企業を取り巻くさまざまな環境変化に対応するため、多くの企業がチームリーダーを育てる研修に、今まで以上に力を入れています。ここでの“チームリーダー”とは、企業におけるリーダーやマネージャーや課長、店長、拠点長といった人たちのことです。
記事では、チームリーダー育成が求められる理由や、研修で養成すべき要素や研修実施の注意点等を解説していきます。
<目次>
チームリーダーの育成が必要な理由
この数年、多くの企業がチームリーダーの育成に力を入れ始めています。その理由は、以下のような重要性がチームリーダーにあるためです。
チームリーダーこそが“経営の実行役”である
企業における経営層は、企業や事業レベルの戦略を考えて、重要な意思決定を担っています。そして、経営層が策定した戦略を実行するうえで重要な役割を担うのがチームリーダーです。
大きな方向性や方針を自部門でどう実行していくのかを計画し、メンバーに徹底してもらうことがチームリーダーの役割です。従って、優秀なチームリーダーがいない場合、社長が決めた指針や施策を「実行する力」が弱くなります。
結果として、決めたはがいいが徹底されずに成果が出なかったり、方針や施策が悪かったのか実行されなかったからうまくいかなかったのか分からなかったりする状況となり、組織運営がうまくいきません。
社員のロールモデルである
チームリーダーは、現場のメンバーにとって最も身近なロールモデルです。課長やマネージャー、店長等のチームリーダーが、組織のミッションやビジョン、バリューをきちんと理解して、それに沿って判断や行動を実行していれば、組織への浸透度や実践度は飛躍的に高まるでしょう。
また、チームリーダーがロールモデルとして「尊敬される人」「数年後になりたいと思うリーダー像」であれば、働くメンバーが将来のキャリア形成を容易にし、組織へのエンゲージメントが高まり、定着率も向上するでしょう。
次のリーダー育成を主導する
チームリーダーは、次世代リーダーに対するOJTを主導する役割も担います。チームリーダーのレベルが低い組織の場合、当然、次世代リーダーのレベルも低くなりますし、成長スピードも遅くなります。
場合によっては、後進を潰してしまったり、優秀な若手の流出という事態を生んでしまったりします。従って、リーダーが育つ好循環を起こすためにも、既存のチームリーダーにきちんと教育を施す必要があります。
ビジネスでの変化はますます早くなり、また産業がサービス化する中で、現場の実行力や自律性が求められるます。その中で、核を担うチームリーダー育成が改めて重要となっているのです。
チームリーダー研修で養成すべき5つの要素
チームリーダーとして活躍させるには、以下の要素を満たすようにバランスよく育成していく必要があります。
セルフリーダーシップ
チームリーダーを育成するうえで最も大切なのは、主体性や責任感を支えるセルフリーダーシップです。セルフリーダーシップを発揮できない人が、メンバーにリーダーシップを発揮させられるはずがありません。
組織を率いて、メンバーを動かして業績をつくり出すチームリーダーは、自らの意思で選択し、自らの人生に責任を持って生きるセルフリーダーシップの能力が求められます。
統率力(リーダーシップ)
統率力は、目標達成に向けて部下をまとめあげ、組織を引っ張るスキルの総称です。高い統率力を発揮するには、迅速な意思決定やチームメンバーとの信頼関係、基盤となる信頼される人間性を持つことが重要となります。
人間性を磨きながら、セルフリーダーシップが充実してくると、自ずと統率力(リーダーシップ)も発揮されてくるでしょう。
ロジカルシンキング
目標達成に向けて計画を立てて実行していくのがチームリーダーの仕事です。その中で、目標達成に向けてプロセスを分解したり、現状を分析したり、メンバーに分かりやすく物事を伝えたりすることに役立つロジカルシンキングの能力が求められます。
ロジカルシンキングの力を磨くことで、計画作成だけでなく、実行の中で生じる問題にも迅速な対応が可能になります。マネジメントの現場は問題発生と解決の連続です。ロジカルシンキングの能力を高めることで、目標達成できる確率が高まるでしょう。
人材育成力
チームリーダーには、受け入れた新人や次期リーダーを育てる人材育成力も求められます。最も基本的な育成は以下のようなティーチングのプロセスになります。
- 全体像やポイントを解説する
- 手本を見せる
- 実際にやらせてみる
- フィードバックする
仕事に対する相手の習熟レベルに合わせてティーチングするだけではなく、コーチング等も使いながら、メンバーを育成していきます。
