女性リーダー・管理職が育つ企業の条件 vol.3「女性リーダーが活躍する組織づくり3つのポイント」

更新:2023/09/26

作成:2023/09/21

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

女性リーダー・管理職が育つ企業の条件 vol.3

vol.3では今日は女性リーダーが活躍する組織づくりという観点で重要になる、時間、展望、経験という3つの観点を紹介します。

 

3つのポイント

 

本記事は、全4部構成でお送りしています。前後の記事がご覧になりたい方は下記よりご覧ください。



それでは、本題に入り、女性が活躍する組織づくりに必要な時間、展望、経験という3つの観点を紹介していきます。

<目次>

女性リーダーが活躍する組織づくり3つのポイント①「時間」の観点~両立可能性の問題

まずは「時間」の観点です。仕事と家庭の両立、ライフスタイルの維持など、一番初めに出てきやすい視点です。

 

女性活躍を進めようとしている会社で「管理職って大変そう」「土日出勤や残業も多くしんどそう…」という声を聞くことがありますが、社内でこうした声があがる状態は女性活躍の推進にとって非常に大きなハードルとなります。

 

たとえば、私が2006年に入社したころのジェイックはまだかなりの残業体質で、時短勤務だった私は定時であがることに対してものすごく申し訳ない気持ちでしたし、「この働き方を求められるのであれば両立は厳しいな…」とも思っていました。

 

ジェイックでは、働き方改革に取り込み、残業体質を解消したことで、一気に女性の管理職が増えました。

 

パーソル総合研究所の調査で、「組織開発的残業施策が女性の管理職意向のUPにつながる」というデータがあります。

 

組織開発的残業施策というのは聞きなれない言葉です。

 

組織開発的残業施策と対比されるのは「ノー残業デーを設定する」「勤怠管理を厳格にする」など、とにかく勤怠管理をきっちりして残業時間を減らすという、管理的残業施策です。

 

これに対して、「残業の原因を解消する」「時短にして生産性も高める」「きちんと時間当たりの成果で評価する」というのが組織開発的残業施策です。

 

やはりこちらの施策のほうが時短で働く女性にとっては嬉しいですし、時短で働いて成果も出せるイメージが湧くようになります。

 

ジェイックも残業体質だった時は、無駄な作業がとても多かったですし、間伸びしたような会議も見受けられました。その中で、残業削減に向けたトレーニングを上層部、管理職層から実施しました。

 

上層部や管理職層がうまく時間を活用できるようにならないと、「こんな風にはなりたくない」「あんな風には働けない」と思われてしまいます。

 

組織開発的残業施策

 

女性リーダーが活躍する組織づくり3つのポイント②「展望」の観点~未来展望の問題

次に展望の観点を見ていきましょう。

 

ここまで紹介した通り、「ロールモデルがいない」「本当の悩みは会社に話せない」「この会社は男の会社だ」「上司はまだまだ昭和気質だ」といった声が上がってくる状態は、会社での展望が描けていない状態です。

 

やはり女性社員の悩みを解決して、展望を描いてもらう必要があります。

 

ただし、女性社員といっても、その悩みは多様です。「子供がいる人/いない人」、「復帰したばかりの人/復帰後しばらく経ち子供が大きくなっている人」などで全く悩みが異なってきます。従って、キャリア相談は個別に対応することがとても重要です。

 

また展望を描いてもらう前には、もやもやをきちんと解消する必要があります。もやもやが溜まっていると、「未来の展望を描く」という前向きに気持ちにはなれません。もやもやは「吐き出し切る」だけでもすっきりする、自己解決する側面もあります。この意味でも、吐き出せる個別の場をつくることが大切になります。

 

なお、ここで吐き出された声や本音と言うのは、エンゲージメントサーベイやアンケートなどでは分からない貴重な定性情報です。

 

こうした情報を個人特定できない状態で押さえられると、人材育成と組織開発という面で有効です。

 

さらに、展望を描く為には現場の上司が重要になることは前述した通りです。現場の上司は女性活躍の大切な支援者であり、同時に悪気なく女性活躍を潰してしまう可能性も秘めています。

 

これからの管理職像としては、厚生労働省が主導している「イクボス」の概念が有効です。

 

ジェイックでも、イクボス研修を提供していますが、従来のようなマネジメントのハウツーを研修するのではなく、時代が変わり部下の価値観も多様化する中で、これからの管理職「イクボス」というのはどういうものなのか?を学んでいく内容になっています。

 

なお、展望の観点を考えるうえでは、本気で考えてもらう状態をつくることが必要です。

 

しかし、これまで女性活躍が実現していない会社で、経営や人事方針として女性活躍を打ち出しても「疑われる」のが普通です。どのぐらい疑われるのか?データで見てみましょう。

 

懐疑心のグラフ

 

男性で約3割、女性になると約4割が、自社の女性活躍方針に懐疑心を抱いているというパーソル総合研究所の調査結果です。

  • ただ法律の改正に合わせて行なっているだけ
  • ただ表面的に世間体を整えるだけ
  • どうせ効果はない

など、手厳しい見解が多く見受けられます。

 

