人材育成をするうえでは、いくつかのフレームワークや原則を理解して活用すると、育成効果を高めることが出来ます。
本章では人材育成でよく使われるフレームワークを解説していきます。
【フレームワーク①】コルブの経験学習モデル
「コルブの経験学習モデル」は、経験から学び成長するステップを説明したモデルです。
<コルブの経験学習モデル>

- 1)経験:業務において体験する
- 2)省察:体験の内容を振り返って整理・考察する
- 3)概念化:次に活かせるように概念化/抽象化する
- 4)試行:次の機会に実際に試してみる
経験学習モデルを理解しておくと、業務日誌や振り返りなどを使った成長が加速されますので、指導者はしっかり理解して指導に反映することがお勧めです。
経験学習モデルを踏まえて日誌の項目(質問)を作成する、また、振り返り等で「何があったか?(客観的な事実と主観的な事実の整理)」「もう一回やるならどうするか?(考察)」「何を学べるか?(概念化)」といった形で質問することで新人や若手の学習が加速します。
【フレームワーク②】ギャップ分析
「ギャップ分析」は、理想と現状のギャップ・課題を洗いして、理想に到達するための解決策を洗い出していくためのフレームワークです。
非常に単純ですが、業務目標でも成長目標でも、汎用的に使えますので、思考習慣として身に付けることがおすすめです。
手順もシンプルで、
- 1)理想を言語化する(業務目標の場合はなるべく具体化・定量化する)
- 2)現状を整理、言語化する
- 3)理想と現在のギャップを書き出す
- 4)ギャップに対する取り組みの優先順位や解決策を考えて書き出す
- 5)実行できるタスクに落とし込んでスケジューリングする
というだけです。
新人はもちろん、若手や中堅に対しても有効です。たとえば、若手や中堅社員のキャリア目標等を一緒に考えていくうえでは非常に有効です。
【フレームワーク③】7:2:1の原則
「人は何から影響を受けて成長するのか」を表したのが「7:2:1の原則」です。もともとは、管理職に対する「何を通じて成長したか?」というアンケート調査の結果をまとめたものです。
それによると、
- 7割:実際の業務経験
- 2割:上司や周囲からのアドバイスやフィードバック
- 1割:研修や読書で学んだこと
となっています。
これらから分かることは、人材育成するうえで実際の業務経験を積ませて成長させることが非常に重要だということです。
人材育成においては、「あいつにはまだ無理だろう・・・」ではなく、「試しにやらせてみよう」といった、指導者側のマインドが人材の成長を加速させます。
もちろん、いきなり業務をやらせるだけでは潰れてしまいます。事前にOff-JT等の研修を通じてインプットする、その上でフォローしながらやらせてみる(アドバイスとフィードバック)。そして、日々、あるいは節目のタイミングで前述したコルブの経験学習モデルを踏まえて振り返りを行うという一連のサイクルを意識することがポイントです。
【フレームワーク④】4:2:4の原則
「4:2:4の法則」は、「研修の効果性(行動変容)に影響を与える要素の比率」を示した法則として、人材育成の分野では有名な法則です。
<研修の効果(行動変容)に影響を与える要素の比率>
- 4割:事前学習や準備
- 2割:研修内容
- 4割:研修後の実践
つまり、研修自体の内容やクオリティよりも、研修前の仕掛け(事前説明会や課題など)と研修後のフォローアップこそが研修効果に大きく影響を与えるのです。
研修の効果を高めるためには、研修自体のプログラムを磨くことも大切ですが、
- 前向きなマインドや姿勢で参加してもらうための取り組み
- 個々の業務へのブリッジング
- 実践やTodoへの落とし込み
- 実行のフォローやチェック
といった前後の仕掛けが大切になるということです。
人材育成で外注先を選ぶ、また、社内でプログラムを設計する時にはぜひ注目しておきたいポイントです。
なお、研修前後の効果性を高めるためには、上司も一緒に巻き込むことも大切です。
- 上司から成長テーマや期待を伝えてもらう
- 研修から戻ったとき、上司に研修報告、とくに実践する内容を報告してもらう
- 上司に研修のポイントを共有して、研修後にフォローしてもらう
等が有効です。
【フレームワーク⑤】モチベーション理論(内発的動機付け)
「モチベーション理論」は、心理学者であるエドワード・L. デシ(Edward L. Deci)が提唱した動機付けに関する行動心理学の理論です。デシは、発表のなかで「外発的動機付け」よりも「内発的動機付け」の方が社員は、高いパフォーマンスを継続できるということを述べています。
- 外発的動機:金銭、評価、地位、感謝など、仕事の結果に対して外部から与えられる動機(モチベーション)
- 内発的動機:貢献、やりがい、成長実感、充実感など、仕事の内容自体に対して内部から湧き上がる動機(モチベーション)
外発的動機づけは即効性があり、また、外部から提供するからこそ上司や組織が影響可能な部分です。その意味で悪いものではありません。ただし、強力で継続するのは内発的動機です。
従って、部下やメンバーが、各自でセルフモチベート(内発的動機づけ)できるようにコミュニケーションを取っていくことが人材育成において重要です。
内発的動機付けを推進していくためには、上司と部下とのコミュニケーションが必要不可欠です。
たとえば、1on1ミーティングやコーチングなどを行なうことも効果的です。仕事の目標や仕事そのものに対しての意味付けを考えたり、一緒にキャリアプランや成長目標を作ったりすることが内発的動機付けにつながります。
【フレームワーク⑥】マクレランドの欲求理論
組織で働く個人には、「達成欲求」「親和欲求」「権力欲求」「回避欲求」という4つの欲求が存在しているという、アメリカの心理学者マクレランドが提唱した理論が「モチベーション理論」です。社員がどんな欲求(動機)を持っているのかを把握することは、効果的な人材育成やマネジメントに活用できます。
まずは、相手がどのような欲求を持っているのかを把握することが重要です。そのうえで、相手の欲求に応じて動機付けやコミュニケーションの方法を変えていくことがポイントになります。
簡単に各タイプの特徴を把握します。特徴を踏まえて、それぞれの欲求に指示の仕方やコミュニケーション、仕事の意味づけをすると良いでしょう。
【権力欲求が高い人の特徴】
- 地位や身分を得たい
- 他者や周囲に影響を与えることが好き
【フレームワーク⑦】ソーシャルスタイル理論
「ソーシャルスタイル理論」とは、人のコミュニケーションや立ち居振る舞いの傾向を4つに分類したものです。「感情表現が多い/少ない」「自己主張が多い/少ない」という2軸のマトリクスで、ソーシャルスタイルを4つに分類します。
【ソーシャルスタイルの4分類】
ドライビング:感情表現が少ない、自己主張が多い
エクスプレシッブ:感情表現が多い、自己主張が多い
エミアブル:感情表現が多い、自己主張が少ない
アナリティカル:感情表現が少ない、自己主張が少ない
ソーシャルスタイルを知ることで「あの人とは何となく自分と合わない」という感覚的なものが解消され、「なぜ合わないのか?」「どうすれば合うのか?」を理性で理解できます。合わない理由を言語化されることで、感情的・感覚的な好き嫌いが減少しますし、理性的に相手に合ったアプローチをすることも可能です。
ソーシャルスタイルは、営業職や販売職のトレーニングとしても有効ですし、人材育成やチームビルディングにおいても、相互理解を深める、対象に合わせて指導を行う等で活用できます。