コミュニケーションを円滑に進めたり信頼関係を築いたりする上では、言葉と併せてノンバーバルコミュニケーションを活用することが重要です。
記事では、ノンバーバルコミュニケーションの重要性や意味を確認したうえで、効果や役割、主な要素、具体的な活用法などを解説します。
<目次>
- ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)とは?
- ノンバーバルコミュニケーションにおける7つの要素
- ノンバーバルコミュニケーションの効果と役割
- ノンバーバルコミュニケーションを活かせる場面4選
- ノンバーバルコミュニケーションを活用する3つのコツ
- ノンバーバルコミュニケーションを使う上で気を付けるべきこと
- ノンバーバルコミュニケーションを活用して、良好な人間関係を築こう
ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)とは?
ノンバーバルコミュニケーションとは、言葉以外によるコミュニケーションを指し、非言語コミュニケーションとも言われます。ノンバーバルコミュニケーションには例えば、視線や声色などが含まれます。逆に、言葉を用いたコミュニケーションはバーバルコミュニケーション(言語コミュニケーション)と呼ばれており、「会話の内容(言葉)」を指します。
私たちはどちらかだけを行っているわけではなく、普段から無意識にバーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーションを組み合わせています。だからこそ、両方を意識的に組み合わせる、とくに無意識になりがちなノンバーバルコミュニケーションを磨くことで、相手とのコミュニケーションをよりスムーズなものにすることができます。
ノンバーバルコミュニケーションにおける7つの要素
コミュニケーションにおける言葉以外の要素はノンバーバルコミュニケーションに含まれますが、大きく以下の7つの要素に分けられます。
1.外見(姿勢・服装を含む)
2.身体の動き
3.相手との距離・接触
4.表情
5.視線
6.声・周辺言語
7.匂い
ここでは、ノンバーバルコミュニケーションの基本となる上記7つの要素を詳しく解説します。
1.外見
コミュニケーションにおいて、服装や表情などの外見も重要な要素です。服装は相手の印象を左右します。
まずTPOに応じた服装は、相手との信頼関係を築くための基本となります。最近はビジネスカジュアルが当たり前となり、リモートワークが普及した中でドレスコードも変わりつつあります。
一方で、たとえば、清潔感がない服装で商談をしたら信頼関係は作りにくいでしょうし、年配の方にお詫びの訪問をするときにはやはりTPOに応じたドレスコードの方がいいでしょう。
服装が相手に与える印象、どういった印象を相手に与えたいかを考えて服装を選ぶ、姿勢を作る、また、場合によっては相手と会う場所等を検討しましょう。
2.身体の動き
身体の動きは、会話や声、表情に加えて、ノンバーバルコミュニケーションの重要な要素です。
特にプレゼンテーションや誰かに何かを伝えるような場面においては、きちんと静止した立ち姿、逆に歩きながらしゃべる、また、腕の動きなどを上手く使うことで、自信や意思の強さ、情熱などを伝えることができます。
逆に、あたふたしたり挙動不審だったりすれば、どれだけ良いことを話していても自信がなく頼りないように見えてしまいます。
3.相手との距離・接触
相手との物理的な距離や接触も、ノンバーバルコミュニケーションの要素となります。物理的な距離を考えるうえでは、パーソナルスペースの概念を知っておくことが大切です。
パーソナルスペースとは、「個人的な空間」を意味し、他人が近づいても不快に思わない範囲を指します。パーソナルスペースは相手との心理的な距離感によって変わります。
例えば、恋人や家族、友人であればすぐ近くにいても何も思わないのに、見ず知らずの人が同じ距離にいたら警戒してしまうでしょう。逆に、親しいと思っていた友人が遠ざかるような素振りを見せたら、不安に思うのではないでしょうか。
自分と相手の関係、相手の性格などを考慮し、適切なパーソナルスペースを保つことが大切です。そして、逆に相手との物理的な距離をうまく詰めることで、相手との心理的な距離を近づけることも可能です。
相手との距離を通じたノンバーバルコミュニケーションのひとつとして接触、いわゆるボディタッチをするといったやり方もあります。具体的には、握手やハイタッチ、相手の背中や肩を叩いて励ます、力づけるといった方法です。
ただし、相手との距離・接触などは、相手と深い関係を築けていない状態で、相手が不快に感じるところ、つまりパーソナルスペースを侵し過ぎると、反発を生んでしまう可能性もあります。特に接触は、今の時代、ハラスメントにもなり得るので注意が必要です。
