組織の心理的安全性を測る7つの質問とは?質問例と改善のポイント

更新:2023/05/19

作成:2022/01/25

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

組織の心理的安全性を測る7つの質問とは?質問例と改善のポイント

心理的安全性は、チームのパフォーマンスを高めるうえで注目されている概念です。Google社が実施した「Project Aristotle(プロジェクト・アリストテレス)」という研究において、チームの生産性を上げるためには心理的安全性が重要であることが発表されました。

 

以来、心理的安全性は世界中の企業で注目されています。心理的安全性は目に見えにくいものですが、定量化するための質問が存在するため、計測して高めることが可能です。

 

記事では、組織の心理的安全性を測る7つの質問をはじめ、質問例や心理的安全性を改善するためのポイントを解説します。

<目次>

心理的安全性とは

談笑するビジネスマン

 

心理的安全性とは、対人関係において無知、無能、ネガティブ、邪魔といったリスクある行動をとる場合の心理状況を示す概念になります。もう少し平易に表現すると、「チームメンバーを信頼して自分の弱さや失敗を見せられるか?」ということです。

 

心理的安全性はエイミー・C・エドモンドソン氏が提唱した概念ですが、Googleの研究成果によって一気に注目が集まりました。Googleでは自社チームの生産性を向上させる目的で「Project Aristotle(プロジェクト・アリストテレス)」という大規模研究を実施しました。

 

そして、チームの生産性を高めるうえで真に重要なのは「誰がチームのメンバーか」ではなく、「チームがどのように協力しているか」であると結論付けて、チームの生産性を高める最重要の因子は心理的安全性であると発表しています。

 

https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/

心理的安全性の高いチームは、ダニエル・キム氏によって提唱された成功循環モデルにおける「グッドサイクル」と同じ状況になり、以下のような効果が得られます。

グッドサイクル

メンバー間の人間関係が良好になりコミュニケーションが改善されれば、思考の質が高まり、新しいアイデアやイノベーションが起こりやすくなります。お互いの信頼関係があるため、周囲との協同も進み、行動の質も上がります。そして、良質な思考と行動が合わされば、生み出される結果の質も高くなるという仕組みです。

心理的安全性を測る7つの質問

クエスチョンマーク

 

心理的安全性は概念的なものですが、マネジメントするうえでは定量化して現状把握することで、改善したり高めたりするための施策を打ちやすくなります。エイミー・C・エドモンドソン氏は、心理的安全性を定量化する方法として7つの質問を提唱しています。

 

<7つの質問>
Q1. チームのなかでミスをすると、たいてい非難される。
→自分がミスをしてしまったときの、他のメンバーの対応を確認する質問です。励ましてくれたり、ポジティブな言葉をかけてくれたりする場合は心理的安全性が高め、逆に責められたり、ネガティブな言葉をかけられたりする場合は心理的安全性が低めだと判断できます。

 

Q2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
→課題や問題点といったネガティブな内容は指摘しづらく、指摘するとメンバーが不快に感じてしまう、嫌われてしまうといった感情が働きます。しかし、お互いに信頼し合える関係であれば、言いづらい内容も快く指摘することが可能です。

Q3. チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
→性格や考え方は人によってさまざまであり、チームではメンバーごとの個性や違いを受け入れることが大切です。他者を受け入れられないメンバーがいると、自分の本心を抑える必要が出てくるため、心理的安全性は下がってしまいます。

 

Q4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
→チームメンバーの意見に対して異論を唱えたり、懸念事項を指摘したりすることは、相手を不快にさせたり関係性を壊したりするリスクがあります。また、初歩的な質問をしたり、突拍子もない提案をしたりすれば、チーム内でバカだと思われるかもしれません。このように自分の「弱さ」や「無能」につながること、相手を「不快」にして人間関係を壊すかもしれないリスクを感じないということが心理的安全性に直結します。

 

Q5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
→チームというのは、メンバーのスキルや能力をお互いに補いながら目標達成を目指すものです。しかし、「自分の役割だけ果たせばいい」というメンバーがいると、困ったときに助けを求めることができず、心理的な負担も大きくなります。また、ほかのメンバーに助けを求めることは「自分の能力が足りない」ことを示すシグナルにもなりかねません。

Q6. チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
→チームのなかに自分を妬んだり、蹴落とそうとしたりするメンバーがいると、お互いに協力し合うことが難しくなります。場合によっては責任を押し付けられる可能性もあるため、本来の力を発揮しづらい環境だといえます。

 

Q7. チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
→お互いの人間性はもちろん、スキルや経験、才能などを尊重し合えるチームはとても居心地が良いと感じます。また、自分の強みが活かされることで達成感や自己肯定感が高まり、モチベーションが高い状態で業務に取り組むことが可能です。

