社員教育(研修)の予算、平均はどれぐらい?研修種類別の費用相場も解説

社員教育(研修)の予算、平均はどれぐらい?研修種類別の費用相場も解説

社員教育は企業の成長に欠かせない重要なものです。一方で、研修を実施するためには社員の工数を割いたり、場合によっては費用も生じたりします。

 

そのため、社員教育にどれくらいのコストをかければ良いか悩む担当者や経営陣も少なくありません。研修費用は高ければ良いというものではありませんが、安く抑えすぎると十分な社員教育が出来ず、結果的に労働生産性が高まらないこともあり得ます。

 

記事では、社員教育の平均的な予算や研修種類に応じた費用相場を紹介します。

<目次>

社員教育費用の平均予算(一人当たり)

産労総合研究所が実施した『2020年度度(第44回)教教育研修費用の実態調査』によると、2019年度の教育研修費の予算は40,636円となっています(社員一人当たり)。

 

また実績額の平均は、社員一人当たり35,628円となり、2018年度に比べて1,021円UP、率にして3%増加しています。

 

規模・業種社員一人当たりの額
2019年度予算平均2019年度実績平均2020年度予算平均
調査計40,636円35,628円39,860円
1,000人以上36,485円31,397円35,147円
300~999人48,028円41,278円48,056円
299人以下41,588円40,588円41,353円
製造業30,404円24,383円28,447円
非製造業47,135円42,770円47,108円

(出典: 2020年度(第44回)教育研修費用の実態調査

 

 

実績に注目すると、企業の規模別では大企業(1,000人以上)31,397円、中堅企業(300~999人)41,278円、中小企業(299人以下)40,588円となっており、意外なことに中堅・中小企業のほうが教育研修費は高い傾向にあります。

 

大企業の場合には、対象人数が多かったり、専任の教育担当者を社員で設定したりすることで発生費用が安くなっている影響があると思われます。

 

同じ調査で、教育研修費用に関する今後(1~3年)の方向性も見てみましょう。

 

規模・業種教育研修費用総額の今後(1~3年)の方向性
かなり増加やや増加現状維持やや減少かなり減少
調査計4%24.4%45%16.8%9.4%
1,000人以上6.3%25%41.3%17.5%10%
300~999人2.4%28.6%40.5%19%9.5%
299人以下18.5%63%11.1%7.4%
製造業5.2%19%46.6%19%10.3%
非製造業3.3%28.6%44%15.4%8.8%

(出典:2020年度(第44回)教育研修費用の実態調査

 

 

今後1~3年の教育研修費用の方向性ではかなり増加・やや増加を合わせた「増加計」が28.8%(前年45.1%)、かなり減少・やや減少を合わせた「減少計」が26.2%(前年7.6%)、「現状維持」が45%(前年47.3%)となっています。全体的にはほぼ横ばいと言っていいでしょう。

種類別の社員研修の相場や内訳

封筒とボールペンと電卓

 

社員教育の方法は、社員が講師を務めて実施する「社内研修」と、外部の研修会社等を利用する「社外研修」の2つに大きく分けられます。そして、社外研修のなかには1名から派遣できる公開セミナー/講座と、講師を招いて自社の社員だけを対象に実施する個別研修(インハウス研修)があります。

 

また、近年では研修方法の選択肢としてeラーニングを採用する企業も増えています。研修の目的や内容、対象人数に応じて、社内研修、社外研修(公開セミナー/個別研修)、eラーニングをうまく組み合わせて、効果的かつ最適な予算で社員研修を実施していきましょう。

 

 

社内研修

社内研修は自社でカリキュラムを企画し、社員が講師を担当しますので、比較的低コストで実施することが可能です。

 

必要に応じて会場費や参加する社員の旅費・交通費は発生しますが、講師料・研修費として外部への支払いは発生しません。ただし、研修を担当する社員の人件費は見えない費用として発生しますし、研修準備と実施にあたった時間分は他の業務が止まることにもなります。

 