また、距離だけでなく位置関係もノンバーバルコミュニケーションのひとつです。たとえば、相手と正対する位置に座ると対立関係になりやすいと言われています。相手と有効的な関係性を作りたい場合は、もしくは90度の角度で座るといったこともひとつのテクニックです。
4.表情
身体によるジェスチャーなどと同様に、表情はノンバーバルコミュニケーションの要素です。とくに1対1で、オフラインの空間で会う場合には表情は相手にとても良く見える要素です。
たとえば、相手の話を聞くにしても、頷いたり相槌をうったりして共感を示しながら聞くのと、ずっと無表情のまま黙っているのとでは、相手が受ける印象は大きく変わるでしょう。同じように、真剣さや熱意を伝えたいのであれば、それに応じた表情があるでしょう。
表情は、外見と同じように自信や意思、共感や親愛などを伝えることができます。外見と違って会話の文脈に応じて変えられるからこそ、表情はよりコミュニケーションへの影響度が大きいといえるでしょう。
5.視線
視線もノンバーバルコミュニケーションの1つです。会話をする際には、相手の目を見て話すことが大切です。ただ、緊張して相手の目を見られない場合は、鼻のあたりを見るのが良いでしょう。
ただし、あまりジロジロみると相手に嫌がられることもあるため、考えるときや相槌を打つときは適度に目を逸らすことも大切です。
これは、相手の話を聞く時も同様です。例えば「何かをしながら聞く」「相手と目を合わせずに聞く」というのは「真剣に聞く気はない」というメッセージを送るノンバーバルコミュニケーションになり、失礼にあたります。社会人として、相手の話を聞くときはしっかり集中しましょう。
6.声(周辺言語)
話す速さ、声の強さ、トーン、沈黙、声色などの「声」に関する情報は、周辺言語(パラ言語)と呼ばれ、ノンバーバルコミュニケーションの重要な要素です。
声は、言語コミュニケーション(会話の内容)を届けるものですので、その影響力は非常に大切になります。表情と同じように、声の大きさやペース、トーンや間をうまく使うことが大切であり、伝える内容にあわせた声や表情を使うことが大切です。
なお、細かな表情が見えづらくなる1対多でのプレゼンテーションやスピーチ、また、オンラインでの対話、とくに資料などを画面共有している際は細かな表情(視覚情報)が非常に見えにくくなるため、声(聴覚情報)の重要度が高まります。
7.匂い
匂いも「相手に印象を与える」という意味では、ノンバーバルコミュニケーションの要素のひとつです。
匂いは、まずは服装における清潔感と同じで、体臭や口臭などをきちんとケアして、ネガティブな要素をなくすことが大切です。
日本の場合には、欧米ほど香水を付ける習慣はありませんが、軽いオーデコロンなどを使ってもいいでしょう。また、夏場は汗へのケアなどは必要です。
ノンバーバルコミュニケーションの効果と役割
ノンバーバルコミュニケーションは私たちの日常生活やビジネスにおいて重要な役割を果たしています。ノンバーバルコミュニケーションの重要性を示したデータとしては、メラビアンの法則が有名です。
【メラビアンの法則とは?】
メラビアンの法則は、1971年に心理学者のアルバート・メラビアンが提唱した、コミュニケーションにおける法則です。
メラビアンの法則は、「与えた情報に矛盾がある」、たとえば、「つまらなそうな口調で『すごいじゃん』と伝える」「自信がありそうな顔で『試験勉強、全然してないから自信ないんだよね』と言われた」といった場合に、どの情報が優先されるかという結果を示しています。
実験によれば、それぞれの重要度は以下の通りです。
言語情報 7%
聴覚情報 38%
視覚情報 55%
「言語情報」がすなわちバーバルコミュニケーションであり、「聴覚情報」と「視覚情報」を合わせたノンバーバルコミュニケーションは93%にもなります。
メラビアンの法則は、直接的にコミュニケーションにおける影響力や情報量を示したものではありません。しかし、上記を見ると、言葉と合わせて、服装や表情、身振り手振りや声といったノンバーバルコミュニケーションを上手く使うことの重要性が分かります。
ノンバーバルコミュニケーションを活かせる場面4選
ノンバーバルコミュニケーションは、仕事で大いに活用できます。ノンバーバルコミュニケーションを仕事で活かせる場面を4つ、紹介します。
会議・プレゼンテーション・スピーチ
会議やプレゼンテーション、スピーチなど「人の前で話す」場面では、外見や立ち姿などに加えて、身振り手振りを上手く使うことで熱意や自信を表せます。
身振り手振りにあわせて、声のペースやトーン、さらに話の「間」をうまく調整すれば、相手に注意深く聴いてもらう、また、こちらのメッセージを適切に伝えることができます。とくに重要なポイントを伝えるときノンバーバルコミュニケーションを活用することが大切です。
