人を育てる会社は知っている!若手・新人が育つ本当の理由

更新:2023/12/25

作成:2022/01/13

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

人を育てる会社は知っている!若手・新人が育つ本当の理由

多くの企業が「人材育成は難しい」と悩んでいます。とりわけ今は多様性の時代です。人それぞれに個性があり、仕事への考え方も異なります。そして、いまの新人や若手は「個性が認められることが当たり前」の環境で育っており、昔ながらの画一的な育成方法、組織の価値観に染め変えるような人材育成は通用しなくなりつつあります。

 

記事では「人を育てられる会社をつくる」ということにフォーカスして、人を育てられない会社の特徴、人を育てる会社が若手・新人を育てられる理由、人を育てる会社になるための方法を紹介します。

<目次>

人が育たない会社の特徴

HRドクターを運営する研修会社ジェイックは、多くの企業で人材育成の支援を行なってきました。多くの企業と関わるなかで感じる、人を育てられない会社の特徴を紹介します。

 

特徴① 研修会社を業者としか思っていない

1つ目は、研修を依頼するクライアント企業と我々のような研修会社の関係性です。人材育成がうまくいっていないと感じる企業の多くは、研修会社を「業者」としかみなしません。私たちが「御社の課題は何で、どう解決したいのか」といったテーマを話し合おうとしても、「そういう話は結構です。何ができるのですか?」と言われたりします。

 

これは執筆者が研修会社だから、というポジショントークに感じるかもしれませんし、我々の力量不足な部分もあるかもしれません。一方で、外部企業とパートナーシップを組まない、外部企業の力を引き出そうとしない姿勢は、人材育成にも通じる部分があります。

 

企業において「人」は唯一、成長して、自らの意思でパフォーマンスを幾らでも高められるリソースです。しかし、上記のような企業は、社員を「育成」するものではなく、「使う」ものとしてとらえている傾向があるように感じます。

 

特徴② 研修会社に丸投げする

2つ目は、「御社にお任せしますので、あとはよろしくお願いします」と丸投げする会社です。言葉こそ丁寧ですが、じつは1つ目の「研修会社を業者とみなす」と通じるものがあります。

 

人材育成の業界で良く知られるブリンカーホフの法則をご存じでしょうか。これは研修効果に影響を与える要素の割合を示したもので、2007年にロバート・ブリンカー・ホフ博士が発表したものです。ブリンカーホフの法則では、研修効果に影響をおよぼす要素の割合は、研修前が4割、研修内容そのものは2割、研修後が4割ということを示しています。

 

したがって、研修効果を高めるためには、まず研修前の打ち合わせを通じた課題の特定、会社や参加者の事情を組み込んだ適切な研修コンテンツへの調整、また、参加者の受講意欲を高めるための事前告知や面談、事前課題などが大切です。

 

一方、研修後は、研修での学びを職場で実践する、職場でアウトプットさせることで学びを深める、上司が研修内容などの報告を受けて実践をサポートするといったことがポイントです。

 

こうした研修前後の取り組みは研修会社だけでできるものではありません。人材育成がうまくいっている会社は、研修会社をパートナーとして扱って注文も細かいです。また、事前事後の取り組みもしっかりと調整・実施する傾向があります。研修を実施するだけでは、本来得られる効果は得られないのです。

 

特徴3 上司が部下育成に無関心

部下の研修参加が決まったとき、「どのような内容を学ぶのか」「部下に何を学んでほしいか」とヒアリングしても興味を示さない上司がいます。また、人材育成がうまくいっていない会社ほど、研修前後の面談が実施されなかったり、研修内での上司メッセージなどが適当だったりします。

 

これらはすべて上司が部下育成に無関心であることを示しています。こうした上司の存在は研修効果を半減させることはもちろんですが、日々の業務内で人材育成が実施されていないことも想像させます。日々のマネジメントとコミュニケーションを通じた上司の人材育成が、組織開発の基本です。

