適性検査は、面接だけでは見抜きにくい応募者の資質や適性を客観的に判断できるツールです。最近では、応募者を見極めるだけでなく、自社に惹きつけたり応募者を集めたりする目的で適性検査を使用するケースも増えるようになりました。
適性検査は、採用活動に不可欠なものです。ただ、導入の際には、利用目的や使い方を明確にして、精度を検証することが大切になります。また、適性検査は、採用活動以外に、既存社員のマネジメントなどに役立てることも可能です。
記事の前半では、適性検査の概要、目的、効果を確認します。そのうえで、記事の後半では、適性検査の代表的な10種類の特徴と選び方、採用以外における適性検査の活用方法を解説します。
<目次>
適性検査とは?
適性検査とは、面接で見抜くことが難しい求職者の価値観や人柄、地頭などを検査するものです。
適性検査は、新卒採用で実施されるイメージが強いかもしれません。しかし、中途採用でも非常に効果的なツールです。
なぜなら、中途採用者はキャリアがある分、仕事に対する価値観や働き方がある程度出来上がっていて、入社後に変わりづらいという傾向があるからです。したがって、中途採用時の適性検査は、社風や価値観との一致を見るうえでも有用と言えます。
適性検査の主な種類
適性検査には、大きく分けて「性格検査」と「能力検査」があります。
「性格検査」は、特性検査、パーソナリティ検査、能力検査は地頭検査などと呼ばれる場合もあります。性格検査は、個人の特性や行動傾向を多面的に把握し、適性や適職を見極める目的があります。
後者の「能力検査」は、主に、地頭などの変わりづらい基礎能力や、論理的思考力などを診断します。検査の種類によって、全般的な学力レベル、知識に関係ない地頭、エンジニア適性を見るなどの違いがあるため、自社の仕事で必要な能力に応じて選ぶことが大切です。
なお、大半の適性検査ベンダーは、同じ企業が性格検査と能力検査、両方の機能やサービスを提供しています。
適性検査の実施形式とメリット・デメリット
適性検査を実施形式で分類すると、筆記形式・テストセンター形式・インハウス形式・Webテスト形式の4つに分かれます。
筆記形式は、適性検査の提供会社(適性検査ベンダー)が用意するマークシート式の問題で行なうものです。
テストセンター形式は、適性検査ベンダーなどが準備する会場で実施する形式になります。テストセンター形式の場合、受検者は会場内のパソコンで回答することになるでしょう。
インハウス形式は、利用企業が用意する会場でWebテスト形式の検査を受検していくものとなります。
最後のWebテスト形式は、受検者の自宅からオンラインで受検してもらうやり方です。
適性検査における形式4つのメリット・デメリットをまとめると、下表のとおりになります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
筆記形式 | ・監督者がいるため不正リスクが低い | ・集計が手作業になるなど時間やコストがかかる ・受検者を集めて時間を確保する必要がある |
テストセンター形式 | ・監督者がいるため不正リスクが低い | ・委託できるため手間がかからない ・外部に委託し、また会場を利用するため実施コストが高くなる |
インハウス形式 | ・監督者がいるため不正リスクが低い | ・受検直後から結果を把握できる ・受検者を集めて時間を確保する必要がある ・会場や機器を用意する必要がある |
Webテスト形式 | ・会場を用意しなくてよい | ・受検者が自宅から受検できる ・受検直後から結果を把握できる ・他の形式と比較して、身代わり受検などの不正が行なわれる可能性がある |
現在では、殆どの適性検査がWebテスト形式で実施できるようになっています。したがって、実施や即座の結果受け取りなどが手軽になっていると考えてよいでしょう。
Webテスト形式における身代わり受検の問題に関しても、Webカメラ等を使って不正防止する取り組みが進んでいますので、各サービスで確認してみるとよいでしょう。
適性検査を実施する目的
面接では見抜きづらい資質や適性を把握することが、採用時における適性検査の基本目的です。
ここでは、採用活動において適性検査が多く実施されているフェーズについて解説します。以下を参考に、自社が適性検査をどのフェーズで利用したいのかを検討してみてください。
見極める:自社で活躍できる応募者を見極めて合否を判断する
「見極める」段階で適性検査を行なう場合、検査によって応募者を定量的に測定し、面接では判断しにくい素質を判断することになります。例えば、性格検査で価値観や行動特性、能力検査で知能や専門スキルなどを測ることができるでしょう。
