コンティンジェンシー理論とは?現代に通じるリーダーシップ理論の基礎を解説

更新:2023/01/31

作成:2023/01/08

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

コンティンジェンシー理論とは?現代に通じるリーダーシップ理論の基礎を解説

 知識労働社会となった中で、リーダーシップの重要性に注目して、リーダーシップ教育に取り組む企業が増えています。

 リーダーシップについては殆どの人が「重要」と思いつつ、「リーダーシップとは何か?」というと明確な回答がない方も多いのではないでしょうか。

 本記事では、現代のリーダーシップ論におけるひとつの中核となるコンティンジェンシー理論についての概略や沿革、また、リーダーシップ論の中での位置づけを紹介します。

<目次>

コンティンジェンシー理論とは?

 リーダーシップには数多くの理論が提唱されていますが、近年のリーダーシップ論のベースとなっているひとつがコンティジェンシー理論です。

 本章では、コンティンジェンシー理論の概要と類似するリーダーシップ理論を簡単に紹介します。

コンティンジェンシー理論の概要

 コンティンジェンシー理論とは、1964年にオーストリアの心理学者であるフレッド・フィードラーが提唱したリーダーシップ理論です。

 コンティンジェンシー理論の内容は「どのような状況でも最高のパフォーマンスを発揮できる絶対的リーダーシップは存在せず、外部・内部環境に応じて柔軟に変化させていく必要がある」というものです。

 日本における現代のリーダーシップ理論の中心的な存在となっているシチュエーショナル・リーダーシップ理論の基にもなっているのがコンティジェンシー理論です。

条件適合理論

 コンティンジェンシー理論に似た用語として「条件適合理論」が挙げられます。じつは条件適合理論は、コンティジェンシー理論の大元になっている考え方です。

 条件適合理論は、それまでの行動理論「リーダーシップとはこういう行動である、ということを定義する考え方」から進化して、「職場の人間関係や業務の難易度といった要素に応じて、取るべきリーダーシップは変えていく必要がある」という考え方です。

 コンティジェンシー理論を含む、現在のリーダーシップ理論の殆どは条件適合理論が基になっています。

SL理論

 コンティンジェンシー理論と一緒に押さえておきたい理論が「SL理論」です。

 SL理論とは、シチュエーショナル・リーダーシップ(Situational Leadership)と呼ばれる考え方で、1977年にハーシィとブランチャードが提唱したリーダーシップ理論です。

 コンティンジェンシー理論の中でも「部下のレベル」に着目して、取るべきリーダーシップスタイルを4つに整理したものです。

 日本ではブランチャードの著書『1分間リーダーシップ』を通じて広く普及しています。

 SL理論では「任せる仕事への習熟度」に応じて、4つのリーダーシップスタイルを使い分けることが提唱されています。

  • ①習熟度が低い新人など
  • ⇒指示型のリーダーシップ
  • ・指示的行動(ティーチングや指示)が多く、援助的行動(コーチングや委任)が少ないスタイル
  • ・まだ、実務を分かっていないので、細かく指示しながら仕事を覚えてもらう
  • ②ある程度育ちつつある若手など
  • ⇒コーチ型のリーダーシップ
  • ・指示的行動も援助的行動も多いリーダーシップ
  • ・ある程度、仕事の大枠や進め方は指示したうえで、細かなところの進め方は相手に任せたり、相手の意見を聞いたりして進めるスタイル
  • ③ほぼ1人前のメンバー
  • ⇒援助型のリーダーシップ
  • ・援助的行動が中心のいわゆるコーチング中心のスタイル
  • ・仕事の目的や概略を示したら、細かな進め方は相手に委ねたり、コーチング型のマネジメントで主体性を引き出したりするスタイル
  • ④自立したメンバー
  • ⇒委任型のリーダーシップ
  • ・指示的行動と援助的行動の両方が少ない
  • ・仕事の目的や概略を示したらあとは相手に任せるスタイル

コンティンジェンシー理論の背景

 リーダーシップ理論の研究は20世紀にアメリカで実施されており、当初は「リーダーシップは生まれ持った才能である」と考えられてきました。

 しかし、すべてのリーダーに共通する特徴を見い出せなかったために、当時提唱されていた理論は衰退してしまいます。

 1940年代に入ると、以前までのリーダーシップ理論とは異なり「教育などで後天的に身につけられる能力・スキル」と提唱されるようになりました。

 その中で、リーダーになるためには「リーダーが取るべき行動を模倣すること」という価値観が定着します。

 これが行動理論と呼ばれるものです。日本で有名なPM理論なども、行動理論のひとつです。

 行動理論は、リーダーシップは後天的に身に付けられるものであるという新たな常識の普及には大きな力を発揮しました。

 しかし、1960年代には、状移したように“どんな時でも絶対的に正しいリーダー行動”があるわけではなく、「内外の環境・状況に応じて適切なリーダーシップは異なる」という条件適合理論へとリーダーシップ論の主流は移り変わります。

