新人は「振り返り」で成長する!仕事レベルを上げる効果的な振り返りのポイント

更新:2023/07/28

作成:2021/08/05

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

新人は「振り返り」で成長する!仕事レベルを上げる効果的な振り返りのポイント

昔から人材育成を効果的にする大切なポイントとして、「内省(リフレクション)」の技術があります。内省(リフレクション)とは、「仕事や業務から離れたところで、仕事の流れや自分自身の考え方・行動などを客観的に振り返ること」を指します。しっかりと振り返りすることで、体験から学びが深まり、成長が加速するのです。

「内省(リフレクション)」の技術は、成長を加速させる習慣ですので、ぜひ入社したての新人のうちに習慣化させましょう。初めて体験することが多い新人は、日々覚える仕事も多く、目の前の業務をこなすことで精一杯かもしれません。しかし、日々新たな経験を積んでいるからこそ、しっかりした振り返りを習慣化することが効果的です。

記事では、新人の成長を促す振り返りとは?という振り返りの必要性とその効果的な方法をお伝えします。

<目次>

「振り返り」とは何か?

本章では、まず「振り返りとは何か」と、振り返りの重要性を確認・解説します。

 

デイビッド・コルブの経験学習モデル

振り返りの理論については教育理論家であるデイビッド・コルブが提唱した「経験学習理論」が非常に有名です。コルブは経験から学ぶプロセスを、以下の「経験学習モデル」にまとめています。

 

サイクル1:経験

具体的な経験をする
⇒自分で考えて行動し、何らかの結果を得る、そして結果を受け入れる

 

サイクル2:省察

何が起こったかを多様な視点から振り返る
⇒経験をさまざまな観点から振り返ります。結果(成功/失敗)の理由やプロセスを色々な角度から考えてみます。起こったプロセスはもちろん、客観的に「自分自身」の内面で起こった感情や意思決定を振り返ることが省察の効果を高めます。

 

サイクル3:概念化

学びを抽象化して、他の場面でも応用できるようにする
⇒振り返りの内容を“学び”として、他の場面や次の機会に使えるように抽象化します。

 

サイクル4:試行

“学び”を実際に試してみる
⇒概念化したものは、まだ仮説の段階です。実際に試してみましょう。試すことで新たな経験が得られます。サイクル1へと戻って、より上手くやるために改善して、自らの血肉としていきます。

 

4つのステップからなる経験学習モデル(サイクル)を意識的に運用することでは、人は経験からより多くを学び、自らの成長へと効果的に繋げることができます。

 

経験学習モデルを運用するうえで、とくに大切になるのが「省察」と「概念化」です。2つのプロセスを丁寧に実施することで、経験を自らの血肉として、実践的な思考やノウハウが蓄積されていきます。これこそが「振り返り」です。

 

逆に、2つのプロセスを疎かにしてしまうと、せっかく様々な体験をしても、“やりっ放し”になってしまい、経験から学べず、同じことを繰り返すだけになってしまいます。経験から学ぶために、「振り返り」こそが非常に重要なのです。

なぜ新人は「振り返り」が大切なのか?

社会人としてデビューしたばかりの新人こそ、「振り返り」を繰り返すことが非常に大切です。なぜ新人の振り返りが重要なのか、3つの理由を解説します。

 

 

新人の振り返りが大切な理由① 成長習慣を手に入れるため

新人にとって振り返りが大切である理由の1つ目は、成長習慣を手に入れるためです。前述の通り、「振り返り」は経験を成長に繋げるための非常に重要なスキルです。従って、社会人としての基準をつくる新人期間に、「振り返り」を習慣化することが、数年、数十年の成長に繋がります。

 

とくに任せてもらえる仕事が増えたり、携わる仕事の範囲が広がってきたりすると、どんどん時間に追われるようになります。時間に追われると、目の前の仕事をこなすために「振り返りどころではない」という状況にも陥りがちです。しかし「振り返り」を疎かにして、ただ仕事をこなすだけの毎日になってしまっては、スキルアップや成長には繋がりません。

 

だからこそ、新人のうちから「振り返り」を習慣化することが大切です。「振り返り」を習慣化して、毎日の経験を確実なスキルアップに繋げられるようになれば、結果的に時間に追われることも少なくなるでしょう。

 

 

新人の振り返りが大切な理由② 新しい経験が多いから

新人にとって振り返りが大切な理由の2つ目は、新人はたくさんの新しい経験をするからです。社会人となった新入社員はもちろん、他社に転職した中途新人も、他の社員と比べると相対的に非常に多くの「新しい経験」をすることになります。

 

新しい経験が多いからこそ、経験がしっかりと学びに繋がるように、「振り返り」をじっくりとすることが大切です。振り返ることで、

 

  • 知識やプロセスが整理されて、記憶に定着する
  • 自分自身の行動を振り返ることで、成功に再現性を生み出せる
  • 自分自身の内面を振り返ることで、失敗を完了できる

 

といった効果が得られます。新しい経験が多い新人こそ、「振り返り」をしっかりすることで、成長が一気に加速します。

 

 

新人の振り返りが大切な理由③ 「振り返り」は内面の成長にもつながる

ヤフーの企業内大学「Yahoo!アカデミア」の学長を務める伊藤羊一氏も、成長するためには、スキルやマインドを鍛えるだけでは不十分であり、「振り返り」を習慣化することが不可欠だと言います。

 

