キャリア面談とは、自分のキャリア形成についてキャリアコンサルタントや人事、上司などに相談する場です。
最近はキャリア自律が注目される中で、従業員たちの要望や抱えている悩みを知るための機会、またキャリア支援を通じてエンゲージメント向上や離職防止を行うために、企業がキャリア面談を導入するケースも増えています。
記事ではキャリア面談の意味や目的、キャリア面談を成功させ気づきを促すコツを解説します。
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<目次>
キャリア面談の意味や目的
キャリア面談は、面接と違って何かの選考をするためのものではありません。社員の中長期的な考え・展望を知り、彼らの気づきを促すきっかけとなるものです。
キャリア面談には、以下のような意味・目的があります。
- 現在の仕事に関する問題点や悩みを聞く
- 将来(中長期)の展望やキャリアについての意向を聞く
- 社員の理想を知る
- 普段は行いにくい意見交換ができる
- やるべきことの優先順位がまとまりやすい
- 目標が明確になりやる気が増しやすい
- スキル・キャリアアップへの道がみえてくる
- 業務改善につながる意見を聞ける
- 貢献度が高い、もしくは将来的に高くなる人物の見極めができる
キャリア面談を行うことは、面談を受ける社員にとっても、面談を行う側(上司ないし企業)にとってもメリットが大きいといえるでしょう。
キャリア面談は社員のキャリア開発につながります。キャリア開発のメリットや方法、注意点、事例などは以下にまとめているので参考にしてください。
キャリア面談が注目される背景
キャリア面談が注目される背景には、雇用環境も大きく変わってきているなかで、転職が当たり前となり、若手や優秀層を定着させるためにはキャリア支援、キャリア安全性の確保が不可欠となっていることがあります。同時に、働き方の多様化や従業員一人ひとりのキャリア観や価値観が変化し、従来のような画一的な人事施策では対応が難しくなっています。そうした中で、企業と従業員の対話の場として「キャリア面談」を重要な人材マネジメント施策として位置づけ、実施する企業が増えています。
面談を通じて従業員の本音を引き出し、自律的なキャリア形成を支援することで、エンゲージメントの向上や離職防止にもつながります。特に今後は、就労期間の長期化に伴い、ミドルシニア層のキャリア再構築においても、キャリア面談は重要性を増すでしょう。
ここでは、キャリア面談が注目される背景として、主なものを解説します。
エンゲージメント向上・離職防止策
キャリア面談の実施により、従業員は「会社側が自分を理解し、支援してくれている」という実感を得ることができます。この実感は、組織に対する信頼感や帰属意識の向上につながり、結果的にエンゲージメント向上に寄与します。
面談を通じ自身のキャリア志向と会社の方向性との接点を見出すことで、日々の業務に対して意味付けをすることができます。自分の成長や目標達成につながるものとして仕事を捉えることで、モチベーションの維持・向上が期待できます。
また、キャリア面談は従業員が抱える不安や不満を把握する貴重な機会でもあります。早期に問題を把握し、必要なフォローや対応を行うことで、離職リスクの軽減にもつながります。上司や人事が従業員の本音を引き出せていない、といった場合には、社外のキャリア専門家に支援を依頼する方法も有効です。
キャリア自律の重要性
終身雇用や年功序列といった従来の制度が崩れ、会社に依存せず自分のキャリアを自ら考え、選択していく「キャリア自律」が重要になっています。しかし、自分のやりたいことや将来像が漠然としている人が多いのが実情でしょう。特にミドルシニア層は会社からの指示に従って働いてきた人が多く、自分で今後のキャリアを考えることが難しい傾向があります。
キャリア面談を通じて自己理解を深め、自分の強みや価値観を整理することで、キャリアビジョンを明確にすることができるようになるでしょう。また、従業員のキャリア自律を支援することは、従業員のエンゲージメント向上にもつながり、離職防止にも有効な施策となります。
ミドルシニア層のキャリア再構築と活躍の推進
就労期間の長期化により、ミドルシニア層が職場で活躍し続けるための支援が重要となっています。40代・50代の社員は、役職定年やキャリアの転機を迎えることが多く「キャリア再構築」が重要な課題です。キャリア面談の実施は、今後のキャリアの方向性を再設計するきっかけとなります。
