トラック野郎の矜持
いつも大変お世話になっております。
株式会社ジェイックの梶田です。
2020年本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今回は、少しイイ話も「追伸」で紹介します。
昨年末に、とある運送会社の社長様からお聞きしたお話を
ご紹介させていただきます。
ネットショッピングの隆盛による「小口配送増加」…
人口減少、少子高齢化による「ドライバーの高齢化と人手不足」…
物流は相変わらず経済活動における大きな課題です。
ニーズに対応できずに仕事を断らざるを得ないことも
多くなっているようです。
特に大きな問題はドライバー不足。
ドライバー高齢化に伴い事業を畳む会社さんも増えていて、
顧客、残った社員、トラックを別の運送会社さんに売却する、
つまり、吸収合併による統合というケースが増えているそうです。
今回お話をお伺いした運送会社さんも
事業承継の見込みのない会社をグループ傘下に収めています。
しかし…、
同じ物流業界でも企業文化の異なる会社を統合するのは、
そんなに容易なことではないそうです。
特に問題になるのは、トラック運転手たちのマネジメント。
古くからトラックを根城に腕一本で稼いでいる
”トラック野郎”たちは、親方が代わるのを良しとしません。
元々、親方もタタキ上げのトラック野郎。
社長と社員というよりも、親分と子分という間柄に近いかも。
給料以外にお金を貸し付けたりするそうです。
大半をトラックで過ごす彼らが、借りたお金を何に使うか?
…
多くが自分の運転するトラックの”装飾”だそうです。
ギンギラに輝く装飾の大型トラックをよく見かけませんか?
父がよく菅原文太さん主演の「トラック野郎」という映画を
見ていたのを思い出します。
借金をたくさん抱えている運転手も多く、彼らはこっそり、
会社のトラックに外装品を増やしていくそうです(笑
…実に様々な価値観がありますね。
社長は、そういう人たちを束ねていく苦労を、笑いながら
こう表現していました。
”会社じゃなくて動物園だと思えば面白い、
伸び伸びと仕事してもらうことが一番大事”
もちろん、実際には様々な苦労があると思います。
それでも、しかし、彼らの経験と技術、責任感を信じる、
多様な価値観を受け入れ、ゆるやかに組織に結びつけていく
ここに、マネジメントのひとつの真髄を見た気がします。
「マネジメントとは融和である」
多様化する価値観、働き手の不足という現代においては、
統制よりも融和、それが合っているのかもしれません。
社長は、こうも仰っていました。
”経営は目的ではない、みんなが幸せになることが目的”
皆様は、いかが思われますか?
私共ジェイックは、
本年も多くの企業様のお声に耳を傾けて参りたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
株式会社ジェイック
教育事業部ゼネラルマネージャー
梶田 貴俊
追伸
私の友人のケアマネージャー(介護支援専門員)から
聞いた話です。
彼女が、介護支援を担当した元トラック運転手の老人。
70歳の時、脳梗塞に倒れ生還ししたものの手足にマヒが残り、
運転手を引退したそうです。
大事にしてきた自分のトラックを手放すことができずに、
勤めていた会社の車庫に保管してもらっていたそうです。
その後、奥様が認知症にかかり、自分の介護費用に加えて、
奥様の介護も必要となって、その資金を工面するために、
そのトラックを手放すことになったそうです。
売り手が見つかり、引き渡しの前日、
その老人は友人のケアマネージャーを車庫に案内したそうです。
「俺のトラックに乗ってみるかい?」
銀色に輝くピカピカの外装品を目にしながら、
友人は、ふかふかの絨毯と眩い計器類の助手席に乗り込みます。
「こいつのエンジン聞かせてやるよ」
マヒの残る身体で、なんとか運転席に座り込んだ老人は、
キーを刺しクラッチを踏んでエンジンをかけます。
大きな車体がブルんと震えてトラックに火が入ります。
けたたましく鳴り響くエンジン音を聞きながら、
友人が横目で老人を見ると、
彼の目からは大粒の涙がポトリポトリとこぼれたそうです…
…
そのトラックはなんと1千万円で買い手がついたそうですよ。
その老人のプライド(矜持)が詰まったものですから。