「見極め」で利用する場合、自社の既存社員に受検してもらい、成果をあげているメンバーに共通する要素が何かを見極める、また、採用の合否ラインを決定することが大切です。
見極めの段階で適性検査を効果的に活用することで、公平性と納得性の高い採用プロセスを構築することが可能になり、選考の信頼性も向上します。
惹きつける:応募者の志望度を高める
「惹きつける」段階での適性検査では、応募者に自社のファンとなってもらい入社につなげることが目的になります。
たとえば、適性検査の結果シートを通じてフィードバックを行なうことで応募者との接触機会をつくりだす、適性検査の結果を開示しながら「こういう要素はうちの仕事でこう活かせる」「トップパフォーマーとここが共通していて…」と根拠のある魅力付けを実施するといった使い方です。
集める:応募者を集める、応募者に接触する
「集める」については、採用の初期に適性検査のフィードバックを集客コンテンツとして利用するようなケースです。
日本の大学では、適性検査の対策講座を行なっているところも多数あります。
やはり就活生が持っている適性検査への関心がとても高く、採用初期に行なう適性検査のフィードバックは、「受検結果を知りたい」心理をついた集客となります。
ただし、「集める」で紹介した活用方法は、適性検査における本来の目的からは外れています。適性検査が目当てで来る応募者は、自社に適切な人材ではない可能性もあるかもしれません。
したがって、「集める」目的で適性検査を利用する際は、注意が必要です。
適性検査の効果
適性検査の実施は、以下の効果やメリットにつながります
選考の精度や妥当性を高められる
適性検査を使わない採用活動は、面接に重きを置くことが大半です。
ただ、しっかりと設計されていない非構造化面接では、面接の合否を面接官の勘や経験に頼ってしまい、面接の精度(入社後の活躍を予測する精度)は高くないことがわかっています。
そのため、構造化された面接と適性検査を組み合わせて選考を行なうことで、自社に合った人材を高精度で採用できるようになるでしょう。
ストレス耐性を把握できる
ストレス耐性とは、ストレスに対する強さのことです。
知識労働や感情労働が仕事の多くを占めるようになり、また、メンタルヘルスの発生率も高まったりする中で、ストレス耐性の高い人物が特に求められるようになっています。
ただし、面接だけでストレス耐性の有無を判断するのは、困難です。最近では、非言語情報の少ないWeb面接が増えていることから、ストレス耐性の判断はさらに難しくなっています。
こうしたなかでストレス耐性を把握するには、面接と併せて適性検査を行なうことがおすすめです。
適性検査で見極めるストレス耐性は、先天的な資質+後天的に身に付けたストレス処理スキルの要素になります。
面接では、応募者が回答内容などの事前対策をしていることも多いです。一方でストレス耐性を測る適性検査には、事前対策が難しい特徴があります。
したがって、面接と適性検査の併用は、ストレス耐性を見極める有効な手段といえるでしょう。
面接の精度や生産性を高められる
面接は、論理性やコミュニケーション能力、エピソードのヒアリング、全体的な印象や雰囲気を見ることに適している一方で、内面的な価値観や動機の把握には不向きな側面があります。
ただ、面接の前に適性検査を使って本人の動機や特性などを確認することで、面接時のエピソードヒアリングなどで重点的に確認したいポイント、懸念点や長所の確認などがスムーズになるでしょう。
なお、面接に余談が入ることを避けたい・精度を高めたい場合には、事前に適性検査の結果は参照せず、面接での印象・所感と適性検査の結果が一致するかを事後に振り返ることが効果的です。
いずれの場合も面接と適性検査を併せて活用することで、若手とベテラン面接官における採用精度の差なども減らせるようになるでしょう。
採用基準の明確化や振り返りに使える
採用活動で適性検査を活用することで、そもそもの採用基準を明確にすることも可能です。
採用基準の明確化に適性検査を使いたい、新しい検査を導入する場合には、まずは既存の全社員に検査を受けてもらうのがおすすめです。
全社員が難しい場合は、内定者~入社3年目までの若手社員をピックアップして実施していきましょう。
社員実施をする際には、採用のモデルとなる採用したい上位層、平均層、逆にパフォーマンスや評価が低い層まで、まんべんなく候補者をピックアップして実施することが大切です。
実施人数は、各階層5~7名×3階層で15~20名程度が理想です。上位・平均・低位層までの違いや共通点を比較することで、採用基準の明確化と精度アップが可能です。
既存社員に実施することで「こんな人材が欲しい」や「こういう求職者は避けたい」という漠然とした感覚を定量化し、採用基準に盛り込みやすくなります。