また、会社側も本人の強みや希望を把握し、適切な配置や成長機会を提供することで、経験豊富な人材を活かすことができます。さらに、豊富な経験と知識を持つベテラン社員が引き続き活躍することで、若手・中堅社員にとって良いロールモデルとなり、組織全体の活性化にもつながります。キャリア面談は、ミドルシニア層の不安を軽減し、前向きなキャリア形成を支援する重要な取り組みといえるでしょう。
価値観・働き方の多様化
近年、テレワークや副業、ジョブ型雇用の導入などによって、働き方の選択肢は過去と比べて大きく増えています。また、一人ひとりが持つキャリア観や価値観も多様化しています。世代ごと、個人ごとに様々なキャリア観や価値観があります。ワークライフバランスを重視する人もいれば、専門性の向上や社会貢献を重視する人もいます。こうした多様な働き方・価値観に対して、従来の画一的な人事施策では限界があり、個別に対応する必要性が高まっています。
個別に行うキャリア面談を通じ、従業員一人ひとりの志向や将来像を把握することで、柔軟な対応や支援が可能となり、企業は従業員のエンゲージメントを高めることができます。
キャリア面談の準備と実施上の留意点
キャリア面談前にしておきたい準備
キャリア面談を行う際は、以下の点に気をつけて事前準備をしておきましょう。
■面談の目的やテーマを明確にしておく
どのような面談を行うのか、目的やテーマを明確にしておきましょう。「何の話し合いなのか」「準備すべきものはあるのか」などは事前に社員に伝えておくと、内容のある面談になります。
「業務改善案」「スキルアップ計画」「キャリアアップ計画」など、具体的なテーマを事前に与え、面談でディスカッションできるようにしておくのも良さそうです。
■面談前に社員にイメージしてもらう
面談にて社員の気づきを引き出すために、事前に「未来のイメージ」をしてもらうと良いかもしれません。例えば、「3年後に目指す自分」のようなアンケートを用意してみましょう。
- どのようなスキルや知識を持ちたいか
- 必要な資格はあるか
- どんな年収や役職でありたいか
- プライベートではどうなっていたいか
こういったものを事前に相手に考えてもらうとよいでしょう。面談がよりスムーズに進み、面談後の気づきも引き出しやすくなります。
キャリア面談の実施上の留意点
■社員の意見にしっかりと耳を傾ける
キャリア面談で最も重要なことは、「傾聴する姿勢」です。とくに、上司や経験値の高い人事がキャリア面談を実施する場合、従業員に対してアドバイスしたくなりがちです。また、上司の場合には、「その考え方が甘いんだよ…」などと叱責したくなることもあるでしょう。
しかし、これはキャリア面談で絶対に避けなければなりません。相手がどうしたいか、どうなりたいかなどをしっかり丁寧にヒアリングした上で、質問を通じて相手の意思や意欲を引き出しましょう。
助言は最小限にとどめ、情報や視点の提供というのスタンスで行うぐらいがちょうどいいでしょう。
■実績や長所に焦点をあてて面談を活性化させる
キャリア面談においては、相談者の自己肯定感を高めることもポイントです。相手の欠点や短所を指摘するような面談では、相手は委縮してしまい本人の意見や希望を引き出すことが難しくなります。
それよりはこれまでの実績や長所にスポットをあてて、前向きな雰囲気を作り出し、未来について考える、挑戦や行動する意欲を引き出しましょう。
■課題を明確にして行動に落とし込む
おだてたり、良い気分にさせたりすることがキャリア面談の目的ではありません。将来のキャリアについて本人の希望を聞いたうえで、実現のために何が必要なのかを具体化し、行動に落とし込んでいくことも大切です。
具体化していくフェーズでは、ときに情報や考え方を提供、アドバイスするとよいでしょう。ただし、あくまで、何をするかという意思決定は本人にしてもらうことが大切です。
目標達成に向けて面談後もフォローをする
キャリア面談は、1回やって終わりというものではありません。面談を通じて共有した相手の希望やなりたい姿について、その後もフォローアップすることが大切です。
とくに上司や人事が面談した場合には、日常業務やマネジメントの中でも気にかけておくことが大切です。そのようなフォローアップがあれば社員の側でも、会社に対する信頼度がアップします。キャリア面談が単なる「聞きっ放し・言いっ放し」とならないように、注意しましょう。
定期的に実施して、考える→行動する→振り返る→考える→行動する…というサイクルにつなげていくことが大切です。
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キャリア面談の進め方
