ラポールとは?ビジネスに役立つ!一瞬で信頼関係を築く実践ノウハウを解説!

更新:2021/09/22

作成:2021/03/01

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

握手するビジネスマン

ビジネスシーンにおいて、上司と部下、お客様との円滑なコミュニケーションを図るうえで、心理学の「ラポール」という考え方が参考になります。本記事では、ラポールという考え方の基本とラポール形成に欠かせない3原則、実践テクニックを詳しく解説します。

<目次>

ラポールとは?

ラポールはもともとフランス語であり、「信頼関係」や「心が通い合う関係」を意味する心理学用語です。

 

カウンセリングの世界においては、安心して相談をするうえで、カウンセラーとクライアントにおける信頼関係、すなわちラポールが欠かせません。そのなかで、ラポール形成に関する研究やラポール形成の手法が磨かれてきました。

 

相手が心を開いて、本音を教えてくれるラポール形成の手法は、カウンセリングだけでなく、コーチングや1on1、商談などにおいても活かせるものです。そのため、近年ラポールやラポール形成の手法が、心理学の世界からビジネスの世界へ導入されて活用されています。

 

相手とのラポール形成をうまく行なえるようになると、以下のような効果が出てきます。

 

 

  • お客様が本音で課題やニーズを話してくれる
  • お客様が自分の提案や説明を信頼して聞いてくれる
  • メンバーが本音で悩みや相談をしてくれる
  • メンバーへのアドバイスを真剣に受け止めてくれる

 

特に営業活動では、お客様から本音の課題やニーズを打ち明けてもらえないと、良い提案をすることは困難です。しかし、新規商談では顧客は「不信感」が抱いている(信頼していない)ところから始まることも多いものです。商談の冒頭で相手の不信感を取り除き、心を開いてもらうためにラポールの考え方やラポール形成の手法を身に付けることが非常に有効です。

ラポール形成の3原則と実践テクニック

商談するビジネスマン

ラポール形成のテクニックを効果的に使うためには、守るべき原則があります。2つの原則と、原則を踏まえた実践的なテクニックを紹介します。

 

 

相手への誠実な関心

ラポール形成で大前提となることは、相手に対して誠実な興味や関心を持つことです。テクニックは、ラポール形成を加速させるために非常に役立ちます。ですが、テクニックだけでラポールを形成することは困難です。まずは目の前の相手に集中して、「相手を理解したい」「相手に貢献しよう」という姿勢を持つことがなにより大切です。

 

例えば、あなたがマーケティングツールの営業で、中小企業の経営者と商談するとします。商談しながら「どうやってこの社長にサービスを提案しよう?サービス提案の切り口になる課題はないか?サービス提案の切り口になる課題を話してくれ!」と考えながら話を聞いていたら、ラポールの形成はできないでしょう。

 

ラポールを形成するためには、「社長は何を実現したいのだろう?いま何がうまくいっているのだろう?何に困っているのだろう?」と目の前の相手に集中して、真摯に関心を寄せることが大切です。

 

 

相手への肯定と尊重

相手への誠実な関心を伝えるには、相手の意見や世界観を尊重することが大切です。相手が「自分は肯定されている」「尊重されている」といった実感を持てないと、本音で悩みや困りごとの相談をできる信頼関係には至りません。

 

相手への肯定や尊重を示すうえで、最も重要なのは「聴き方」です。相手の話を聴く姿勢には、以下5つのレベルがあるとされています。

 

レベル1. 無視をする(話を聞いていない)

レベル2. 話を聴いているフリをする

レベル3. 自分が興味あることだけを選択的に聴く

レベル4. 相手の話を注意して聴く

レベル5. 感情移入の傾聴を行なう

 

レベル3までは、自分の立場で話を聞いているため、相手からすると肯定・尊重されていると感じることはありません。先ほど紹介した「どうやってこの社長にサービスを提案しようか?サービス提案の切り口になる課題はないか?」と考えながら話を聞く、といったものがレベル2や3のイメージです。

 

レベル4はレベル3よりも良い聴き方です。自分の都合から離れて、相手が話していることをしっかりと注意深く聴きます。これだけでも相手には「真剣に聴いてくれている」という印象は与えられますが、ラポールを短時間で形成するには至りません。レベル4はあくまでも「情報のやり取り」に留まります。

 

ラポール形成をするうえでおすすめしたいのは、レベル5の「感情移入の傾聴」です。感情移入の傾聴とは、相手が「どんな風に感じているか?」を聴き、相手の感情に共感することです。相手の言葉に対して、「そのとき、どんな風に感じたのですか?」「それは悔しいですよね…」と相手の感情に寄り添います。

