目標設定の具体例 職種や階層別の定番と設定を効果的にするポイントを解説

更新:2023/05/22

作成:2022/06/14

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

目標設定の具体例|職種や階層別の定番と設定を効果的にするポイントを解説

目標達成力の強い組織を作るには、適切な目標設定も欠かせません。記事では、目標設定に盛り込むべき要素や、職種と階層ごとの目標設定 具体例を紹介します。目標管理制度を効果的に運用するためのポイントも解説しますので、目標設定の参考にしてください。

<目次>

目標設定を効果的にする基礎原則「SMART」

目標設定では、まずSMARTの原則を満たすよう設定することが大原則です。

<SMARTの原則>
  • Specific(具体的)
  • Measurable(測定可能)
  • Achievable(達成可能)
  • Relevant(上位目標とのリンク)
  • Time-bound(明確な期限)

ご存じの方も多いと思いますが、ビジネス現場でSMARTの原則を押さえていない目標設定がされていることは意外と多いものです。

 

目標を考えるプレイヤー側、また、目標を確認・承認する管理職側、双方がしっかりと効果的な目標設定の知識を持たないと、目標達成に強い組織をつくることはできません。

 

たとえば、「新製品Aの販売に力を入れる!」というのは、漠然としていて達成に向けた計画を立てられませんし、進捗の評価もできません。これは目標ではなく、単なる方針です。

 

また、設定した目標は、“絵に描いた餅”では意味がありません。

 

たとえば、年間2,000万円の売上実績しかないチームが「今年は2億円売りましょう」といった目標を設定しても、非現実的すぎてメンバーのモチベーションが上がらないでしょう。かといって、これが「2,000万円売る」だとすれば、成長がありません。

 

少しおかしな表現に聞こえるかもしれませんが、目標達成力の強い組織を作るには、まずキチンとした目標設定をできるようになることが重要です。SMARTの原則は下記の記事で詳しく解説していますが、興味があればぜひご覧ください。

目標設定シートに盛り込みたい要素

KPIと書かれた積み木

 

組織で目標設定する際には、紙もしくはオンラインの目標設定シート(フォーマット)を利用することが一般的です。目標設定シートに盛り込むべき基本的な3要素を確認しておきます。

 

SMARTの原則に則った目標

まずSMARTの各要素を満たした目標を設定します。目標はあまりに多いと、施策の検討や定期的な振り返り、改善が十分にできません。重要度が高い、最終目標を達成するためにキーとなる目標1~3つ程度に絞り込みましょう。

目標達成のための基本方針とKPI

目標は、設定して終わりではありません。目標を達成するためには、達成までの方針と基本計画、KPIなどをしっかりと考える必要があります。KPIは目標達成に向けて先行管理すべき指標です。以下の記事で詳細を解説しています。

 

評価基準

組織における目標設定はMBO(目標管理制度)として、人事評価制度と連携していることが大半です、人事評価に利用する場合には、評価基準を設定しておくことが大切です。5段階程度で、S~Dまでの基準を決めておくとよいでしょう。

 

人事評価制度と連携するためには、組織全体で目標の難易度、評価基準の目安をすり合わせておくことが大切です。

職種別の目標設定 具体例10選

続いて目標設定の具体例を職種別に紹介していきます。

 

営業職A

 

目標1Q(4~6月)に新規契約による売上1,000万円を達成する
基本方針新規顧客を開拓することによる売上増
KPI新規受注件数10件以上
新規提案金額3,000万円
新規商談数30件以上
ルーティン行動新規顧客への架電一日10件
インバウンド(問い合わせメール・電話)への1時間以内対応
過去の失注・解約案件リストへのメール・TELによる再アプローチ
評価達成率120%以上でS、100~119%でA、85~100%でB、75~85%でC、75%未満でD

営業職B

 