心理的安全性のチェックシート

7つの質問に、各5段階(まったく記載のとおり~まったく記載のとおりでない)で回答してもらうことで、職場の心理的安全性を測ることが可能です。Q1・Q3・Q5はスコアが低いほうが、Q2・Q4・Q6・Q7はスコアが高いほうが良いと判断します。

 

また、アンケートに本名を記載するとなると本音で回答できないメンバーが出てくるため、匿名で実施したほうが正しい現状を把握しやすくなるかもしれません。

心理的安全性が低かった場合の改善ポイント

アンケートを実施して、心理的安全性のスコアが低かった場合、リーダーやマネージャー、管理職が中心となり、心理的安全性を高めるためのチームビルディングを進める必要があります。心理的安全性を高めるためには、リーダーの振る舞いと、メンバー間での相互理解による信頼関係の構築がとても重要です。

 

リーダーの振る舞い

チームの心理的安全性を確保するには、リーダーの振る舞いが非常に重要です。まず、メンバーにとってリーダーが「安全」な存在である必要があります。メンバーの無知や失敗を受け入れ、人格を否定しない指導を徹底しましょう。

 

また、リーダー自身が無知や間違いを認めたり、失敗を共有したりすることも大切です。上司が自ら弱みをさらけ出すことで、メンバーも弱みを見せやすくなりますし、リーダーに対して親近感が湧き、より信頼関係を築きやすくなります。

 

あるいは、1on1を定期的に行なうのも効果的です。心理的安全性の重要性を発表したGoogleでは、マネージャーとメンバーの1on1が義務付けられており、一人ひとりのメンバーに時間を割くことで「存在が認められている」「大切にされている」という感情を与えることができます。

 

1on1は必ずプライバシーが確保できる場所で行ない、各メンバーの悩みや相談を聞いたり、質問をしたりします。なお、単なる業務の打ち合わせになってしまうと心理的安全性の確保につながりませんので注意が必要です。

メンバーに推奨したい3つの取り組み

心理的安全性を提唱したエイミー・C・エドモンドソン氏は、メンバー個人にできる取り組みとして以下3つを推奨しています。

 

<仕事を実行の機会ではなく学習の機会ととらえる>
競争や変化が激しい現代社会で企業が生き残っていくには、今の保有スキルだけでなく、成長が必要です。したがって、「仕事=スキルを発揮する場」ととらえるのではなく、「学習の場」であるととらえ、お互いの成長を意識ながら日々の業務に取り組むことが大切です。

 

<人は間違うということを認める>
仕事に対して「失敗が許されない」「ミスは致命的」と思っている人は多いですが、恐怖心がある状態で心理的安全性を高めることはできません。

 

この世に完璧な人間などは存在せず、管理職やマネージャークラスでも間違えることはあります。「間違えるのはあたりまえ」という意識を持ち、自分やメンバーの間違いを認めるようにしましょう。

 

<好奇心を形にし、積極的に質問する>
わからないことを質問するのはあたりまえですが、なかには「質問をしたら無知だと思われる」と思って質問できない人も少なくありません。難度が高い内容であればまだしも、基本的な内容に対する質問であればなおさらでしょう。

 

しかし、積極的に質問をすれば他のメンバーも質問しやすい雰囲気になりますし、疑問が解決されることで思考もすっきりします。自分がどう思われるかよりも、「良いチームをつくる」という意識を持つことが大切です。

 

心理的安全性のスコア結果

心理的安全性を高める場合には、①スコアが低かった質問を改善する、②スコアが高かった質問をさらに伸ばす、という2つのアプローチで取り組むことができます。ストレートに弱みを改善することも良いですが、できている部分をさらに伸ばし、周囲に波及させることで、低いスコアを改善できる場合もあります。

 

どちらか一方ではなく、「改善」と「伸ばす努力」にバランス良く取り組んでいくのが効果的です。

まとめ

心理的安全性はチームメンバーに対する信頼性の概念化で、チームの効果性に大きな影響を与える要素です。組織の心理的安全性を高めるには、エイミー・エドモンドソンが提唱した7つの質問が参考になります。

  • Q1. チームのなかでミスをすると、たいてい非難される。
  • Q2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
  • Q3. チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
  • Q4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
  • Q5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
  • Q6. チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
  • Q7. チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。

心理的安全性は概念的なものですが、7つの質問を5段階で回答するアンケートを実施することで、組織の心理的安全性を定量化することが可能です。改善する際には、スコアが低い項目を改善することも有効ですが、スコアが高い項目をさらに伸ばすのも効果的です。

 

心理的安全性の確保はリーダーやマネージャー、管理職が中心になって進めることが重要になるため、まずは普段の意識やメンバーに対する振る舞いから見直しを行なっていきましょう。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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