ミッションやビジョンバリューの浸透、自社事業を踏まえた営業ノウハウなどは、社員しか実施できない内容です。一方で、ビジネスマナーや営業のフレームワーク等はプロ講師のほうが高品質で実施できる可能性もあります。研修内容とプログラムの兼ね合いで検討すると良いでしょう。

 

 

社外研修

社内研修を研修企画会社へ依頼する場合は、1日20~70万円が相場です。

 

独立したての個人講師などであれば1日20万円程度ですが、レベルが高い講師や品質が裏打ちされたプログラムであれば、1日50~70万円程度が相場です。トップレベルの講師になると、1日100~200万円になることもあります。

 

研修費用は1時間、0.5日、1日、2日といった時間で金額が変わります。また、講師の旅費交通費などは、研修費とは別で実費精算となることが一般的です。

 

社内研修にしろ、社外研修にしろ、旅費・交通費といった実費が発生するほか、外部会場を借りる場合には会場費が発生します。コストを少しでも抑えたい場合は会場や備品を自社内で用意するのが良いでしょう。社外研修の場合、研修会社によっては会場を持っている場合もあるので、確認してみることもおススメです。

 

また、最近はコロナ禍の影響もありオンライン研修が増えています。オンライン研修の場合は交通費や宿泊費、会場代などの付随的な費用が発生しないため、研修コストを大幅に抑えることが可能です。

 

オンライン研修に向いていない研修もありますが、オンライン研修で効果的な研修が実施可能なものはオンラインでの実施も検討すると良いでしょう。

 

 

e-ラーニング

e-ラーニングは動画コンテンツを使った研修です。

 

インターネット環境があれば閲覧できますし、時間や場所に囚われず個々の都合に合わせて受講することもできます。コンテンツについても始めからサービスで提供されているものに加えて、自社で作成した教材や動画をアップできるサービスもあります。

 

管理者側で受講状況を確認できる機能、視聴後の確認テストやレポート作成を設定できる機能があるeラーニングサービスも増えていますので、しっかりと活用すれば一定の研修効果を上げられます。

 

e-ラーニングの場合、旅費交通費、会場費、備品代、人件費などがかかりませんので、研修費用がかなり安く抑えられます。

 

一般的には初期費用と月額費用がかかるサービスが多く、初期費用は10~30万円程度が相場です。月額費用は社員1人当たり100~1,000円/月とかなり幅があります。利用人数や視聴できるコンテンツ数、機能によって費用はかなり変わってきます。

 

eラーニングは確認テスト等があるとはいえ、ロールプレイングや実践は出来ません。一方で、一度つくった動画を繰り返し使えますので、知識のインプット等に関しては非常に優れています。

 

実施したい研修内容や自社での利用方法を検討して、社内・社外研修との組み合わせ方を考慮し、自社に適したサービスを選ぶことが大切です。

社員教育にかける予算はカットすべきか?

コストカット

社員教育の予算は高ければ良いというものではありませんが、低く抑え過ぎても効果的な教育が行なえません。

 

 

研修費用と研修の効果性

産労総合研究所の2020年度の調査結果では、企業の教育研修費は「従業員一人当たり35,628円」となっています。従って、例えば従業員100人の企業は年間356万円の教育研修費用を確保するのが平均ということになります。

 

年間356万円という予算が高いか安いかは、企業の業績や価値観によっても異なると思います。ただし、教育研修費は企業が成長するためには必要な費用だということは間違いありません。社員教育は人的資源への投資であり、個の成長と組織力を高めることが企業全体の生産性アップにつながります。

 

実際に内閣府発表のデータでは、人材投資を1%増やせば労働生産性が0.6%向上することがわかっています。内閣府のデータを金額に直すと、「社員一人当たりの教育研修費を2,800円増やせば労働生産性が約4.9万円向上する」ということになります。

 

 

適切な研修費用を考えるポイント

社員個人の成長や組織の連携強化による収益性の向上はとても大きな効果があります。例えば、トップクラスの営業、平均的な営業、下位の営業を比較したとき、年間どれぐらいの収益差があるでしょうか。

 