 

感情移入の傾聴で、相手の意見に同調・同感する必要はありません。「相手が感じたこと」を肯定・尊重することが大切です。

 

 

共通点の積み重ね

2つの原則を紹介したうえで、「テクニック」に近い内容を紹介します。ラポール形成に関するテクニックにおいて、原則となるのは「相手との間に共通点を積み重ねていく」ことです。

 

人間が生物として持つ本能

 

ラポール形成に役立つ相手との共通点は、以下のようなものです。

 

  • 姿勢
  • 身振り手振り
  • 話すペースや声の大きさ
  • 立場
  • 出身地
  • 年齢
  • 特技
  • 興味
  • 経験

など

 

紹介した項目の前半3つ、姿勢・身振り手振り・話すペースや声の大きさで共通点を作るのは、ペーシングやミラーリングと呼ばれる手法です。のちほど紹介します。

 

反対に後半の6つ、立場・出身地・年齢・特技・興味・経験等は、話題にすることで共通点を見つけることができます。事前の情報収集や沿革や経歴、商談場所にあるものなどから話を引き出すテクニックです。

例えば、顧客の社長と新規商談するのであれば、企業サイトやSNSなどで社長の情報を集めたり、会社の創業経緯や沿革などを調べたりすることが大切です。共通点は、必ずしも自分と「直接的に同じ」である必要はありません。以下のように、間接的なものでも効果があります。

 

  • (社長の趣味が登山)会社の同僚で山好きがいて……登山に誘われているんです。
  • (社長の出身地が富山)先日、富山に旅行に行ったのですが……すごく良いところでした

 

プロフィールなどから、相手と自分の共通点を積み重ねる作業は、比較的簡単です。ただし、共通点を探すことだけに集中してしまうと、ぶつ切りの不自然な質問や会話となり、逆効果になってしまうこともあります。

 

「相手のことを知りたい」という誠実な関心を持ちましょう。そうすれば、たとえ共通点の積み重ねにならないとしても「相手への肯定と尊重」となり、ラポール形成に近づきます。

 

 

ラポール形成全般で使える実践テクニック「ペーシング」

相手との共通点という意味では、「自分自身に近い」という感覚をコミュニケーション内に物理的に作っていく、ペーシングという手法がラポール形成に役立ちます。

 

ペーシングは、話し方や呼吸、視線、仕草などを相手に合わせることで、共通点を作ったり、相手との一体感を生み出したりするテクニックです。ペーシングの実践では、以下に紹介する3つの技法が一般的です。

 

【ミラーリング】

ミラーリングとは、以下のような視覚や身体情報を“ミラー”、つまり鏡のように相手と合わせることです。

 

  • 表情
  • 呼吸
  • ボディランゲージ
  • 姿勢

など

 

ミラーリングの実践は、少し間が空いても構いません。相手に気付かれた場合は逆効果になりますので、さり気なく行なうことが重要です。

 

【マッチング】

マッチングとは、以下のような音声情報を相手に合わせる手法です。

 

  • テンポ(早口、ゆっくりなど)
  • 声の大きさ、高さ
  • 使う単語

など

 

最も簡単なものは、話す早さを合わせるテンポのマッチングです。早口の人には早口で、ゆっくりと喋る人にはゆっくりのペースで会話すると、ラポール形成をしやすくなります。

 

なお、上級のテクニックですが、マッチングなどはこちらのペースを意図的にコントロールすることで、「場のペース」「相手のペース」を動かすことにも使えます。例えば、クレーム対応の現場では、早口で怒るお客様に対して、あえてオペレーターがゆっくり話すことで場のペースを落とし、相手の感情を鎮めるといったテクニックが使われます。

 

【バックトラッキング】

バックトラッキングは、相手の言葉をペーシングする手法で、いわゆる「オウム返し」です。

 

例えば、お客様が「事務所で新しいパソコンを3台買ったんだよ!」という話をしたとき、「良いですね!」とだけ返すよりも、バックトラッキングを使って「3台も買ったんですね!」と返したほうがラポール形成に近づきます。バックトラッキングすることで、相手が「自分の言葉をしっかりと聞いて受け止めてくれた」と感じるからです。

 

バックトラッキングの内容は、次の3種類があります。

 

  • 相手が話した事実
  • 相手の気持ちや感情
  • 相手が話した内容の要約

 