分析結果を通して採用基準を再設定し、面接質問をさらに掘り下げる・項目を変えるなどの改善をしていけば、自社に合った人材を採用する精度も高められるでしょう。
なお、既存社員に実施した適性検査データは、配属先の検討や、退職傾向や活躍度の分析、マネジメントにも使えます。幅広く実施・活用することがおすすめです。
代表的な適性検査サービス10種類を紹介
適性検査サービスには、さまざまな種類があります。多くの企業で活用されている代表的な10種類のサービスを紹介していきましょう。
SPI3
40年以上の実績で蓄積したデータを使い、面接だけでは確認しづらい基本的な資質を測定する検査です。受験後すぐに結果がわかるため、面接と同日の実施も可能です。大卒採用のほかに、高卒や中卒向けも用意されています。
CUBIC
性格面や社会性を数値で見極める検査です。紙とWeb受験があり、紙受験のほうには、採用に使うものと現有社員向けの適性検査が用意されています。
GAB
新卒総合職の採用で使う適性検査です。GABを実施すると、知的能力とパーソナリティの測定結果がわかります。また、採用時に見ておくべき営業や研究開発といった8つの職務適性や、チームワークなどの9特性も予測可能です。
GFT
大卒の知的能力に特化した検査です。計数理解、言語理解、英語理解の3つを測定できます。1科目だけの測定や短時間での実施も可能なため、採用初期の大量選抜にもおススメです。総合適性テストGABと組み合わせて実施をしてもよいでしょう。
玉手箱Ⅲ
パーソナリティと知的能力の両面から測定可能な総合適性検査です。知的能力では、計数理解、言語理解、英語理解を測定できます。診断結果は、入社時に見ておくべきチームワークなどの9特性もしくは、IMEGE検査6尺度で受け取れます。
3Eテスト
最大35分ほどで知能と性格・価値観を測定できる検査です。3Eテストでは、面接ではわかりづらい性格特性や創造的志向性、ストレス耐性、エネルギー量などを確認できます。結果報告書は、定量的でわかりやすい内容です。
DPI
数多くのテスト結果や人事考課との相関データを使い、対人関係処理能力や意欲を測定する検査です。営業系や人事総務系、企画系、管理職といった職務適性も判定できます。採用のほかに、適正配置などにも活用可能です。
適性検査スカウター
優秀な人材ではなく、定着しない、頑張らない、成長しない人材を見極めるというユニークなコンセプトの適性検査です。能力検査のほかに、資質や定着度の測定、精神分析も行なえます。
HCi-AS
メンタルヘルスチェックに対応したストレス耐性の測定サービスです。無駄を省いたシンプルな設計となっており、検査は10分、診断結果提出まで最短で15分を実現しています。
採用推奨度や面接で確認すべきことのわかりやすい記述報告は、中小企業の採用などでは非常に生かしやすいものです。
MARCO POLO
MARCO POLOは、個人の検査結果を出すだけではなく、組織と個人の双方向分析によって活躍可能性を測定できる第5世代の適性検査です。
科学的分析手法と心理統計学を使って、組織風土・職務適性と候補者の価値観や動機、特性などとの一致度(活躍可能性)を算出します。
適性検査の選び方 3つのポイント
適性検査を選ぶときには、以下の点に注意して実施するとよいでしょう。
価格だけで選んではいけない
適性検査の価格は、1名あたり数百円で使えるものから高いものでは67,000円/人まで開きがあります。実施対象者が多い場合、コストを抑えるために安い適性検査に目が行きがちです。
しかし、自社のニーズに合わない適性検査で採用精度が低下して、入社させてはいけない人を採用したり離職者が増えたりすると、損失は数百万円の単位になります。
コストを抑えることはもちろん重要です。
しかし、ミスマッチによる損失を抑えるためには、十分な予測的妥当性が担保できる検査を選ぶことが非常に大切でしよう。
予測的妥当性を確認する
予測的妥当性とは、「適性検査の結果によって、入社後のパフォーマンスを予測できるかどうか?」の精度を指します。予測的妥当性があるということは、適性検査のスコアが高かった人が入社してから定着・活躍する、逆に適性検査のスコアが低い人が離職したり滞留したりするということになります。
各検査の予測的妥当性は、既存の社員に適性検査を実際に受けてもらうことで確認できます。前述のとおり、予測的妥当性を確認する際はサンプルとなる既存社員には必ずハイパフォーマーとローパフォーマーの両方を含めましょう。
そして、ハイとローの違いを見極めたり、ハイ同士・ロー同士の共通要素が見つかるかを確認したりしていきます。検査結果は、活躍予測とネガティブ排除の2観点で予測的妥当性を考えてみましょう。
- 活躍予測:検査結果が良い人材が高いパフォーマンスを出しているか?