仮に、社員教育によって下位の営業が平均値まで、平均的な営業が1.1倍、1.2倍へと上昇すれば、どれくらいの収益性アップが見込めるでしょうか。

 

社員教育の予算を考える際は、ただ費用を抑えようとするのではなく、「スキルアップによってどのような収益性の向上が見込めるか」という視点を持って、研修の品質や効果性への期待値と照らし合わせて判断することが大切でしょう。

 

適切な判断をするためには、事業やビジネスプロセスを見て生産性を高めるためにボトルネックになっているポイントや、「てこの原理」を働かせられるようなポイントを見出しましょう。

 

そして、ポイントを動かすために人的資源、つまり人の姿勢や能力、チームワーク向上が重要なのか、それともツールや仕組みなどが有効なのかを考えて、意思決定していくことが大切です。

 

 

管理職研修について

一口に社員教育といっても、新人教育や若手研修、各職種の専門性を磨く教育など、さまざまな種類があります。各種研修の中でも、最も成功時の効果性が高く、一方で時間がかかるのが管理職や幹部層の育成です。

 

管理職や幹部層の育成は学習と実践を繰り返すのが基本ですが、研修以外にも現場での成功や失敗体験、振り返りなどが重要な教育機会となります。

 

管理職や幹部の成長は2~3年スパンで考える必要があります。それだけの時間軸で考える必要がありますし、「誰を育てるか」「何を身に付けさせるか」「何を学ばせるか」「何を体験させるか」「体験からどう学ばせるか」といったことを考えて取り組む必要があります。

 

組織を運営していけば将来を期待していた管理職や幹部が退職してしまうことも必ず起きます。将来のビジョンや必要な組織構成に対して多めの人数を育成対象として取り組むことが大切です。

 

 

社員教育に使える助成金

実施する研修によっては助成金が使える場合もあります。助成金を使うために研修内容が効果性の低いものになっては本末転倒ですが、想定している研修内容が助成金の申請条件を満たす場合は積極的に活用すると良いでしょう。

 

 

<人材開発支援助成金>

自社社員の能力開発を目的とした職業訓練や、公的に認められた人材開発の仕組みを導入した際に利用できる助成金で、以下4種類の人材育成制度が対象となります。

 

人材開発支援助成金

特定訓練コース効果が高い10時間以上の訓練

・労働生産性の向上を目的とした訓練

・若年者を対象とした訓練

・OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練 など

一般訓練コース特定訓練コース以外の20時間以上の訓練
キャリア形成支援制度導入コース・セルフ・キャリアドック制度

・教育訓練休暇等制度

職業能力検定制度導入コース・技能検定合格報奨金制度

・社内検定制度

・業界検定制度

 

人材開発支援助成金は正社員のみが対象となり、助成金を利用する場合は厚生労働省に申請を行って認定を受ける必要があります。

 

 

<キャリアアップ助成金>

非正規雇用労働者の正社員化や、処遇改善を実施した事業主が利用できる助成金で、以下7つのコースが用意されています。

 

キャリアアップ助成金

正社員化コース正社員への転換
賃金規定等改定コース賃金の増額改定(2%以上)
健康診断制度コース健康診断の受診
賃金規定等共通化コース非正規従業員と正社員の賃金規定を共通化
諸手当制度共通化コース非正規従業員と正社員の諸手当を共通化
選択的適用拡大導入時処遇改善コース・社会保険加入

・基本給の増額

短時間労働者労働時間延長コース・週所定労働時間延長

・社会保険加入

まとめ 

社員教育の費用は「コスト」として捉えがちですが、実際は人材成長に対する投資です。教育投資により社員一人ひとりの能力向上と組織力が高まり、結果として企業の生産性が向上します。

 

教育費用は必要以上に抑えようとするのではなく、教育の品質や効果性への期待と照らし合わせて判断することが大切です。もちろん、費用が高ければ良いというものでもありません。自社のビジネスプロセスにおけるボトルネック、また対象層や期待する効果と照らし合わせて、適切な判断を行っていきましょう。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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