相手が使った単語や言い回し、感情表現に気を付けながらバックトラッキングすると、ラポール形成に効果的です。

相手の優位な感覚に応じたラポール形成のポイント

部下に指示を出す上司

質の高いラポール形成をするためには、相手のタイプを見極めてアプローチをすることも有効です。相手のタイプを見極めるうえで、分類の方法はいくつもありますが、ラポール形成では、NLPの考え方が有効です。

 

NLPは、「Neuro Linguistic Programing(神経言語プログラミング)」と呼ばれる、人の思考や感情パターン分析をもとにした心理学の技法です。

 

NLPでは、人によって情報処理で使われる五感(聴覚・視覚・嗅覚・味覚・触覚)のなかで、何が優位(影響が大きい)かは異なるとされます。優位になる感覚を

 

各タイプの見分け方とラポール形成のポイントを紹介していきます。なお、日本人の分布割合は、聴覚が最も多く、次に視覚、最後に身体感覚という順番だとされています。

 

 

聴覚系の特徴とラポール形成の方法

聴覚優位系とは、耳から得た音声情報を使って物事を考えたりすることが得意なタイプです。聴覚が優位な人は、インプットとアウトプットに以下のような特徴があります。

 

【インプットの特徴】

  • 会話や音楽が好きだが、雑音は好まない
  • 人の声の変化に気付きやすい
  • 話に耳を傾け、言葉や音で物事を理解する

 

【アウトプットの特徴】

  • 視線が左右に動きやすい
  • 論理的な説明が得意
  • 音を使った表現が多い(聞こえる、うるさい、騒がしい……)

 

したがって、聴覚優位タイプには音声情報、つまり話すペースや声の大きさなどを使ったペーシングやマッチングで、ラポール形成することがおすすめです。

 

 

視覚系の特徴とラポール形成の方法

視覚優位系とは、目から取り込んだ情報の処理が得意な人です。インプットとアウトプットの特徴は、以下のとおりです。

 

【インプットの特徴】

  • (見える、イメージが付く、ぼやけている……)

 

視覚優位タイプとのラポール形成では、視覚情報に訴えかけるミラーリングが有効です。具体的には、座り方などの姿勢や身体の動きを真似たり、商品や共通点の話では実物を見せて視覚に訴えたりするのがおすすめです。

 

また、コミュニケーションを取るうえでは、リアルタイムで議事録を共有したり、図で整理したり、ビジョンを描くようなことが有効です。

 

 

身体感覚系の特徴とラポール形成の方法

身体感覚系とは、触覚をはじめとする身体感覚が優位なタイプで、触ったり、食べたり、嗅いだりといった身体を使った感覚が強いタイプです。聴覚や視覚と比べて見分けづらいですが、インプットとアウトプットに以下のような特徴があります。

 

【身体感覚系におけるインプットの特徴】

  • (感じる、いけそうな香りがする、具合が悪い……)

 

身体感覚が優位な人とのラポール形成は、身体感覚に訴えかけるような表現を使うことが効果的です。また、相手に合わせて順を追って丁寧に説明したり、使っている自分をイメージできるようにデモなどを行なったりすることも有効です。

まとめ

ラポールとは、「相手との信頼関係」を意味する言葉です。もともとは心理学の用語であり、セラピーやカウンセリング、コーチングなどで使われていましたが、ラポール形成の技術は商談やメンバーとの面談など、信頼関係が大切になるビジネス場面でも非常に効果的です。

 

ラポール形成のスキルを身に付けることで、新規商談で相手の警戒心を解いてヒアリングを効果的にしたり、メンバーとの面談で本音を引き出したりすることが可能になります。

 

ラポールのスキルを身に付けるうえでは、テクニックの前提となる2つの原則があります。1つは「相手に対する誠実な関心」、もう1つは「相手の肯定と尊重」です。

 

2つの原則を踏まえたうえで、相手との共通点を積み重ねたり、ミラーリング・マッチング・バックトラッキングといった相手との同期をとるペーシングの技術を使ったりすると、非常に効果的です。

 

さらに、NLPの考え方に基づき、相手の優位な五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)に合わせたペーシングの技術を使うと、さらにラポール形成をスムーズに行なうことが出来るでしょう。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

1974年生まれ 鹿児島県種子島出身。1997年筑波大学第一学群社会学類を卒業。新卒でハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。専門分野は新人と若手育成、モチベーション・エンゲージメント改善、女性活躍等

【著書、登壇セミナー】
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