人材育成には、相手との信頼関係も非常に大切です。人材育成力を高めるには土台として、部下の話に耳を傾ける傾聴力や互いの関係性を良くする心がけ、人間性も必要となります。
初歩的なコンセプチュアルスキル
チームメンバーを束ねて組織を率いるには、抽象的なビジョンや概念を扱うコンセプチュアルスキルも必要です。例えば、チームに向けて施策を実行することで得られる将来像を話したり、メンバーとのキャリア面談でキャリアビジョンを語ったりする力です。
また、徐々に職位が上がっていけば、担当領域の数年後を描いたり、それを語ったりすることも求められるようになります。チームリーダーは、幹部や経営層ほどの大きなスケールや長い時間軸を扱うことは少ないですが、メンバーを鼓舞して動かすうえでコンセプチュアルスキルが求められ始めるポジションです。
チームリーダー研修を実施するうえでの注意点
チームリーダーとして必要になる5つの要素は、最終的には現場での経験を通じて身に付けていくものですが、適切な教育を行なうことで、成長スピードを加速させることができます。チームリーダーの教育、研修を考えるときには、3つのポイントに注意を払いましょう。
「学びと実践」を繰り返せる体制を整える
チームリーダーに求められる5つの要素は、研修で知識や価値観を教えただけで身に付くものではありません。研修の効果を高めるには、座学研修を受けさせて終わりではなく、学んだ知識やスキルを使って実践する場を作ることが非常に重要です。
さらに、実践による成功や失敗を、自分のものとするためには、実践して終わりではなく、“体験を振り返って整理する”プロセスがあると良いでしょう。
チームリーダーの育成は、
- 研修で効率的に体系や知識を学ぶ
- 現場で実践する
- 実践の結果を振り返り、生きたスキルや知恵として身に付ける
というサイクルを回すことが大切です。
人材育成は長いスパンで考える
チームリーダーに必要な要素は、単純な技術や知識ではないからこそ身に付けるには時間がかかります。学びと実践を繰り返す中で、成長には1~3年かかるのが普通です。従って、チームリーダーの育成は場当たり的に実施してもなかなか成果は上がりません。
3年後、5年後の事業や組織図を考え目標とするイメージから逆算して育成に取り組んでいきましょう。
フォロー体制を整える
組織の結果責任を担うチームリーダーは、多忙であることが多いでしょう。目先で起こるトラブルの対応や毎月の成果、メンバーのマネジメントに追われがちとなり、なかなか自己成長を考える余裕がないことも多々あります。
こうした問題を解消するには、組織として上司や人事が、チームリーダーの育成に2つの視点で積極的に関わることが大切です。
1つは、孤独になりがちなチームリーダーの相談相手となり、また、中長期的なキャリアアップ等についても、しっかりと展望を見せることです。
また、もう1つは、研修前後における関わりです。研修前においては、研修に前向きに参加できるように、研修の価値や成長への期待値を伝えること、研修後においては学びを実践するためのフォローを行なうことです。
こうした取り組みを組織として行なえると、チームリーダーのモチベーション維持やストレスの解消、そして、育成効果の向上が期待できます。
チームリーダー研修を選ぶポイント
チームリーダーの育成は、教えるべき内容が多岐にわたります。また、中小企業においては育成対象となるリーダー数が少ないこともあり、外部研修を利用することが一般的です。
外部のチームリーダー研修を選ぶときには、以下のポイントを重視することがおすすめです。
講師の実績や研修ポイントはどうなっているか?
チームリーダー研修、とくに新任リーダー研修における大事な目的は「プレイヤーからリーダーへの変化」を実現することです。また、中堅リーダーの場合には、“マンネリ感の打破”等、より難易度の高いテーマになることも多くなります。
研修内容に加えて、受講者もプレイヤーとして経験を積んできた30代、40代が多くなります。彼らの経験を尊重しつつ、しっかりと刺激を与えられる講師である必要があります。従って、研修講師や研修会社の実績はしっかりと確認する必要があるでしょう。
職場での実践・経験が組み込まれているか?
繰り返しになりますが、チームリーダーとしての素養は座学で知識を吸収すれば高まるものではありません。現場での実践や経験を経て身に付けていくものです。従って、本当にチームリーダーを育成したいのであれば、実践と経験学習サイクルが組み込まれた研修であるかをチェックしましょう。
「4:2:4の法則」に則った内容か?
