ストレスマネジメントとは?重要性と能力向上のポイントを解説

更新:2022/04/21

作成:2021/11/01

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

ストレスマネジメントとは?重要性と能力向上のポイントを解説

「ストレスマネジメント」は、ストレスをコントロールしてうまく対処するための技術です。
昨今の日本ではメンタルヘルスの不調による休業や退職が増え、組織の大きな課題となっています。
対応すべき情報量の拡大、人間関係の悩み、感情労働の増加などの状況下において、心の健康を保つことに有効なストレスマネジメントの力を身に付ける重要性は、ますます高まっています。
記事では、社員のストレスマネジメント能力を伸ばすための方法や、組織が提供できるサポートについて解説していきます。

<目次>

ストレスマネジメントとは?

頭を抱える男性

ストレスマネジメントとは、「ストレスを管理する」こと、つまりストレスとの上手な付き合い方を考え、ストレスを緩和するための適切な対処方法(コーピング)を行なったり、ストレスに対する認識を変えたりすることを指します。
社会生活のなかでは、多かれ少なかれストレスが生じるものであり、ストレスをまったく受けないようにすることは不可能です。
また、ストレスは必ずしも常に悪者というわけではありません適度なストレスは緊張感を生み出し、パフォーマンス向上に役立ちます。しかし、過度のストレスが仕事のパフォーマンスを損ねるだけでなく、メンタルに悪影響をおよぼすことは周知のとおりです。
そこで必要になるのがストレスマネジメントです。ストレスマネジメントのスキルを習得すれば、ストレスの受け方を減らしたり、ストレスを受けたときのメンタルや身体への影響度を抑えたり、ストレスを解消したりすることができます。
個人として、ビジネスパーソンがストレスマネジメントの能力を身に付けることは有効です。また、組織は、生産性を高め損失を避けるために、メンバーのストレスマネジメント力を高める支援をすることが求められているといえます。

ストレスマネジメントの重要性

近年、わが国ではメンタル疾患による長期休業や退職の数が増えており、社会的な問題になっています。
マネジメントの観点から、社員のメンタルヘルスの問題を考えてみましょう。過度なストレスを抱えた社員は、本来のパフォーマンスを発揮できなくなります。離職のリスクも高まります。過度のストレスを抱えた社員が増えれば、チームの業務遂行や組織の目標達成にも悪影響を与えてしまいます。
2015年12月に施行された改正労働安全衛生法により、労働者数50人以上の事業所において 「ストレスチェック」と「産業医の選任」を行なうことが義務化されました。
ただし、ストレスチェックと産業医の選任は、うつ病などのメンタル疾患を防ぐための最低限の措置であり、社員のパフォーマンスを高い状態に保つための十分な対処ではありません。
メンタルヘルスに関する課題をより効果的に解決するためには、ストレスの状況を確認するための「ストレスチェック」、ストレスに関して相談するための「産業医の選任」に加えて、日頃からストレスとうまく付き合うための「ストレスマネジメント」の考え方を取り入れるとよいでしょう。
具体的には、ストレスマネジメントの考え方や理論、技術を各社員が理解し、日常的に実践できている状態を作ること、また、各個人のストレスマネジメント力を高めるとともに、支援するための組織的な取り組みを行なうことも効果的です。

そもそも「ストレス」とは?

ストレスマネジメントのスキルを身につけるためには、まず「ストレスとは何か」を理解する必要があります。「ストレス」とはもともと、物体に対して外側から圧力がかかり、圧力によって物体に歪みが生じた状態を指す用語であり、物理学の分野で使われていました。
人間の心に関しても同じようなことが起きているという解釈で、心理学の世界で取り入れられて、現在に至っています。
心理学における「ストレス」の概念を理解するには「ストレッサー」と「ストレス反応」という2つの概念を知っておくとよいでしょう。それぞれの用語を以下で説明します。

ストレッサー

ストレッサーとは、ストレスを引き起こす外部からの刺激(圧力)のことです。
一般的には、ストレスやストレッサーという単語からは「心」に負担がかかっているイメージを抱きやすいかもしれませんが、心への刺激だけでなく、身体への刺激もストレッサーになります。ストレッサーの刺激が大きければ大きいほど、生じるストレスも大きくなります。
では、職場に存在するストレッサーはどのようなものがあるでしょうか。以下で、ストレッサーの種類と具体例を紹介します。

  • 社会・環境的ストレッサー:仕事の量、質、人間関係など
  • 精神・心理的ストレッサー:不安、恐怖、焦り、怒り、劣等感などの感情
  • 身体的ストレッサー:疲労感、倦怠感、痛み、空腹、眠気など
  • 物理的・生物的・化学的ストレッサー:温度、湿度、騒音、天候、タバコ、ウイルスなど

 

一般的に「ストレスの原因」として想像するもの以上に幅広いことが分かると思います。

ストレス反応

上述のような「ストレッサーによって引き起こされる身体的・心理的な反応」のことを、ストレス反応と呼びます。より正確にいうなら、ストレス反応は、ストレッサーに適応しようとして心や身体に生じる反応を指します。
ストレス反応は、「メンタル・心理的反応」「身体的反応」「行動的反応」の3つに大別できます。具体例を紹介します。

  • メンタル・心理的反応:イライラ、不安、恐怖、焦り、抑うつ、無気力などの状態
  • 身体的反応:腰痛や頭痛、腹痛などの身体の痛み、肩や首などの身体のこりや重さ、呼吸の変化、動悸、下痢や便秘などの身体症状
  • 行動的反応:仕事上のミスの増加、作業スピードの低下、不注意、喫煙量や飲酒量の増加など行動の変化

