リーダーの資質とは?マネージャーとの違いや求められる役割・育成のポイント

リーダーの資質とは?マネージャーとの違いや求められる役割・育成のポイント

組織にとって、チームを率いる管理職やリーダーの重要性は言うまでもありません。組織としての成果を生み出し、メンバーを育成するのがリーダーの役割です。

 

記事では、リーダー育成のポイントを模索する方向けに、リーダーの定義や一般的に言われるマネージャーとの違い、優れたリーダーに求められる5つの資質、リーダー育成のポイントなどを解説します。

<目次>

リーダーとは?

メンバーを率いるリーダー風の男性社員

リーダーは、言葉の通り“リーダーシップを発揮する人”です。リーダーシップとは「向かう方向を決め、ゴールを示して先導する」ことを意味します。

 

 

リーダーとマネージャーの違い

リーダー(リーダーシップ)とマネージャー(マネジメント)はよく混同される概念ですので、まずは2つの違いを確認しておきます。

 

リーダーシップ              :向かう方向を決め、ゴールを示して先導する

マネジメント                  :資源や施策を工面し、目標達成のプロセスを管理する

 

つまり、リーダーとは「ゴールを決めて鼓舞する人」、マネージャーは「ゴールまでのプロセスを決めてやり遂げる人」を指します。想像すればお分かりの通り、どちらも組織内の全メンバーが持つべきものであり、自分に対して発揮するリーダーシップやマネジメントを、セルフリーダーシップ/セルフマネジメントと呼びます。

 

一方で、実務的には組織における“リーダー”という呼称は“マネージャー”や“管理職”、“小チームのプレイングマネージャー”などを指すことが多くなります。

 

本記事でも、次章からは組織内における“リーダー”、“管理職”や“プレイングマネージャー”を想定して、「リーダーシップ」にウェイトを置いて素質や育成方法を紹介します。

 

 

リーダーとボスの違い

リーダーシップとマネジメントの違いに続いて、もう一つ、リーダーとボスの違いを紹介しておきます。

 

イギリスの高級チェーン“セルフリッジズ”の創業者であるハリー・ゴードン・セルフリッジは、リーダーとボスの違いを示す以下の言葉を残しています。

 

  • ボスは恐怖を与え、リーダーは熱意を引き出す
  • ボスは部下を追い立て、リーダーは方法を示す
  • ボスはやり方を知っている、リーダーはやって見せる
  • ボスは「私は」と言い、リーダーは「我々は」と言う
  • ボスは「やれ」と言い、リーダーは「やろう」と言う

 

セルフリッジの言葉が示すように、ボスはメンバーに恐怖を与える支配的な存在です。一方でリーダーは、チームの目標やビジョンを共有しながら、自らもメンバーと一緒に取り組む姿勢を持つ人のことを指します。組織の管理職を育成するうえでは、“ボス”ではなく、“リーダー”を育てることが重要です。

リーダーの役割

組織のリーダーには以下の役割が求められます。

 

  • 組織の目標や方針を決定する
  • メンバーに目標や方針、戦略などを共有する
  • ミッションやビジョンの実現、目標達成に向けてチームをまとめる
  • 必要に応じてメンバーをフォローする
  • チームメンバーに指導やフィードバックを行なう

 

優れたリーダーに求められる5つの素質と素養

リーダーに求められる資質には5つの要素があると言われます。それぞれの特徴や教育方針などを紹介します。

 

 

コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルとは、コンセプトやビジョンを示して人々を引っ張ったり鼓舞したりする力です。コンセプチュアルスキルは概念化力とも呼ばれ、“複雑な事象をシンプルに概念化して捉える力”でもあります。

 

コンセプチュアルスキルを習得すると、複雑で正解がない事柄を扱いやすくなります。ミッションやビジョンの浸透、戦略や施策の意思決定、複雑な課題解決など、組織のリーダーは複雑で正解がない事柄を扱います。管理職等としての役割が上位になるほど、コンセプチュアルスキルは必要不可欠になります。

 

コンセプチュアルスキルを高めるには、言葉の定義を考えてみたり、例え話や事例を使って具体的に説明したりするトレーニングが有効です。コンセプチュアルスキルについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

 

 

意思決定力

意思決定力とは、正解がないなかで目標達成の手段を考え、選択決定するスキルです。組織では、リーダーが右か左かを決断して示さなければ、メンバーが動けないことが多々あります。意思決定力はリーダーシップの根幹となる力です。

