ペーシングとは?
ペーシングとは、言語・非言語を用いて信頼関係を構築するコミュニケーションスキルの1つです。
もともとはカウンセリング手法のなかで用いられてきたものですが、コーチングやビジネスでコミュニケーションでも活用できると分かり、利用範囲が広がっています。
ペーシングを用いることで相手の警戒心をほぐし、安心感を与えられます。そして、結果として相手との信頼関係(ラポール)を素早く構築することができます。
相手との信頼関係を構築する上で有効なコミュニケーションスキルのひとつが、ペーシングです。
相手に合わせてコミュニケーションを取ることで、親近感を持たせられるようになり、心理的距離間を縮められるようになります。
記事では、ペーシングの概要と実践方法について解説します。併せて、実践時に注意すべきポイントも紹介しているので、ぜひご一読ください。
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東宮 美樹
元 株式会社ジェイック 取締役
元 株式会社Kakedas 代表取締役社長
1997年筑波大学を卒業。食品会社や人材派遣会社などを経て、ジェイックに入社。新人~次世代リーダー・管理職までコミュニケーション改善や主体性発揮、エンゲージメント強化の研修、また、自身の経験も踏まえた女性活躍やキャリア研修、イクボス育成などを得意とする。教育事業の主管としてジェイック取締役、またキャリア面談プラットフォームを提供する株式会社Kakedas代表取締役等を歴任。
ペーシングとは、言語・非言語を用いて信頼関係を構築するコミュニケーションスキルの1つです。
もともとはカウンセリング手法のなかで用いられてきたものですが、コーチングやビジネスでコミュニケーションでも活用できると分かり、利用範囲が広がっています。
ペーシングを用いることで相手の警戒心をほぐし、安心感を与えられます。そして、結果として相手との信頼関係(ラポール)を素早く構築することができます。
ペーシングは大きく3つのスキルによって構成されています。
ひとつずつ見ていきましょう。
バックトラッキングとは、相手が話した言葉を「オウム返し」のように繰り返すことです。バックトラッキングすることで、相手に「話を聞いている」ことを伝えられます。
バックトラッキングされた相手は「自分の話をしっかり理解してもらえている」「受け入れられている」と感じられ、安心感や納得感を持ちやすくなります。
なお、すべての言葉をオウム返ししていては話が進まず、相手にも不信に思われるでしょう。そのため、話の要点部分だけをバックトラッキングするなど、程よい頻度で使うことが大切です。
バックトラッキングには大まかに、以下3つのレベルに分けられます。
上記3つをうまく組み合わせて利用することで、効果的なバックトラッキングとなるでしょう。
相手の身振りや動作を「鏡」のように合わせていく手法が「ミラーリング」です。ミラーリングで合わせる身振りや動作には、以下のようなものが挙げられます。
ミラーリングは相手と自分の間に共通点を作ることで、親近感や安心感を持ってもらえるようになります。ただし、「意図的にやっている」と相手に思われてしまうと、逆に不信感につながりかねません。すべてをコピーするようなイメージは捨てて、要所でさりげなく行うことがポイントです。
相手の声のトーンや店舗、ボリュームを合わせて話す手法が「マッチング」です。いわば「声に関するミラーリング」ともいえます。
話のペースや口調を合わせることで「自分のペースに寄り添ってくれる」「自分と相性がいい」と相手は認識して、信用してもらえます。逆に、自分と話のテンポがズレている、例えば、ゆっくり気味に話す人が早口の人の話を聞くと、相手は無意識に違和感や嫌悪感を持ってしまいがちです。
マッチングはまず、言葉のペースや間の取り方を合わせるところから始めることが一番有効です。
なお、本来のマッチングとは少しズレますが、言葉のペースに合わせて単語や表現なども相手に合わせるとよいでしょう。
マッチングの上級編として、はじめは相手に合わせながら徐々に自分のペースを変えることで、相手を自分のテンポに巻き込むといったやり方もあります。例えばクレーム対応などで、はじめは興奮した相手の早口なペースに合わせながら、少しずつペースを緩めます。すると相手のペースも緩くなり、次第に感情を落ち着かせられるようになるでしょう。
ペーシングを実践する際は、以下のようなポイントに着目してみると、実践しやすくなるでしょう。
ひとつずつ見ていきましょう。
話をするスピードやリズム、声のトーンや大きさ、抑揚などはペーシングにおいて非常に重要な要素です。先ほどのマッチングの部分に当たります。まずは、声のスピードやリズムなどのスピードを意識することが一番やりやすいですし、相手に「コピーしている」印象も与えにくいのでお勧めです。
マッチングの中でも紹介した通り、相手が使った言葉や表現で会話を進めていくと、「自分の話を聞いてくれている」という安心感につながり、信頼感を与えられます。会話中に相手が使っている単語や言葉のクセなどを真似すると、取り入れやすくなります。とくに同じような意味を持つ言葉、たとえば、社員・スタッフ・従業員・メンバー…であれば、相手の使っている言葉に合わせることが有効です。
バックトラッキングのうち、相手の言ったことを同じように繰り返すオウム返しは、ペーシングの中でも取り入れやすい方法です。
まずは初歩のオウム返しとして、相手の話の切れ目で「○○だったのですね」「○○と感じていらっしゃるのですね」といった形でオウム返しや相手の話の要約を一言入れるところから始めてみてください。ビジネスの会話であれば5W1Hの要素などを、オウム返ししてあげることが理解を示すうえで有効です。具体例としては「○日が納期なんですね」「500個で50万円というのが相手の要望でしたか」といった形です。
表情やしぐさなどを鏡に映したように真似をしてみるのもいいでしょう。ただし、表情やしぐさのミラーリングは、慣れないと不自然さが出やすいところです。まずは、話し方や言葉遣いのマッチングから入るのがおすすめです。そのうえでさりげなく、姿勢やジェスチャーなどワンポイントをミラーリングするとより効果的なものになるでしょう。
