目標管理シートは、個人や組織の目標達成力を高めるためのツールです。チームメンバー一人ひとりの力をチーム目標の達成という軸に揃えて発揮してもらい、自走を促したりすることが可能です。
目標管理シートを書く際には、「SMARTな目標設定」と「目標達成のための具体的なアクション」を記載することがとても重要です。
記事では、目標管理シートの例文だけでなく、目標設定する際のポイントや各職種における目標の設定例等を解説します。目標管理シートのテンプレートも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
<目次>
- 目標管理シートとは?
- 目標管理シートを作成する目的
- 目標管理シートを作成するメリット
- 目標設定シートの記入例と書き方<職種別8選>
- 目標設定シートの記入例と書き方<役職別>
- 目標管理シートの基本項目
- 目標管理シートのフォーマット
- 目標管理シートの失敗例
- 目標管理シートを効果的に運用するポイント
- 目標設定する際のポイント
- まとめ:効果的な目標管理シートを作成しよう
目標管理シートとは?
目標管理シートは、設定された目標、達成計画、進捗や達成度などのプロセス、期間終了後のフィードバックまでを1枚のシートにまとめたものです。目標設定から達成、振り返りまでのプロセスを“見える化”して効率的に進行・管理するためのツールです。
「目標管理制度(MBO)」の一環として利用されることが多く、国内では1990年代後半から導入され始め、成果主義の広がりと共に普及するようになりました。
目標管理シートは、Excelやスプレッドシートなどの形式で作成されるケースが一般的で、フォーマットを印刷した紙に直接記入することもありますし、最近ではクラウド型の目標管理ツールやアプリなどを導入して運営する企業が増えています。
目標管理シートを作成する目的
目標管理シートを作成する目的は、組織と個人の目標達成力を高めることです。設定した目標を可視化することで、個々のメンバーが目標達成に向けてセルフマネジメントしやすくなります。管理職も設定した目標に対する進捗も把握しやすくなるため、チーム全体のマネジメントをしやすくなります。
目標管理シートを作成するメリット
目標管理シートを使うことによってメンバー1人ひとりの目標が明確になり、進捗状況や達成度を確認しながら全体の仕事を進められるようになり、下記のようなメリットが生まれます。
組織の行動スピードが向上する
達成すべき目標が明確に示され、実行のためのアクションプランが決まっていることによって、各メンバーに進行を任せられます。各メンバーも迷いなく取り組んでいけることで、組織全体の行動スピードも向上することが期待できます。
PDCAサイクルが高速化する
目標を達成するためにはPDCAサイクルを高速で回すことが重要です。PDCAサイクルの中でつい疎かになりがちなのが「Check(評価)」「Action(改善)」のプロセスです。目標管理シートを上手く活用することで、目標と進捗状況をリアルタイムで比較・確認しながら「Check→Action」することで、PDCAサイクルを高速化できます。
メンバーの目標達成意識が向上する
目標管理シートに目標や進捗状況をアウトプットするプロセスを通じて、自分自身の現状を客観的に把握して、目標とのギャップを確認することができます。目標とのギャップを確認することで、目標達成に向けての危機感が生まれます。適度な危機感はメンバーのモチベーションや達成に対する意識を高めてくれます。
コミュニケーションコストが減少する
目標管理シートがなければ、チームの誰がどのような目標を持っていて、目標達成のために何をするのか、進捗状況は現在どうなっているのかを把握することは大変です。結果として、上司部下や会議でのコミュニケーションが限りなく膨張していきます。
目標管理シートを常に活用・共有することで、報告や確認に関する無駄なコミュニケーションコストがなくなり、「達成のためにどういった手を打つか」といった前向きな議論に時間を使えるようになるでしょう。
生産性向上につながる
達成すべき目標が明確になることによって、どんな結果を出せば給与や昇進に反映されるのかをメンバー自身が把握できます。結果として、期限内に目標を達成するために仕事に優先順位を付け効率よく動いたり、ムダを省いたりする工夫が行われ、個人と組織の生産性が向上します。
目標設定シートの記入例と書き方<職種別8選>
繰り返しになりますが、MBOでは「SMARTな目標設定」と「目標達成のための具体的なアクション」を記載することが大事です。8つの職種別に、目標と目標達成アクションの事例を紹介します。
営業職