自分がやったことを事実として並べて『つまり何なんだ?』と自問自答することで気づきを得る。
振り返ることによって、自分のSkillやMindに気づき・学びがインストールされるんです。
そしてそれをまたすぐにActionに落とし込むというサイクルを習慣にすることが重要です」
言語化する過程で「こういうことなんだ」と客観視するのが目的だ。
TwitterやFacebookなどSNSで発信するのでも構わないが、
「つまり何なのか?」を必ず考えることが重要だ。(リクナビNEXTジャーナルより引用)
https://next.rikunabi.com/journal/20180918_p11/

 

上記はまさに経験学習モデルのサイクルです。新人のうちは、仕事をしている間は、目の間の出来事に対応したり、付いて行ったりするだけで精一杯になりがちです。だからこそ、振り返りを通じて、一歩離れて客観的に「つまり何だったのか?」と併せて、「自分はどう感じたのか?」「自分のどんな価値観が反応したのか?」「自分にとってどんな意味があるのか?」を考えることが大切です。

 

振り返りは経験を学びに変えることはもちろん、自分の内面を客観視する経験を通じて、人間的な成長にも繋がります。

新人の振り返りを効果的にする3つのポイント

新人が振り返りの習慣を身に付けることは、成長のために非常に大切です。では、振り返りはどのようにすれば効果的になるでしょうか?新人が効果的な振り返りを行うための3つのポイントを紹介します。

 

 

振り返りを効果的にするポイント1 「言語化」する

新人の振り返りを効果的にするためには、「言語化」することがとても大切です。日誌や日記等の「文字」でも良いですし、始めのうちは上司や先輩社員との対話の中で「言葉」にするステップを入れても良いでしょう。

 

言葉にすることで思考が進んだり整理されたりします。「頭の中で何となく考えて終わりにする」のではなく、言葉にして振り返ることを習慣づけましょう

 

 

振り返りを効果的にするポイント2 「良質な問い」

新人の振り返りを効果的にするためには、「良質な問い」が非常に重要です。単なる業務日報のような形で、「今日の出来事」を言葉にするだけでは、成長に繋がる効果的な振り返りにはなりません。

 

振り返りを効果的にする「良質な問い」の例

・今日上手くいったこと(成果があがった、貢献した・感謝された、やり切れたetc)は何ですか?
・次回より上手くやるためには何がポイントですか?
・今日上手くいかなかったことは何ですか?
・もしもう一度やるならどうしますか?
・今日の学びを3つあげるなら何ですか?

 

振り返りを日誌等で行うにしても、対話で行うにしても、「良質な問い」こそが、効果的な振り返りをするためのポイントです。十分に設計して実施しましょう。

 

 

振り返りを効果的にするポイント3 「上司や先輩のサポート」

振り返りに慣れていない新人の場合、振り返りを効果的にするためには、上司や先輩のサポートも有効です。サポートは大きく2つに分けられます。

 

  • 一緒に振り返る
  • フィードバックする

 

1)一緒に振り返る

上司や先輩が、「良質な問い」の供給者となることで、新人の振り返りが効果的になります。一緒に振り返る時に大事なことは、上司や先輩は「サポーター」に徹するということです。

 

新人に問いを投げかけたり、答えをもう一段深掘りしたりすることで、新人に考えさせ、自分の言葉でアウトプットさせます。それによって、最終的には新人が自ら振り返りできるようになります。上司や先輩は、つい良かれと思って「アドバイス」してしまいがちですが、新人自身が振り返るサポートを徹底しましょう。

 

一緒に振り返ることは、新人の成長を促す何よりのサポートになります。短い時間でも構いませんので、始めのうちはできるだけ毎日一緒に振り返る時間を取ることをお勧めします。

 

2)フィードバックする

ここでのフィードバックは、新人自身が振り返った内容、また日誌や日報に対するフィードバックです。口頭で行う場合もありますし、テキストでする場合もあるでしょう。振り返りにフィードバックする際のポイントは以下の3つです。

 

2)-1 必ずレスポンスする

⇒経験が少ない新人は「振り返り」の内容が適切なのか自分で判断できません。時には一言でも良いですので、必ずレスポンスすることで、新人の「振り返り」を承認しましょう。

 

2)-2 振り返りをサポートする

⇒対話で振り返りをサポートする場合と同じく、振り返りのフィードバックでは「良質な問い」で新人の思考を刺激することが大切です。アドバイス等をすることもOKですが、それ以上に振り返りが出来ていなかったり、浅かったりする箇所に対しては「問い」をプレゼントしましょう。

 

2)-3ポジティブなコメントを残す

⇒新人の成長を祈って、不足点等の指摘をすることは必要です。ただ、指摘を受け入れてもらう、また新人の自己肯定感・自己効力感を高めるためには、振り返りの実施、成長箇所、上手くいった点など、必ずポジティブなコメントとセットで実施しましょう。

 

おわりに

「振り返り」は経験を成長に繋げるためにとても重要なプロセスです。振り返りを効果的に成長へと繋げる仕組みは、「経験⇒省察⇒概念化⇒試行」というコルブの経験学習モデルで広く知られています。

<コルブの経験学習モデル>

 

入社したばかりで新しい経験を積むことが多い新人は、振り返りをすることが非常に効果的です。また、新人のうちに振り返りを習慣化することは、新人の戦力化・キャリアに繋がりますし、内面の成長にも繋がります。ぜひ新人のうちに日誌や日報、対話を通じての振り返りを習慣化させましょう。

 

新人の振り返りを効果的なものにするためには、

  • 言語化
  • 良質な問い
  • 上司や先輩のサポート

が大切です。

 

記事の内容を参考にして、ぜひ新人、また社内に振り返りの習慣を拡げてください。

 

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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