確証バイアスとは?
“バイアス”とは無意識下に存在する思考の“偏り”のことであり、行動心理学などの研究を通じて、人間には数多くのバイアスが存在することが分かっています。確証バイアスは、その中のひとつで情報収集や意思決定に大きな悪影響を及ぼすものです。
本章では確証バイアスの概要と事例、そして、なぜ確証バイアスが存在するのかを紹介します。
情報に対する無意識のフィルター
確証バイアスとは、「自分の仮説や信念を検証する際、無意識に仮説や信念を補強する情報や根拠ばかりを集めてしまい、都合の悪い情報は無視してしまう」というバイアスです。
人は、自分が思いついた意見や考えを正しいと思いたいものです。自分の仮説や思考の誤りに気付き、それを修正するというのは多少なりとも、精神的な苦痛や自尊心が傷つけれる行為です。
だからこそ、人は無意識的に苦痛を感じなくて済むように、“自分に都合のいい情報ばかりを集めるようになり、都合の悪い情報はシャットアウトしよう”とするのです。
確証バイアスは、人間が持つある意味で自然な心理ですが、結果として、自分にとって都合のいい情報しか見聞きしなくなってしまい、意思決定や判断を誤る要因となります。
意思決定や情報収集時の発生事例
確証バイアスがあると自分に都合のいい情報しか入ってこなくなるため、意思決定が歪められることになります。
たとえば、確証バイアスのイメージしやすい例が、恋愛です。「恋は盲目」という言葉もあるように、一度相手のことを好きになってしまうと、相手の良いところばかり目が行くようになってしまい、短所には目が向かなくなっていきます。
また、短所すらも「愛すべきキャラクター」として解釈してしまうようになります。古くからある諺、「あばたもえくぼ」はまさに確証バイアスを示したものです。
ビジネスの場合、例えば、自分が提案したい企画がある時、企画を進めるのに有利な情報や事例ばかりを集めてしまい、都合が悪い情報や事例はイレギュラーなケースとして無視してしまうといったことも確証バイアスです。
恋愛にしてもビジネスにしても、確証バイアスによって都合の悪い情報を無視・軽視してしまうと、それがもとで、後でトラブルが起こる可能性があります。
採用や人事評価における発生事例
採用活動において、確証バイアスが大きな問題になるのは「第一印象を過信してしまう」ケースです。
人の印象というのは、わずかな時間で決まってしまうものです。たとえば、ビジネスマナーや営業研修でよく取り上げられる「3・3・3の法則」というものがあります。印象形成を決める3つの時間を示したものです。
<人の印象が決まる3・3・3の法則>
服装・表情・姿勢などで第1印象が形成される…「3秒」
挨拶や二言三言話を交わして話し方や声などで第2印象が形成される…「30秒」
話す内容などを踏まえて第2印象が確定する…「3分」
このように面接の冒頭3分で、ほぼ相手への印象というのは決まってしまうものです。そして、私たちには確証バイアスがあるため、最初に出来上がったイメージを後で変更するというは、容易ではありません。
印象が良くて相手に好意を持ってしまうと、前述したように「あばたもえくぼ」という諺の通り、相手の欠点も“それも愛嬌”“誰しもそういう側面はある”といった形で勝手に解釈してしまうのです。逆に、相手にマイナスな印象を持つと、たとえ相手が優秀な人材であっても、「重箱の隅をつつく」ように相手の欠点、不足点ばかりに目が行きやすくなってしまいます。
上記の状態になれば、採用の合否判定を見誤ることは想像の通りです。また、採用面接はもちろん、人事評価においても、確証バイアスの存在が存在することで「えこひいき」が起こりやすくなり、上司から気に入られた特定の人ばかりの評価が高くなってしまうということが起こります。
また、第1印象以外にも、自分の経験や価値観に基づく思い込みにも注意が必要です。
たとえば、「A型の人は、真面目で几帳面だ」という考え方を持っていると、真面目で几帳面であることを裏付ける情報にばかり目が行ってしまいます。もちろん、今となっては、血液型と性格の間に相関関係があるというのは、科学的に見て正しくないことが知られています。ただ、“A型と聞くと、真面目で几帳面な側面に目が行ってしまう”心理も一種の確証バイアスです。
他にも、「厳しい受験競争を乗り越えて名門大学に合格した人は、仕事もできるはずだ」「Z世代は、環境問題や人権に対する意識が高い」といった考え方は統計的には一定の正しさがあるかもしれません。ただ、当然、名門大学の出身でもパフォーマンスしない人がいたり、Z世代でも環境や人権問題に意識が高いとは言えない人もいたりするわけです。
しかし、上記のような統計的な傾向を個別の人材を見る時にそのまま当てはめてしまうと、確証バイアスによって判断を誤りやすいでしょう。
確証バイアスの発生理由
「自分にとって都合の良い情報しか集めなくなってしまう」という確証バイアスは、判断を狂わせてしまう厄介者です。
なぜ、こんな判断を誤るような心の働きがあるのでしょうか。
じつは、確証バイアスは素早い判断を下すうえでは必要不可欠なものであり、確証バイアスがあったからこそ人類は厳しい自然界の中で生き延びてこられたとされています。
たとえば、天敵に襲われた際に判断が遅れることは、死に直結することもあります。近づいてくる相手が自分にとって安全なのかどうかを毎回慎重に判断していたのでは、決断を下すまでに時間がかかり過ぎます。
また、自然界では、常に余裕がある、十分な食事や栄養を取れるとは限りません。そのような状況の中で、思考に多くのエネルギーを使ってしまうことは、生き残っていく上で不利になります。
そこで、少ない時間と労力で判断が下せるように、数多くのバイアスが生まれたのです。確証バイアスも、その中の一つです。
バイアスを活用することで、判断精度は多少犠牲にする代わり、スピードと脳の省エネを優先し、素早い判断を少ない労力で下す。こうした脳の働きを「認知的節約」と呼びます。つまり、バイアスとは、人間が進化してきた結果でもあるのです。
ただし、スピードよりも精度の方が重要視されるような場面で、バイアスによって犠牲にされる精度の低下がトラブルにつながることが増えるわけです。
自然界において生存確率を高めるものとして誕生したバイアスが、人間社会、ビジネス場面においては正確な判断を狂わせる要因となってしまっているのです。






