ビジネスにおいてもプライベートにおいても、成果をあげるうえで、適切な目標設定は非常に大切です。
目標設定を行なう目的や、目標を定める意味を正しく理解することが、効果的な目標設定のための第一歩です。また、成果につながる目標を設定するうえで押さえておきたいポイントや注意点もいくつかありますので、理解しておくことも大切です。
記事では、上記の事項を目標達成のコツとともにご紹介します。自分自身の目標設定はもちろん、チームの目標設定にも役立ちますので、参考にしてください。
<目次>
目標設定を行う目的と意味
はじめに、目標をなぜ定めるべきなのか、目標設定にどのような意味があるのかを確認しておきましょう。
目標とは「何を目指すのか?」というゴールにあたるものです。目標は、成果をあげたい場面において、「何のためにやるのか?」という目的と併せて明確に設定しておきたい項目です。
目標が設定されていないと、「何をどこまで目指すべきか」がぼんやりした状態になります。たとえ大きな目的や方向性が定まっていても、明確な目標が欠けていると具体的な計画には落とし込めません。
どんなに優れたスキルがあっても、自分がどこを目指すのかが決まっていなければ、日々なんとなく行動してしまうのが人間です。組織においては、チームの目標や個人の目標がない状態だと、各個人が能動的なマインドになれず、受動的な仕事をしてしまいやすくなるでしょう。
また、組織における目標は、「何を目指せば良いか?」を示すものであると同時に、「何を実現すれば評価・承認されるか?」ということに関する共通言語でもあります。
目標設定は、ゴール設定にとどまらず、主体性を引き出すツールであり、権限移譲や人事評価にもつながる共通言語の設定なのです。
目標設定を行うメリット
適切に目標を設定するとどのようなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。
明確なゴールができる
明確なゴールができることで、目標達成までの道筋を考えて計画に落とし込み、具体的な行動に移しやすくなります。ゴールから逆算して計画を作成し、計画にしたがって行動することで、個人やチーム全体の目標達成能力が向上し、実際に目標達成できる確率も上がるでしょう。
進捗管理や軌道修正が容易になる
明確な目標とそれに基づく計画があるからこそ、PDCAサイクルをうまく回すことができ、進捗管理も容易になります。目指す先がぶれずに存在するからこそ、軌道修正も容易になるのです。
場合によっては、目標そのものを修正することが求められる場面もありますが、そのような大きな軌道修正も、そもそも明確な目標が存在するからこそできることです。
モチベーションが向上する
人は生まれながらにして達成意欲があります。明確な目標が定められることで、「目標を達成したい」という意欲が生まれてモチベーションが高まり、その結果、生産性が向上したり、主体性が引き出されたりします。
組織内においては、目標という共通ゴールを持つことで、メンバーへの権限移譲が実施しやすくなる側面もあります。権限移譲や自由を提供することで、達成に向けた主体性や意欲をより引き出しやすくなるでしょう。
ただし、目標設定をモチベーション向上につなげるためには、個人にとって意義・意味のある目標を定めることが大切です。これについては、のちほど「目標達成するための目標設定のコツとポイント」の章で解説します。
SMARTを用いた目標設定の基本原則
効果的な目標設定の基本は、「SMART」の原則を用いることです。
- Specific(具体的)
- Measurable(測定可能)
- Achievable(達成可能)
- Related(上位目標との関連)
- Time-bound(明確な期限)
この5要素を満たす目標が良い目標といえます。それぞれの要素を詳しく見ていきましょう。
Specific(具体的)
目標は、具体的に設定することで具体的な行動につながります。「○○を頑張る」「○○を意識する」といったあいまいな表現では目標とはいえません。
例えば、「顧客対応を強化する」という抽象的な表現は、目標設定としてはNGです。顧客対応の強化といっても、対応のスピードを上げるのか、品質を向上させるのかなど、さまざまな意味があるでしょう。具体的で明確な表現で目標を設定することが大切です。
Measurable(測定可能)
目標は、達成の有無、進捗を明確に判断できる形で設定することが大切です。目標とは字のとおり、「標(しるべ)」です。到達や進捗が測れない目標では、計画作成や現状把握が難しくなってしまいます。
先ほど挙げた「顧客対応を強化する」という例であれば、何をもって「顧客対応が強化できた」とするのかを設定することが、Measurableの要素を満たすことにつながります。例えば、問い合わせからの対応スピード、顧客対応に関するアンケートの評価、総合的な顧客満足度などが、測定に用いるデータとして選択肢に入ってくるでしょう。
また、達成度合いが誰から見ても同じように判断できるように設定することも大切です。つまり、「頑張る」「意識する」といった定性的な表現はMeasurableの視点でもNGだといえます。
例えば、営業職であれば「月に5件の新規顧客を獲得し、受注総額○○○万円を達成する」など、誰が見ても同じように進捗を評価できるような表現で目標を設定しましょう。
Achievable(達成可能)
現実的に考えて、達成可能な水準の目標になっているかどうかも重要です。はなから「現実的ではない」「できっこない」と感じてしまうような目標ではモチベーションは下がってしまいます。
