企業内で発生しがちなハラスメントにはどのような種類があるのでしょうか。19種類のハラスメントについて説明します。
1.パワーハラスメント
パワーハラスメント(パワハラ)は、立場を利用した嫌がらせであり、「優越的な関係を背景とした」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動で「就業環境が害される」ことが要件です。「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「過大な要求」「過小な要求」「人間関係からの切り離し」「個の侵害」という6つの形態に分類されます。
一般的にパワハラは、上司と部下など立場が上の者が下の者に対して行なうハラスメントと理解されることが多いですが、しかし、最近では部下が上司に行なうパワハラといったケースも増加しています。部下が集団で上司の指示を無視したり悪口を言ったりするなどの事例があり、「逆パワハラ」とも呼ばれています。
2.セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメント(セクハラ)は、性的な嫌がらせです。男性が女性に行なうケースが多い一方で、女性から男性へ、また同性同士のセクハラもみられます。
セクハラは「親しさの表現のつもりだった」など、無意識に行なわれる場合も多いハラスメントです。しかし、無意識であったり、冗談としての言動であったりしても相手が不快感を抱けばセクハラにあたります。
セクハラは「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」に分類されます。前者は上下関係や立場を利用して、例えば、食事に誘った対価として性的な関係などを要求するタイプで、後者は性的な言動の繰り返しによって職場環境を悪化させるタイプです。
3.モラルハラスメント
モラルハラスメント(モラハラ)は、精神的に相手を傷つけるハラスメントです。
モラハラは職場で上下の関係にある上司と部下だけでなく、同僚同士や家庭など職場外でも発生します。当事者以外にはわからない形で行なわれる場合もあり、多くの場合、モラハラの加害者に自覚がないのが特徴です。また長期に渡って継続的に行なわれるケースも少なくありません。
4.マタニティハラスメント
マタニティハラスメント(マタハラ)は、女性の妊娠や出産、育児についてのハラスメントです。産休、育休や時短勤務制度を利用することに対して嫌がらせを行なったり、妊娠や育児を理由とした解雇、異動、降格など不当な扱いをしたりすることを指します。
マタハラは男女雇用機会均等法や育児・介護休業法、あるいは労働基準法に抵触する行為で、妊娠や出産、時短勤務制度が整備されていない企業で起こりやすいのが特徴です。マタハラは上司からだけではなく、同僚から行なわれるケースも少なくありません。
5.パタニティハラスメント
パタニティハラスメント(パタハラ)は、マタハラの男性版といえるハラスメントです。男性が育児休暇を取得したり、時短勤務制度を利用したりする際の不当な扱いや嫌がらせを指します。
人事評価を下げたり、育児休暇や時短勤務を利用させなかったり、遠方への転勤を命じるなどの行為がみられます。パタハラは男性の育児参加に理解を示さない上司、また組織風土で発生するケースが多いのが特徴です。
6.ジェンダーハラスメント
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)は、旧来の価値観に基づいた「男らしさ」「女らしさ」を強要するハラスメントです。性別に対する偏見からの発言だけでなく、不平等な人事評価、採用条件の差異といった行為が含まれます。
また、職場でお茶出しを女性に担当させる、体力が必要な作業を男性にやらせるといった行為もジェンハラにあたります。「男のくせに」「女のくせに」などの表現を伴う偏った意識に基づくジェンハラは少なくありません。
7.SOGIハラスメント
SOGIハラスメント(ソジハラ)は、性的指向や性自認についてのハラスメントです。性的指向を示す「SO(Sexual Orientation)」と性自認を指す「GI(Gender Identity)」が語源となっています。
イメージは、LGBTに対するハラスメントであり、当事者が望まない性別で扱ったり、LGBTへの差別的言動などの行為が対象となります。本人の同意なく性的指向や性自認を第三者に暴露するアウティングもSOGIハラスメントに含まれます。
8.テクノロジーハラスメント
テクノロジーハラスメント(テクハラ)は、主に高度なIT技術を有する側がそうでない人に対して行なうハラスメントです。難解な専門用語を多用したり、「こんなことも知らないの?」と見下したりするなどの言動が含まれます。
テクハラの被害者は困惑したり圧力を感じたりするだけではありません。継続的に繰り返される場合には体調への悪影響が生じる場合もあります。
9.時短ハラスメント
時短ハラスメント(ジタハラ)は、上司が部下に労働時間を短縮するよう指示する一方で、業務量を改善せず従来どおりの結果を求めるハラスメントです。過労死や長時間労働の社会問題化によって働き方改革が求められている中で、長時間労働の是正を誤った手法で実現を図る動きが背景となっています。
生産性を向上させること自体は推進されるべき行為であり、意識向上も必要ですが、それがハラスメントとして使われると問題です。時短ハラスメントは社員のサービス残業や自宅への業務持ち帰りといった負担増や違法な就業につながりやすいことも特徴です。
