人材育成方針とは?方針を立てる上で重要な観点と具体的なステップを解説

人材育成方針とは?方針を立てる上で重要な観点と具体的なステップを解説

企業の経営者、人事の方は、組織における人材育成の重要性を認識されている方が大半です。一方で、重要性は認識していても、「実際にどうやって着手すればいいのだろうか?」「人材育成の方針はどのように設定、浸透させていけばいいのだろうか?」といった具体化の部分で悩まれている方も多くいます。

 

本記事では組織の人材育成方針を立てる勘所と具体的なステップをお伝えします。

<目次>

人材育成方針とその重要性

最初に人材育成方針の概要と重要性を確認します。

 

人材育成方針とは

「厳しい経営環境の中でメンバーを牽引できるリーダーを輩出したい!」「強みや専門性を武器に、一人ひとりが活躍できる人材を育てたい!」など、人材育成に対する期待は各社様々なものがあるでしょう。
「人材育成方針」とは、組織として「社員をどのような人材に育てるのか?」を具体的に定めたものをいいます。

 

人材育成方針はなぜ重要か?

人材育成の悩みを伺う中で多く出てきやすいのは「どのような研修をするのか?」「どの階層から育成するか?」など、具体的な育成方法に関する悩みです。
しかし、組織の人材育成を始めるにあたっては、最初に「どのような人材を育てるのか」人材育成方針を明確にすることが肝心です。

 

求められるスキルや能力も、「専門性を身に付ければいいのか?」「ゼネラリストを育てたいのか?」「キャリアパスを複数用意するのか?」等々、組織の人材育成モデルによって様々です。
したがって、具体的な育成方法も期待する人材育成モデルに応じて検討する必要があります。だからこそ、出発点であり、立ち返る場所として、人材育成方針は重要なのです。

人材育成方針を立てるうえで重要な3つの観点

本章では、組織の人材育成方針を立てるうえで重要となる3つの観点を解説していきます。

 

(1)ミッション・ビジョン・バリューの深堀り

1つ目は、組織のミッション・ビジョンを深堀りすることです。ミッション・ビジョンは、「組織が社会にどのような価値を提供するのか」「組織がどこをめざすのか」を示した羅針盤ともいえる存在です。ミッション・ビジョンを実現するためにはどのような人材が必要かという視点で考えることが重要です。

 

また、バリューは自社でどんな価値観を大切にするかを示したものであり、どのような人材を育てたいのかという人材育成方針と紐づいてくる点が多々あります。ミッション・ビジョン・バリューを深掘りして、どんな人材を育てるのかのイメージを沸かせましょう。

 

(2)経営戦略の実現に必要な組織の確認

2つ目は、経営戦略の実現に必要な組織を再確認することです。
ここでいう「経営戦略」とは、企業がミッション・ビジョンを実現するための具体的な戦略です。育成モデルの検討や育成計画の立案といった人材育成の具体的なアクションもすべて、経営戦略に基づいて行なわれることになります。

 

経営戦略を実現するために、どのような組織編制や部門が必要なのか?どんなスキル・資質を備えた人材が求められるのか?現状の組織体制で可能なのか?等々を把握する必要があります。

 

経営戦略から人材育成方針を考える上では、自社の事業特性やビジネスモデルも踏まえることが大切です。たとえば、同じIT業界でも、開発力を重視するサービス提供者と労働集約型のSESでは、成長のために必要な組織・タレント・人材は異なってきます。自社の事業特性やビジネスモデルも踏まえて考えましょう。

 

(3)人事戦略の具体化

3つ目は、具体的な人事戦略を作成することです。前述の2つを踏まえて具体的な人事戦略を作成していきます。作成する上では、理想像の構築、現状組織の把握、理想像に向けてのアクションを検討という順番です。

 

経営戦略に応じて、もとめられる人材のスキル・能力は変わってきます。経営戦略の実現に必要な人材の採用や育成を、人事戦略として具体化することが大切になります。

人材育成方針を立てる具体的なステップ

それでは次に、実際に人材育成方針を策定するための具体的なステップを解説します。

 

