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