新人研修を実施するとき、「朝礼」をどのように運用すればいいか迷っている方も多いと思います。朝礼は、効果的に運用すれば、一日のリズムを作るとともに、研修で学んだことを実践で身に付けたり、新人の様子をつかんだりするために不可欠なものです。
記事では、新人研修で朝礼をやるべき理由と、得られるメリット、効果的なものにするためのポイント等を詳しく解説します。
<目次>
新人研修で朝礼はなぜ必要なのか
朝礼には、以下のような目的があります。目的を設定せずに“何となく”“マンネリ”で実施してしまうと、「朝礼は時間の無駄だ」と思ってしまう社員も出てきます。
- 組織やチーム内の情報共有
- 自分が今日何を行なって何を達成するかの整理・確認
- ミッションやビジョン、バリューの浸透
- 組織内の連携やコミュニケーション
- 手軽なOff-JTの実施
朝礼の具体的な目的は、組織や部署によって異なります。近年では、情報共有などを、ビジネスチャットやインターネット上のコミュニケーションツールに置き換えやすくなってきています。
新人研修に朝礼を取り入れるときには、あらためて重点目的を確認したうえで、目的・ゴールに沿ったプログラムを実施することが大切です。参加者にも目的をきちんと伝えて、主体的に参加してもらいましょう。
新人研修で朝礼を行なう目的と得られるメリット
新人研修で行なう朝礼も、上述のように会社や状況によっていくつかの目的があり、朝礼で得られるメリットも、実施するプログラムによって変わってきます。本章では新人研修で朝礼を実施することに関して、よくある目的や作り出せる効果をいくつか紹介します。
新人のモチベーションや状況を把握する
研修期間中の新人は、学生時代から生活リズムが変わり人間関係も変わった中で、新しい知識や心構えを詰め込んでいる状態です。かなりストレスも多く、仕事ではないところで気がかりや引っかかりが生じている状態のこともあります。
そのため、朝礼内で新人の表情や声を見て、モチベーションや状況を把握することは非常に大切です。
朝礼時間は、まだ研修が始まっていないため、新人も素の状態が出やすい傾向があります。とくに朝礼の前後などで少し雑談・会話することでリスクの把握や悩みの解消もしやすくなります。
同期の連携を深める
新人の同期は、研修中に支え合う仲間であり、部門配属後も組織内連携を行いやすい大事なつながりとなります。朝礼で相互理解を目的としたプログラムを実施することで、同期のコミュニケーションも強くすることができます。
特にリモートワークが進んでいたり、物理的に離れた拠点に配属されたりする場合などは、新人研修の期間中に「同期の絆」をしっかりと作ることがポイントになります。
企業に馴染む
「組織社会化」という組織に馴染むプロセスのなかでも、組織の既存メンバーと交流をはかり、人間関係を築くことは非常に大切です。特にリモートワーク中の企業の場合、新人と先輩社員との交流が持ちにくいため、朝礼中にコミュニケーションを促進するプログラムを取り入れることもおススメです。
例えば、毎日の朝礼に先輩社員が1人参加して自己紹介や質問を受けるだけでも、新人の組織への馴染みやすさが促進されることでしょう。何度か実施することで、部門配属後の仕事内容などもイメージが深まり、不安が解消されやすくなります。
組織のミッションなどを浸透させる
新人研修中の朝礼は、組織のミッションやビジョン、バリューを実務や具体的な行動と紐づけて浸透させるうえでも役立ちます。
世界トップランクのホテル「リッツ・カールトンの朝礼」は、クレドと呼ばれる企業理念を浸透させるための場として非常に有名です。「ラインナップ」と呼ばれるリッツ・カールトンの朝礼では、理念が書かれたクレドカードを使いながらディスカッションを行なっています。
ミッションやバリューは抽象的な表現であることが多いため、朝礼などを使って、ケーススタディの繰り返しや実践事例の共有で浸透させていくことが有効です。
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一日のスケジュールやゴールを明確化する習慣を作る
新人研修の効果を高めるには目的意識を持って研修を受けてもらうことが大切です。また、OJTや部門配属後は、自分でスケジュールを決めたり、自由に動ける時間が増えたりする分、スケジュール設計やゴール設定の習慣がより重要になってきます。
朝礼を通じて、「朝の時点で一日のスケジュールやゴールを明確にした状態で仕事を始める」習慣を作りましょう。
ロジカルコミュニケーション力を高める
ビジネスでは「端的でわかりやすい発信力(ロジカルコミュニケーション)」が必要です。ロジカルコミュニケーション力が低い状態で部門配属されると、新人の報連相が問題になりがちです。