目標2022年度のルートセールスおける売上5,000万円達成
基本方針既存顧客のアップセルによる売上増
KPI既存顧客の平均客単価20%アップ
既存顧客の商談数10%アップ
既存顧客へのアップセル提案数50件
ルーティン行動新製品Aのニーズがありそうな顧客のリストアップ
新製品のパンフレットを既存顧客に週10冊配布
商談時に必ず別製品もしくはアップグレードニーズをヒアリングする
評価達成率120%以上でS、100~119%でA、85~100%でB、75~85%でC、75%未満でD

 

販売職

 

目標第3四半期(10~12月)にA店の雑貨売上で500万円達成
基本方針クリスマスに向けた販売促進で売上増
KPI購入顧客数を前年比10%アップ
平均顧客単価を前年比20%アップ
平均購入商品点数2.5個以上
ルーティン行動秋~クリスマス商品のメルマガを週2回送信
購買単価を高めるためのセット購入の陳列
毎日購買分析して商材のディスプレイに反映する
評価達成率120%以上でS、100~119%でA、85~100%でB、75~85%でC、75%未満でD

マーケティング職

 

目標第3四半期末までに製品Aの前年対比売上2,000万円UP
基本方針WEBマーケティングの強化
KPILP経由リードを50件獲得
リード経由商談を30件
○月○日までにLPをリリース、リスティング広告を開始
ルーティン行動LPのA/Bテストを毎週繰り返す
週1回営業と打ち合わせて顧客の声やニーズを聴く
中期施策として1日2回のtweet。フォロワー数5,000人まで伸ばす
評価達成率120%以上でS、100~119%でA、85~100%でB、75~85%でC、75%未満でD

クリエイティブ職

 

目標営業メンバーからの案件評価A以上率を80%達成
基本方針案件の納期確認とラフ段階での方針すり合わせの徹底
KPIS評価を30%、A評価を50%獲得する
進行10%時点で状況提示して、方向性やゴールをすり合わせる
依頼打診から0.5営業日以内にレスポンスを返す
ルーティン行動受託時に納期背景を確認して、緊急性・重要性をしっかり確認する
キャパの埋まり状態を開示して、依頼前に可能納期を想定してもらう
評価A以上評価が90%以上でS、80~89%でA、75~80%でB、60~75%でC、60%以下でD

事務職

 

目標2022年における残業時間を前年比◯%削減
基本方針業務効率化による残業時間の削減
KPI◯月までに、稟議書と届出書の電子化を終える
◯月までに、業務マニュアルとチェックシートを作成する
◯月までに、業務を洗い出して廃棄する業務を3つ決定する
ルーティン行動ECRSの法則に則って、業務改善を考える
業務を標準化して、自動化・外注できないかを考える
評価○%以上の削減でS、○~○%の削減でA、○~○%の削減でB、0~○%の削減でC、昨年対比で増加した場合にはD

経理職

 

目標今期中に月次決算の速報値を翌日3営業日まで提出できる体制にする
基本方針遅れる要因を洗い出して対処する
速報値の必要精度(誤差の許容範囲)を上層部とすり合わせる
KPI速報値と確定値のズレを売上・利益共に1%以内に抑える
売上の計上遅れを毎月3件以下に改善する
○月までに費用のABC分析を行なって、チェックすべき費用を特定する
ルーティン行動売上処理が月末集中しないように週次で確認する
費用見込の更新を週次で実施してもらい漏れが生じないようにする
評価「第4四半期の月次速報値を3営業日までに提出、かつ確定値とのズレも1%以下」でS、「3営業日までに提出、ズレが1.5%以下」でA、「5営業日以内に提出、ズレが1%以下」でB、「5営業日以内に提出、ズレが1.5%以下でC」、上記以外でD

人事職

 

