組織の人材育成に、社会人基礎力の考え方を入れることもおすすめです。
企業にとって社会人基礎力はどんなメリットがあるのか?
社会人基礎力には、ビジネスで成果をあげていくためのポータブルスキルが分かりやすく定義されています。
ビジネスマナーや専門スキルと違って、基盤となるポータブルスキルは定義すること自体が難しい側面があります。
従って、既に定義されている社会人基礎力をひとつの目安として活用すると、ポータブルスキルのトレーニングを実施しやすくなります。
そして、社員の社会人基礎力を高めていくメリットには大きく2つが挙げられます。
- 社会人基礎力が向上すれば、各部署や職種の教育で教える専門的な知識やスキルをより効果的に活用することができる。
- 社会人基礎力が高ければ、部門や職種を超えてパフォーマンスすることができるため、多様な経験をさせたり、複数の視点を持たせたりするための社内異動なども実施しやすくなる。
社会人基礎力の発揮に大切な心理的安全性の確保
「心理的安全性」とは、1999年に組織行動学を研究するエドモンドソンによって提唱されたもので、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義されています。
2016年にGoogleが「生産性が高いチームの特徴」をデータで研究してプロジェクトアリストテレスの結論として「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」結論で、HRやマネジメント分野では一躍有名になりました。
心理的安全性の確保は、社会人基礎力を発揮していくうえでも重要になってきます。
仕事をしていく中で社員が「自分の行動が、周囲の迷惑になってしまうのではないか?」「アイデアを出そうとしても、優れたものでなければバカにされてしまうのではないか?」と感じてしまう環境下では、主体性や創造力といった力を発揮していくのは難しくなってしまいます。
社員が持つ能力を最大限に発揮できるようにするために、土台となる心理的安全性の確保を意識しましょう。
フィードバックをすることも大切
社会人基礎力を育成する際には、フィードバックも大切です。
社会人基礎力のような抽象的なポータブルスキルは、資格取得や技術レベルなどと違って、「自分のレベルがいまのどのぐらいか?」「どこができていて、どこに課題があるか?」が自分自身で分かりづらいものです。
だからこそ、上司や先輩から適切なフィードバックを行うことで、現状を認識してもらい、成長を促すことが大切になります。
厚生労働省の『令和元年版 労働経済の分析』では「適切なフィードバックは、仕事に対して活力、熱意、没頭の3つがそろった状態であるワーク・エンゲージメントを高める効果もある」とされています。
適切なフィードバックをするには、以下のポイントが大切です。
- ①人格や価値観ではなく、言動に対してフィードバックすること
- ②限度がどんな影響を及ぼすかをフィードバックすること
- ③可能な限り、言動が実施された直後にフィードバックすること
の3つがポイントです。また、フィードバックを効果的なものにするためにも、心理的安全性が確保されていることが大切です。
心理的安全性が確保されない環境でフィードバック、とくに成長課題に対するフィードバックを行なってしまうと、「評価を下げられるかもしれない」「人間関係が悪くなってしまったかもしれない」といった不安をメンバーに抱かせてしまう可能性もあります。
社会人基礎力は、知識や資格と違って見えづらいものです。だからこそ、的確なフィードバックによって現状や強み・弱み、課題が把握できるようになり、強化につながります。
適切なフィードバックは、エンゲージメントの強化や主体性の発揮にもつながります。心理的安全性が確保された環境のもとで、活発なフィードバックが行われるようにしていきましょう。
心理学や脳科学の知見も取り入れる
社会人基礎力を鍛え上げるには、心理学や脳科学の知見を取り入れることも有効です。
たとえば、無意識下での思考の偏りである「バイアス」や、簡略化した思考によって判断を下してしまう「ヒューリスティック」の存在を知ることは、判断力やコミュニケーション能力を高めるうえで、大いに役立ちます。
ノーベル経済学を受賞した認知科学者であるダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』によると、人間の思考には、
- 無意識下で瞬間的、直感的に働くシステム1
- 意識的に働き、動きが遅く論理的なシステム2
の2つがあるとされています。
じつは人間の思考の大部分は、無意識や直観であるシステム1によって処理されています。
そして、システム1のなかに存在するのが、少ない時間と労力で判断を下せるようにするバイアスやヒューリスティックです。
さまざまなバイアスやヒューリスティックは「こういう場合は、たいていの場合こうしたほうがいい」、たとえば「黒や濃い紫、濃い青などの食べ物は、腐敗していたり、毒があったりすることが多いから食べないほうがいい」といった形で、傾向や過去の知識を生かして判断を簡略化して早くするためのものです。
そして、システム1は無意識下で働きますので、多くの人は自分の判断や思考にバイアスやヒューリスティックの影響があることを自覚していません。
その結果として、普段のコミュニケーションにおいても、無意識下での決めつけや前提のズレによって摩擦が起こってしまい、トラブルに発展するケースもあるわけです。
バイアスやヒューリスティックなどの存在を知り、理性的に影響を取り除けるようにすることで、チームワークを向上させ、過去の常識にとらわれずに創造力を膨らませたり、判断ミスによる計画倒れを防止したりといった効果も期待できます。
社会人基礎力を鍛え上げるには、判断や思考を歪める無意識のバイアスやヒューリスティックにはどのようなものがあるのかを学び、理性的に歪みを修正できるようになることも有効です。