 

ストレス反応は、環境変化に適応するために、生き物にもともと備わっている機能です。しかし過剰なストレス状態に置かれると、望ましくないストレス反応が長期間にわたって生じてきます。
そして、望ましくないストレス反応が継続している状態が続けば、離職につながったり、メンタル疾患にかかってしまったりする恐れがあります。こうした事態を防ぐために、ストレスマネジメントが必要なのです。

ストレスマネジメント能力向上のポイント

身だしなみを整える男性

重要度が増しているストレスマネジメントのスキルを向上させるために注目すべきポイントや、取り入れるべき方法をご紹介します。

個人のストレスマネジメント力向上

ストレスマネジメント力を向上させるためには、「ストレスコーピング」のスキルを身につけることが効果的です。ストレスコーピングとは、ストレスを感じたとき、要因であるストレッサーにうまく対処する方法を指します。
ストレスコーピングのスキルを身につけて活用することで、仕事をはじめ、日常生活の多くの場面で、自分自身でストレスを適度なレベルへと管理できるようになります。
ストレスコーピングには「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」の2種類があります。問題焦点型コーピングは、ストレッサー自体に直接働きかけ、その状況を変化させることで解決を目指す対処法です。
情動焦点型コーピングは、ストレッサーになっている状況や問題そのものをどうにかするのではなく、状況や問題に対する自らの考え方や感じ方を変えたり、ストレス解消法を用いて不快な感情を軽減させたりすることで解決を目指す対処法です。
例えば、職場の人間関係がストレスとなっているとき、相手に働きかけたり第三者に支援を求めたりして、原因となっている人間関係の問題を解決しようとするのが問題焦点型コーピングです。
問題が解決できれば良いですが、例えば、人間関係のストレスであれば、問題になっている相手の言動を変えることは難しいかもしれません。
問題となっているストレッサーを消し去れない場合に効果的なのが、情動焦点型コーピングです。上述の人間関係であれば、以下のような方法が情動焦点型コーピングの例です。

<人間関係に関する情動焦点型コーピングの一例>
  • 他人の言動のとらえ方や思考のクセを見直す
  • 考え方の違う人と協力して目標を達成するチャンスだと考える
  • 自分に合った気晴らしの方法を見つけて実施する(運動をする、温かい飲み物を飲む、友人・知人と雑談をする、何もせずに休むなど)

 

問題焦点型コーピングのスキルを高めることでストレッサーそのものを消し去る。そして、消し去れない場合には情動焦点型コーピングでストレスを受けないようにしたり、ストレスを解消したりすることができます。
多様なストレスに対応するためには、ストレスコーピングのレパートリーをなるべく多く持っておくことがポイントです。ストレスコーピングの方法に偏りがあると、手持ちの方法で対処できない問題が生じたとき、「解決できないこと」自体が大きなストレスとなってしまう恐れもあります。
ストレスコーピングのスキルを高めるためにおススメしたいのは、「コーピングリスト」の作成です。
ストレスを感じていない状態で、問題解決型コーピングや情動焦点型コーピングの方法をできるだけたくさん書き出しておくのです。問題の解決方法、問題の捉え方、ストレスの解消方法を思いつく限り書き出しましょう。
作成したリストをいつでも見られる場所に置いておき、ストレスを感じたときに、リストから好きな方法を選んで試すのです。過度なストレスを感じている時は、どうしても思考も制限されてしまいます。その時にコーピングリストが役立ちます。

組織のストレスマネジメント力向上

個人のストレスマネジメントのスキルを向上させるためには、組織のサポートも有効です。まず考えられる手段が、研修の実施です。前述したストレスコーピングやレジリエンス、マインドフルネスの技術を学べるような研修の導入は効果的です。
最終的に技術を実施するのは各個人ですが、ストレスコーピングやマインドフルネスなど、ストレス発生の理論や対応の技術を知っているだけで、対応できる幅は広がります。組織として学ぶ機会をぜひメンバーに提供しましょう。
また、研修を取り入れるだけでなく、普段の業務内でサポートを提供することも大切です。コミュニケーションツールを導入したり、定期的な面談を設置したりと、日頃から部下の心理状態、ストレス状態に気を配れる仕組みを作りましょう。
遅刻や早退が増えたり、仕事のなかでミスが目立つようになったりと、いつもと違う様子に気付いたときに、早期のサポートを提供することも大切です。
なかなか上司だけでは手が回らないとき、問題が深刻化しそうなときには、早めに産業医やカウンセラーのような外部の専門家にストレスマネジメントを委ねることもポイントです。
もちろん、取り組みの大前提として、メンバーとの間に信頼関係が構築されている必要があります。メンバーにとって上司が「いつでも相談できる存在」であることが、ストレスマネジメントの土台となります。日頃から組織内のコミュニケーションを活性化させ、良い関係の構築に努めましょう。

まとめ

メンタルヘルス不調の増加にともなって、ストレスマネジメントの重要性は、よりいっそう高まっています。

 

仕事をするうえで受けるストレスをゼロにすることはなかなか困難ですが、ストレスのコントロール方法や緩和方法を身につけることで、メンタルヘルスの不調を予防することができます。

 

ストレスマネジメントの力を向上させるには、ストレス発生の理論、またストレスコーピングの技法であるストレッサーの解消、捉え方の変更、ストレス解消などを身に付けることが有効です。組織として、メンバーがストレスマネジメント力を高める機会を提供しましょう。

 

個人のストレスマネジメント力を向上させるとともに、マネジメントとしてもメンバーの心理状態やストレス、異常を早めに察知して、対応できる体制を敷くことが大切です。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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