目標2024年度のエンゲージメント調査で前年対比1.0pt以上の改善
基本方針四半期の調査結果に対する改善のPDCA
KPI四半期調査の結果検討を部門単位で実施
社員10名以上に調査結果に対する意見をヒアリング
改善策を毎四半期で3つ以上実施する
ルーティン行動部門長会議で、検討結果の報告会を実施する
月次の経営会議で進捗状況を報告
評価1.2pt以上の改善でS、1.0pt以上の改善でA、0.5~0.9ptの改善でB、0~0.4ptの改善でC、悪化でD

技術職

 

目標2023年のシステム納品後に発覚する問題を◯件以下にする
基本方針プログラミングと設計スキル、テスト精度を向上させる
KPI2023年◯月までに◯◯言語のセミナーを12回受講する
2023年◯月までにテスト仕様書の表記ルールを変更する
2023年◯月までに残業時間を◯まで削減する(集中力UPのため)
ルーティン行動チェック精度を高めるために、早朝にテスト、夜に開発をする
先輩プログラマーのAさんと仕様書設計書のダブルチェックをする
バグやミスを放置せず日誌に記録する(振り返り→改善)
評価○件以下でS、○件~○件でA、○件~○件でB、○件~○件でC、○件以上もしくは重要度A以上の問題が1件以上でD

階層別の目標設定の具体例

目標設定の内容は、社員の役職や階層によっても変わってきます。
もちろん部門や職種によって変わってきますが、新入社員や新人の内は、難易度が低いプロセス目標や個人の目標、リーダーや管理職になるに従って、組織全体の目標、粗利や利益の目標、仕組みの改善などへ変わっていくイメージです。

 

新入社員

 

目標配属から半年以内に新規顧客から◯件の成約を獲得
基本方針一人で営業活動できるだけのスキルと知識を習得する
KPI配属から1ヵ月以内に商品知識の社内テストに合格する
配属から3ヵ月で商談ロープレに合格する
商談件数○件
ルーティン行動朝のロープレ会に8割以上参加する
日誌で訪問の振り返り(Good&More)を実施する
新規顧客へのテレマを1日10件以上実施する
評価○件以上でS、○件~○件でA、○件~○件でB、○件~○件でC、○件以下でD

若手・中堅

プレイヤーとしての単独目標は前章の職種別目標で記載したイメージとなりますので、ここでは2つめの目標として「OJT指導者としての目標」を紹介します。

 

目標OJTでサポートする新人に2022年末までに売上500万円を達成させる
基本方針新人の課題解決を支援し、自分の姿勢や時間管理も見直す
KPI◯月までに新人の提案件数○件○万円
◯月までに新人の営業に◯回同行して、○月から単独訪問してもらう
◯月までに新人の訪問件数○件
ルーティン行動毎週2回、新人と1on1ミーティングをする
自分の時間管理や作業効率を毎日振り返る
信頼関係を構築するために、ポジティブなフィードバックを心がける
評価○万円以上でS、○万円~○万円でA、○万円~○万円でB、○万円~○万円でC、○万円以下でD

リーダー

プレイヤーとしての活動ウェイトにもよりますが、徐々に「組織の成果」を目標として掲げるように変わっていきます。

 

目標2022年度のコールセンター満足度を3.0pt→3.5ptにアップ
基本方針教育やフローの改善でオペレーターの対応品質を向上させる
KPI平均応答速度を2022年8月までに◯秒に改善
一次回答率を2022年8月までに◯%に改善
平均通話時間を2022年8月までに◯秒に改善
ルーティン行動8時と12時と16時にロープレ会を実施する
業務報告書を毎週提出してもらう(チェック→改善策)
報告内容をもとにトークスクリプトやロープレ資料を改善する
評価3.7pt以上でS、3.5~3.6ptでA、3.2.~3.4ptでB、3.0~3.1ptの改善でC、3.0pt未満でD

管理職

 

