内定とは?内々定との違いや法的意味、内定辞退の対処法など、基礎知識を紹介

更新:2023/01/23

作成:2022/11/21

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

内定とは?内々定との違いや法的意味、内定辞退の対処法など、基礎知識を紹介

採用活動を実施する中で、「内定」通知は必ず通過するプロセスです。

新卒の場合、採用活動が長期にわたるため、内定から入社まで1年を超えることもあり、内定辞退や内定取り消しなどの問題が生じやすくなっています。

人事の方や採用に携わる経営陣の方などは、内定の法的な位置づけなどの基本事項を押さえておかないと、トラブルになる可能性もあります。

本記事では、内定や内々定などの法的な意味や概要、内定通知書の発行義務などを確認します。

記事の後半では、多くの企業を悩ませる内定辞退が起こる理由や、内定辞退の拒否ができるかどうかなど、内定辞退に関するポイントを解説します。

<目次>

内定とは?

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内定とは、以下の手続きを通じて雇用契約を成立させるプロセスを指します。

1.内定通知(内定)

企業が採用活動の合格、つまり雇用契約を結ぶ意思表示をすること。
労働条件、つまり労働条件通知書の内容を網羅した「内定通知(採用通知)」の書面を求職者に出すことが多くなっています。

2.内定承諾

内定通知書の内容を承諾した求職者が「内定承諾書」に署名捺印をして、企業に提出すること。
内定通知書が労働条件通知書を兼ねている場合には、これで雇用契約が成立すると考えられます。

従来の新卒採用では、経団連の指針によって、正式な内定日は「卒業・修了前年度の10月1日以降とする」と決められていました。

経団連の指針は形骸化していますが、「内定式の開催日」として10月1日の日付は残り、大手企業などは9月末までは内々定という扱いをしている場合も多くあります。

内定の意味

上述のとおり、内定は自社の選考・採用基準をクリアした求職者に出す、「あなたと雇用契約をしたいと思います」というオファーと同じ意味です。

雇用契約を締結する際、企業はさまざまな労働条件を明示した労働条件通知書を準備して、候補者に提示することが法律で義務付けられています。

労働条件通知書に含まれる項目は下記のようなものです。

  • (1)労働契約の期間に関する事項
  • (2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
  • (3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
  • (4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項
  • (5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

内定通知の際、労働条件を通知しない場合もあり、その場合は内定通知=雇用契約を締結する意思の表明だけであり、労働条件は別途で通知することになります。

一方で、内定通知の際に、労働条件通知書の内容も含む場合には、求職者が内定通知書の内容を承諾することで、雇用契約が成立するものと考えられます。

内定と内々定の違い

内々定は、名前のとおり、内定が「内々(うちうち)」、つまり非公式で決まっている状態です。

従来の新卒採用では、先述のとおり経団連の指針によって、卒業・修了年度の10月1日になるまで、企業は正式な内定を出さないことが一般的でした。

一方で、企業としては、自社が採用を決めてから10月1日までの間も、優秀な人材をキープしておきたいものです。

そして考え出されたのが、内々定というものになります。内々定の段階では内定通知書も出されません。

ただし、口頭であろうが書面であろうが、内々定と内定は基本的には変わらないものと考えられます。

ただし、一般的に内々定時点で労働条件の通知をしたり、承諾書を回収したりすることはありませんので、雇用契約などは成立していない状態です。

内定通知書の発行義務はない

内定通知書には、法的な発行義務がありません。なかには、メールや電話のみ、また口頭で内定通知をする企業もあります。

ただ、ご存じのとおり、法律上、口頭でも契約等は成立するものであり、書面でも、メールや電話、口頭でも、「企業として雇用契約をする意思を表明した」意味は変わりません。

なお、企業は内定通知書の発行義務はありませんが、前述のとおり、雇用契約を締結するに際しては、労働基準法第15条で労働条件通知書の発行は以下のように義務付けられています。