キャリア面談を有効に機能させるためには、単に面談を実施するだけでなく、前後も含めたプロセス全体の設計が重要です。キャリア面談は以下のような流れで進めるとよいでしょう。
キャリア研修等との組み合わせ
キャリア面談の効果を高めるには、事前にキャリア研修やワークショップの実施が有効です。従業員が自身のキャリアを主体的に考えるためのフレームワークや視点を提供したうえで、キャリア面談を実施することで、従業員はより具体的なキャリアビジョンを描くことができるようになります。キャリア面談を実施する前に、研修を行い「キャリアを考えるきっかけ」をつくることで、面談効果をより高めることができるでしょう。
また、直属の上司が面談を担当する場合、面談の質にばらつきが出やすいため、研修によって面談スキルを補完することも重要です。事前準備なしに上司にキャリア面談を任せるのは、ハードルが高いといえます。
面談目的を明確にする
キャリア面談を成功させるには、面談の目的を明確にし、事前に従業員と共有しておくことが欠かせません。面談は評価の場ではなく、「キャリア形成の支援」「キャリアの方向性の整理」「信頼関係の構築」が目的であることを、双方が認識しておくことが必要です。
そのためには、面談前に「今回の面談で何を得たいのか」「どんなゴールを目指すのか」「評価には影響がないこと」を明確にし、従業員と共有することが重要です。目的がはっきりすることで、従業員も安心してキャリアについての希望を話しやすくなるでしょう。面談の進行をスムーズにし、建設的な対話となるように面談目的を明確にしておくことが大切です。
面談の事前準備を行う
質の高いキャリア面談を行うためには、十分な事前準備が欠かせません。質問項目・面談シートの用意、面談の流れの整理、事前のキャリアアンケート実施などの準備を行うことで、面談の質を向上させることができます。
また、対象社員の職務内容や過去の面談履歴、希望する職種・キャリアパスなどを事前に確認しておくことも大切です。
面談の実施
面談では、傾聴と共感を基本姿勢としたコミュニケーションを心がけましょう。経験値のある上司や人事がキャリア面談を行う場合、つい従業員に対してアドバイスや指導をしてしまいたくなりがちですので、気を付ける必要があります。従業員の本音や将来への思いを引き出すには、オープンクエスチョン(「どのような」「なぜ」「どう思いますか」など)を活用するとよいでしょう。
またキャリア面談を意味のあるものとするためにも、話し合いで終わるのではなく、「いつまでに」「何を」「どのように行うか」を具体的に決めて、曖昧なまま面談を終わらせないよう注意しましょう。面談の最後には、必ずアクションプランの作成まで進めましょう。この時、本人主導で決めていくことが重要です。
面談後のフォローアップ
面談後は必ずフォローアップすることが必要です。定期的なフォロー面談や1on1ミーティングと連携し、アクションプランに基づいた進捗確認を定期的に行いましょう。面談の成果を持続させ、従業員の主体的な行動を後押しすることができます。
フォローアップでは、従業員が設定した目標に向けて順調に進んでいるか、新たな課題や悩みが生じていないかを確認し、必要に応じて軌道修正などの対応を行うことも重要です。
面談内容を記録し、上司、人事、本人の三者で適切に共有し、組織全体で従業員のキャリア支援を行う体制を作ることも大切です。継続的に関わることで、日々の業務へのモチベーションや従業員のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。
キャリア面談で気づきを促すコツ
キャリア面談時に社員の気づきを促すためには、以下を意識してみてください。
じっくりと聞き役に徹する
社員の声に耳を傾けることが、面談を成功させる基本。担当者が語気を強めて指導する、または注意をするようなことがあると、社員は萎縮してしまいます。
その結果、十分な気づきにたどり着けない可能性があります。まずは相手の意見を引き出すために、担当者はじっくりと聞き役に徹しましょう。
担当者は指導ではなく助言やアドバイスを
社員の話を聞いていく中で、気にかかる点が見つかれば掘り下げて話を聞き、アドバイスをしていきましょう。
その際には、「上司からの指導」ではなく、「先輩からの助言」程度のニュアンスにしておくと社員も萎縮せずにスムーズに受け入れてくれるでしょう。
相手の意見を尊重しつつ、適度な修正やさらなる深掘りをしていけると、より意味のある面談になります。
面談のアフターフォローを忘れずに
面談はスタートラインにすぎず、本番は面談後にあります。社員たちの目標やスキルアップ実現に向けて、適度なフォローを入れられると良いのではないでしょうか。