目標2023年末までに営業1課の粗利目標5,000万円を達成
基本方針・高粗利商材Aの提案率を高める
・粗利○万円以上確保できない値下げはしない
・商談数を軸にしたKPIマネジメントの実施
KPI売上2億円
新規売上5,000万円
新規商談件数120件
ルーティン行動毎週火曜日に商材Aの事例勉強会&ロープレを実施する
毎週月曜の朝会で商談件数の進捗と提案率を確認する
週1回インサイドセールス・マーケティングチームと進捗確認する
評価粗利目標6,000万円以上でS、粗利目標5,000万円以上でA、粗利目標4,000万円以上でB、3,500万円以上でC、3,500万円未満でD
目標2022年度におけるシステム不良・障害数を◯件以下に抑える
基本方針システム開発体制やマネジメント方法の改善
KPI開発メンバーを増やし、チームの総残業時間を◯時間まで減らす
詳細設計(BD)におけるミスを月◯件まで減らす
ミーティング回数を徐々に増やし、◯月までに週2回実施にする
ルーティン行動プロジェクトの業務状況・課題を週次報告してもらう
クライアントに週1回以上の報告・連絡をする(信頼関係構築のため)
ミーティングでの発言頻度の低いメンバーに声かけをする(週1)
評価○件以下でS、○件~○件でA、○件~○件でB、○件~○件でC、○件以上もしくは重要度A以上の問題が1件以上でD

目標設定の形骸化を防ぐために意識したいこと

ペンを持って考えごとをするビジネスマン

 

設定した目標を形骸化させず、きちんと達成していくには、以下のポイントを押さえることが大切です。

 

SMARTの原則を守ること

SMARTの原則が守られていない目標は形骸化しがちです。たとえば、適切な難易度(A)が守られていないと、目標が簡単すぎてやる気を刺激しなかったり、初めから無理な目標だと達成を諦めたりした状態からのスタートになります。

 

また、具体的(S)や計測可能(M)、達成期日(T)がないと、行動計画を作成することが難しくなるでしょう。さらに上位目標とのリンク(R)がきちんと確認されていないと、マネジメント層が日常でマネジメントする指標と設定された指標がズレがちになります。

 

目標設定を意味あるものにするためには、SMARTの原則を必ず守る必要があります。

目標設定への前向きな意識付け

目標設定や目標管理に対するネガティブな認知(仕事を無理矢理やらせるためのもの)が社員に浸透していると、「とりあえず簡単な目標にする」「目標設定するだけで実行しない」といったことになりがちです。

 

大事なのは、目標達成に向けて仕事の意欲を高め、自身の成長を促すことです。目標達成への意欲を向上させるために、組織風土の改善や以下のようなマネジメントの在り方も重要となるでしょう。

  • ビジョンや目標の共有
  • 公平な人事制度
  • 挑戦の歓迎
  • キャリアのサポート など

業務マネジメントとの一致

設定した目標が日常業務のマネジメントと一致しない状態が、“目標管理のための目標設定”であり、目標管理が形骸化した状態です。

 

形骸化を防ぐためには、目標設定するメンバー本人もしくは管理職側が、「この目標で(セルフ)マネジメントしていけるか?」という視点をしっかりと確認することが大切です。

 

目標の意味付け

組織における目標設定は、組織にとっては合理的でも、個人にとっては「上から与えられた」ものになり、意味を感じにくい状態が生じがちです。

 

目標を設定するだけでなく、個人にとっての納得感や達成することで個人が得られるものなどをしっかりと意味付けすることが大切になります。

まとめ

目標設定では、SMARTの原則を満たした目標を設定することが何より重要です。また、単に目標だけを設定するのではなく、達成に向けた基本方針やKPI、実施するルーティンなどの基本計画を併せて検討していきましょう。

 

記事で紹介した目標設定の具体例を参考に、組織内で効果的な目標設定と管理を実行してください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

関連記事

  • HRドクターについて

    HRドクターについて 採用×教育チャンネル 【採用】と【社員教育】のお役立ち情報と情報を発信します。
  • 運営企業

  • 採用と社員教育のお役立ち資料

  • ジェイックの提供サービス

pagetop