ステップ1 目指す人材像を明確にする

最初のステップでは、自社の人材育成を通じて育てるべき人材像を明確化します。組織のミッションやビジョン、経営戦略を踏まえたうえで、育成モデルを具体化することが重要です。

 

育成モデルを検討する際、10年20年の長期スパンで定めると、なかなか理想像にたどり着けなくなってしまいます。ですから、5年後にはXX、10年後には◯◯というように、段階ごとに人材育成の目標を設定するといいでしょう。目指すべき人材像が見えてくると、どの段階でどんなスキルや能力が必要になるのか?なども自ずとハッキリします。

 

ステップ2 現状の組織体制、人材構成の強み・弱みを把握する

次のステップは、現状の把握です。具体的には、現状の組織体制や人員構成にどんな強み・弱みがあるか?どれぐらいの水準なのか?等を部署や階層ごとに確認します。

 

現状を整理することで、この後の人材育成方針の策定もスムーズに進みます。組織体制・人材構成を把握する際は、管理職に人材育成の当事者意識を醸成させるという観点から、各部署の管理職からもヒアリングするといいでしょう。

 

組織の現状をあらためて把握していくと、「長所・強み」よりも「弱み・課題」のほうが多く出てくるというケースも珍しくありません。弱みや課題がたくさん挙がると不安を覚えるかもしれませんが、これらはむしろチャンスともいえます。弱みや課題を今後の人材育成で改善することで、会社がさらに成長する可能性でもあるからです。

 

ステップ3 現状とのギャップを整理する

ここまでで、目指すべき人材像の具体化、現状の組織体制・人材構成の把握を行ないました。次のステップでは、目指す人材像と現状を照らし合わせながら現状とのギャップを整理していきます。

 

目指すべき人材像とのギャップを整理する際は、「スキルマップ」を用意することも効果的です。スキルマップとは「社員ごとまたはグループや部門単位で、業務遂行に必要なスキルを備えているかどうかを一覧にした表」のことをいいます。

 

人材育成方針を考える上では、部門や職種、階層単位でのスキルマップが良いでしょう。スキルマップを活用することで、何が足りてないのか?その中でも重点的に克服すべき点はどこか?比較的強いのはどこか?など、求められるスキル・能力と現状のギャップが客観的に把握できるようになります。

 

ステップ4 目指す人材育成像と現状のギャップをもとに、具体的な人材育成計画を立てる

最後のステップでは具体的な人材育成の計画を立てていきます。ステップ1~3を通じて明確になった「組織が目指す人材像」と「現状のギャップ」を踏まえて人材育成計画を立案します。

 

具体例で考えてみましょう。
ある組織A社では「理想とする人材像」として「積極的に知識や専門性を追求する成長意欲の高い人材」を掲げました。これに対し、A社の社員の現状として「若手の成長意欲は総じて高い。しかし希望の部署でスキルを伸ばせず、モチベーションの低下や離職につながっている」ということがわかったとします。

 

A社のケースでは、今後の人材育成としてどんな取り組みが検討できるでしょうか。解決策としては、たとえば、「社内公募制度を設け、意欲次第で希望部署に配属されるチャンスを与える」、「セミナーや講座を自由に選んで受講できるシステムを導入する」などが考えられるかもしれません。

 

組織のミッション・ビジョン、経営戦略を実現するうえでは、「組織が目指す人材像」と「現状のギャップ」を踏まえた上での人材育成方針、計画を立てて取り組んでいきましょう。

まとめ

記事では組織の人材育成方針をテーマに、人材育成方針の概要、育成方針を立てるうえで重要な観点および具体的なステップを解説しました。

 

人材育成は組織の成長・発展に不可欠な取り組みです。そして、人材育成で目指すべき人材モデルや方向性を定めたのが、今回紹介した人材育成方針です。
今回の内容を参考に、自社にどのような人材育成方針が必要なのか、ぜひ改めて検討してみてください。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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