営業職は、さまざまな職種がある中でも、目標が“数値”としてはっきり設定されることが多い職種です。一般的には、売上、粗利、受注件数等を目標として設定することになります。具体的アクションは、数値目標を達成するための手段を記載することになります。
リピート契約を10件、総額800万円を受注する
・毎週開催される自社の相談会にてヒアリングを実施し、3件/週の商談につなげる
・過去の名刺から休眠顧客リストを作成して、テレアポを実施することで商談を20件生み出す
・最低5件/月の新規顧客を訪問する
事務職
事務職は目標を数値化することが難しい側面があり、定性的な目標になりがちです。だからこそ、目標設定では“S:Specific”と“M:Measurable”の原則に拘ることが重要です。また、事務職の場合には通常のオペレーションを動かすのではなく、“どんな改善をするのか”といった視点で目標設定すると良いでしょう。
1Q(4〜6月)の終わりまでに運用マニュアルを作成して関係メンバーに周知。受発注業務のミスや漏れをゼロにする
・ミスが起こりやすい作業のピックアップと対策の考案(メンバーとミーティングを実施)
・受発注業務のフォーマットを見直し、毎週の発注業務で必ずダブルチェックを行なう
・運用マニュアル作成後、実際に業務で運用して、改善点を洗い出しブラッシュアップする
販売職
販売職は、営業職同様に結果が数値としてはっきり表れやすい仕事です。そのため、目標では、明確な数値を記載して、数値目標に対するアクションを記載するのが効果的です。
ただし、営業職と比べると個人の努力で結果を出すことが難しい側面もありますので、販売率や顧客満足度、リピート率等で目標を設定することもあるでしょう。
既存会員へ情報発信(メルマガ、Twitter等)を毎日行ない、今期最終月までに○月対比で来店数を10%アップさせる
・○月いっぱい会員顧客への発信ネタを毎日考え、一日10個以上ストックしておく
・競合店舗のメルマガに登録、Twitterアカウントをフォローして、発信内容をチェックする
企画・マーケティング職
企画・マーケティング職の場合、営業職と同じように問い合わせ数等の数値目標が設定されることもありますし、企画やプロジェクトのリリース等で目標設定することもあるでしょう。
企業公式Twitterアカウントを開設し、2Q(7〜9月)の終わりまでにフォロワー数2,000人を達成する
・毎日10回、自社のキャンペーン情報やお役立ち情報を発信する
・競合企業のTwitterアカウントをフォローし、発信情報を確認する
・競合企業のTwitterアカウントをフォローしているユーザーを探し、毎日10〜20アカウント程度フォローする
人事部門
人事部門において、採用は数値での目標設定が比較的しやすい仕事ですが、教育や労務、評価等の仕事は事務職と同様に数値での目標設定が難しい側面があります。事務職と同じように、業務の効率化、時間生産性の向上、社員のエンゲージメントスコア等で数値や明確な目標設定を行なっていきましょう。
1Q(4〜6月)の終わりまでにピアボーナスツールを導入し運用を開始させる。ツールの利用状況として社員の80%の利用率を達成させる
・ピアボーナスツールをいくつか資料請求し、比較検討する
・ツールの活用方法や運用の意義を伝える社内説明会を開催し、制度を浸透させる
ITエンジニア
ITエンジニアは数値目標を設定することが難しく、スキルの獲得やプロジェクトへの貢献等を目標にすることが多くなるでしょう。
今期末までにPythonを習得し、Pythonが絡む案件を2つ担当する
・動画学習サービスに登録し、セミナーに参加する
・Pythonの勉強会に毎週末欠かさず参加して、実際にコードを書く練習を積む
クリエイティブ職
会社によっては、関わるプロジェクトの売上を貢献度に応じて配賦する等して、貢献粗利等を目標設定する場合もありますし、事務職等と同じように効率化や改善目標を設定する場合もあります。
1Q(4〜6月)の終わりまでに原稿の校正体制を整える。校正作業を依頼するスキームを組み、原稿の誤字脱字によるクレーム発生件数をゼロにする
・校正マニュアルや原稿チェックリストの作成
・外部の校正メンバーのアサインと教育を行なう
コンサルタント
コンサルタントは、営業や販売職と同じように数値目標を明確に設定しやすい職種です。
既存クライアントでの追加受注○万円を獲得する
・毎月新しい施策を3つ以上クライアントに提案して、来期末までに、9施策のうち3施策を実行してもらう
・施策のアイデアになりうる情報のキャッチアップ(業界紙、WEBサイト、有料メルマガ、セミナー等)
・施策提案能力アップのために、関連した書籍を3冊以上読む
目標設定シートの記入例と書き方<役職別>
役職によって設定する目標や追うべき数字の大きさも変わります。本章では、先述した職種別に加えて、役職別の目標管理/設定シートの事例を紹介していきます。