また、定期的に面談を行いフィードバックしていくと、社員のやる気維持や気づきの発現に効果的です。
キャリア面談の効果を高めるには
キャリア面談の効果を高め、意味ある取り組みにするためには、信頼関係の構築や具体的な目標設定、面談後の継続的なフォローが不可欠です。また、社外の専門家など第三者の力を取り入れることで、社員が安心して本音を話せる環境を整えることも有効です。
信頼関係の構築と心理的安全性の確保
キャリア面談を成功させるうえで最も重要なのは、従業員が安心して本音を話せる「心理的安全性」を確保することです。面談は人事評価とは完全に切り離されたものであることを伝え、率直に悩みを相談できる場であることを明確にしましょう。
面談内容の守秘義務やプライバシーへの配慮も必要です。また、否定せずに傾聴・共感を基本としたコミュニケーションを心がけましょう。そうすることで、相手の内面や本音を引き出しやすくなります。
目標設定とアクションプランの具体化
キャリア面談で話し合った内容を実際の成長につなげるためには、目標設定とアクションプランの具体化が欠かせません。SMARTの原則に沿って、実現可能で明確な目標を設定することが効果的です。
SMARTとは、以下のように目標設定に不可欠な要素を表します。
- Specific(具体的である)
- Measurable(計測できる)
- Achievable(達成できる)
- Related(上位目標と関連する)
- Time‐bound(期限が定められている)
目標は一度決めたら終わりではありません。業務の変化や本人の成長に応じて柔軟に見直せるようにすることが大切です。進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて修正を加えることで、適切な目標を維持するようにしましょう。
継続的なフォローと柔軟な実施頻度
キャリア面談は単発で終わらせず、定期的な面談や1on1ミーティングを継続的に実施することが重要です。面談後の変化や成長を継続的に確認することで、面談効果を持続させることができます。また、必要に応じてサポートを提供しましょう。
継続的なフィードバックとサポートにより、従業員は「会社が自分の成長を支援してくれている」という実感を得られ、エンゲージメントの向上にもつながります。
社外リソースの活用
社外の専門リソースを活用する方法も、質の高いキャリア面談の実施に役立ちます。社外を使うことで、授業員が安心して本音を相談できる環境を整えることができます。第三者であり、プロである外部のキャリアコンサルタントやコーチを使うことで、従業員は社内の人間には話しにくいキャリアへの不安や職場への不満、職場での人間関係なども率直に相談することができるでしょう。
外部の専門家は、専門的な知識と経験を持ち、社内の人間関係に影響されることなく、客観的で中立的な視点からのアドバイスを提供してくれます。こうした社外リソースを活用することで、社内だけでは難しい相談への対応も可能となります。社内のリソースだけで完結せず、外部の知見や支援を柔軟に取り入れることが、キャリア面談の効果をさらに高めるポイントです。
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おわりに
社員が何を考え、どのような意識を持って仕事をしているのかを知ることができるキャリア面談は、社員とコミュニケーションを図れたり、社員育成や業務改善につながったりするという点で大きな意味を持ちます。
もちろん、社員たちにとっては、多くの気づきを得るきっかけにもなるでしょう。今回の記事を参考に、お互いにとってメリットのあるキャリア面談をぜひ効果的に行ってみてください。
キャリア面談は社員のキャリア自律に有効ですが、一方で、対応者には相応のスキルが必要となりますし、社内で実施すると、社員からは「不安や不満、転職などの本音は話しにくい」という側面もあります。
理想は、人事制度や自己啓発制度などを熟知して直接支援がしやすい社内でのキャリア面談と、心理的安全性が担保されて本音を話しやすい社外でのキャリア面談を組み合わせることです。
HRドクターを運営するジェイックグループKakedasでは、国内最大級のキャリア面談/社外1on1プラットフォームKakedasを提供しています。法人利用も個人利用も可能ですので、ご興味あれば是非ご覧ください。
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