商談
見込み顧客や取引先との商談でも、ノンバーバルコミュニケーションは活用できます。
顧客は商品・サービスだけではなく、営業パーソンなどの「人」を見て意思決定する側面も大いにあります。そのため、見込み顧客には良い第一印象を与えて、信頼関係を築く。また、他の人から引き継いだような取引先にマイナスの印象を持たれないことは非常に重要です。
信頼関係を築く要素として、もちろん商品知識や適切な言葉は大切です。同時に、たとえば好ましい第一印象を与えるには、TPOに適した服装、明るい表情、聞き取りやすい大きさの声などが大切です。
また、ヒアリング時には、表情や相づちをうまく使って相手への共感や真剣さを示すことも有効です。そして、サービス内容を伝えるときなどは、プレゼンテーションと同じで、外見、身体の動き、声、表情などで自信を伝えたり、押したいポイントを伝えたりすると良いでしょう。
職場の仲間との会話
職場で良好な人間関係を築くためには、相手との関係性に応じて、相手が不快に感じない範囲で距離を詰めたり適切なパーソナルスペースを守ったりすることが大切です。
表情や声の大きさ、服装や匂い等も同様で、まずはネガティブ要素をなくすことを意識しましょう。そのうえで、上述したように相手との物理的な距離を意図的に詰める、位置関係を工夫してみるといったことも試してみるとよいでしょう。
また、商談等でも共通することで、自分のノンバーバルコミュニケーションに注意するだけでなく、相手の表情や声色から心情や本音を推察して対応することも重要です。
オンライン
オンラインでのコミュニケーションはカメラ越し・マイク越しになるため、細かな表情や声質が伝わりにくくなります。そのため、対面の時よりもジェスチャーや声を大きくすることがポイントです。
また、画面共有時には視覚情報が減少するため、聴覚情報の重要性がより高まります。声の大きさやトーン、間をうまく使うことが重要です。
ノンバーバルコミュニケーションを活用する3つのコツ
ここでは、ノンバーバルコミュニケーションを上手に使うための3つのコツを紹介します。
少し大げさにする
ノンバーバルコミュニケーションを活用する際には、自分が思っているよりもやや大げさにするようにすると良いでしょう。慣れないうちは、少し大げさにやるぐらいで丁度いいものです。
また、人は自分が話すときには「分かって欲しい」と思っていますが、人の話を聞くときには「この話は自分にとってどんな意味があるか、メリットは、デメリットは…」などと考えながら聞いているものです。
つまり、人は意外と話し手の表情や動きに敏感ではないのです。そのため、自分が思っているよりも少し大げさにし、相手に気づいてもらうようにしましょう。
とくにプレゼンテーションや1対多でコミュニケーションする際には、大げさにやることを心がけるとよいでしょう。
外見・言動に細心の注意を払う
メラビアンの法則からもわかる通り、人は「相手が話している内容」よりも「自分に見えたり聞こえたりしていること」、つまり、視覚や聴覚から得られる情報を信用します。
そのため、身体の動きや表情、声の大きさやペースなどに違和感を覚えられてしまうと、自分が話している内容は相手に信頼してもらえなくなります。外見や言動には常に細心の注意を払うことが大切です。話の内容にもよりますが、清潔感、自信、落ち着きなどを感じさせることを心がけましょう。
相手の非言語情報に敏感になる
ノンバーバルコミュニケーションにおいては、自分の外見や言動に気を付けるだけではなく、相手のノンバーバルをしっかり見ることも大切です。
相手のノンバーバルコミュニケーション、表情や声色、身体の動きや目線などに注意を払うことで、相手の心情や本音を捉えることがことができます。これが出来るようになると、コミュニケーションスキルの向上、さらには信頼関係の構築にもつながるでしょう。
ノンバーバルコミュニケーションを使う上で気を付けるべきこと
人との対話やプレゼンテーションにおいて、ノンバーバルコミュニケーションも重要なものですが、当然話す内容が空虚であれば相手からの信頼は得られません。
長期的な信頼関係を築いたり、人の気持ちを動かしたりするうえでは、言葉遣いや伝え方、また、基となる人格が大切です。対話の内容、人格等と併せて活用する、ノンバーバルコミュニケーションのスキルを磨いていきましょう。
ノンバーバルコミュニケーションを活用して、良好な人間関係を築こう
ノンバーバルコミュニケーションは、コミュニケーションにおける重要な要素であり、言葉と共に自信や意思、情熱をしっかり伝える手段になります。ノンバーバルコミュニケーションを有効活用して、良好な人間関係を築きましょう。
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