人が育つ会社の特徴

前章では人が育たない会社の特徴を紹介しましたが、逆に人が育つ会社はどのような特徴や文化があるでしょうか。本章では人が育つ会社が持っているDNAや取り組んでいることを紹介します。

 

人が育つ会社に培われているDNA

まず人が育つ会社は「学ぶこと」に前向きです。学ぶDNAが培われる最大の理由は、経営者が「人材育成」を大事にしていることです。

 

人が育つ会社では、まず経営者自身が自己成長、自分の器を拡げることを大切にしています。そして、自らが学び成長した経験を持っているからこそ、経営における人材育成の優先度も高く、日々の業務を通じて学ぶこと、挑戦や成長のための人事配置の実践、人材育成に向けた投資などを推奨しています。

 

経営者の姿勢に幹部や管理職、メンバーも触発され、学びに前向きな文化が形成されます。人材育成のDNAが培われている会社は、経営者から幹部、管理職から一般メンバーまで、日々「学ぶ」「成長する」ことを大切にしています。

 

人を育てる会社が取り組んでいること

人が育つ会社では、「何のために人材育成するのか」「いま誰を育成すべきか」「いま何が課題か」「人材育成で解決すべき課題か、仕組みなどで解決すべき課題か」といったことが日々考えられています。

 

私たち研修会社に依頼や相談が来る際にも、「いまこうした事象が起こっていて、ここが原因だと思う。今回の研修は、この層のこうした部分に働きかけたい」といった研修を実施する意図や目的が明確です。研修の意図や目的は、研修会社はもちろん参加者にも共有されます。

 

人材育成がうまくいっていない会社で研修をすると、研修参加者の多くが会社から「参加するように」と言われて、意図や目的も知らないままに参加しているケースが多いです。しかし、人材育成がうまくいっている会社では、研修参加者自身が自分の仕事にこう生かしたいといった意図を明確に持ち、前向きに参加しています。

人を育てる会社で部下が育つ理由

部下を育てるカギを握るのは上司です。上司からの働きかけ一つで成長が加速することもあれば、逆に成長の芽を摘み取って潰してしまうこともあります。本章では部下育成が上手な上司が意識しているポイントを解説します。

 

ポイント① 教えない

1つ目は、じつは「教えない」ことです。多くの場合、上司は部下より業務経験やノウハウがあり、部下の相談に対する答えを知っています。「知っている」ことは、「教えたくなる」もしくは「教えたほうが楽」という心理を生み出します。

 

しかし、上司が答えを教えることが習慣化すると、部下は「上司に聞けば良い」と受け身になり、考えなくなります。じつは考えない部下を生み出しているのは答えを教える上司なのです。人材育成がうまい上司は、すぐ答えを教えることよりも、部下に考えさせることを優先します。

 

「君はどう思う?」「どうするのが良いと思っている?」「君の意見は?」といった形で、部下に考えさせましょう。もちろん状況や場合にはよりますし、考え方を教えなければ部下も成長しませんが、すぐに答えを教えるのではなく、「教えない」ことは部下育成のポイントになります。

 

ポイント② ゴールを設定する

2つ目は、ゴールを設定することです。ゴールをしっかり設定すると、部下がどこに向かうのかが明確になり、自走できるようになります。大切なことは、ゴールを設定すること、そして、ゴール設定が上司と部下で一致していることです。

 

ゴール設定は日常業務でも大切ですが、人材育成でも大事です。例えば、「2年以内にリーダーに昇進する」というゴール設定が上司と部下で共有できていると、人材育成はスムーズになります。上司が部下を指導する基準は「リーダーに昇格できるか」となり、「今の判断ではリーダーにはなれない。リーダーであればこうした判断をして欲しい。なぜなら……」などと適切にフィードバックすることが可能です。

 

ポイント③ 挑戦させる

3つ目は、部下に応じた最適なタイミングで挑戦させることです。実力以上の仕事に挑戦させることが成長を促すことを、育成力が高い上司は知っています。したがって、部下の実力や意欲を見ながら、最適なタイミングで、新しいことに挑戦させます。

