経団連の就活協定廃止の発表以来、2020年~2022年にかけてコロナ禍の裏で新卒採用の早期化が進んできました。
一方で、近年の新規採用におけるトレンドに詳しくない企業の場合、「いまの新卒採用はどのタイミングで何をしたらいいか?」というスケジュール感がわからないこともあるでしょう。
本記事では、新規採用の基本的なスケジュールや、新規採用を早めに始めるメリットと注意点を確認します。そのうえで、新規採用における早期選考スケジュールの大まかな流れと、新規採用スケジュールを組む際の5つのポイントを紹介しますので参考になれば幸いです。
<目次>
新規採用スケジュールの動向は?
2018年10月に、経団連が就活ルール廃止を発表しました。上記自体は“就活ルールがなくなる”というわけではなく、“経団連が制定することは止める”という発表です。しかし、2018年10月以降の数年間で、新規採用スケジュールの早期化が確実に進んできました。
2023卒では、大学3年次の3月1日の内定率は28.6%となり、前年同期の実績を7.5ポイントも上回っているというデータもあります(ディスコ調べ)。内定増加のデータは、回答者層がアクティブ層に偏っている傾向などがあるとは考えられますが、広報活動の解禁日には、すでに3割近い就活生は内定を持っているというのは、かなり衝撃的な数字です。
本章では、一般的な採用スケジュールのほかに、最近のトレンドである早期採用、中小企業などに多い後期採用のスケジュール、3つの概要を確認します。
出典:キャリタス就活2023 2023年卒 Vol.05 3月1日時点の就職活動調査(株式会社ディスコ)
早期採用のスケジュール例
一般的な早期採用では、3年生の6月頃からインターンを通じて採用ターゲットとの接触が始まり、入社まで2年近くかかる流れとなります。
- ・3年生5月~8月:
- ⇒夏インターンシップの開催(学生との早期接触)
- ・3年生9月~11月:
- ⇒夏インターンシップ参加者の選考スタート、秋・冬のインターンシップ開催
- ・3年生12月~2月:
- ⇒内定出し(インターンシップ参加者の選考ピーク)
- ・3年生2月~4年生の5月:
- ⇒内定承諾
- ・4年生6月~入社まで:
- ⇒内定者フォロー開始
- ・4年生10月:
- ⇒内定式
なお、本当に早期採用に取り組む企業の場合、近年では、2年次に接触を始めるようなケースも増えるようになりました。
一般的な採用スケジュール例
廃止前の経団連、現在は政府主導の選考スケジュールは、3年生3月に採用広報解禁、4年生6月に選考解禁になっています。
ただし、本当に3年生3月からのスケジュール通りに動いているのはごく一部の大手企業だけとなっており、実質的な一般の採用スケジュールは以下のようなものが多いです。
- ・3年生2~3月:
- ⇒会社説明会・広報スタート
- ・3年生2月~4年生の4月:
- ⇒選考スタート(会社説明会から直結)
- ・4年生5~6月:
- ⇒内定出し、内定承諾
- ・4年生7月~入社まで:
- ⇒内定者フォロー開始
- ・4年生10月:
- ⇒内定式
中小企業などに多い採用スケジュール例
たとえば、早期採用で3年生を対象に夏インターンシップを開催する場合、実際の入社より2年以上前に採用ターゲットや採用人数などの採用計画を立てなければなりません。
一方で、中小企業の場合、ぎりぎりの人数で事業を行なうことが一般的であり、大企業のように2年も早く採用計画を立てられないケースも多いです。
また、早期採用や一般的な採用スケジュールでは、中堅や大手企業と相応に競合することになり、内定後に辞退されてしまうようなケースも増えています。
こうした中小企業でよく実施されるのが、短期決戦のいわゆる秋採用です。秋採用の場合、以下のように夏休み明けの9月初旬~年末までの約4ヵ月間で採用活動が進められます。
- ・4年生5月~8月:
- ⇒会社説明会・広報スタート
- ・4年生6月~9月:
- ⇒選考スタート⇒内定出し⇒内定承諾
- ・4年生10月~入社まで:
- ⇒内定者フォロー
- ・4年生10月:
- ⇒内定式
秋採用は、早期シーズンの収束後となるため、採用力が高くない中小企業でも人材を獲得しやすく、採用コストを抑えられる魅力があります。
新規採用を早めに始めるメリットは?