 

したがって、リーダーには責任を引き受けて意思決定する決断力、メンバーが不安を抱えている想定外のトラブル対応や新事業においても、未知の事象や失敗を恐れず挑戦するチャレンジ精神が必要となります。

 

なお、組織内における意思決定は、組織全体の戦略や方針に沿って行なわれる必要があります。したがって、組織内のリーダーは、組織全体のミッションやビジョン、戦略を的確にとらえたうえで、組織の価値基準や全体戦略に沿って意思決定する必要があります。

 

組織全体の価値基準や全体戦略を理解するうえでも、リーダーにはコンセプチュアルスキルが求められます。

 

 

人間性

人間性とは、個人の人格、周囲に対する尊重や敬意といった「人としての在り方」です。マネジメントの世界で「リーダーとはフォロワーがいる人のことである」と言います。

 

ポジションとして部下がいるか?ではなく、自分を信頼して自分の意思決定や決断についてきてくれる人がいることが、リーダーシップの証です。人間性が高いリーダーは、チームメンバーと信頼関係を築き、効果的なリーダーシップを発揮することができるでしょう。

 

人間性は、研修などで教えて身に付くものではありません。一方で、長い時間をかけて後天的に磨いていくことができるものです。したがって、組織内において、次世代リーダーとして期待する人材には、新人のうちから間性を高める教育を施すことが必要です。

 

 

受容力

受容力とは、メンバーを平等に扱い、周囲の意見を聞く力であり、自分と異なる意見に耳を傾ける力です。リーダーの受容力が高ければ、メンバーはリーダーを信頼して積極的に相談したり、意見を述べたりできるでしょう。

 

他者を受容する力を高めるには、ありのままの自分を受け入れる自己受容が基盤となります。受容力は、心理的安全性の高い組織をつくるうえでも重要なスキルとなりますので、リーダーは自己肯定感や受容力を磨いていくことが大切です。

 

 

発信力

発信力は、自分の意思や思考を明確に力強く伝える力です。発信した目標や方針に沿ってメンバーに動いてもらうには、一方的にアウトプットするのではなく、相手の理解度を意識した伝える必要があります。

 

方針や思考をわかりやすく伝えるには、例え話などを活用できるコンセプチュアルスキル、分かりやすく論理だって伝えるロジカルコミュニケーション力などが必要です。

 

リーダーの発信内容は、部下との信頼関係があるからこそ耳を傾けてもらえます。マネジメントの世界では、「人は何を言われたかよりも、誰に言われたかで動く」とも言われます。自分のメッセージを受け取ってもらうためにも、リーダーは日頃から人間性や信頼関係を高めることが必要です。

リーダーに向く人、向かない人の特徴

リーダーと他メンバーを表すブロック

リーダー候補の人材育成などをするときには、リーダーとして活躍できる人と、現時点で向いていない人を見定めることも必要です。

 

 

リーダーに向いている人の特徴

リーダーに向いている人は以下のような特徴を持っています。

 

・仕事において明確な目標やビジョンを持っている

リーダー向きの人材は「何のために働くのか?」「何をするのか?」「どのようなチームにしたいのか?」などについて、普段から考え、具体的な目標やビジョン、自分なりの意見があります。

 

目標やビジョン、価値観等が明確であればこそ、正解がない中で意思決定が出来ますし、一緒に働くチームメンバーも目標達成に向けて協働しやすくなります。

 

・責任感が強く行動力がある

メンバーが「この人についていこう!」と思うためには、自分の言動や意思決定に責任を持つ姿勢と、自他を信じて突き進む高い行動力が必要です。責任感の強いリーダーの下では、チームメンバーも失敗を恐れず挑戦などをしやすくなります。

 

・コミュニケーション能力に長けている

リーダーには、目標の発信、ミーティングのファシリテーション、部下のフォロー、他チームや取引先との連携、顧客との交渉など、様々な場面で高いコミュニケーション力が求められます。

 

したがって、リーダーには、部下だけでなく幅広い人と関係性を築くことも求められます。自分の意見を伝える発信力と、相手の意見や価値観を受け入れる受容力、双方のバランスも重要になります。

 

 

リーダーに向いていない人の特徴

以下の特徴がある人は、現時点ではリーダーにあまり向いていないでしょう。

 