新入社員【記入例①】
新入社員は、営業職として配属されるケースが多いです。今回は、営業職として配属した新入社員の記入例を紹介します。
3ヵ月以内に新規顧客から3件の成約を獲得する
・自社のサービス理解を深めるために、毎朝、先輩とロールプレイングをする
・毎日100件のテレアポをする
※必要な商談数(KPI)、商談数を生み出すためのKAIを入れて下さい
リーダー【記入例②】
リーダーは組織やチームの成果を目標に掲げるようになります。
お客様の相談窓口の満足度アンケートを3.4評価→4.4評価
・個人別の満足度を分析し、満足度が高いメンバーの対応を分析してマニュアル・テンプレート化して共有する
・満足度4.0以下のメンバーにマニュアル等を用意し、週2回のロールプレイングを実施する
管理職【記入例③】
管理職は、人を動かして組織の目標を達成させる仕事です。担当組織の役割にもよりますが、企業方針や事業計画に直結する数値目標を持つことが一般的です。
○○部門の粗利目標7,000万円を達成する
・大口の取引先である●●●株式会社の前年対比売上高を5%以上高める
・優秀なメンバーのアサインと、そのメンバーが抱える既存案件を他に振り分ける
目標管理シートの基本項目
MBOで設定した目標は「目標管理シート」で管理していきます。目標管理シートは、目標達成までのプロセスを明確にして、進捗や達成度を管理・評価するものです。上司は、メンバーの目標管理シートを基にしながら、定期的にレビューすることで、目標達成に向けたサポートを行ないます。目標管理シートの形式は、WEB上のツールでも、紙でも、excelでも、形式は何でも良いのですが、下記のような基本的な項目を押さえておくことが重要です。
目標管理シートに記載する内容としては、以下の項目が基本となります。
具体的な目標
当然ですが、目標管理シートにまず記載されるべきは目標です。
適切な目標設定の原則は後程紹介しますが、目標は具体的であることが大切です。「継続的にスキルアップに努める」「新規開拓に励む」「販売量を増加させる」といったものは、「努力します」と述べているだけで、目標としては非常に不適切です。
また、目標設定ではあいまいな箇所を残さないことが大切です。「TOEICで750点取る」「新規顧客を5件獲得する」など、具体的な数値で測れるものを設定しましょう。
目標を具体的に設定することで客観的に評価することができ、また、目標達成に向けて必要なステップや計画も設定しやすくなり、さらには進捗管理も行いやすくなります。
目標設定に際しては、メンバー自身を巻き込むことも大切です。人は一方的に与えられる目標よりも、自分自身が設定した目標の方が達成に向けての責任感や意欲が増すものです。
なお、目標設定に際しては、難易度の調整も大切です。多くの企業において、目標管理シートは人事評価制度に連携して動かされます。その場合、個人やチーム、部門によって設定する目標の難易度が異なれば、平等に評価することが難しくなります。
目標達成の期日
期限が設定されていない目標は、ゴールのないマラソンのようなものです。達成までの期日は必ず設定しましょう。
期日がなければ、最終目標から逆算して具体的な行動に落とし込むことができません。逆に、期日を明確にすることで、取り組みのスケジュールも考えやすくなり、進捗状況次第で軌道修正することも可能になります。
組織で運用する場合には、四半期や半期が目標設定の期間となることが一般的です。
目標達成に向けた基本計画とスケジュール
具体的な目標と期日が決まった次には、達成するための基本計画を記載します。基本計画としては、下記の2つがポイントです。
①KGIとKPIに分解して、それぞれのKGIやKPIにミニゴールを設定する。
Ex)「新規顧客3件獲得」という目標のKPIとして「20件のアポイント」を設定。獲得が四半期目標だとすると、月次目標へ展開する
②定量的なKPI目標だけでなく、達成に向けて取り組む方針や重要タスクに関しては、言語化して記載する。こちらも重要タスクに関しては期日を切っておければベストです。
最終的な目標達成へ向けたプロセスとしてKPIや重要タスクを設定して、そこに短期目標と期日を設定しておくことで、計画に対する進捗把握をしやすくなります。
目標達成に向けた詳細計画とスケジュール
基本計画と期日が決まったら、それを「すぐ行動に移せる」レベルへと詳細計画に具体化していきます。基本計画で分解したミニゴールから逆算して、実行手順を具体的なアクション計画へと落とし込んでおくと、目標達成へ向けてのプロセスが見える化され、わかりやすくなります。
例えば目標の1つに「プログラミングの資格取得」があれば、単に「資格の勉強をする」というのではなく、「9月の資格試験に合格する→それまでに参考書を2冊読破する→1日20ページ読み進める」といったように、最終期限から逆算して行動を細分化していくイメージです。