 そして、条件適合路理論から記事タイトルでもあるコンティジェンシー理論やSL理論(シチュエーショナルリーダーシップ)が生まれ、現在におけるリーダーシップ論の王道となっています。

コンティンジェンシー理論が提唱するリーダーシップスタイル

 コンティンジェンシー理論で提唱されているリーダーシップは、状況に応じて、大きく異なる2つのスタイルを組み合わせるイメージです。

 2つのスタイル、「課題志向型」と「対人関係志向型」のどちらにウェイトを置くかは「状況好意性の強さ」によって変わってきます。

 本章では、状況好意性について解説した上で、2つのリーダーシップスタイルを簡単に説明します。

適切なリーダーシップを決める要素

 コンティンジェンシー理論では、リーダーが置かれた環境のことを「状況好意性」という概念で定義しています。状況好意性を構成する要素は、以下の3つです。

<状況好意性の3要素>
  • 1.リーダーが組織のメンバーに受け入れられている度合い
  • 2.取り組む仕事・課題の明確さ
  • 3.リーダーが部下をコントロールする権限の強さ

 3つの要素が強まるほど、適切なリーダーシップは課題志向型となり、逆に3つの要素が弱くなると対人関係志向型のリーダーシップが適切になっていきます。

課題志向型

 課題志向型のリーダーシップは、その字の通り、リーダーの思考や関心を「課題」、つまり「モノ」に向けるスタイルです。

 取り組むべき仕事のゴールや概要が明確で、リーダーとメンバーの関係性も十分、指揮命令しやすい状況であれば、リーダーは「モノ」に集中した方が組織の成果をあげやすいと考えられます。

対人関係志向型

 対人関係志向型では、人間関係を構築しながらチームとしてのシナジーを高め、時にはメンバー間の衝突を解決するリーダーシップのスタイルです。

 リーダーとメンバーの人間関係が薄い、また、指揮命令の権限が弱い状況では、まずメンバーとの人間関係をしっかりと構築する必要があるわけです。

 また、仕事のゴールや概略が抽象的な状況では、指揮命令したり、権限移譲したりすることが難しいため、トップダウンではなく、メンバーと一体になって現場に入って、物事に取り組んでいく必要があります。

コンティンジェンシー理論のメリット

 コンティジェンシー理論が提唱する「状況好意性の3要素」は文字にするとイメージしにくいかも知れません。

 ただ、大雑把に書けば「取り組むことがはっきりしており、メンバーへの指示もスムーズに実行される環境であれば目標達成にフォーカスした課題志向、逆に、目標達成のプロセスが曖昧であったり、メンバーとの信頼関係がなかったりする状況であれば、まずは関係構築とチームビルディングが重要」という考え方です。

 このように状況に応じた発揮すべきリーダーシップの形が明確になると、組織の管理職は業務を安定的に遂行できるようになるでしょう。

 また、単純だからこそ、状況に応じて自分の行動を変えることもしやすくなります。

 リーダーが柔軟な対応ができるようになれば、組織そのものも柔軟になり、組織改革なども進めやすくなるでしょう。

コンティンジェンシー理論のデメリット

 コンティンジェンシー理論のデメリットは、現実への適用に限界があることが挙げられます。

 コンティジェンシー理論における「状況好意性の3要素」は、大きくは、内部の関係性、取り組む課題という2つの要素にフォーカスしています。

 そのため、組織自体が置かれた状況、また、リーダー自身の強みや特性といった要素を考慮していないものになっています。

 シンプルにしているからこそ分かりやすい一方で、現実への適用には限界があるといえます。

コンティンジェンシー理論と並んで知っておきたいリーダーシップ理論

 コンティジェンシー理論やSL理論は、状況好意性と仕事への習熟度という、特定の要素にフォーカスしてリーダーシップの発揮方法を説明した理論です。

 どちらも非常に有用ですが、一方で、特定の要素にフォーカスして単純化しているからこそ、現実への適用には一定の限界もあるともいえます。

 ただ、こうしたフレームワークの引き出しを持っておくことで、「いまはこの理論をベースに考えるのがよい」と現実の状況に適した解決をすることができるでしょう。

 本章では、コンティンジェンシー理論と併せて知っておきたい3つのリーダーシップ理論を紹介します。

PM理論

 PM理論とは、リーダーシップ行動を「目標達成機能(P)」と「集団維持機能(M)」の2軸で定義する理論のことです。

 目標達成機能と集団維持機能を発揮できているか否かで、4つに分類されます。

PM理論の図

 外部の状況などは抜きにして、「リーダーシップとは何か?」ということを考えるうえで基礎になる理論です。

 例えば、これから始めてリーダーとしての役職を任せるような人には、最もイメージしやすく教えておきたい理論です。

バーナードの3要素

 バーナードの3要素は、組織の成立条件を提唱した組織論の王道と呼べるものです。バーナードの3要素で提唱されている、組織成立に必要な条件は以下の3つです。

  • 共通の目的(ミッション)
  • 伝達(コミュニケーション)
  • 協働意欲(エンゲージメント)