難易度の低い目標を設定すべきということではありません。ただし、個人やチームのさまざまな努力や工夫によって達成できる範囲の目標であることが大切です。
なお達成の難易度は、設定する目標の性質によって幅があって構いません。例えば達成率が人事評価に直結するような目標であれば、原則として100%達成を目指せる水準であり、個人・部門や職種間で難易度のばらつきが生じないことが求められます。
一方で、OKRのように人事評価に直結させるのではなく、方向性や意識統一を重視する目標設定であれば、達成率60%ぐらいになるような、チャレンジングでワクワクするような目標を設定することが大事です。
Related(上位目標との関連)
目標は、上位の目標と関連していることも大切です。上位目標は、ミッションやビジョンのような定性的なコンセプトや方針である場合もあれば、組織の場合にはより大きなチーム単位の目標である場合もあります。
また、「日<週<月<四半期<年度」といった形で、より長い時間軸での目標が上位目標になることもあるでしょう。
いずれにしても、組織における目標設定は「組織の理念・ビジョン>組織の計画>部門の計画>個人の計画」というように、大きな目標が設定され、そこから順に、より小さな単位の目標を設定することが原則です。
逆から見れば、個人の目標達成がチームの目標達成に貢献し、チームの目標達成が事業部の目標達成に貢献し、事業部の目標達成が組織全体の目標達成に貢献する……という形で、下位目標が上位目標の達成に貢献する設定になっていることが大切です。
Time-bound(明確な期限)
目標には明確な期限が必要です。「いつまでに達成するか」という期限のない目標は、単なる夢や願望と同じであり、実現される確率も低くなってしまいます。
目標の内容を具体的にすると同時に、達成期限も具体的に定めておきましょう。
目標達成するための目標設定のコツとポイント
最後に、目標達成につながる目標設定のポイントをご紹介します。
現実的な目標とともにチャレンジ目標を設定する
通常の目標とは別に、現状のスキルやリソースでは少し実現が難しそうな「チャレンジ目標」を設定することも、目標達成を促進する目標設定のコツです。難しい仕事に取り組む過程で視座が広がり、考え方のレベルが上がります。
また、チャレンジングな目標を設定することでアイデアの幅が広がったり、現状からのイノベーションが生まれたりすることも期待できます。
ただし、チャレンジングな目標には「達成にワクワクできること」が必要であり、また「達成率が人事評価と連動しないこと」も大切です。この2点に注意してチャレンジ目標を定めましょう。
目標に意味付けする
目的や意味を持たない目標は、モチベーション向上につながりません。目標にどう意味付けをするかが重要であり、意味付けによって目標達成意欲は大きく変わってくるのです。
プライベートにおける目標は、基本的に設定時点で個人にとっての意味が付与されています。
しかし、組織における目標設定は、組織にとっての意味や合理性はあっても個人としての意味には直結しないものが多く、「上から与えられた目標」になりがちです。その状態では、個人の意欲にはつながりにくくなってしまいます。
したがって組織において目標設定する際には、設定した目標を成長やキャリアアップ、評価の機会など、個人の願望や欲求と紐づけるステップを踏むことがマネジメント上大切な要素になります。
達成計画を立てる
当たり前の話ですが、目標設定によって意欲が高まっても、それだけで目標達成に近付くわけではありません。
目標設定の過程で、もしくは目標設定後に、設定した目標を達成するための具体的な方針・施策・行動を洗い出し、達成のための実施計画を立てていくことが大切です。
達成計画を作成するうえでは、マンダラチャート(マンダラート/オープンウィンドウ64)と呼ばれるツールを活用すると効果的です。ぜひ、下記の記事をご参照ください。
定期的に進捗確認や振り返りを行なう
目標達成に向けてどれだけ精緻な計画を立てても、計画がすべて順調に進むことは稀です。たいていの場合、トラブルや遅延が生じたり、計画どおりに実施しても期待した結果が出なかったりします。
しかし、計画と結果の誤差が生じるのは当たり前です。重要なことは、計画を適切に修正・調整していくことです。定期的に進捗確認や振り返りを行ない、計画を常にアップデートし続けましょう。
目標設定と実施計画を振り返る
目標に対する結果が出た時点で、振り返りを実施することが大切です。目標自体の達成度やプロセスと同時に、「そもそも設定した目標は適切だったか?」「達成計画の精度は十分に高いものだったか?」など、目標設定と計画設定も振り返りましょう。
振り返りを次の目標設定と実施計画に活かすことで、目標設定と計画力、目標達成力を高めていくことができます。
まとめ
「何のために?」という目的に対して、「何を目指すか?」というゴールを示すのが目標です。明確な目標を設定することで、目標達成までの道筋を計画し、計画に基づいて具体的な行動を起こしやすくなります。
組織と個人の双方にとって意義のある目標を設定できれば、各個人の意欲が向上しやすく、また主体性が発揮されやすい状態になり、組織としても目標達成に近付きやすくなります。
効果的な目標設定の基本は、SMARTの原則を守ることです。記事内で紹介したコツやポイントも参考にして、成果につながる目標設定に取り組んでみてください。