なお、タスクは
- ‐ いつまでに何をする、いつまでに何を実現する(期日行動)
- ‐ 毎日/毎週、何をする(ルーティン行動)
という2種類に分けて考えるとよいでしょう。
進捗状況
実際に行動をはじめたら、目標管理シートには進捗も記載していきます。計画に対する進捗を明確にすることで、どこが順調でどこに課題が生じているかが整理され、セルフマネジメントしやすくなります。
また、上司との面談やチームミーティングなどでの共有等もスムーズになり、情報共有ではなく、目標達成に向けた議論に時間を使えるようになるでしょう。
設定したタスクがどの程度完了し、目標数値にどの程度近づいたのかが客観的にわかるように、定量的なプロセス等は具体的な数値で記載して進捗状況を見える化できるように工夫しましょう。
結果の記載と振り返り
運用期間が終わったら、目標や設定したKGI/KPIに対する実績と達成率を記載します。
達成の有無にかかわらず、しっかりと振り返りすることが目標管理シートの運用ポイントです。計画通りにいった点は、何が上手くいったのか、もっと上手くやるにはどうすればいいかという視点で振り返ります。
逆に上手くいかなかった点は、計画自体に問題があったのか、実施のプロセスに問題があったのかを分析して、もう一度やるならどうするかという視点で振り返ります。
振り返りをしっかりと行い、成功した箇所は再現性を持たせる、失敗した箇所は再発を防げるように考えることで、目標管理シートが個人の成長につながります。
目標管理シートのフォーマット
基本項目を網羅した目標管理シートのフォーマット例を紹介します。
氏名: 所属: 役職:
目標期間:yyyy/mm/dd or ○期 第1四半期
◆目標と評価基準・進捗の把握方法 目標1: 目標2: 目標3: ※週報で目標対比の進捗状況、翌週の実施施策と実績を報告
◆目標達成の基本計画 目標1の達成施策:
目標2の達成施策:
目標3の達成施策:
◆結果
◆振り返り
◆上司からのフィードバック |
目標管理シートの失敗例
目標管理シートは、作成方法や運用ポイントを間違ってしまうと効果を発揮せず、失敗に終わってしまいます。目標管理シートの運用を成功させるためには、事前に失敗例を知っておくと良いでしょう。目標管理シートの運用失敗例をいくつか紹介します。
目標管理シートを作成して放置【失敗例①】
目標管理シートの作成だけで満足してしまい、きちんと運用できていないケースが良くあります。目標管理シートは、目標達成に向けて運用することで効果を発揮します。
目標設定の数が多い【失敗例②】
最初に設定した目標の数が多すぎると、いずれの目標も中途半端に終わってしまう場合が多いです。目標設定の数が多いと、計画時に立てた施策やアクションプランなど優先順位が煩雑化してしまい、やり切ることが困難になります。設定する目標を1~3個に絞り込むことが、失敗しない目標管理のポイントです。
ミニゴールやKPIを設定していない【失敗例③】
目標を達成するには具体的な目標が欠かせません。ミニゴールやKPIを設定していないと、目標を達成するためのプロセスが適切に実施されているかを数値化して評価することができません。目標達成に向けた進捗を把握するためにも、ミニゴールやKPIを設定すると有効です。
目標管理シートを効果的に運用するポイント
目標管理シートの効果を最大化するためには、運用に当たっていくつか意識すべきポイントがあります。その中で、重要な3つポイントを紹介します。
- 定期的に進捗状況を確認する
- PDCAサイクルを回す
- 状況に応じて修正する
定期的に進捗状況を確認する
目標管理シートの運用に当たっては、管理者とメンバーによる定期的な面談を運用することが有効です。目標達成に向けての進捗状況を互いに確認・評価することが重要です。面談は最低でも月に1回は行うようにしたいものです。
面談する際には、例えば「今期の目標についてあなた自身はどう思う?」「現状はこういう結果だけど、来期に向けてあなたはどういう行動を起こそうと思っているの?」と質問をして、メンバーの主体性を引き出すと良いでしょう。
本人自身に考えさせることによって、目標設定に対するコミット感が高まると共に、目標達成に対するモチベーションアップに結びつけることができます。
また定期的に進捗確認を行うことで、メンバーが目標達成に向けて抱える疑問や不安を解消する機会ともなります。疑問や不安があり、目標達成へ向けての行動が停滞している、といったことがないようにすることも重要です。
PDCAサイクルを回す
目標管理シートを作成する際、様々な想定をして作り込んだと思っていても、実際に行動してみると予定通りにはいかないこと、現時点では難しいことなどが出てくる可能性があります。