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日本の新規採用は、民間企業への就職を希望する学生がほぼ一律に活動を始めるという特徴があります。また、そのなかで、情報感度が高いアクティブ層ほど、早期に採用活動を始める傾向がありました。
ただし、インターンシップの参加率がほぼ頭打ちになっている現在では、早期に「活動≒優秀層」ではなくなっています。ただ、やはり、アクティブ層が早期に動き始めるのが一般的な傾向ではあります。
もちろん後期でも、たとえば、大会などがあった体育会系の学生、海外留学から帰って来た学生などの優秀層はいます。ですが、いるとしても、早期に活動したほうが優秀層に巡り合える可能性は高いでしょう。
そのため、近年では、採用活動の長期化、大手との競合などの負担は承知で、新規採用では早期の採用活動に取り組むケースが多くなっています。
早期採用に取り組む際の注意点
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近年の採用市場や大学生の動向から見れば、先述のとおり、企業が早期採用に取り組むメリットは高いと考えられます。実際に早期採用に挑戦する際には、以下のような点に注意をすることが必要です。
強い採用競合と競り合う
新規採用における「夏インターンシップ⇒早期採用」の難易度は年々上昇しています。たとえば、マイナビの調査結果によると、学生1人あたりのインターンシップ参加社数は増加しています。
参照:マイナビ 2022年卒 大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(10月)
つまり、過去は“インターンシップの参加層≒優秀層”で、かつ、“学生の参加企業数も少なめ”だったため、早期採用は優秀層に競争倍率低めでアプローチできる手段でした。
一方で現在では、学生の間でも“インターンシップ=就職活動の始まり”という認識が広がっています。オンライン化ともかけ合わせて、1人で10社以上のインターンに参加するような学生も珍しくありません。
早期に活動すれば、当然のことながら採用競合となる企業は多くなりますし、また、6月に選考開始(内々定出し)を始めるような大手企業を押しのけて内定承諾を獲得する必要が出てきます。
したがって、早期採用をして優秀層を採用しに行こうとすれば、行くほど強いライバル企業と競り合うことになるでしょう。
採用期間の長期化
たとえば、大学3年生の6月に学生と接触すれば、6月から応募~選考~内定出し~内定承諾~内定者フォロー~入社まで、2年近い接触期間となります。
一方で、その間の学生は、競合の夏インターンシップに参加する・選考を受けるなどの活動も行なうので、定期接触による継続的なつなぎ止めや口説く工夫が必要になるでしょう。
そうすると、“サマーインターンシップ~本選考の学生(3年生)”と“内定承諾した学生(4年生)”の2学年分をケアすることになるため、人事の負担は確実に大きくなります。
採用担当の負担が増す
先述のとおり、早期採用を始めると、最大で約2年もの長きに渡って学生と関わり続け、また、2学年分と接触(フォロー)する必要が出てきます。
また、本格的に早期選考、優秀層の採用をしようとした場合、早期採用と本選考では選考ステップの組み方を変える必要性も出てきますし、職種別採用をすることも増えてくるでしょう。
新卒の早期採用を行なうと、上記のように採用担当者の仕事が複雑化し、負担が大きくなる傾向にあります。
内定辞退のリスクが増える
通年採用が一般的になると、学生は大学3年生の夏インターンシップから秋採用の時期(大学4年生の秋)までじっくり時間をかけて企業選びができるようになります。
そのため、たとえば、自社で大学3年生の年末に内定承諾をとっても、大学4年生の春に気になる競合が現れて就職活動を再開すれば、自社の内定を辞退される可能性も出てくるでしょう。
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新規採用における早期選考スケジュールの大まかな流れ
本章では、自社に合う優秀な人材を約2年間の早期選考で獲得する場合の流れと、各時期のポイントを解説しましょう。
【3年生5~8月】 夏インターンシップ
