緊急事態宣言の発令により急増した「オンライン研修」の取り組み
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、4月に日本全国で緊急事態宣言が発令されました。2020年5月には、緊急事態宣言は解除されましたが、今後も第2波・第3波のリスクもある中で、以前として集合型の研修が難しい状況は続きます。そうした中でもおこなえる人材育成の仕組みがオンライン研修です。
緊急事態宣言の発令で、対面研修が困難な状況で普及したオンライン研修
緊急事態宣言の発令により、徹底した「STAY HOME」と「3密の回避」が促される中で、実施されたのが2020年4月入社の新入社員研修です。2020年2月26日に官邸より大規模イベントの自粛要請、そして、3月25日に東京都の小池知事より都内への外出自粛要請が出される中で、各企業は判断を迫られました。
その中で、自宅待機をおこなう企業もありましたが、多くの企業が急ピッチで動画を使う研修やオンラインでの新入社員研修を立ち上げました。その後、4月6日に7都府県、4月17日に全国での緊急事態宣言が発令され、対面型での研修は完全に停止しました。
これまで、企業の人材育成においては、コンプライアンス研修等の知識習得型のコンテンツを除いて下火になっていた「e-learning」ですが、約2ヵ月の間に「オンライン研修」として、新たな形でノウハウが急激にブラッシュアップされています。
オンライン研修は主に3種類
感染リスクとなる3密を避けて、実施できるオンライン研修ですが、大きくは3つの種類があります。種類ごとの特性を把握したうえで、研修内容に応じて、3つのオンライン研修をうまく組み合わせることが非常に重要です。
※本記事内では「対面型」ではないという意味での“オンライン研修”と、3種類の1つである双方向型の“オンライン研修”、2つの意味でオンライン研修という単語を使っています。予めご了承ください。
事前に作成した動画コンテンツを、受講者が参考資料等と共に視聴しながら自習していく形のオンライン研修です。受講者は「いつでもどこでも見られる」「分からなかった箇所を何度でも確認できる」、実施側も「作った動画を使いまわせる」という便利さの反面、一方的な情報伝達しかできないという限界があります。
従って、テストやレポート提出等と組み合わせる、また、双方向型のオンライン研修を効果的におこなうための反転学習(事前学習)に使われることが大半です。LMS(Learning Management System)と呼ばれるツールと組み合わせると、受講者の視聴状況やテスト実施、課題の提出管理等も実施できます。
ウェビナーは、各種ツールを使ったライブ配信型の動画配信です。個人向けでいえば、YouTubeライブやFacebookライブ等でお馴染みの形式です。録画された動画と比べて、リアルタイムであるため、受講者の興味を惹きつけやすい、今のタイミングで必要なメッセージや伝えたいトピックを扱えるというメリットがあります。また、テキストチャットや音声を使って、双方向性を作ることも可能です。
多くのウェビナーツールでは、配信している動画をそのまま録画できますので、内容のリマインドやリアルタイムの配信には参加できなかった人に共有するといったことも可能です。また、ウェビナーの動画を編集して、e-learningのコンテンツにすることもできるでしょう。
ここでいうオンライン研修は、WEB会議ツール等を使った、最も対面型の研修に近い双方向型の研修です。ZoomやWebexといったツールを使えば、画面共有はもちろん、“30人の受講者を3人×10グループに分けて、20分のディスカッションをして、その後に全体発表する”といったグループワークも可能です。
双方向型のオンライン研修では、オンライン付箋やホワイトボードツール、Googleドキュメント等、他のツールを組み合わせて使うことも多いです。研修の設計や実施ノウハウは必要ですが、対面でおこなっていた研修のかなりの部分を代替できます。
(双方向型の)オンライン研修を実施するために必要な3つの準備
オンライン研修を実施するためには、大きくは以下の3つを準備する必要があります。
最初に考えなければならないのはシステムとハード面です。オンライン研修のツールとしては何を使うのか、また、受講者の受講環境はどんな状態か(スマートフォンかノートパソコンか、通信環境は整えられるか)といった点です。
例えば、グループワークができないツールですと、実施できるプログラムに制限が出てしまいますし、受講者がスマートフォンになると、これも実施できるワーク等には制約が出てきます。
- グループワーク(1つの研修内でいくつかのグループを作る)ができるツール
- GoogleDriveのようなオンライン上での情報共有、課題提出ができるツール
- Googleドキュメントのような共同編集(ディスカッション等でのメモ)ができるツール
- 受講者はカメラ付きノートパソコンで、ビデオ&マイクを使える
- 講師・受講者が安定した通信環境を整えられる
といった条件を整えられると効果的なオンライン研修ができるでしょう。なお、録画・編集した動画を使ったe-ラーニングやウェビナーであれば、1~4を気にする必要はあまりありません。ウェビナーであれば、YouTube&YouTubeライブを使うことで、特別なソフト等を準備することなく実施可能です。
続いて準備が必要なものは、研修のコンテンツ部分です。ウェビナーや双方向型のオンライン研修であれば、対面型の研修と同じように研修プログラムや投影資料があれば実施できますが、e-learningの場合には動画を録画・編集する必要があります。
例えば、1時間のセミナーをそのまま録画して、動画として流すことはできますが、実際には、集中して閲覧できる動画のボリュームは5~10分とされています。見やすくするためにはテロップ等が必要かもしれません。そうすると、撮影後の編集が必要になってきます。動画視聴型のe- learningは、運営の手間はありませんが、事前準備には最も時間がかかります。
ただし、研修をすべて動画に置き換えるとなると準備が大変ですが、「双方向型のオンライン研修に参加する際に事前に見てもらう動画(反転学習の教材)」等であれば、投影資料に音声だけを載せるような形でも十分です。これであれば、パワーポイントでもできますし、無料でおこなえるツールも後ほどご紹介します。
また、上記は自社でコンテンツを準備するパターンですが、e- learningサービスでは、事前に撮影された動画が数百から数千タイトル用意されているものもあります。また、「新入社員研修」「リーダー研修」等、特定の研修テーマにフォーカスして、動画型のオンライン研修を提供している研修会社も多数あります。
動画だけで効果的なオンライン研修を実施することは難しいですし、一方で、参加者の疲労や通信環境を考えると、双方向型のオンライン研修を丸1日実施することもおすすめできません。
従って、
- いつでも短時間で学習できる動画(知識習得型のテーマや事前学習で利用)
- 大人数を相手に実施でき、注意を惹きつけられるウェビナー
- 双方向型でディスカッションやグループワークをおこなうオンライン研修
という3つのオンライン研修に加えて、
- テキストやドリル、本を使った個人学習
- テストやレポート等のアウトプット
- 電話等を使った1on1やフォローアップ
- LINEやslack、e-mail等を使った非同期のコミュニケーション
を組み合わせて、研修プログラムを作っていくことが有効です。