また、男性も女性も共通して約1割は、「自社には女性活躍は必要ない!」と考えています。意外とこうした否定的な意見は周囲への影響力があります。

 

したがって、懐疑心があるということを認識しないで施策を走らせると、研修などでもすごく斜に構えた人が出てきたり、そういった懐疑心を管理職がぽろっと口にしてしまったりすることが出てきます。

 

もちろん研修などを通じて解消していける側面もありますが、とくに懐疑心が強い場合には対応施策を組んだ方が良いです。

 

会社のカルチャーによりますが、女性管理職が非常に少ない会社などの場合には、かなり懐疑心は強く出ると思ったほうがよいでしょう。

 

女性リーダーが活躍する組織づくり3つのポイント③「経験」の観点~育成の問題

最後に、経験の観点を紹介します。さまざまなデータを見ていくと、全般的な傾向としては、男性と女性はキャリアに対して求めるものが異なることが分かります。

 

傾向としては、男性は年齢と共に給与が上がること、また結婚・出産を機に「家族を支えたい」と考え、さらなる昇進や給与アップを目指す人が多くなります。

 

一方、女性社員は全般的に給与アップよりも、「どのような経験ができるか」という傾向が相対的に強くなります。

 

例えば、ある会社では女性活躍の中で「管理職を目指そう!給与も上がるよ」と提案したところ、女性からは「お金が欲しいわけではありません」という反応がありました。

 

また新卒で入社したての頃は「管理職やリーダーになりたい」という女性が多い、そういう意欲的な層を採用しているにも関わらず、年齢を重ねるにつれて昇進意欲が減少していくケースがあります。

 

個別に話を聞いていくと、意欲が減少する裏側には「諦め」が入っていることが多くあります。

 

とくに、リーダー経験などをせずに産休・育休に入り、復帰して時短勤務になる…となると、「ここから管理職をやるのは難しい」と考えて諦めているケースが非常に多く見受けられます。

 

こうしたことが起きている場合には、早期のリーダー選抜やキャリア教育というものがとても有効です。

 

「経験したい」という気持ちをうまく生かし、早めに一度経験させておくと、育休復帰して時短勤務でも、「何とかやっていける」「今は難しいかもしれないけど、もう少し子供が育ったらもう1回…」と考えるようになります。

 

年功序列がかなり廃れてきたとはいえ、日本企業では、若手のうちはみな平等に昇格させていくという傾向も残っています。これ自体は悪いことではないかも知れません。ただ、それをやっていると、20代後半~30前後に出産のライフイベントを挟んだ時に、管理職意向の減退が生じやすくなります。

 

前述の通り、20代のうちにリーダー経験を積ませることが、後のキャリア形成に対する良い影響を与えるのです。

 

ジェイックでは、20代でマネージャーに昇進する社員が多くいます。

 

そうした社員は結婚や出産を経て、一時的には仕事が難しい、管理職は難しかったとしても、育児に慣れたり、子供が小学生になり時間的な余裕が出てきたりすると、再び積極的に高い視座をもって仕事に取り組もうとする傾向があります。

 

一方で、リーダーシップ発揮やマネジメントの経験がないと、子育てに追われる中で「管理職を目指して欲しい」と言われても、「本当に出来るか…」という心理ハードルが生じやすくなるのです。

 

ライフイベントのグラフ

 

上記のデータを見ていただくと明らかですが、結婚や子育てのタイミングによってキャリア意識は変化します。男性の場合、結婚後に「頑張るぞ」と管理職になりたいという意欲が高まります。そして、子供の成長と共に、さらに高まっていく傾向があります。

 

しかし、女性の場合には、結婚のタイミングで男性ほど顕著な上昇はせず、さらに子供が生まれて少し経過すると、キャリア意欲が一旦下がります。その後は再び上がるものの、やったことがない管理職への心理ハードルは徐々に上がります。

 

だからこそ、早い段階で管理職登用して経験をさせておくというのは有効です。少なくとも部下・後輩の育成やマネジメント経験を20代のうちに積ませておくことです。

 

もしくは早い段階で、キャリア教育を行うことも有効です。現管理職を目指すだけではなく、さまざまなキャリアの描き方があるということを示しておくのです。

 
 

ここまで「女性リーダーを育成しようとした時によくある3つの壁」についてご紹介しました。vol.4ではこれまでの内容を踏まえて、女性リーダーが活躍する組織づくりの具体的な3ステップをご紹介します。

女性活躍支援サービスのご案内

ジェイック及びグループ会社であるKakedasでは、女性取締役であり、現役のトップ講師でもある東宮を中心に「女性活躍」の支援を提供しています。

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キャリア相談プラットフォーム|Kakedas(カケダス)...
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女性活躍の取り組みは、性差の話だけではなく、介護、副業・複業、Z世代など、働き方に関する価値観が多様化する中で、社員のエンゲージメントを高め、優秀層の離職防止を実現する上でも有効です。

 

ご興味あれば、詳しい資料をご覧ください。また、「情報交換したい」「相談に乗って欲しい」という場合には、お気軽にご連絡ください。

 

また、女性の管理職の効果や女性の活躍を増やす環境づくりと施策のポイントは以下の記事で解説しているので参考にしてください。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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