インターンシップで母集団形成する場合、大学3年生の春~夏休みに以下のようなプログラムで半日~一日の1dayインターンシップを開催することが一般的です。
- <インターンシップでよくあるプログラム例>
- ・企業の事業紹介、セミナー
- ・グループディスカッション
- ・既存社員との交流会
- ・職場見学
- ・業務体験、ロールプレイング
- ・新規事業、サービス案の創出 など
夏インターンシップに参加する大学3年生には、情報感度が高い優秀層が多いです。そのため、上位層を狙うなら、3年生の時期に接触を取ることが大切になります。
なお、最近では、手軽な1dayインターンシップで母集団形成をしたあとに選抜型の2~3日のインターンシップを実施したり、大学1~2年生を対象とする長期インターンシップを実施したりする企業も増えています。
【3年生9~11月】夏インターンシップ参加者の選考開始、秋・冬のインターンシップ
夏インターンシップを終えてからは、定期接触を通じて自社の本選考に誘導する必要があります。
ただ、定期接触を翌年3月の広報解禁後などに引き伸ばすと、時間が空きすぎてしまいます。そのため、秋頃から夏インターンシップ参加者向けに本選考を開始してしまうケースが多いです。
一方で、夏インターンシップに参加する学生は、先述のとおり複数の競合とも接触している、また、まだまだ就活の軸なども固まっていないことも多いです。したがって、選考では、見極めだけでなく自社の志望度UPや口説く工夫も必要でしょう。
また、3年生9~11月の時期には、秋冬インターンシップによる母集団形成も平行で進めることが多いです。
【3年生の12~2月】内定出し、インターンシップ参加者の選考ピーク
早期選考では、年内に内定出しを始めるようなケースも多いです。また、3年生の12~2月の時期は早期選考のピークとなってきます。学生によって進捗が異なるため、連絡漏れなどを防ぐ目的で、採用管理ツールを活用するのがおすすめです。
【3年生 2月~4年生5月】内定承諾
早期採用の場合、3年生2月~4年生5月頃が内定承諾のピークになることも多いです。
ただ、学生側にも「他社を見たい」というニーズがあるため、年内に内定出しなどをしても、あまり早期の内定承諾に至らないことも多いです。
3年生3月のいわゆる“採用広報の解禁”、大手媒体上での説明会エントリーの開始以降にも、採用活動を継続するかどうかが一つの分かれ目になります。
近年では、本気で早期採用に振り切る場合、大手媒体を使わず、3年生3月以降は説明会をしないという企業が増えています。
【4年生6~9月】内定者フォロー
極端なことをいえば、学生は入社日まで就職活動を行なえます。そのため、内定承諾後も継続的な接触とフォローを行ない、不安の解消と志望度アップを促す必要があるでしょう。まだ大手や中堅企業の採用が動いている6~9月頃までは、特に注意が必要となります。
新規採用スケジュールを組む際の5つのポイント
効果性の高い新規採用スケジュールを考えるうえでは、以下5つの点を大切にする必要があります。
自社の採用ターゲットを明確化する
まず、自社が求める優秀な人材の定義を以下のように言語化します。
- 主体的な言葉をよく使う学生(「私」を主語にする)
- 大学でプログラミングを学んだ理系学生
- 語学力が高く、多様な価値観を受け入れられる学生(ダイバーシティなチームで働いてもらうため) など
ターゲットを明確化する際には、自社の採用力も踏まえて「現実的な理想」を考えることが大切です。また、新卒の場合、ポテンシャル採用ですので、定量やスペック的な基準ばかりでなく、入社後の伸びしろを決める価値観や動機などに注目することが大切です。
採用ターゲットのスケジュールを考える
インターンシップ~会社説明会~選考の時期は、採用ターゲットに合わせる必要があります。
たとえば、理系学生の場合、研究や実験をともなう必修授業が多いため、文系ほど就職活動に長い時間をかけない傾向があります。
また、専攻分野にもよりますが、たとえば機械や電気電子系などの場合、根強い大手製造業への志向などもあるため、あまり早期に接触しても志望度が上がらない傾向が高いです。
そのため、あまりにも早期に活動するのではなく、一般的な採用スケジュールや少し早めぐらいで活動したほうがよいでしょう。