・全部一人で解決しようとする

プロジェクトの目標は、チームメンバーみんなで達成すれば良いのです。リーダーがメンバーに仕事を任せなければ「自分は信頼されていない」と感じるメンバーもいるでしょう。したがって、他人を頼れない人と言うのは、真の意味でのリーダーにはなれません。

 

ただし、リーダーはチームを先導する人です。したがって、部下に仕事を任せきりにしたり、メンバーを放置したりする人もリーダーとはいえません。

 

・明確な意思決定や発信・指示ができない

方針や目標に関するリーダーの曖昧さは、チームメンバーに不安を与えます。また、リーダーの指示が曖昧であったり、的確でなかったりする場合、メンバーの戸惑いや勘違いによるミスが起こりやすくなるでしょう。

 

また、リーダーが意思決定できなければ、そもそも組織は行動できません。正解が分からないと意思決定できない人はリーダーには向きません。

 

・周囲への配慮に欠ける

メンバーへの気配りは、信頼関係を築いたり目標達成に向けて協働したりするチームを目指したりするうえで大切な要素です。配慮に欠けたリーダーの下では、メンバーのモチベーションも下がりやすくなってしまうでしょう。

 

周囲への配慮とは、たんに仲良くすることではありません。成果を追求しながら、相手の利害や立場、仕事のしやすさに気を配り、相手の仕事や“個人”としての存在を尊重することがリーダーに求められる配慮です。

リーダー育成のポイント

リーダー育成をする際には、適切なリーダー候補の選抜や育成目標の決定が重要です。その他、各個人の素質を伸ばす・発揮させるために、仕事の経験や育成において3つのポイントを意識すると良いでしょう。

 

 

体験から学びスキルを育成する

リーダーに必要なスキルは、座学でテクニックを教えてもらうだけで身に付くものではありません。現場で経験し、成功や失敗を振り返り、学びを得ながら少しずつ備わっていくものです。

 

体験を学びとして成長するサイクルを身に付けるには、「コルブの経験学習モデル」が参考になります。また、リフレクションの技術を学ぶことも有効です。コルブの経験学習モデルやリフレクションは下記の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

OFF-JT

リーダーシップを効果的に発揮するには適切な知識も必要です。また、気づきを得たり、人間性を磨いたりするうえでも、日常から離れたOFF-JTが有効です。

 

<OFF-JTと現場体験の繋がり>
  • OFF-JTで学ぶことで体系的な知識を身に付けて、効率よく仕事に取り組む
  • 学んだ知識を踏まえながら、仕事で多くの成功と失敗を体験する
  • 日報等で仕事と近い距離でリフレクションを行って経験を学びに変える
  • 現場から離れたOFF-JTでリフレクションを行って大きな気づきや刺激を得る

 

人材育成は、上記のようなサイクルを意識して、OFF-JTと仕事での体験を上手く組み合わせることがポイントです。

 

なお、リーダー研修は、新入社員と違って高いレベルの知識や指導力が必要となります。そのため、場合によっては、社内研修にこだわらず、専門講師による外部研修などを取り入れることもおススメです。

 

リーダー研修(管理職研修)を効果的にするポイントは下記の記事で解説しています。

 

 

期待や役割を伝え、コミュニケーションを取る

意思決定を行い、責任を引き受けるリーダーは時に孤独な存在です。成長途上のリーダーは悩みも抱えがちです。したがって、リーダーのモチベーションを高め、自覚を持って役割を担ってもらうには、上司や経営陣の期待を具体的に伝えることが重要です。

 

また、成長途上のリーダーについては、リーダーの上司や経営陣が定期的にコミュニケーションを取って、孤独や悩みを解消する働きかけが大切です。

まとめ

リーダーとは、“目的や方向性を指し示して先導する”存在です。概念としてはリーダー(リーダーシップ)とマネージャー(マネジメント)は異なるものですが、現実的には組織における管理職は、リーダーとマネージャー、両方の役割を求められることになります。

 

記事では、リーダーシップにウェイトを置いて、管理職(組織のリーダー)に求められる5つの資質を紹介しました。

 

  • コンセプチュアルスキル
  • 意思決定力
  • 人間性
  • 受容力
  • 発信力

 

リーダーとして必要な素質を伸ばすには、OFF-JTで体系的な知識を学び、現場で経験し、振り返りを通じて成長を促すサイクルが重要になります。組織におけるリーダー育成を模索する方は、ぜひ記事で紹介したポイントを参考に育成計画を立ててみてください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
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