ロジカルコミュニケーション力を育てるためには、30秒や1分、3分などで、端的に事実と意見を発信できるようにするトレーニングがおススメです。
例えば、「経済ニュースなどで1つ気になったものをピックアップして、1分間で相手に記事の内容と意見を伝える」といったペアワークを朝礼で繰り返すと、ロジカルコミュニケーション力を鍛えられます。
新人研修の朝礼を効果的にするポイント
新人研修の朝礼を効果的なものにするには、以下2つのポイントも押さえておきましょう。
目的を明確にする
朝礼を効果的にするには、実施目的を明確にしたうえで、目的とゴールに適したプログラムを選びましょう。
研修期間が長期間にわたるようであれば、前半は同期の連携やコミュニケーション、後半は組織のミッション浸透や、現場で働くうえで必要なスキルの向上など、目的を切り替える方法もあります。マンネリ化を防ぐうえでも、曜日によって目的とプログラムを変えることもやり方の一つです。
参加型のプログラムにする
アメリカの国立訓練研究所による「ラーニングピラミッド」では、講師の話を一方的に聞く座学より、学習が定着することがわかっています。
朝礼も同様です。人事などの指導者側が一方的に喋るのではなく、参加型のプログラムにしましょう。例えば、自社のミッションやバリューなどを浸透させる場合、既存社員が一方的に説明するよりも、グループワークなどの形式にした方が効果的です。
新人研修の朝礼ネタを紹介
新人研修期間の朝礼で使えるプログラムをいくつか紹介します。自社の新人研修で朝礼を実施する目的を踏まえて、参考になるものがあればぜひ取り入れてください。
今日の達成宣言
今日一日のなかで達成する目標(行動or結果)を宣言してもらいます。一日のスケジュールを素早く確認して、目的に向かって行動する習慣が身に付きます。
今日のミッション・ビジョン・バリュー
ミッション・ビジョン・バリューのなかで、今日一日のなかで実践することを宣言してもらうプログラムです。抽象的なミッションやビジョン、バリューを、日常の具体的な仕事や行動に結びつけられるようになります。
ハッピー体操・本気のじゃんけん
笑顔が必要な接客業や介護職などでは、ハッピー体操というプログラムもおススメです。体を動かすことは脳を刺激して、仕事を始めるスイッチを入れる効果があります。
ハッピー体操では、まず、その日の目標などを発表したあと、2人もしくは3人で向かい合い笑顔で「今日も一日よろしくお願いします!!」と相手と握手します。そして、3回拍手!!して、笑顔で「HAPPY」と声をそろえていうのが基本的な流れです。
また、本気のじゃんけんというプログラムもあります。こちらは、2人か3人で組んで、相手とじゃんけんします。そして、勝ったら本気で喜ぶ!!!負けたら本気で悔しがる!!!というプログラムです。
いずれも文字だけで見ると怪しい儀式にも見えますが、「笑うことで幸福度が増す」といったように、“身体行動が脳にフィードバックされる”ことは脳科学でも実証されています。
1分間スピーチ
気になったニュース内容と考察、意見を1分間で発表してもらうプログラムです。情報をわかりやすく端的に伝えるロジカルコミュニケーション力のトレーニングになります。
毎日ネタ探しをすることで、時事問題などに関心を持たせることも可能ですし、テーマをうまく設定すれば自社商品・サービスや業界の理解などにもつながります。
3分間ロープレ
セールストークや接客用語などを使い、短時間でロールプレイングを行なうプログラムです。実践的な練習を繰り返すことで、技量を高められるメリットがあります。新人全員でやっても良いですし、誰かを指名して公開ロールプレイングするような方法でも効果的となるでしょう。
1分コミュニケーション
1分コミュニケーションは、新人同士がペアになって、お互いに1分間ずつインタビューするというものです。相互理解を深めて、同期の絆を作ることが目的となります。インタビューに使うお題は、趣味や好きなスポーツといったプライベートなものでも構いません。
ペアになって相手のことを褒め合う1分間ストロークも、新人同士のコミュニケーションを円滑化する効果があります。
まとめ
新人研修の朝礼には、以下のように幅広い目的があります。
- 組織やチーム内の情報共有
- 自分が今日何を行なって何を達成するかの確認
- ミッションやビジョン、バリューの浸透
- 組織内の連携やコミュニケーション
- 手軽なOff-JTの実施 など
朝礼によって研修効果を高めるには、目的の明確化や参加型プログラムにするなどの工夫がポイントです。記事内で紹介した朝礼に使えるプログラムも参考に、自社の目的に見合った効果的な朝礼をぜひ実施してください。