ハロー効果とは?事例と面接や人事で評価を誤らないための注意点

ハロー効果とは?事例と面接や人事で評価を誤らないための注意点

近年の日本では、少子化などによる労働人口の減少によって、優秀な人材の獲得が難しくなっています。また、雇用の流動化が進むなかで、適切な人財評価などを通じて、人材を定着させる必要性も高まっています。

 

こうした状況も踏まえて、客観性の高い評価を行ない、人材採用や人事考課の精度を向上するためには、意思決定に影響を与えるハロー効果の弊害などをきちんと知って対処しておくことが大切です。

 

本記事では、ハロー効果の概要と注意点、もたらされる弊害を確認したうえで、面接におけるハロー効果への対策、人事考課の評価エラーを防ぐ方法を紹介します。

<目次>

ハロー効果とは?

 

ハロー効果とは、アメリカの心理学者エドワード・L・ソーンダイクによって提唱されたもので、確証バイアスの一種となります。具体的には、「評価対象となる人物に目立つ特徴がある場合、その特徴が他の特性の判断にも影響する」というものです。

 

本項では、ハロー効果における2つの種類と、それぞれの具体例を紹介しましょう。

ポジティブハロー効果

ポジティブハロー効果は、良い特徴につられて、他の要素にも良い評価をしてしまうことです。

 

たとえば、初対面の人物に「表情がとても明るく元気な人だ」と感じた場合、相手に対して、以下のようにポジティブなイメージや期待をしてしまうのは、特に珍しいことではありません。

  • 前向きでアクティブそうだ
  • 一緒にいると楽しいことがありそうだ
  • 営業や接客の仕事に向いてそうだ

しかし、第一印象で「表情がとても明るく元気な人だ」と感じた相手であっても、実際は以下のような性格・特性の持ち主の可能性もあるでしょう。

  • 心配性の性格である
  • インドアでじっとしているのが好きである
  • 集中力を要する検品の仕事が得意である など

このように、本人の内面や本当の姿よりも過大評価してしまうのが、ポジティブハロー効果です。
多くの企業が、新入社員のビジネスマナー研修でまず身だしなみを教えるのも、ポジティブハロー効果でお客様に好印象を与えることを目的としています。

ネガティブハロー効果

ネガティブハロー効果は、ポジティブハロー効果と真逆で、悪い特徴につられて、他のところにも悪い評価をしてしまうことです。

 

たとえば、初対面の相手に「表情がとても暗くあまり喋らない」という第一印象を抱いたと仮定します。このときにネガティブハロー効果につられた場合、第一印象から以下のように悪いイメージが生じてしまうでしょう。

  • 協調性がなさそうだ
  • 性格が悪そうだ
  • コミュニケーション力が低そうだ

しかし、実際は、初対面で緊張していた、その日はたまたま体調が悪かっただけの可能性があるかもしれません。また、ロジカルコミュニケーションは得意で、実際の業務にはまったく問題ないかもしれません。

 

ポジティブ・ネガティブ、いずれのハロー効果にしても、第一印象が決まってしまうと、その印象に引きずられて、自分の印象を補強する要素にアンテナが立ってしまう確証バイアスが働きやすくなります。

 

ポジティブハロー効果であれば、いわゆる「あばたもえくぼ」という状態ですし、ネガティブハロー効果の場合、「重箱の隅を突く」ような形になりがちです。

ピグマリオン効果との違い

ビジネスシーンで、稀にハロー効果と混同されてとらえられているものに、ピグマリオン効果があります。ピグマリオン効果は、「人は良い期待をされたときに、それに応えようとする」というものです。

 

たとえば、1on1でリーダーが「今回も頑張っているね。あなたならこの仕事を任せられそうだ!」と伝えると、そのメンバーは上司の期待に応えようと仕事を頑張るようになるような効果です。

ハロー効果とピグマリオン効果には、以下の大きな違いがあります。

  • ハロー効果:第一印象や先入観などの「特徴」に自分の判断が引っ張られてしまう。ポジティブにもネガティブにも働くもの
  •  
  • ピグマリオン効果:相手からの良い印象や期待によって、実際に相手の行動がその印象や期待の方向に向かうこと

ハロー効果の注意点ともたらされる弊害

 

ハロー効果は、お客様などに好印象を与える意味では、有効に活用できるものです。一方で、面接や人事評価するときにハロー効果につられてしまうと、評価を誤ってしまうことになります。

 

本章では、ハロー効果によってもたらされる弊害の事例と注意点を紹介します。

 

面接の進行や評価を誤る事例

たとえば、求職者が、「とても明るくハキハキ受け答えのできる人材」だったと仮定しましょう。

 

面接官がハロー効果で、求職者の際立った特徴につられてしまうと、「コミュニケーション力も高そうだし、ポジティブそうだし、自社のリーダーとして最適な人材だ」といった高評価をしてしまいます。

 

しかし実際は、ロープレなどの面接対策をしたからハキハキ話せているだけかもしれません。本当は、高いコミュニケーション力やポジティブ思考ではない可能性もあるのです。

逆に、ネガティブハロー効果として、「ボサボサの髪で面接にやってきた求職者」を例にしましょう。

 

ハロー効果につられた面接官は、第一印象だけで「ボサボサな髪で面接に来るぐらいだから、自己管理や仕事のできない人材なのだろう」と判断してしまい、求職者を深堀りする質問すらしないかもしれません。

 

そして、ネガティブハロー効果によって早々と面接をやめてしまうことで、実は自社にフィットする優秀な人材を逃す可能性も出てきます。

 

