本章では組織において、社員の主体性を引き出し、発揮してもらう方法をいくつか紹介します。
仕事に意味や価値を見出してもらう
自分がしている仕事に意味や価値を見出していなければ、主体性は発揮されません。言い換えれば、仕事に主体的に取り組むには、自分が取り組んでもらうことの意味や価値を見出すことが前提となります。
仕事の意味づけをするには、組織のミッション・ビジョン、サービスの提供価値、「本人が大切にしたい価値観と仕事の一致点」の探索等が重要です。
意味や価値、意義が明確になると、仕事に対してやりがいや目的意識が生まれます。研修やマネジメントなどを通じて、メンバーに仕事の意味や価値を見出してもらえるように取り組みましょう。
将来の夢や目標を持つ
仕事の意味や価値をもう一段落とし込んだ形で夢や目標を持つようにすると、短期的な成功や失敗の影響でモチベーションが上下しにくくなります。落とし込む際に大切なことは、現実的な短期目標だけでなく、ワクワクできる中長期的な目標も設定することです。
なお、目標や夢は、自分自身の欲求と仕事で生み出す価値(他者や組織への貢献)という2つの軸で考えることがおススメです。
①自分自身の欲求
ex)
・全社の年間トップセールスを目指す
・◯◯さんのような頼れるスーパーバイザーになる
・社長表彰でハワイに行く
②仕事で生み出す価値(他者や組織への貢献や状態)
ex)
・30社の採用を成功させる
・自社を上場させる
・家を買って、家族を幸せにする
ただし、メンバーにいきなり「夢や目標を持て」と言っても、なかなかピンとくるものではありません。また、ほとんどのビジネス組織では、目標管理制度が取り入れられており、四半期や年間目標が決まっています。そのため、場合によっては、短期的に個人としてワクワクする夢や目標を描きにくいこともあります。
この場合は、夢や目標を持つきっかけを研修で作ることも一つの方法です。例えば、「ドリームマネジメント」という研修は、社員の夢を具体化して、マネジメントに活かすうえでおススメの研修です。
以下の記事で、目的や目標に動機付けする「目的・目標の4観点」というやり方を紹介していますので、ご興味あれば、ぜひご覧ください。
自分の意見を発信する練習をさせる
主体性を発揮するうえでは、自分の意見や考えを持ったり、発信したりする経験を積むことが大切です。
意見を発信させる機会を設けることは、考えさせる練習にもなります。また、提案した意見が採用された経験は、後述する成功体験の獲得や自己効力感UPにもつながってきます。
なお、意見を発信させるためには、「自分が発信した意見や考えを周囲がフラットに受け止めてくれる環境」が大切です。
自分の考えや意見を、周囲の批判などを恐れずに発信できる環境を、心理的安全性が高い組織と呼びます。心理的安全性が高い組織では、上司やメンバー同士が信頼し合っており、「レベルが低いと思われる」「的外れと批判される」といったことを心配せずに意見を発信できます。マネジメント側として、心理的安全性が高い環境を作ることが、メンバーの主体性を引き出すうえで大切になります。
考えて提案する機会をたくさん設ける
主体性があるとは、自ら積極的に考えて提案・行動することです。
「意見を発信する練習」と同じように、「考えて提案する機会」をたくさん設けることも重要になります。マネジメントするうえでも、上司がすぐに施策や方針を決めて指示するのではなく、メンバーに一度考えて提案させるといったことが大切です。
自分発で変化が起きた成功体験を持たせる
メンバーの主体性を引き出すうえでは、自分発の意見や行動が周囲に良い変化を起こした成功体験をしてもらうことが重要です。
逆に、意見の発信や提案をしたときに上司から頭ごなしに否定される経験が多ければ、「意見を発信したり、提案したりしても意味がない」とメンバーの主体性は下がっていきます。
一方で、自分の意見や提案によって成果が生み出された経験をすると、「次も提案してみよう」とメンバーの主体性が引き出されるようになります。大きな体験でなくても、小さなテーマや難易度が低い課題を使って、積極的にメンバーに成功体験を積ませることが大事です。
マネジメントするうえでは「成功体験だと認識してもらう」こともポイントです。感謝や承認を通じて主体的に行動する楽しさを感じさせ、振り返りを通じて「自分の提案や行動が成果につながった」という認識を生み出す働きかけを行いましょう。成功体験が重なると、目の前の困難や新たなチャレンジに対しても、失敗を恐れず挑戦できるようになるでしょう。
自己効力感を高める
自己効力感とは、「自分はこの仕事をできる」「自分はやり遂げられる」という有能感のことです。自己効力感が高まると、内発的動機が高まり、主体的に行動できるようになります。
自己効力感という概念の提唱者であるバンデューラは、自己効力感を決定づける先行要因として、先述の成功体験(達成体験)を含めた以下4つを挙げています。
- ①達成体験:過去に目標達成した経験
- ②社会的説得:自分の能力やスキルについて、他者から言葉で褒められる
- ③代理体験:誰かの目標達成を観察する
- ④生理的感情的状態:生理的・感情的にモチベーションが高まる
メンバーの自己効力感を高めるには、成功体験を積ませるほかに、上司やリーダーによるスキルの承認や強みへのフォーカス、ポジティブなフィードバックを与えるなどのフォローが効果的です。また、心身の健康を維持するような習慣形成やチームの一員として目標達成を体験したりすることも有効です。
自己肯定感を高める
自己肯定感とは、「ありのままの自分を肯定し、好意的に受け止められる」感覚です。自己肯定感が高まると、物事や自分を肯定的に見ることができ、主体性の発揮につながります。
チームメンバーなどの他人の意見を尊重・肯定するうえでも、自己肯定感は大切なものとなります。マネジメントのなかで自己肯定感を高めるためには、「一個人」としての相手を尊重するコミュニケーションが大切です。能力や成果だけに注目すると自己肯定感は高まらないため、注意しましょう。