自律型人材とは?定義や特徴、組織における育成方法を解説

更新:2023/07/28

作成:2022/09/02

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

自律型人材とは?定義や特徴、組織における育成方法を解説

自律型人材は、企業が先行き不透明なVUCA時代を乗り切るうえで、必要不可欠な存在です。近年では、コロナ禍によるリモートワークの普及も、あらためて自律型人材への注目を高める背景となっています。

 

自律型人材とは、具体的にどのような人材を指すのでしょうか?自律型と自立型は異なるのでしょうか?また、自社のメンバーを自律型人材へと育てることは可能なのでしょうか?

 

記事では、自律型人材の概要と特徴、育てるメリット、育成方法、自律型人材を採用時に見極めるポイントなどを紹介します。

<目次>

自律型人材とは?

ステップアップのイメージ

 

自律型人材とは、「上司からの指示待ちではなく、組織の規範や価値観も踏まえたうえで、自分で判断して能動的に業務遂行できる人材」を指します。

 

自律と自立の違い

「じりつ」は、自立と書かれることもあります。では、自律と自立では、いったい何が違うのでしょうか?

 

まず、自立(independence)は、言葉のとおり「自(自分)」の足で「立」てること、独立に近いニュアンスです。

 

たとえば、成人して社会人になった子どもが親元から離れ、お金の面でも自分の収入で生計を立てる状態を、経済的自立と呼びます。また、ビジネスにおける「自立」は、まず、精神的な自立、また、思考や判断の自立、すなわち、上司や先輩のサポートなどを受けずに自分で思考・適切に判断して行動していける人材を指します。

 

一方で、自律(autonomy)は、自己を律することです。自分の意志を持ち、自分をコントロールしながら、目標・目的に合った行動ができる状態を指します。

 

言葉の意味を厳密に考えると、「自立」のなかに「自律」が含まれる部分と考えられます。ただ、ビジネスの現場では、さほど区別せずに同じようにニュアンスで使われることも多いでしょう。本記事内でも、近い類似の意味合いとして「自律」で統一して表記します。

 

自律型人材の特徴

自律型人材は、以下3つの特徴を兼ね備えています。自律型人材の育成や採用でも、以下のスキルや特徴を重視することが大切でしょう。

  • 主体性がある
  • セルフマネジメントできる
  • 適切な判断基準や価値観を持っている

 

自律型人材=すべてを一人でこなす人材ではない

「自分の意志」や「自分をコントロール」などといった特徴を解説すると、目標に向かって一人で黙々と仕事をこなすイメージが生まれるかもしれません。

 

しかし、実際の自律型人材は、企業や組織のビジョンやミッション、目標などを共有して、目標達成に向けて自分をコントロールしながら、自分の意志で仕事を進めていくものです。

 

「協力を仰ぐ」や「相談する」といった行為を選択することも自律の一部です。そのため、自分一人で対処できない壁や課題に直面すれば、主体的に上司やメンバーに相談や協力を仰いでいきます。

 

そうすることで、主体的に目標達成や課題解決を目指していける人材が、自律型人材といえます。

自律型人材が求められる背景

近年では、以下のような背景によって、企業における自律型人材のニーズは高まっています。

 

産業のサービス化

近年、産業のサービス化によって、「モノ」よりも「サービス(コト)」を提供する企業が増えています。

 

「モノ」を作って売るという時代には、「決められた手順にしたがってきちんとモノを作る、オペレーションを動かす」ことが大切でした。一方で、産業のサービス化が進むと、「顧客と接する現場のメンバー一人ひとりによって、現場でサービスが生み出される」ことが多くなります。

 

こうした産業のサービス化が進むと、組織として提供できる限界や標準形はあったうえで、目の前の顧客に合わせて現場で判断して調整していく自律型人材の必要性が増すことになります。

 

変化が激しく予測が難しいVUCA時代の到来

VUCA時代では、顧客ニーズや市場環境の変化、また、計画時点では予期しなかった課題が次々と発生しがちです。

 

こうした時代に企業が壁を乗り越え、成果を出し、成長を続けるには、一部のボードメンバーだけが思考して意思決定していくやり方では通用しません。各現場が組織のミッションやビジョン、バリュー、経営方針などを理解したうえで、柔軟に意思決定、チャレンジ、変化対応することが大切になります。

 

したがって、VUCA時代には、組織のメンバー全員、特にチームリーダー層などが自律型人材であることが求められます。

 

テレワークによるマネジメント難易度の上昇

コロナ禍で一気に普及したテレワークには、自宅などで仕事をする各メンバーに上司の目が届かない問題があります。

 

テレワークで従来のオフィス勤務と同様の成果を出すには、上司が見ていない自宅などでも、各人材がセルフマネジメント・セルフコントロールできる状態が必要です。

 

コミュニケーションに関しても、従来よりもメンバーの主体性が発揮されないと、意思疎通や状況把握が滞ってしまいがちです。

自律型人材を育てるメリット

自律型人材を育てると、企業に以下の効果やメリットが生まれます。

 

生産性の向上

自律型人材が増えた状態は、各自が組織のミッションやビジョン、目標を理解し、それらの達成に向けて自分をコントロールしながら仕事に取り組んでいく状態を意味します。

 

指示待ちしているような受け身の人間が減れば、社員の“稼働率”も高まります。また、各自のセルフマネジメントによって、生産性の低下につながるミスや失敗も少なくなるでしょう。

