次に、個別化の資質が、弱みとなってしまうパターンを見ていきましょう。どの素質も強みとして発揮できる使い方と、弱みになってしまうパターンがあります。自分の資質を把握したうえで、弱みになってしまわないように意識が必要です。
目標達成力に課題が生じやすい
個別化の資質は、メンバーの一人ひとりを大事にできる一方で、集団を引っ張っていく力が弱くなってしまいがちです。
個別化の資質を持つ人が陥ってしまいやすい状況と対策について、参考になるのがPM理論と呼ばれるリーダーシップ論です。
PM理論とは、リーダーシップを目標達成行動(P:Performance function)と集団維持行動(M:Maintenance function)の2つの軸から分類したもので、社会心理学者の三隅二不二教授によって提唱されました。
集団の統率力があり成果を上げられるようにするためには、このPとMのバランスが取れているという状態が理想です。
目標達成行動を発揮できている状態をP、できていない状態をpとし、同様に、集団維持行動を発揮できている状態をM、できていない状態をmとすると、理想的なリーダーシップの状態はPM型となります。
目標達成行動が発揮できていて、集団維持行動が発揮できていないPm型は、「黙って俺についてこい」という昭和の熱血上司のような状態です。力強く目標達成を実現していける一方で、部下の中には仕事の進め方に反発する人や、ついてこられずに脱落してしまう人も出てきます。
一方、個別化の資質を持った人は、目標達成行動が発揮できておらず、集団維持行動が発揮できているpM型になりやすくなります。
チーム内が友達の集まりのような和気あいあいとした雰囲気になり、一人ひとりの満足度は高く脱落者も出にくくなります。一方で、チーム内の緊張感は緩みがちになり、力強く目標を達成していくというのが難しくなります。
強みを生かしてチーム内の信頼関係や強み発揮をうまくパフォーマンスにつなげる、自分の意識ではなく仕組み等で目標達成を意識できるようにする、チームのNo.2やメンバーと役割分担をするといった工夫を通じて、PM型を目指すことがポイントになるでしょう。
一部のメンバーを贔屓していると思われやすい
一人ひとりをよく観察して個別に対応することは、1対1の関係では相手にあったフォローができる一方で、問題点も出てきます。
どのような組織やチームにおいても、一人ひとりが持つ能力や置かれている状況は差異があります。ほとんどフォローしなくても大丈夫な人もいれば、入念なフォローが必要な人も出てききます。
個別化の資質は、こうした状況を踏まえて、適切なフォローをすることが可能です。一方で、一部の人にリーダーのサポートが集中してくると、他の人たちは不公平を感じる、不満を抱えてしまうリスクもあります。
特定の人ばかりを贔屓しているのではないかと受け止められてしまうと、リーダーとしての信頼にも関わってきます。メンバー全員に納得してもらえるように、フォローが少なくなるメンバーに配慮することが重要になります。
優柔不断で自信が無いように見えてしまう
個別化の資質を持つ人には、一般化や類型化によって人や状況を判断しないという特徴があります。これは強みにつながる一方で、最終的な判断を下すまでに時間がかかってしまい、周囲から優柔不断である印象を持たれてしまうことがあります。
また、個別化という資質により、偏見にとらわれてしまう心配がない一方で、断定的な表現をするということがありません。個別化の資質を持った上司から「人(状況)による」という曖昧な言葉を聞かされた部下は、「自分の判断に自信が無いんだろうか?」と感じてしまうケースもあるでしょう。
強力なリーダーシップを発揮していくためには、判断への自信を示すことも大切です。個別化の資質を持っていると、素早い判断をしたり、断言したりということのハードルが上がりがちです。
しかし、リーダーの仕事は不十分な情報のなかで意思決定することである、という側面もあります。自分なりの意思決定やリーダーシップのスタイルを構築することも大切になるでしょう。