第一印象やコミュニケーション能力のほかに、採用面接におけるハロー効果をもたらす要素としては「出身大学」や「前職の企業」などがあります。

人事評価の公平性が失われる事例

たとえば、ある部署に以下のメンバーがいたと仮定します。

  • Aさん:上司に媚びる一方で、同僚や部下には威張っている
  • Bさん:特定の誰かに媚びることもなく、上司や全部下と平等に接している

この部署で「協調性の高さ」の評価をする場合に、上司がハロー効果につられてしまうと、自分に媚びていてプライベートでも仲が良いAさんに対して「協調性が高い人材である」と誤った判断をしてしまいます。

 

しかし、実際のAさんは、上司以外の同僚や部下との調和ができていません。そのため、他の部下からすれば、人事評価に対する違和感や不公平感が生まれやすくなるでしょう。

 

この事例も、面接での意思決定と同じように、特定の要素に引きずられて、評価を誤ってしまうケースになります。

面接におけるハロー効果への対策とは?

採用面接で生じるハロー効果による弊害は、以下の対策で予防できます。

 

面接官のトレーニング・教育

ハロー効果による誤判断は、面接官が書類の中身や第一印象に引きずられてしまうことで生じます。そのため、誤った判断を減らし採用精度を高めるには、面接官のトレーニングや教育が必要です。

 

評価トレーニングとしては、まず、自社や職種ごとの評価項目・基準を設定しましょう。そのうえで、どのように各項目を判断するかを言語化します。評価基準をしっかりと言語化して判断方法に関するトレーニングを行なうと、ハロー効果が生じづらくなります。

 

また、ハロー効果や確証バイアスのような心の働きを知ることも大切です。法則やバイアスの存在を知ることで、引きずられにくくなります。

構造化面接の導入

ハロー効果につられて面接の流れや質問内容が変わってしまう部分は、「STAR面接」などの構造化面接の手法を使うことでも解消できます。

 

STAR面接は、以下のテーマを使って求職者のエピソードを深堀りすることで、求職者の価値観や行動特性を見抜く手法です。

  • S(Situation):どのような状況だったか?
  • T(Task):何が課題だったのか?どのような責任があったのか?
  • A(Action):どのような行動を取ったか?なぜその意思決定をしたのか?
  • R(Result):結果はどうだったのか?何を学んだのか?

すべての求職者に同じようにSTAR面接を行ない、必ず同じ要素をしっかりと質問する流れにすることで、「この人はハキハキしているから、きっとリーダーシップもあって営業でも活躍できるタイプ!」といった誤った判断や決めつけが生じにくくなります。

適性検査などアセスメントツールの活用

面接評価の客観性を高めるには、適性検査などのアセスメントツールを活用することも有効です。

 

ただし、アセスメントツールは、面接前に診断結果を見ることで、新たな確証バイアスを生んでしまう危険性もありますので、その点は注意しましょう。

人事考課における評価エラーを防ぐには?

人事考課におけるハロー効果による弊害は、以下の対策で解消しやすくなります。

 

目標管理制度の適切な運用

ハロー効果などによる人事考課のエラーを防ぐうえでは、きちんとした目標と実績による評価を運用して、主観的な評価ウェイトを減らすことも大切です。

 

たとえば、すべての目標に関してSMARTの原則を使った具体的な目標設定がされていれば、ハロー効果は生じにくくなります。

<目標設定におけるSMARTの原則>
  • S:Specific(具体的)
  • M:Measurable(測定可能)
  • A:Achievable(達成可能)
  • R:Relevant(上位目標とのリンク)
  • T:Time‐bound(明確な期限)

評価者(管理職)の教育

人事評価の不公平感をなくすには、管理職のマインドセットや教育も欠かせません。

 

ただし、ここでいうマインドセットは、「公平な評価さえすれば良い」という限定的な話ではなく、「日頃からメンバーと公平に接する」などの管理職の心構えや人間性につながるものも含まれます。

 

管理職が部下を尊重し、信頼関係が構築できた状態で人事評価制度を運用できるのが理想です。

360度評価の実施

360度評価とは、上司、部下、本人、同僚……と、評価対象者と関わりのある多方面から評価を実施するものです。360度評価を取り入れると、評価への納得感や信頼性が高まりやすくなります。

 

ただし、360度評価には、運用の手間や難易度も高く、通常の人事評価すべてに組み込むことは難しい特徴があります。昇進・昇格の決定や、管理職層の評価・育成などで活用を検討するとよいでしょう。

評価面談の実施

ハロー効果の除外とは少し違うテーマになりますが、数値などで一方的に評価するだけでは、評価対象者の納得感は得られません。

 

人事評価においては、必ず評価面談を行ない、評価した数値になった理由や今後に期待することなどをフィードバックすることも大切です。

 

面談を通して言葉で説明されることで、評価される側からも「この評価を上げるにはどうすべきか?」などの質問ができるようになります。なお、評価面談の効果性を高めるには、管理職の人間性を向上させることで、上司と部下の信頼関係が構築できていることが前提になります。

まとめ

ハロー効果は、お客様などに好印象を与えるうえでは有効な手法です。一方で、上司や人事担当者がハロー効果の影響を受けてしまうと、以下のような問題が起こりやすくなります。

  • 面接の進行や評価を誤ってしまう
  • 人事評価の公平性が失われてしまう

面接官がハロー効果につられないようにするには、以下の対策がおすすめです。

  • 面接官のトレーニング・教育
  • 構造化面接の導入
  • 適性検査などアセスメントツールの活用

また、人事考課における評価エラーを防ぐには、以下の対策を実施するとよいでしょう。

  • 目標管理制度の適切な運用
  • 評価者(管理職)の教育
  • 360度評価の実施

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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