従業員の面談は社内で対応するのが良いという考え方もあり、実際に社内面談の強みも明らかにあります。一方で、社内面談には仕組みとしての限界もあります。
仕事や組織への不満に当たることは言いづらい
これまでも紹介した通り、従業員からすると、社内面談は遠慮なく話せるものではなく、身内であるがゆえに言いづらいことも出てきます。
上司は評価者であり、また、人事は直接の利害関係は無くとも組織側の人です。同じ組織の人が面談相手ともなると、どうしても仕事や会社に対する不平・不満と受け止められるようなことは言いづらくなります。
対話では、ネガティブも含んだ感情や思考をきちんと吐き出すことで気持ちが整理されていき、前向きで理性的な思考が働くようになる側面もあります。上司や人事が面談を担当すると、相談者には「ネガティブなことを口にすると、組織の中に居づらくなってしまうのではないか」という不安が生じやすく、心理的安全性を確保するのが難しいものです。
十分な心理的安全性を確保しないまま面談しても、本音は出てこなくなります。また、表面的なやり取りで終わってしまうと対話の効果も得られません。効果の低い面談になってしまうと、逆に従業員のエンゲージメントが下がってしまうことにもなりかねません。
クロス1on1の問題点
評価者である直属の上司、組織側の人間である人事が1on1を実施する心理的安全性の課題に比較的対応しやすいのが、他部署の人と面談するクロス1on1です。評価とは関係の無い他部署の人が面談を担当することで、上司や人事が担当する場合に比べ、心理的安全性を確保しやすくなります。
クロス1on1は直属の上司に比べれば思っていることを話しやすくなるという効果があります。一方で、業務への理解が不足しがちになり、また面談を担当してくれる人の力量が低く、更に影響力も行使できない状態になると、質の高い面談実施が難しい場合もあります。
そのような状態だと、「飲み屋の雑談」のようになってしまいやすく、無責任なアドバイス等になってしまうケースもあります。
相談内容が社内に知られることへの不安
質の高い面談を実施するには、面談内容が他者に知られないという保証が非常に大切です。上司や人事への相談はネガティブに評価されたり人間関係にマイナスの影響が生じたりする懸念に加えて、自分が話したことを社内の他の人に知られてしまうリスクを感じやすくなります。
上司、人事、他部署の人は、日常的に組織内で働き、組織内の人とコミュニケーションを持っている存在です。そうすると、相談者は社内の雑談等の中で相談内容が漏れてしまうリスクを感じがちです。
また、少し矛盾もあるのですが、相談者は「解決してほしい」というニーズを持つ一方で、「自分が話したとは言わないでほしい」といった欲求があります。上司や人事が、社内で対応に動くと必然的に「誰が何を言ったか」が関係者には多少なりとも共有されていくことになるでしょう。
社内面談は、こうした点の心理的安全性をどうしても担保しにくく、「話した内容がどこかで漏れてしまうのではないか」という不安があると、相談内容にも遠慮が生じます。
人事や上司の負荷
ここまでは社内面談に関する構造的な課題を紹介しましたが、実務的な課題として社内面談の実施に当たっては、人事や上司に負荷が生じます。例えば、1on1を通じて管理職に部下のキャリアやストレスケアまで責任を持たせることは、正直なところ限界があるでしょう。
もちろん今の時代の管理職にはウェルビーイングやキャリア自律に対する理解や配慮は必要です。しかし、研修等を実施して傾聴やコーチングスキルを身に付けさせるにも、誰でも同じように出来るものではなく、スキルとの相性があります。
管理職の最大のコミットメントは業績目標です。1on1などの施策を導入していくと優しい管理職ほど部下の声に耳を傾ける側に偏り、目線が内向きになってしまう傾向もあります。
また、人事等に集約して面談を実施する場合、実施者が限定される分、スキル向上は実現しやすい反面、社員数が多くなれば相当の工数負荷が発生します。さらに、一人ひとりの悩みに丁寧に寄り添っていくとなると、対応者のストレス蓄積もかなりのものとなります。そして、特定の人に情報が集約されること自体がリスクであるという捉え方もあるでしょう。
多様性対応の限界
会社規模が大きくなると、社内には多様な年代・性別・職種・階層の従業員がいます。質の高い面談を実施するためには、こうした多様性への対応も大切です。
相談相手を選ばないテーマもありますが、例えばシニア層になると若すぎる相談相手には相談しにくい、女性であればワーキングマザーの経験者に相談したい、といったニーズが出てきます。また、仕事やキャリアの話になると、職種理解や経験の問題も出てきます。
社内人事を人事に集約して対応しようとなると、こうした多様性への対応に限界も生じがちです。