10.セカンドハラスメント
セカンドハラスメント(セカハラ)は、パワハラやセクハラの被害者が別の人物から受ける二次被害を指すハラスメントです。パワハラやセクハラを相談した際に、周囲が批判的な態度だったり、業務における非協力的な姿勢を示したりなどの行為が該当します。
また、組織や人事部門等がパワハラやセクハラの訴えに対して我慢を強いるよう求めたり、「被害妄想ではないか」といった言動に及んだりするケースもみられます。パワハラ、セクハラの被害者の中にはセカンドハラスメントへの恐れから相談をためらうケースも少なくありません。
11.スメルハラスメント
スメルハラスメント(スメハラ)は、においによって、周囲を不快にさせるハラスメントです。タバコや口臭、汗などによる体臭のほか、香水のにおいがスメハラに該当するケースもみられます。
スメハラの特徴は加害者本人に自覚がない場合が多い点にあり、デリケートな問題であることから対応が難しいハラスメントです。
12.エイジハラスメント
エイジハラスメント(エイハラ)は、年齢に関するハラスメントです。エイハラは従来、中高年の社員が役職に就いていないことに対し、嫌がらせを行なうなどの形でみられてきました。
近年では若い女性に対し「若いんだから」「経験が浅いんだから」など年齢を理由としたエイハラを行う例もみられています。エイハラは世代間のコミュニケーション不足が原因となっているケースが多いのが特徴です。
13.アルコールハラスメント
アルコールハラスメント(アルハラ)は、飲酒にまつわるハラスメントです。職場の飲み会や宴会で上下関係を利用し飲酒を強要したり、酒に酔って相手に絡んだり暴言を浴びせるといった迷惑行為がアルハラにあたります。
アルハラはパワハラやセクハラにも該当する可能性が多く、また、最近では減りましたが飲酒の強要は急性アルコール中毒等の身体的な危険を招く行為ともいえます。アルコールを摂取することで理性が緩みやすくパワハラやセクハラも、最も発生しているのは「飲み会」の場と言われますので注意が必要です。
14.スモークハラスメント
スモークハラスメント(スモハラ)は、喫煙者による非喫煙者へのハラスメントです。喫煙によって非喫煙者に受動喫煙させる、非喫煙者に喫煙を強要するなどの行為が該当します。勤務時間中の喫煙タイムが不当に多い・長い場合もスモハラにつながりやすいといえます。
15.ソーシャルメディアハラスメント
ソーシャルメディアハラスメント、ソーシャルハラスメント、ソーシャルネットワークハラスメント(ソーハラ)は、SNS上で行なわれるハラスメントです。上司や先輩がFacebookやTwitterなどのSNSに社内の人間関係を持ち込み、「いいね!」や「コメント」を強要するなどの行為が該当します。
また、部下につながり申請を要求したり、部下の投稿を頻繁にチェックして「いいね!」して監視したりするような行動もソーハラにあたる可能性があります。ソーハラは上司や先輩側は「部下とコミュニケーションをとるつもりだった」など、自覚なく行なわれるケースも多くなっています。また、上司から異性の部下に対して実施された場合などは、セクハラ等にも該当しますので注意が必要です。
16.リストラハラスメント
リストラハラスメント(リスハラ)は、リストラ対象者に対して行なわれるハラスメントです。リストラの対象となっている社員に仕事を与えなかったり、無理な仕事を押し付けたり、希望しない部署への異動を命じるなどの行為が該当します。
リスハラは会社に残りにくい状況を作って、リストラに追い込むことを目的とするケースが多いハラスメントです。パワハラにあたる可能性もあります。
17.リモートハラスメント
リモートハラスメント(リモハラ)は、テレワークハラスメント(テレハラ)とも呼ばれ、リモート環境で行なわれるハラスメントです。新型コロナウイルスの感染拡大によって一般化したリモートワークを背景に増加しています。
オンライン会議から特定の社員を排除したり、オンライン飲み会への参加を強要したり、写り込んだプライベート空間をチェックする、などの行為が該当します。オンライン会議におけるハラスメントは、zoomを利用することが多いことから「ズムハラ」と呼ばれることもあります。
18.ハラスメント・ハラスメント
ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)は、他人の言動を「ハラスメントだ」と過剰に反応し問題視する行為を指します。各種のハラスメントに対する法令が整備されてきたことが背景となっています。
ハラスメントの概念が広まったことで、被害者がハラスメントを相談しやすくなった一方で、被害者であるかどうか疑わしい社員までがハラスメントを主張するケースが出始めているためです。ちょっとした注意や叱責をパワハラではないかと主張するなど、ハラスメントに関する誤った理解もハラスメント・ハラスメントが生じる理由のひとつです。
19.カスタマーハラスメント
カスタマーハラスメント(カスハラ)は顧客からの過剰なクレームを指すハラスメントの概念です。社員のちょっとしたミスに、例えば土下座を強要するなどの要求を行なったり、問い合わせ窓口に執拗に嫌がらせを行ったりするなどの行為が該当します。
また、支払いを拒否する、無根拠な優遇を求めるといった行為もカスハラにあたります。カスハラは消費者による理不尽な要求に基づくハラスメントであることが多く、会社側として適切な対応をして、社員を守る必要があります。