
多くの企業で若手人材において「募集を出しても応募がない」「応募してきてくれたのはいいが辞退されてしまった」「定着しない」といった課題を抱えています。この章では、まず採用成功に向けた魅了付けのノウハウを紹介します。
選考を通じて自社の魅力付けをおこなう
若手人材に接触した際、入社意思を高めてもらうためには、選考を通じて、自社の魅力付けをおこなう必要があります。
採用経験の少ない中小企業等では、『求人広告や説明会では魅力を伝えるけど、応募してきてからの選考フローは、あくまで企業が応募者を選考する場』と思っているような採用活動をしているところもあります。
上記も間違いではありませんが、自社で採りたいと思う人材は他社でも欲しいと思われる人材です。上から目線で採用活動をおこなう会社よりも、対等の立場で配慮してくれる会社のほうが印象は良くなります。
また、選考中の対応は、“社員に対するスタンス”も想起させます。応募者からすると、“選考は上から目線なのに、社内に入ったらすごく風通しが良く、フラット”とは考えられません。若手ほど、社内の雰囲気、誰と働くかは、会社を選ぶ大きな基準になっています。
応募者に媚びる必要はありません。ただ、対等の立場でフラットに接する、また選考過程においても、しっかりと自社の魅力を伝えて、志望度を上げることを心がけましょう。
若手人材の母集団を作る
若手採用が成功する前提条件は、母集団形成です。当たり前の話ですが、会えないことには採用活動の成功はあり得ません。何十人も採用するわけではない中小企業の採用であれば、そこまで大量の母集団はいりません。とはいえ、若手を1人採るためには、15~20人程度の若手求職者との接触(応募獲得)はしたいところです。
若手の母集団を作るために重要なのは、「若手がいる場所」に求人原稿を出す、足を運ぶことです。郊外や地方に行くと、『ハローワークに出稿しているが、なかなか応募がない、中高年の応募ばかり』という悩みを伺うことがあります。ハローワークは雇用を守る重要なセーフティーネットですが、あまり若者が利用する場所ではありません。
当然ですが、今の若手はネット媒体を使った就職/転職活動が基本です。最近では、採用活動に本格的なWebマーケティング手法;採用HPとリターゲティング広告やマーケティングオートメーションを組み合わせた活動をおこなう会社も出始めているぐらいです。
ただし、大手求人媒体等では埋もれてしまう中小企業や、どの求人媒体を選定すればいいか分からない、原稿作成をする余裕がないという場合には、人材紹介会社や採用イベントを利用することがお勧めです。媒体等での母集団形成にノウハウがなければ、成果報酬型媒体の活用や、参加費用等を支払っても“確実に若手求職者と会う”ことで、結果的に採用効率が良くなることも多いです。
なお、母集団形成をおこなう際には、若手採用はポテンシャル採用の面があることも考慮しましょう。具体的には、前職での職歴や職種経験、正社員経験等を限定せずに、候補者の特性や自社ビジョンへの共感等がマッチングしていれば選考の対象とすることで、幅広い人材との接点に繋がるでしょう。
若手人材が気にするのは、「やりがい」と「自己成長」、「自分にもできるか」
若手採用で魅了付けを考えるうえでは、彼らの価値観に合わせた魅了付けが必要です。もちろん個人差はありますが、一般的には、若手人材が気にするのは「仕事のやりがい」と「自己成長」、そして「自分にもできるか」です。とくに未経験者のポテンシャルほど、この3つをしっかりと伝えることが重要です。
①仕事のやりがい
「やればやった分だけ稼げる」「成果を上げればすぐ昇進できる」といった訴求はターゲットによっては有効ですが、10年前と比べるとあまり刺さらなくなっています。それよりも、「どんな顧客に喜ばれるか」「事業にどんな社会的価値があるか」「顧客から喜ばれたエピソード」「仕事のやりがいを感じた瞬間」といった情報をしっかりと伝えましょう。
2011年の東北大震災では“社会貢献”や“ボランティア”が注目され、2020年のコロナ禍では、“エッセンシャルワーカー”や“応援消費”といったキーワードが注目されています。衣食住に困ることはない時代で育った若手人材ほど、仕事に“意味”を求める傾向が強くなっています。
なお、伝えている「やりがい」が経営者の間違った思い込みであるケースもあります。リアルな「やりがい」を知るためには、成果を上げているスタッフにインタビューするのが最も早い方法です。リアルな「やりがい」は、候補者にとっての魅力にも繋がり、強い訴求ポイントになります。従って、根拠のある「やりがい」を確認し、発信する作業は非常に重要です。
②自己成長
次に重要なのは、自己成長です。自己成長は、上述のように衣食住が足りた中で、精神的な満足を求める自己実現的な側面もありますし、一種の安定志向からくる部分もあります。
今の若手は、やりがいある仕事をしたい、仲間と呼べるコミュニティで人間関係を築きたいと思っています。同時に、“会社は永遠ではない”“会社は自分の人生を保証してくれない”ことを当たり前にように感じています。
だからこそ、仕事を通じて手に職を付けて困らないようになりたい、成長して市場価値を高めることで選択肢を持ちたい、と考えています。とくに新卒女性は、『産休・育休期間の後も働きたい。1~2年のブランクがあっても、仕事に戻れるように20代前半で自己成長したい』という人も増えています。
昔のように“ナンバーワンになる”“競って勝つ”という自己成長ではないことには注意が必要です。場合によっては、仕事を通じて得られる自己成長と事業の安定性を併せて伝えることも一つの方法でしょう。
③自分にもできるか
これはポテンシャル採用においては、とくに重要です。今の若手は、失敗に対しては敏感です。これは、SNS等でも“批判”や“ネガティブコメント” 等が飛び交う中で、あまりリスクを冒したくないという傾向が強くなっているようにも感じます。
“自分にもできるか”という視点で採用に失敗している事例を見ると、「仕事のやりがいや自己成長をイメージさせたいばかりに、仕事内容を難しく書きすぎている」、また、中小企業の採用等で、「仕事内容に専門用語がたくさん散りばめられている」といったケースがあります。とくに建築や施工管理等の分野で多く見かけられます。
もちろん、仕事内容において、情報を正確に伝える、自己成長ややりがいを伝えることは重要です。
しかし、その場合には「未経験から入社した先輩の事例」や「入社後にこういうステップで教えていく、知識を身に付けてもらうので未経験で大丈夫」といった未経験からの挑戦に安心感を与えるように意識しましょう。また、業界用語、専門用語は未経験者向けの求人情報では多用しないことが原則です。
若手社員が気にする働き方に対応する
人事や採用に携わる形であれば、肌身で感じているかと思いますが、この5年ほどで残業や勤怠管理に関する社会的な価値観は急激に変わってきました。それらのニュースを見ながら育ち、就職した若手人材は、会社選びをするうえでも、働き方は必ずチェックします。
働き方が素晴らしいから志望度が上がるというよりは、勤怠管理ができていない会社や有休が取れない会社は避けるという衛生要因(満たされなければ志望度が下がる)です。過度に気にする必要はありませんが、きちんとした勤怠管理や有休消化の義務化等の社会的な動きにはきちんと対応しておくことは若手採用に取り組むうえでは必須です。