 

チームワークや組織内連携の強化

先述のとおり、自律型人材は、組織のなかで自分が何をすべきかを理解し、セルフコントロールできない、一人で解決できない課題に直面したときには、主体的に上司やメンバーに相談や協力を仰ぐ人材です。

 

主体性を発揮して周囲と連携していく姿勢は、助け合いや連携ができるチームワークを生み出します。

 

変化対応力やイノベーションの創出

自律型人材は、自分の役割や目標を成し遂げるために、何をすれば良いかを考えます。たとえば、いまの製品ややり方では目標達成が難しいとなれば、現状に固執せず、新しい手法などを考えようとするでしょう。こうした自律型人材の姿勢は、新たなイノベーションを創出します。

自律型人材の育成方法

研修の様子

 

既存のメンバーを自律型人材に育てていくには、以下のポイントを大切にする必要があります。

 

価値観や考え方の教育が重要

自律型人材の育成では、主体性、自責思考、パーパスの明確化など、テクニックではなく価値観・考え方の教育が重要になります。加えて、セルフマネジメントの基礎となる時間管理、自分と異なる価値観の受容、傾聴の技術などの基本的な習慣・スキルの教育も必要でしょう。

 

なお、自律型人材が活躍できるようにするには、組織のミッション・ビジョン・バリューの浸透も非常に重要です。ミッション・ビジョン・バリューといった組織の方向性や判断基準が共有されていなければ、自律ではなく単なる暴走や自分勝手人材となってしまうでしょう。

 

外部研修の利用もおすすめ

自社で自律型人材になるための価値観や考え方の教育が難しい場合は、外部研修を利用するのもおすすめです。単なる座学で終わらず、研修と実践を紐付ける仕組みがある研修を選ぶことが大切になります。

 

なお、HRドクターを運営する研修会社ジェイックでも、自律型人材の育成に合った研修を提供しています。

 

・自ら考え自ら行動する!社員の主体性を引出し、組織風土を改善する「7つの習慣®」研修
全世界4,000万部のベストセラー『7つの習慣』の考え方をベースに、自ら主体的に動ける自律型人材に育成する研修です。多くの大手企業に導入されている信頼性の高いコンテンツは、対面とオンラインの両方で提供可能です。

 

資料ダウンロード:自ら考え自ら行動する!社員の主体性を引出し、組織風土を改善する「7つの習慣®」研修

 

・「7つの習慣®」をもとにした新入社員研修PRO
こちらも『7つの習慣®』をベースとして新入社員に求められるプロ意識と仕事への取り組み方を醸成する研修です。最も吸収率が高い新入社員のタイミングで、きちんと自律人材の考え方をインプットすることで、その後の成長スピードもぐっと早まるでしょう。

 

資料ダウンロード:「7つの習慣®」をもとにした新入社員研修PRO

 

組織の心理的安全性も自律型人材の育成に影響する

各人材が主体的にセルフマネジメントをするには、自分の意見や考えを上司やメンバーに抵抗なく発信できる心理的安全性の高さも不可欠になります。そのため、自律型人材の研修などももちろん必要ですが、心理的安全性の高いチームになるための組織風土の変革なども同時に進める必要があるでしょう。

 

自律型人材は短期間では育成できない

自律型人材になるためには、考え方や仕事への姿勢、そして、時間管理などの基本スキルが大切になります。これらの基本スキルは、短期間で身につけられるものではありません。自律型人材の多い組織を目指すには、数年かけて教育や組織風土の変革に取り組む覚悟が必要です。

自律型人材を採用時に見極めるには?

主体性、積極性、自責などのコンピテンシーを持つ人材は、自律型人材に近いといえます。上記のコンピテンシーの有無を見極めるには、構造化面接の実施、適性検査の導入などが必要です。

 

なお、自律型の要素があったとしても、組織の価値観や判断基準とズレていた場合は、組織で活躍する人材にはなりません。そのため、ミッション共感やカルチャーフィットの視点も重要となります。

 

また、自律型人間が少ない職場に自律型人間を採用する、主体性を発揮したい人間を上意下達が当たり前の職場に配属するといったことをすると、カルチャーギャップから早期退職につながりやすくなります。

 

中小企業の経営者の方から「採用を通じて新たな風土をつくっていきたい」という声をいただくことも多いのですが、現状の組織風土とかけ離れた人材を採用しても、上述の通り、風土改革ではなく、早期離職に終わってしまいます。

 

やはり根本的に解決していくためには、組織の風土改革に正面から取り組むことが不可欠です。

まとめ

自律型人材とは、組織のミッションやビジョン、価値観、計画なども踏まえたうえで、自分の判断・意志にしたがって、セルフコントロールしながら能動的に業務遂行できる人材のことです。自律型人材を育成すると、組織に以下のメリットが生まれます。

  • 生産性の向上
  • チームワークや組織内連携の強化
  • 変化対応力やイノベーションの創出

自律型人材を育てるには、価値観や考え方の教育が大切です。これらの教育には、多くの時間がかかります。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、自律型人材の育成につながる以下の研修を実施しています。興味がある方は、以下の資料をダウンロードしてみてください。

 

資料ダウンロード:自ら考え自ら行動する!社員の主体性を引出し、組織風土を改善する「7つの習慣®」研修

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
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