不沈艦タイタニックの幻想【人を残すvol.157】

経営者向けメールマガジン「人を残す」fromJAIC

いつも大変お世話になっております。
株式会社ジェイックの梶田です。

 

映画「タイタニック」が日本で公開されたのは1997年12月でした。
(配給:20世紀フォックス/監督:ジェームズ・キャメロン)

 

当時、私は、愛知県名古屋市内の映画館に勤めていました。
25歳でした。

 

この1997年、夏休みは、宮崎駿監督の「もののけ姫」や
「ロスト・ワールド(ジュラシック・パーク)」で連日満席、
他にも魅力的な映画が次々と公開されていて、
映画の当たり年だったように記憶しています。

 

渥美清さんの遺作となった「男はついらよ 寅次郎紅の花」も
この年が封切りでした。

 

そして、年末の「タイタニック」公開。
189分という長尺の映画にもかかわらず立ち見が出るほどでした。
 
――――――

海に眠るそのタイタニック号を探索する為に海中に向かった
潜水艇が悲劇に見舞われました。

 
連日報じられていますが、そもそも船体の回収が困難であり、
原因究明には多くの時間を要するそうです。
 

不沈艦と言われたタイタニック号が沈没してしまったのは、
航行中に氷山に衝突したことが原因だそうです。
 

しかも、その氷山の存在が2度に渡って警告されていたのに、
速度や進路を変えることなく航行を続けていました。
 

タイタニック号は、その存在が世界中から注目されていましたが、
処女航海が1カ月遅れ、出航時刻も遅れての出発だったそうです。
 

大西洋横断の最短記録を目指していたこともあって、
警告を受けても進路や速度を変更できない空気のようなものが
あったのではないかと言われています。
 

今回の潜水艇タイタンの場合でも、様々な要因から、
天災というよりも人災ではないかという報道が目立ちます。
 

本当のところはわかりませんが、
このツアーを主催する会社の幹部が、随分前に、船体の問題点を指摘したが、
解雇されてしまっていたという記事もあります。
 

『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』という本をご存知ですか?
(戸部良一ほか著. 初版 1984.5, ダイヤモンド社.)
 

タイトルの通り大東亜戦争時の日本の軍部、その組織研究が記されています。
 

この本を読むと、特に、
 
・組織の戦略について
・リーダーシップのあり方について
・組織文化について
 
と、企業経営やその管理に関して本質的なことを確認させられます。
 
私は特に、組織の中にある“空気”について考えさせられました。
 
人間は、目に見えない“空気”を読む動物です。
 
前述した、タイタニック号の事故や今回の潜水艇の顛末についても
 
「世界で注目されているから必ず実行しないといけない。
多少のリスクがあっても今さら後にはひけない」
 
「リーダーには、逆らえないから仕方がない。
自分たちは指示に従えばいい、責任はリーダーにある」
 
というような空気が働いたのではないか、とも思います。
 
このような重大事故に関わらず、企業の不祥事なども、
結局のところ、そのような現場に漂う“空気”によって、
誤った判断が行われた結果とも取れるようなこともあります。
 
その昔、英仏が共同開発した超音速旅客機がありました。
鳥のくちばしのような先端が特徴的な「コンコルド」です。
 
ニューヨーク~パリ間をわずか4時間弱で飛行する夢の航空機でしたが、
開発実施後に、様々な問題が浮上します。
 
主には、採算がとれないというものでした。
今、中止すれば、将来の負債額よりもかけた費用の方が軽微となる
という試算結果も出ていましたが、続行されました。
 
結果として、就航したものの、やはり採算が取れず、
損失が膨らみ続け、製造中止となりました。
 
このような現象を「サンク・コスト(埋没費用)」と言います。
 
進捗の過程で多くの費用や犠牲を払ってしまったものを惜しんで
中止することが憚られる現象であり、これも“空気”です。
 
また、太平洋戦争期には、
 
ビルマ(現ミャンマー)の防衛線からインドの独立を支援して英軍の勢力を削ごうとした
「インパール作戦」が展開されました。
 
ビルマからインドまでの行程は当時は悪路で、
最大の問題は兵站(食料や物資の補給線)が伸びてしまうことにありました。
 
その懸念は当然ありながら、大本営の決定に多くの将校が従い、
結果として10万の兵士のうち3万が戦死、5万人が戦傷や感染症を負うことになり
“史上最悪の作戦”と言われています。
(戦死者の多くが餓死であったということも…)。
 
このように、方法やリスクについての検討が十分に行われず、
権力が集中する機関や大勢に従い、意思決定が行われることを、
 
アメリカの社会心理学者アーヴィング・ジャニスは、
「グループ・シンク(集団浅慮)」として提唱しました。
 
これも組織に漂う“空気”と言えないでしょうか。
 
我々は“空気”を読む動物です。
相手を尊重し、無用な争いを避け、和を貴ぶがゆえに。
 
特に日本人にはその気質が備わっているのではないでしょうか。
 
しかし、時として、その“空気”は“幻想”となります。
時代は巡り、環境は常に変化し、現場はすでに多くの機会と
リスクを察知しているかも知れません。
 
耳に痛い言葉を避け、集団や先例ばかりを尊重し、
みずからの想像力を失ってはならない。
 
今回の事故で、そのようなことを考えさせられました。
 
皆様の組織ではいかがですか。

 
 

今回の執筆者:「梶田貴俊」
(株式会社ジェイック 西日本代表講師)

不沈艦タイタニックの幻想

著者情報

梶田 貴俊

元株式会社ジェイック シニアマネージャー(現ジェイック契約パートナー)

梶田 貴俊

前職、通信機器ベンチャー商社勤務時代にリーマンショックを経験。代表取締役として、事業再生計画を推進し同社のV字回復を実現した。現在はジェイックの講師として研修事業を牽引している。

著書、登壇セミナー

『会社を潰さないためのSunday Management List ―中小企業のリーダーがやるべき日曜日のマネジメントリスト』

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