「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」

なお、労働条件通知書で明示すべき項目は、労働基準法施行規則第5条1項で定められています。

出典:労働基準法第15条
出典:労働基準法施行規則

内定辞退の申し出は基本的に拒否できない

先述のとおり、労働条件の記載された内定通知書の発行と、通知内容に対する求職者の内定承諾書への署名捺印を通じて、雇用契約が成立するものと考えられます。

この場合は、内定辞退は一種の「退職」行為にあたるわけです。

法的には上記の場合の内定辞退は、民法627条で定められた「労働契約の解約権の行使」に該当するものです。

民法627条では期間の定めのない労働契約に対して、労働者はいつでも解約の申し入れができる、また、解約の申し出をした日から2週間経てば、企業の同意がなくても労働契約が終了することを定めています。

なお、上記を踏まえると、法律的には企業の同意がない内定辞退が可能になるのは、入社の2週間前までということになります。

上記は、憲法22条に定められた「職業選択の自由」を前提としたものであり、企業側に内定辞退を拒否することはできません。

なお、労働基準法第16条で「賠償予定の禁止」なども定められており、企業は内定者に対して「内定を辞退したら違約金を……」などの条件などはつけられません。

もちろん内定辞退に際して、書面の取り交わしを強制することもできません。

なお、内定通知で労働条件を通知しない場合には、内定承諾しても雇用契約は成立していないことになりますが、「職業選択の自由」を保護するという考え方は雇用契約の成立時と同様です。

出典:民法(e‐GOV法令検索)
出典:労働基準法(e‐GOV法令検索)
出典:憲法22条で規定する「職業選択の自由」について(厚生労働省)

そもそもなぜ内定辞退が起こるのか?

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内定辞退には、大別すると2つの種類があります。

まず、内定承諾前の辞退です。

承諾前に内定辞退される根本的な原因は、求職者に自社の魅力が十分に伝わっていない、また、他社との相対比較で自社が劣っていることです。

近年では、就職活動の長期化や少子化による採用市場の売り手化などの理由で、求職者側が時間をかけて企業の比較をしやすくなっており、内定承諾までの辞退は増加傾向にあります。

なお、「他社との相対比較で自社が劣っている」というのは給与や知名度などのある程度定量的に比較できる要素もありますが、働きがい、キャリアパス、社風など、定性的な要素が非常に多いものです。

したがって、絶対的な差ということよりも、どちらかといえば、以下のような感じ方や相対的な違いによるものが大きくなります。

  • 自社の魅力をどう感じられたか?
  • 自社の魅力がどう伝わったか?

また、自社の魅力をたくさん伝えても、それぞれの求職者が抱える不安や疑問の解消ができなければ、やはり求職者との信頼関係を築いた競合にはかなわなくなるでしょう。

内定承諾前の辞退を防ぐためには、内定を出すまでにどう求職者と信頼関係をつくり、一人ひとりの求職者のニーズ等に向き合って魅力付けをしていくことが求められます。

そして、内定辞退のもう一つのパターンは、内定承諾後の辞退です。

最近では、前述したように内定承諾の法的効力などを認識して、端から辞退するつもりで複数社の内定承諾するような学生もいます。

しかし、大半の学生は内定承諾する際には、一度はその会社に入社することを決意して承諾します。

したがって、内定承諾後の辞退は、時間の経過などが原因で募って来た不安が承諾時の記憶や熱量を上回ったときに生じることになります。

承諾後の内定辞退を防ぐには内定者へのフォローアップが欠かせない

内定辞退を防ぐ施策の大前提として重要となるのは、内定者との接触頻度を高く維持することです。

本章では、内定者との高い接触頻度を維持することの重要性、また具体的なフォローアップ施策を紹介します。

定期的な情報発信

内定承諾後にまったく音沙汰がない場合、内定者には「この企業は大丈夫なのだろうか?」などの不安・疑念が生じやすくなります。

採用企業側の自然な動きとして、内定承諾前の求職者との接触が増えやすく、承諾後の内定者との接触頻度は少なくなりがちです。

しかし、承諾後の接触頻度が落ちることは、上述のとおり、求職者の不安を生み、それを増大させるものになります。

上記のような問題を防ぐためには、内定式や内定者研修の日程連絡といった事務的な連絡だけでなく、SNSを通じて日常的に情報発信する、社内報や社内イベントの様子などを共有するなど、高い接触頻度を保つことが大切です。