 

上司がやっている責任ある仕事を権限移譲し、部下自身のやり方で進めさせることによって経験値を高めます。大事なことは、ある程度放置して任せることです。それが部下の自ら考えて判断する力を養うことにつながります。しかし、部下の実力や意欲を見ずに無闇に挑戦させても、部下を潰してしまいます。人材育成がうまい上司は一人ひとりの部下の状況と意欲をきちんと見ながら、挑戦させるのです。

人を育てる会社で若手・新人が育つ理由

 

理由① 指導者の「育成力」を高めている

多くの会社が若手や新人を育成しようと研修を実施したり、研修プログラムに工夫をこらしたりしています。一方で、若手や新人の指導者となる上司やOJT担当者向けに研修を実施する会社は意外と少ないものです。

 

会社側からすると、OJT担当にする人はそれなりに仕事ができる人を指名するので、育成もできると思っているのが理由でしょう。しかし、「仕事をする」ことと「人を教える」ことでは使う能力が違います。

 

教育や人材育成にも、数多くの理論やセオリー、ノウハウがあります。例えば、コミュニケーションタイプや動機論、強みなどのセオリーを知っていれば、自分と違うタイプの新人や若手を育成する難易度はグッと下がります。

 

新人や若手を育てるうえでは、新人や若手自身への教育と同じぐらい、OJT担当者や上司の「育成力」が大事なことを理解している会社は、OJT担当者や上司にも定期的に研修を行ない、指導方法やコミュニケーションの取り方、新人や若手の特徴を伝えています。

 

理由② 組織で人材育成する

新人や若手を育成する際、新人研修が終わったあとの教育はOJT担当者や上司に任せられがちです。上司やOJT担当者は、自分の通常業務があるなかで新人や若手を指導することになりますので、相応の負荷がかかります。上司やOJT担当者の力量や経験によって、過剰なストレスや負荷となる場合もあります。

 

したがって、人材育成がうまい会社は新人や若手育成を上司やOJT担当者だけに任せません。人事部門による定期的なフォローアップ研修や面談の実施、上司やOJT担当者の上司を巻き込む仕掛け、メンタル部分のケアをブラザーシスター制度やメンター制度でカバーする仕組みなどを作っています。

 

理由③ マインド教育を実施している

人が育つ会社では、必ず「マインド教育」に力を入れています。マインド教育と聞くと怪しむ人もいるかもしれませんが、仕事への姿勢、好ましい考え方、働く価値観、コミュニケーションへの向き合い方、成長することの大事さといったものです。

 

新人や若手の成長を加速するためには、上記のような姿勢や考え方が非常に大切です。新人や2,3年目でスキル教育ばかりに力を入れている会社では、多くの場合、その先の成長が伸び悩んだり、成果が頭打ちになってしまったり、リーダーとして抜擢できなかったりします。

 

どんなにスキルを高めても、スキルを使う人の人間力や姿勢がともなっていないと、宝の持ち腐れになります。また、研修や日々の業務で学ぶ機会があっても学習意欲や貢献欲求がなければ、成長にはつながりません。考え方や価値観などのマインド教育は、新人若手の成長を加速させるうえで不可欠です。

 

若手社員の行動変容につながる研修に関心がある方は、以下のページから資料をダウンロードしてみてください。

まとめ

記事では人が育たない会社の特徴として、「研修会社を業者としか思っていない」「研修会社に丸投げをする」「上司が無関心」という3つを挙げました。

 

また、人を育てる会社のポイントとして「教えない」「ゴール設定」「挑戦させる」、若手・新人を育てるコツとして、「指導者の育成力を高める」「組織で人材育成する」「マインド教育を実施する」といった点を紹介しました。

 

記事を参考に「人を育てる会社」づくりに取り組んでいただければ幸いです。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
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