「4:2:4の法則」は、“ブリンカーホフの法則”とも呼ばれ、研修効果に影響を与える要素と割合を示したものです。
4:2:4の法則によれば、研修成果の影響を及ぼす割合は、
- 研修前の意識付 4割
- 研修プログラムの質 2割
- 研修後の実践・フォロー 4割
となっています。
この法則から見ても分かるように、実践から学ぶことの多いチームリーダーの場合、研修の前後に何をするかというのが非常に重要となります。従って、チームリーダー研修を選ぶときにも、上記を念頭に置いて、“研修プログラムの質がいい”という話だけではなく、以下の要素が組み込まれているかを確認しましょう。
- 参加の参加姿勢を作るための仕掛け
- 職場に戻って実践を促す仕組み
- 派遣者を巻き込んで“前後”の質を高めるプロセス
特徴的なチームリーダー研修5選
最後に、特徴的かつおすすめのチームリーダー研修を5つご紹介していきましょう。
日経ビジネススクール
日経ビジネススクールでは、チームリーダー向けに「実践リーダーシップ入門」という研修を開設しています。研修では、最初に代表的なリーダーシップ論を紹介したうえで、実践で使える変革型リーダーシップを発揮する方法や、チームビジョンの伝達、権限委譲といった幅広いテクニックを具体的に示す内容となっています。
eラーニングであるため、地方都市等からの利用も可能です。リーダーシップに関する基本的な知識を身に付けるうえではおすすめです。
アチーヴメント株式会社
アチーヴメントでは、目標達成の技術体得を目的とした「アチーヴメントテクノロジーコース」というリーダーシップ研修を開講しています。30年以上におよぶ人材能力開発のエッセンスが詰まっており、心理学やタイムマネジメント理論も加味した研修内容となっています。
3日間のプログラム内では、リーダーシップ研修の効果を出すうえで欠かせない気付きの誘発や情報・状況の整理等も学習可能です。
https://achievement.co.jp/atc_re/
リクルートマネジメントスクール
リクルートマネジメントスクールで開催しているのは、「コーチング〜実践!管理職・リーダーのためのコーチング・コミュニケーション〜」研修です。リアル会場での対面型研修となっており、演習やディスカッションを通して日常のコミュニケーションの質を高めるポイントを学習していきます。
ケーススタディーを基にロールプレイング等も行なっていく内容であり、マネジメント経験を積んだチームリーダーのコミュニケーション力、部下育成力を高めるうえでおすすめです。
https://www.recruit-ms.co.jp/open-course/dtl/K1152/
三菱 UFJリサーチ&コンサルティング
三菱 UFJリサーチ&コンサルティングのリーダー研修は、「課長【意識・行動変革】セミナー」というものです。使命感を持って組織の目標達成をし続ける管理職を「プロ人財」と位置づけ、プロ人財として高い効果を上げる手法や考え方を学んでいきます。
実践実習の後半では、学びと気付きを深める内容となっています。また、変革に繋がる明日からの活動指針も作成するため、研修後に繋がるプログラムを求める企業にもおすすめです。
JAICリーダーカレッジ
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、中堅中小企業のチームリーダーを対象に、累計2,700名以上が受講する「JAICリーダーカレッジ」というリーダー研修を提供しています。
プログラムでは、
- リーダーとしてのあり方を学ぶ「7つの習慣®」
- 目標達成の技術を学ぶ「原田メソッド」
- メンバーを動かすコミュニケーションを学ぶ「リーダーコミュニケーション」
という3つのコンテンツからなります。毎月1回、1年間にわたって学びと実践を繰り返すことで、実際に“結果を出す”リーダー育成に高い効果性を持つ継続教育プログラムです。対面型でも、オンラインでも受講することができ、自社のニーズにあったコースを選ぶことができます。
https://www.jaic-college.jp/lp/lc/
まとめ
チームリーダーは組織の戦略や施策と現場を繋ぎ、現場メンバーを動かして業績をつくり出す組織の要となるポジションです。従って、強いチームリーダーを育てることは、組織の成長にとって不可欠です。
チームリーダーに求められるセルフリーダーシップや統率力、ロジカルシンキング、人材育成力、コンセプチュアルスキルは知識だけで身に付くものではなく、座学と現場での実践を組み合わせて学んでいくものです。
チームリーダーの育成は難易度も高く、外部研修を利用することもおすすめです。その際にも、知識やスキルを教えるだけでなく、現場での実践を促すものを選ぶことがポイントです。リーダー研修の比較検討に悩んだ際には、ぜひ当ページの情報も参考にしてみてください。