逆に同じ理系でも、ITエンジニア系は最も早期化している職種の一つです。メガベンチャーなどでは大学2年生向けのプログラムなども珍しくはありません。そのため、ITエンジニア系で採用をするなら、早期に接触から有償インターンなども絡めて、自社に囲い込んでいくようなスケジュールのほうが良いかもしれません。
上記のように採用ターゲットに合わせて、具体的なスケジュールを考えることが大切になります。
採用競合のスケジュールを知る
採用スケジュールを考えるうえでは、採用競合の動きもウォッチしておくことが有効です。ここでの採用競合は、同じ業界だけでなく、“採用ターゲットになる学生が同じ”企業を指します。もちろん同業界の企業が採用競合になることは多いですが、異業界の企業が競合になることも珍しくはありません。
なお、採用競合の動きを分析している採用担当者は、意外と少ないです。しかし、競合分析は、採用ターゲットの動きを考えるうえでも有効になります。また、優秀な人材との早期接触を図ると考えれば、採用競合より早めにインターンシップなどのイベントを実施することも一つになります。
採用フローを決める
採用ターゲットと競合のスケジュールを参考にしながら、インターンシップや説明会~応募~選考~内定承諾までの採用フローを決めていきます。採用フローを作るうえでのポイントは、「選考フロー」であるとともに、「魅了付けのフロー」でもあることです。
自社の採用力も検討しながら、「内定承諾してもらえる状態をつくる」というゴールから逆算して、採用フローを決めていきます。魅了付けのフローを作るうえでは、採用CXの考え方も参考になるでしょう。
採用代行サービスやツールの利用を検討する
デメリットのところで触れたとおり、夏インターンシップから始まる早期採用に取り組むと、採用担当者の負担が増えやすくなります。また、早期採用では、内定辞退を防ぐために、魅了付けや内定者フォローに従来以上に力を入れる必要もあるでしょう。
こうした状況で、自社に合う優秀な人材を見極め、獲得するには、採用代行サービスや採用管理ツールなどを活用して、採用担当者の業務効率を高めることも重要です。
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、新規採用の支援サービスとして、人材紹介サービスの「新卒カレッジ」、新卒採用ダイレクトリクルーティングの「FutureFinder」の提供、また、採用管理ツール「採用一括かんりくん」、適性検査ツール「HCi‐AS」「MARCOPOLO」の代理販売をしています。
「新卒カレッジ」では、求人票作成~クロージングまで代行できるため、「新卒カレッジ」を活用すれば、採用担当者は面接などのコア業務に専念しやすくなるでしょう。また、「FutureFinder」は、運用代行が標準でついたダイレクトリクルーティングとなっています。
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まとめ
近年では、優秀な人材を獲得するために、新規採用の早期化が進むようになりました。新規採用における早期の選考スケジュールは、以下の流れで進められていきます。
- 【3年生5月~8月】 夏インターンシップ
- 【3年生9月~11月】夏インターンシップ参加者の選考開始、秋・冬のインターンシップ
- 【3年生12月~2月】 内定出し、インターンシップ参加者の選考ピーク
- 【3年生2月〜4年生5月】内定承諾
- 【4年生6月〜入社】内定者フォロー
ただし、中堅・中小企業の場合、人事担当者の工数・費用や採用計画などの問題から、早期採用の実施は難しいこともあるでしょう。自社に合ったスケジュールを立てるには、以下のステップを踏みながら準備を進めることも大切になります。
- ① 自社の採用ターゲットを明確化する
- ② 採用ターゲットのスケジュールを考える
- ③ 採用競合のスケジュールを知る
- ④ 採用フローを決める
- ⑤ 採用代行サービスやツールの利用を検討する
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、新卒領域の採用支援サービスとして、人材紹介の「新卒カレッジ」、新卒ダイレクトリクルーティングの「FutureFinder」、採用管理ツール「採用一括かんりくん」、適性検査「HCi-AS」「MARCOPOLO」を提供しています。
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