 3つの要素が十分に揃って、初めて組織として成立し、組織の成果を生み出せるようになります。

 バーナードの3要素は「チームビルディングがうまくいっていない」と感じたときなどに、原点に戻ってリーダーシップを考える参考になります。

コンセプト理論

 コンセプト理論では、さまざまな状況下でのリーダーシップの取り方を研究したリーダーシップ理論です。

 コンセプト理論で提唱されているリーダーシップスタイルは以下の4つです。

変革型リーダーシップ

⇒組織の変革や緊急事態の時に求められるリーダーシップ。
 ビジョンや戦略をトップダウンで意思決定して、組織の先頭に立って引っ張っていくような強いリーダーシップです。

サーバントリーダーシップ

⇒リーダーの仕事を、「メンバーが能力を発揮して成果を上げられるように支援(奉仕)することである」と定義して、メンバーとの対話を通じて、組織の成果を上げていく新たなリーダーシップのスタイルです。
 サーバントリーダーシップは、プロの知識労働者が集まった状態では大きな効果を発揮するスタイルであり、次節で詳しく紹介します。

オーセンティック・リーダーシップ

⇒数十年前と比べると、企業に社会的責任が強く問われる中で、リーダーは高い倫理観や道徳観を発揮していく必要がある考え方です。
 意思決定における倫理観や道徳観、公平さに焦点が置かれたリーダーシップです。

トランザクショナル・リーダーシップ

⇒組織管理と課題達成に重点を置いた理論です。
 報酬と強制(罰)によって、メンバーの行動に影響を与えるというリーダーシップです。
 最もイメージしやすい「組織のリーダー像」かもしれません。
 ある程度確立したシステムを維持・発展させていく時に適したリーダーシップだといえるでしょう。

 コンティジェンシー理論における状況好意性は、「内部の関係性」「取り組む課題」という大きくは2つの要素でリーダーが置かれた環境を定義していましたが、コンセプト理論はより大きなスケールで外部の環境を捉えた考え方です。

 コンセプト理論を知り、「自分が得意とするリーダーシップがどれか」「いま求められているリーダーシップがどれか」をイメージすると、理性的に自分のリーダーシップスタイルを調整しやすくなるでしょう。

サーバントリーダーシップ

 コンセプト理論で提唱されたリーダーシップスタイルのひとつが「サーバントリーダーシップ」です。

 サーバントリーダーシップでは、リーダーの仕事を「メンバーが能力を発揮して成果を上げられるように支援(奉仕)することである」と定義して、“メンバーの背中を後ろから押す”ような新たなリーダーシップを提唱しています。

 今後増えていくと考えられる「部門や職種を超えて知識労働者が集まった組織やプロジェクト」を運営していくうえで、非常に有効なリーダーシップのあり方です。

サーバントリーダーシップについては、「業績につながるサーバントリーダーシップとは?10の特性と実践のポイント」の記事で詳しく解説しています。効果的に機能させるポイントも分かるようになっていますので、ご興味あればぜひご覧ください。

まとめ

 リーダーシップ論のひとつであるコンティジェンシー理論は、条件適合理論のひとつであり、どのような状況でも最高のパフォーマンスを発揮できる絶対的リーダーシップは存在せず、外部・内部環境に応じて適切なリーダーシップを発揮していく必要があるという考え方です。

 コンティジェンシー理論は、現在のリーダーシップ論の主流にもなっているシチュエーショナル・リーダーシップやコンセプト理論のベースにもなっている考え方です。

 記事で詳しく解説した通り、コンティジェンシー理論では「状況好意性」の強さに応じて、「課題志向型」と「対人関係志向型」のリーダーシップを使い分けるものです。

 組織や取り組む仕事の状況に応じて発揮すべきリーダーシップを考えるうえで、非常にわかりやすい理論です。

 状況をある程度単純化しているため、現実に活用する限界もありますが、ほかのPM理論、シチュエーション・リーダーシップ、バーナードの3要素、コンセプト理論などのリーダーシップ理論の理解と組み合わせると、とても有効です。

 リーダーシップ理論は、100年以上研究されてきており、知っておくことでリーダー育成やリーダーシップ発揮に役立ちます。

 本記事が少しでも参考になれば幸いです。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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