
「採用は何とかできているものの、すぐに辞めてしまう」といった課題を抱えている企業では、また別の対応が必要です。この章では、
- 早期退職が多い
- 中途採用人材が入社後に活躍できていない
という課題に対する解決策をご紹介します。
早期離職が多い場合、前章でご紹介の通り、
- 入社後の定着や受け入れ態勢が不十分
- 上司のマネジメントに課題がある
- 社風や働き方に合わない人材を採用している
- 選考で適切に見極められていない
といった状況が考えられます。ケースに応じて、改善の手を打っていきましょう。
マッチング精度のアップ
中途採用は、経験がある人を採用するからこそ、社風や価値観、働き方のマッチングが非常に重要です。とくに即戦力、経験者層になるほど、前職での経験が「常識」となっています。「常識」や「暗黙知」が異なる組織に入ると大きな違和感が生じます。もちろん、転職する以上、多少の違和感、変化はあります。
しかし、それが組織の社風や価値観に関することである場合、毎日のように意思決定の基準、指示の出され方等への小さな違和感が積み重なります。そして、早期離職の原因となるのです。従って、採用においては、能力軸だけでなく、応募者の性格特性や価値観と、自社の社風や価値観が一致しているかを見極めることは重要です。
また、中途採用の応募者は、仕事経験があるだけに、「経験や実績=能力」と見えてしまいがちです。しかし、実際にはその経験や実績は、環境要因であったり、応募者自身の力量によるものではなかったりする場合もしばしばあります。
応募者の性格特性や価値観を見極める、また、能力を見極めるうえでも、STAR面接のような構造面接の手法を取り入れて、面接での見極め精度を上げていくことが重要です。また、面接と併せて、適性検査やワークサンプリング等の手法を取り入れることも有効です。
オンボーディングの導入
オンボーディングの導入は、受け入れノウハウの構築、また上司の力量によるバラつきをなくす大きな効果があります。オンボーディングは、中途入社の新人が、会社の組織に馴染み、1人前の戦力となるまでを支援するためのプログラムです。
オンボーディングでおこなう1つ1つの施策は非常に簡単ですし、いまも実施しているという企業も多いでしょう。
例えば、
- 名刺や備品の準備(入社前に準備し、入社日に渡せる状態にしておく)
- 入社前日に全社員へ氏名やプロフィール、評価ポイント等の告知
- 入社日の挨拶
- 歓迎会の実施
- 組織体制に関するレクチャー
- 社長や幹部陣から沿革や事業の想いについてのレクチャー
- 社内用語の共有
- OJT指導者による育成計画の作成
- メンターやブラザー・シスターとのランチ
- OJT指導者との短期目標の設定
- 上司との中期目標の設定
- 人事による入社後面談
- 上司による目標進捗面談
- 経営幹部による1on1
等です。
オンボーディングで重要なことは、上記を一連のプログラムとして、「いつ、誰が、何を実施するかを明確に定める」ことです。
中途採用の場合には、簡単な入社レクチャーがあった後、配属部門やOJT指導者、上司に任せっぱなしになってしまうことがよくあります。しかし、これでは部門や上司の力量によって、受け入れレベルがバラバラになってしまい、早期離職の原因となります。
もちろんOJT自体は配属部門、OJT指導者が中心となって進めるものですが、人事が中心となって、OJT指導者に育成計画を作成してもらいましょう。
また、簡単な入社レクチャーの後、すぐにOJTに入ってしまうと、組織社会化のプロセスが不十分となり、結果的に能力を発揮するまでに時間がかかってしまうケースも多々あります。人事部門等が中心となって、会社全体で中途社員の受け入れプログラムを作るのがオンボーディングの取組みです。
参考までに、HRドクターを運営するジェイックが実際に運用している、新人受け入れの20のチェックリストと32のノウハウ情報を紹介します。
「コツやノウハウがそんなにたくさんあるの?」と少し驚かれたかもしれませんが、かなり具体的に、なかには当たり前とも思えること、すでに実施されていることも多いでしょう。自社にマッチして、まだやっていない施策があれば、2,3取り入れていただくだけでも、効果を実感いただけると思います。
中途採用における定着率アップに有効なフォローポイント
以下では、オンボーディングに組み込むこともできる中途採用者への3つのフォローポイントをご紹介しておきます。
<内定後フォロー>
内定後から入社日までの間に、会社や上司となる社員から、新しく社員になる人に対してメールを送ったり手紙を送ったりする等のフォローをおこなうと効果的です。中途採用の社員は同期がいないことも多く、その孤独感やプレッシャーをやわらげ、人材のエンゲージメントを事前に高めることができます。
<成果へのフォロー>
中途採用は「即戦力」として見られがちですが、解説の通り、どれだけ能力のある方でも、組織社会化のプロセスが終わらないと持っている能力を発揮することはできません。感覚としては、ある程度馴染むまでに3か月、本当に能力を発揮するには1年かかります。
一方で、本人も周囲も「即戦力」としての感覚から、「すぐに結果を出さなければならない」「いつ結果を出すだろう」という感覚に陥り、強いプレッシャーを感じてしまうことも多いものです。
早く成果を上げてもらいたい気持ちはやまやまですが、とくに入社1~2か月程度は本人がプレッシャーを感じているようであれば、焦り過ぎないようにケアすると良いでしょう。
<相談や不安、不満を口にできる相手を作る>
中途社員は同期がいない中で、孤独を感じがちです。また、前職と「常識」が違うことによる違和感も生じます。従って、中途社員が不安や不満を持ったときに、気軽に相談したり、不満を口にしたりできる面談相手を社内に作ってあげることが非常に有効です。
OJT指導者や直属の上司等、仕事上の上下関係がある相手に対しては、本音を話しにくい部分もありますので、他部署、他チームの社員をメンター、ブラザー・シスターとして設定すると良いでしょう。
上司のトレーニング
オンボーディングは、主に仕組みで受け入れ態勢を整えるやり方であり、非常に有効です。一方で、職場の雰囲気、本人のモチベーションに最大の影響力を与えるのは間違いなく職場の上司です。
特定の部門で定着しにくい、モチベーションが低い等が生じている場合、上司のマネジメントスキル不足を疑ったほうがいいでしょう。部下のマネジメント、育成にはスキルが必要です。上司自身のリーダーとしての心構え、部下とのコミュニケーションに対するスキルをきちんとトレーニングすることが重要です。