相手が感じている気持ちや感情、大切にしている価値観や考え方に共感することも大切です。感情や考え方などの内面的な部分に共感してくれると、深い親近感を持ってもらいやすくなります。
実施するには相手の感情や価値観を引き出すような質問、例えば「500個で50万円ですか…どう感じられましたか?」などのバックトラッキングを組み合わせて実施するのもひとつのやり方です。
また「そのタイトな納期で間に合わせたのは、本当に大変でしたね」「そんな納期を要求されたのですか。相手の無理解に悲しくなりますね…」など、相手の言葉や表情などから読み取った気持ちや感情を、バックトラッキングと組み合わせて伝えることも効果的です。
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ペーシングは相手との精神的な距離感を縮め、信頼を得られる有効なコミュニケーションスキルですが、実践する際はいくつか注意すべきポイントがあります。
ひとつずつ詳しく解説します。
ペーシングしていると悟られないように、自然に振る舞うことが大切です。先述の通り「意図的にペーシングしている」と相手が勘づいてしまうと不信感につながり、信頼関係の構築から遠ざかってしまいます。
実践ポイントで紹介した通り、やりやすいところから実施していくことが有効です。とくに、姿勢やジェスチャーなどのミラーリングは、相手と同時にやろうとすると不自然になりがちです。ワンポイントだけにしたりタイミングをずらしたりするなどの工夫が必要です。
ペーシングはあくまで信頼関係を構築する手段であり、支配してコントロールするためのものではありません。相手と信頼関係を築くためには根底として、「相手を尊重し、関係性を大切にしたい」という想いを持って接することが重要です。
ペーシングに限った話ではありませんが、否定から入られてしまうと相手は警戒・反発して、信頼関係の構築が遠のいてしまいます。相手と意見の相違があったとしても、一度相手の意見を受け入れて共感したうえで、自分の意見を伝えると相手も受け入れやすくなるでしょう。
ペーシングを実践することで相手との信頼関係を構築しやすくなりますが、他のテクニックや概念も取り入れると、より効果的になることが期待できます。
ここからは、ペーシングと一緒に知っておきたいテクニック・概念を4つ紹介します。
ひとつずつ見ていきましょう。
ラポールとは、フランス語で「信頼関係」「心が通い合う関係」を意味する心理用語です。
相手が心を開いて本音を教えてくれるようになるラポール形成の手法は、ビジネスの世界でも使えることから、コーチングやコミュニケーション研修で取り入れられています。
ラポールを形成する代表的な手段が、紹介したペーシングです。ラポール形成について詳しくは、以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
直訳すると「調整」という意味になるキャリブレーションですが、心理学やコーチングにおいては「相手の顔色。表情・姿勢など、非言語情報から感情を読み取るスキル」を意味します。
相手が言葉に出せない感情をキャッチすることで、距離感をグッと縮められるようになります。
先ほど紹介した「会話の内容に加えて相手の感情をバックトラッキングする」といった手法を実践するにも、キャリブレーションの技術が必要です。また、キャリブレーションと質問の技術を組み合わせることで、相手のより深い気持ちや考えを引き出すこともできます。例えば、「問題なく終わったのですね。でも、○○さんの表情が少し曇っている感じがするのですが、あまり満足されていないのですか?」といった感じです。
ラジオの電波を合わせるように、心を相手に合わせることをチューニングと言います。チューニングによって相手の感情に寄り添うことで、共感につながります。人それぞれ個性やスタイルが異なるように、コミュニケーションもその人に合わせることが大切です。
またチューニングによって相手の心理状態・感情に合わせることで、相手に合わせた行動を取りやすくなり、コミュニケーションが円滑になります。例えば、悲しんでいる相手に対して、明るい表情や陽気なトーンの口調で話しかけたら、相手とのコミュニケーションはうまく行かないでしょう。相手の心とうまく合わせることが大切で、ミラーリングもチューニング技術の一つです。
人の五感をVisual(視覚)・Auditory(聴覚)・Kinesthetic(身体感覚)に分類して頭文字を取ったものを「VAK」と言います。人によって優先される五感は異なります。そのため、相手の得意とする部位に合わせてコミュニケーションすることで、相手に理解してもらいやすくなります。
たとえば、
といったイメージです。
なお、相手が得意なVAKを特定するためには、会話の中で相手が使う身体表現「見える」「聞こえる」「感じる」に注目することが有効です。
VAKは商談やプレゼンテーションに役立つ他、組織内のコミュニケーションで取り入れると、相手の理解が早くなる、仕事が円滑に進むようになるといったことが期待できます。
相手との信頼関係を構築するうえで有効な方法のひとつがペーシングです。相手の話し方や言葉遣い、表情などを真似ることで親近感を持ってもらいやすくなり、信頼関係のスピーディーな構築につなげられます。
ただし、相手が「自分の真似をしている」と勘づかれてしまうと、逆に不信感になってしまいますので、注意が必要です。露骨に相手の真似をするのではなく、要所で取り入れながらコミュニケーションを取ることが大切です。記事内で紹介したような実践しやすいペーシングの技法から取り入れてみてください。
なお、相手と信頼関係を築くうえでスキルも重要ですが、前提となる考え方も大切です。以下の資料では、周りの人との信頼関係の築くうえで大切な考え方について解説しています。
無料でダウンロードできるので、ぜひ参考にしてみてください。
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