定期的なコミュニケーション

内定者の不安や疑問は、企業の一方的な情報発信だけでは解消されづらい部分もあります。

内定者の不安や疑問を取り除き、信頼関係を高めるには、内定者に負担のかからない範囲で、企業と内定者が双方向でコミュニケーションできる仕組みづくりも大切です。

コロナ禍で普及したオンライン面接やWeb会議のやり方を応用すれば、卒業研究などが忙しい内定者でも、スケジュールの調整がしやすくなるでしょう。

なお、こうしたコミュニケーションの場への参加が消極的な内定者は、入社意欲が低下している可能性があるため、個別のフォローが必要です。

内定者同士の人間関係の醸成

内定者の多くは、同期に関心を持ち「早く会いたい」と思っています。これは、「どのような人と働くのか?」という不安の裏返しでもあります。

上記のようなニーズと不安を解消するには、内定者懇親会などを実施したうえで、内定者同士が交流できるクローズな場を設けることがおすすめです。

内定者同士でコミュニケーションをはかれば、内定者研修や入社に向かうなかでの不安などを共有していくうちに「みんなも同じ悩みを抱えているんだ!(私は一人じゃない!)」などのポジティブな想いが生まれることもあるでしょう。

ただし、企業の対応に不満を抱いている内定者がいた場合、そうした不満が共有されてしまったり、内定者間での人間関係のトラブルが起こったりすることもあり得ます。

したがって、内定者同士のコミュニケーションの場を提供する場合、運用ルールやフォローを行なうなどの注意も必要となります。

入社1年目社員(内定者の1つ上)の世代などをうまくコミュニケーションに巻き込むことも有効です。

魅力の再訴求

自社の魅了付けは内定承諾を得て終わりではなく、入社するまで続ける必要があります。

マリッジブルーと同じように、入社が近づくに入れて内定者には「選択肢がなくなる」不安が募っていくものです。

同時に、内定承諾時の熱や想いは承諾時をピークにどんどん落ちていくものです。

たとえば、既存社員との座談会や交流会を実施して、実際に活躍している先輩と話しもらったり、内定者研修で承諾理由を思い起こさせるようなワークを実施したりすることがお勧めです。

ベンチャー企業などで内定者が少人数の場合には、翌年度の採用に関わってもらうことなども自分の承諾理由、企業の魅力を確認することにつながります。

入社後イメージの強化と動機づけ

内定者を入社につなげるうえでは、不安解消と同時に、以下のような入社後イメージを明確にしていくことも有効です。

  • この企業なら、自分の力を発揮できる!
  • この企業の先輩たちと早く一緒に働きたい!
  • 自分の夢を叶えられるのは、この企業だけだ! など

たとえば、先述の座談会や交流会には、魅力的な既存社員とのコミュニケーションをはかることで、「この先輩と早く一緒に働きたい!」などの動機を強くする効果もあります。

また、内定者研修で、入社後のキャリアプランや実現したいことなどを描くようなワークも有効です。


まとめ

内定とは、企業が最終選考を通過した求職者に対して、「雇用契約を結ぶ意思」を示すことを指します。

実務的には、内定通知書を雇用契約に必要な労働条件通知書を兼ねる形で作成して送付することも多いでしょう。

内定通知が労働条件通知を兼ねている場合には、企業が出した内定通知を求職者が確認し、内定承諾書を提出することでお互いの意思確認が行なわれ、雇用契約が成立することになります。

また、内定辞退に関しては、大前提として日本では憲法で定められた「職業選択の自由」を守ることが基本となります。

したがって、民法627条(労働契約の解約権の行使)でも定められているとおり、雇用契約が成立しているからといって、企業が内定辞退の申し出を拒否したり、条件をつけたりすることは出来ません(雇用契約が成立していない状況であれば、なおさらです)

なお、内定承諾後の辞退を防ぐためには、内定者との接触頻度を高く保つことが大前提です。そのうえで、以下のフォローアップを実施するとよいでしょう。

  • 定期的な情報発信
  • 定期的なコミュニケーション
  • 内定者同士の人間関係の醸成
  • 魅力の再訴求と承諾理由の再確認
  • 入社後イメージの強化と動機づけ など

内定辞退のポイントをより詳しく知りたい人は、以下の資料も参考にしてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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