そのため、PDCAサイクルを回し改善点を洗い出して修正を加えていくことが欠かせません。目標達成に向けて着実に行動を続けることが大切です。
状況に応じて修正する
目標管理シートで設定した目標は、状況に応じて柔軟に修正することも大切です。高すぎる目標を設定してしまっていたり、本人や会社を取り巻く状況が変化したことにより目標の達成が困難になってしまった、といったケースもあるでしょう。
現実的に無理な目標となってしまっている場合、メンバーのモチベーション低下につながります。そのため、状況に応じ達成可能な目標に修正することが大切です。
適正な目標を設定し、目標達成をしていくことでメンバーの自己効力感を高めていくことも期待できます。PDCAサイクルを回し、改善しながら計画した目標を達成することで、成功体験を得ることができます。
ただし、安易に目標を下げることは避ける必要があります。上司が一緒になって本当に修正が必要かどうか、検討することは必要でしょう。
目標設定する際のポイント
MBO(目標によるマネジメント)は、字の通り、ゴールとなる“目標”を中心にマネジメントを行ないますので、従って、適切な目標を設定することが非常に重要です。適切な目標設定を行なうためには職種に関わらず、「SMART」の原則に基づいた目標を設定することが基本です。
「SMART」とは5つの英単語の頭文字をとったものであり、効果的な目標設定を行なう原則です。
- S:Specific
⇒ どんな状態を実現するのか「具体的」に特定されている - M:Measurable
⇒ ゴールが達成されたかを第三者が「測定できる」状態で記載されている - A:Achievable
⇒ さまざまな施策や努力により現実的に「達成できる」水準の目標である - R:Related
⇒ 「上位の目標達成にリンク」している - T:Time-bound
⇒ 達成の「納期」が明確に設定されている
SMARTの原則の中でも、いくつかポイントになるところを解説します。
MBOにおける一番大きなゴールは、組織全体の事業方針や経営計画の達成になります。全体の事業方針や経営計画を、部門>チーム>個人と分担していくわけです。
従って、「各個人の目標が達成されればチームの目標が達成するのか?」、同じように「各チームが達成すれば部門が達成できるのか?」「各部門が達成すれば組織全体の目標が漏れなく達成されるか?」という、上位の目標に紐づく“R:Related”という視点が重要です。
また、職種によっては、“M:Measurable”という視点が大切になる場合もあります。営業やマーケティング部門等は、目標は数値になることが多く、「測定できる」という原則は容易に実現できるケースが多いでしょう。
一方で、管理部門や個人の成長目標等は、数値による目標設定が難しいこともあります。しかし、達成を支援する、また、評価制度等ともリンクさせるうえでは、本人と上長が客観的に目標達成度を共有できる表現で設定する必要があります。
従って、管理部門や成長目標においても、「○○件の減少」「○○%増加」等のように具体的な数値として定量化する、また、数値が難しい場合でも「達成しているか/していないか」が明確になるように設定します。「○○を強化する」「○○を意識する」「○○を実践する」といった表現は、客観的に「達成しているか/していないか」が明確になりませんので、目標設定としてはNGです。
後は、目標達成度と人事評価をリンクさせるのであれば“A:Achievable”の視点に関して、全社で難易度を揃えることも必要です。
まとめ:効果的な目標管理シートを作成しよう
目標管理シートの書き方や職種/役職別の事例、またMBO(目標管理)による目標設定のポイントも解説しました。
MBOは、企業の全体目標を部門・個人でどう役割分担していくのかを明らかにして、社員一人ひとりが発揮する力の方向を揃える、また、ゴールを明確にすることで、社員の自走を促す効果があります。
「目標」によってマネジメントするわけですので、MBOにおいては「目標設定」が非常に重要です。適切な目標設定を行なうためには、「SMART」の原則を適用することが有効です。
設定した目標は、目標管理シートで管理して、目標と測定方法、また目標達成の基本計画を上司-部下で共有していきます。MBOは“期首に設定して、期末に振り返る”ような運用では効果を発揮しません。
目標管理シートを基に、日常のマネジメントにおいて、設定した目標と現状、計画した施策の実行状況、効果の振り返り、目標達成に向けた次の施策検討等のPDCAを回していくことが重要です。
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