- ネガティブ排除:ストレスに弱いなどのマイナス要因が実際の問題につながっているか?
自社の風土・仕事内容と個人の価値観・特性のフィット度
自社の組織風土や仕事内容と、個人の価値観や特性がフィットするかは、定着や成長スピードに大きな影響をもたらします。また、価値観や特性は一概に「高い・低い」で評価できるものではありません。
例えば、一般的に「ストレス耐性は高いほうが良い」と思われがちです。しかし例えば、感情労働やホスピタリティが求められる企業・職種の場合、「ストレス耐性が高すぎる(感受性が低い)」と、高いパフォーマンスや自社が目指すおもてなしができない可能性が高まります。
最近の適性検査開発では、価値観や特性は「高い・低い」よりも「自社の活躍基準にフィットするかが重要である」というのが一般的な考え方になっています。
近年では、組織検査の結果などと併せて、企業風土・仕事内容と個人の価値観・特性のフィット度を定量的に判定してくれるような適性検査も増えていますので、選択肢の一つとして検討するとよいでしょう。
人材育成にも使える適性検査
適性検査を通じて既存社員の性格特性を把握すると、以下のように採用以外のシーンでも適性検査の結果を活用できるようになります。
適正配置を実現する
入社人材の適性を把握すると、個々の適性に合った配属先の選定が可能になります。
適性検査を配置に利用する際に大事なことは、職務・職場の必要要件(活躍要素)の明確化です。
職務・職場の要件は、各職務をよく知る人からアンケート調査などを行なう、また、各職場・職種の既存社員に検査を受検してもらい結果を比較することが有効です。
各職務・職場の要件と適性検査の結果を比較することで、職務・職場への適性が予測できるようになるでしょう。
ただし、採用時の適性検査を配置にも利用する場合は、あらかじめ応募者の承諾を得ておく必要があります。
人材マネジメントに活用する
適性検査の結果をみると、人物の価値観やコミュニケーション特性が明らかになります。また、価値観や特性が見えると、人材マネジメントにも活用できるでしょう。
たとえば、親和動機が高い人であれば、人間関係・信頼関係の構築に配慮することが必要です。
また、達成動機が高い場合、ある程度の目標設定を任せて自由に仕事をやらせることが有効になるといった形になります。
さらには、適性検査の結果を本人にフィードバックすることで、能力開発への刺激を与えることも可能になります。ただし、結果のみを伝えた場合は、十分に内容を消化できない可能性があります。
適性検査の結果を能力開発に活かすには、本人が建設的に考えられるようにするために、丁寧なフィードバックを行なう必要があるでしょう。
管理職適性をチェックする
管理職への昇進判断を誤ると、本人だけでなく部下や組織への影響も大きくなります。そのため、管理職への昇進判断は、慎重に行なわなければなりません。
しかし、昇進候補者の情報には、上司によるバイアスがかかっている可能性があるなどのように、客観性に不安があるのも事実です。
適性検査は、採用時の利用と同じく、昇格検討などの客観性を補完するために役立ちます。
たとえば、上司からの推薦と併せて、適性検査の結果も踏まえた面談を行なうと、より的確な判断を下せるようになるでしょう。
退職者を分析する
退職者が多い企業の場合、適性検査の結果から退職者の傾向を分析することも有効です。
適性検査の結果と退職理由などを分析することで、自社の風土に合わない人材の特徴が明らかになります。それを採用判断に活用することで、適切な採用活動や退職率の抑制がしやすくなるでしょう。
まとめ
適性検査を行なうと、面接だけでは見抜くことが難しい求職者の価値観や特性、地頭などを判断しやすくなります。適性検査の活用で期待できる具体的な効果には、以下のようなものがあります。
- 選考の精度や妥当性を高められる
- ストレス耐性を把握できる
- 面接の精度や生産性を高められる
- 採用基準の明確化や振り返りに使える
適性検査は、採用フローにおける以下3つのフェーズのそれぞれで利用できます。
- 集める
- 見極める
- 惹きつける
従来の適性検査は、「見極める」に利用されることが一般的でした。ところが、最近では、「惹きつける」「集める」でも適性検査を利用する企業が増えるようになっています。
なお、適性検査には、採用のほかに以下のような活用方法もあります。
- 適正配置の実現
- 人材マネジメントへの活用
- 管理職適性のチェック
- 退職者の分析
適性検査を選ぶときには、価格だけでなく予測妥当性のチェックがより大切となります。自社に合った適性検査を探している人は、ぜひ以下の資料も参考にしてみてください。