主体性とは「何をすれば良いかを自ら考え自ら行動する」ことです。
メンバーに主体性を発揮してもらうことは、ビジネスで目標達成したり、組織や個人の課題を解決したりするうえでも非常に重要です。しかし、多くの経営者や管理職が「メンバーの主体性を引き出す」ことに頭を悩ませています。
記事では、主体性の定義や自主性との違いを確認したうえで、主体性を引き出す重要性や、主体性の発揮を見分けるポイント、メンバーの主体性を引き出す方法を解説します。
<目次>
- 主体性とは?自主性との違いについて
- なぜメンバーの主体性を引き出すことが大切か?
- 主体性が発揮されている状態、主体性発揮されていない状態の特徴
- メンバーの主体性を引き出し、自ら考え行動する社員を育成する方法
- 「自ら考え行動する」に関してよくある質問
- まとめ
主体性とは?自主性との違いについて
主体性とは「何をすれば良いかを自ら考え自ら行動する」ことです。ビジネス組織においては、上司の指示や同僚の意見を頼りにするのではなく、自分自身でしっかりと目的や目標から考えて、課題に取り組んだり、行動したりすることを指します。
なお、主体性と似たニュアンスで使われる概念に、自主性というものがあります。主体性は、「ゴールや方法も自分自身で考えて取り組む」ことです。一方で自主性は「あらかじめ決まっている目的やゴール、タスクに対して自分から行動を起こす」というニュアンスが強くなります。
組織開発のなかでも、主体性を持ったメンバーの育成や現メンバーの主体性をどう引き出すかはマネジメント上の重要テーマです。
なぜメンバーの主体性を引き出すことが大切か?
仕事には、決まった答えや正解がありません。したがって、仕事で成果を出すには、状況や立場に応じて自ら考え、行動する能力が重要になります。
過去、いわゆる「工場で大量生産して、それを売りさばいていく」ような時代にも、主体性は必要とされていました。ですが、現代と比べて当時の重要性は低い傾向がありました。メンバー層は、主体性よりも決められた手順やマニュアルに沿ってきっちりと物事を進めていけることが重要だったとも言えます。
しかし、時代が変化するなかで、産業のサービス化やサービスの個別化、ITによる変化スピードの加速といったことが進んだなかで、トップダウンですべての物事を決めて、適切に指示することはほぼ不可能になっています。
現在においては、組織の戦略や大方針は経営サイドで決定したうえで、部門や現場において、戦術決定と実行、顧客対応、外部環境の変化をくみ取った変化対応などをどれだけスピーディーかつ的確に実行していけるかが大切となります。
この変化にともなって、メンバー1人1人の主体性を引き出していくことが、過去と比べても、経営上の非常に重要なテーマとなっています。
主体性があることで、メンバーそれぞれが自分の能力を発揮して働く“強い現場”が作られます。また、主体性の発揮は、積極的に新しい仕事へチャレンジしたり、変化対応したりすることを通じて、メンバーの成長にもつながります。
主体性が発揮されている状態、主体性発揮されていない状態の特徴
主体性が発揮されているかは、どのようにして見極めればいいのでしょうか。
マネジメントしている方であれば、メンバーとの関わりを通して肌で感じられるものだと思いますが、「主体性が発揮されている状態」と「主体性が発揮されていない状態」の特徴をあらためて確認しておきましょう。
主体性が発揮されている状態の特徴
- 上司や周りの指示がなくとも、自ら考え自ら行動している
- 仕事の目的や目標、意味を自分の言葉で語れる
- 仕事を通じて貢献する相手や生み出すべき価値を理解している
- オーナーシップを発揮しており、「自分の仕事」という責任感や誇りがある
- 失敗して落ち込んでも、落ち込みっぱなしではなく次の機会へ活かすことができる
- 好奇心が旺盛で意欲的である
- 新しい仕事や変化対応に柔軟である
主体性が発揮されていない状態の特徴
- 物事に対して受動的で積極性がない
- 指示されたことだけを最低限の品質でやろうとする
- 改善や工夫を考えない
- 仕事の成果や結果に対する責任感が低い
- 現状維持の思考が強く、変化を避ける
メンバーの主体性を引き出し、自ら考え行動する社員を育成する方法
本章では組織において、社員の主体性を引き出し、発揮してもらう方法をいくつか紹介します。
仕事に意味や価値を見出してもらう
自分がしている仕事に意味や価値を見出していなければ、主体性は発揮されません。言い換えれば、仕事に主体的に取り組むには、自分が取り組んでもらうことの意味や価値を見出すことが前提となります。
仕事の意味づけをするには、組織のミッション・ビジョン、サービスの提供価値、「本人が大切にしたい価値観と仕事の一致点」の探索等が重要です。
意味や価値、意義が明確になると、仕事に対してやりがいや目的意識が生まれます。研修やマネジメントなどを通じて、メンバーに仕事の意味や価値を見出してもらえるように取り組みましょう。
将来の夢や目標を持つ
仕事の意味や価値をもう一段落とし込んだ形で夢や目標を持つようにすると、短期的な成功や失敗の影響でモチベーションが上下しにくくなります。落とし込む際に大切なことは、現実的な短期目標だけでなく、ワクワクできる中長期的な目標も設定することです。
なお、目標や夢は、自分自身の欲求と仕事で生み出す価値(他者や組織への貢献)という2つの軸で考えることがおススメです。
ex)
・全社の年間トップセールスを目指す
・◯◯さんのような頼れるスーパーバイザーになる
・社長表彰でハワイに行く
・30社の採用を成功させる
・自社を上場させる
・家を買って、家族を幸せにする
ただし、メンバーにいきなり「夢や目標を持て」と言っても、なかなかピンとくるものではありません。また、ほとんどのビジネス組織では、目標管理制度が取り入れられており、四半期や年間目標が決まっています。そのため、場合によっては、短期的に個人としてワクワクする夢や目標を描きにくいこともあります。
この場合は、夢や目標を持つきっかけを研修で作ることも一つの方法です。例えば、「ドリームマネジメント」という研修は、社員の夢を具体化して、マネジメントに活かすうえでおススメの研修です。
自分の意見を発信する練習をさせる
主体性を発揮するうえでは、自分の意見や考えを持ったり、発信したりする経験を積むことが大切です。
意見を発信させる機会を設けることは、考えさせる練習にもなります。また、提案した意見が採用された経験は、後述する成功体験の獲得や自己効力感UPにもつながってきます。
なお、意見を発信させるためには、「自分が発信した意見や考えを周囲がフラットに受け止めてくれる環境」が大切です。
“自然体の自分や自分の意見を、周囲の批判などを恐れずに発信できる”環境を、心理的安全性が高い組織と呼びます。心理的安全性が高い組織では、上司やメンバー同士が信頼し合っており、「レベルが低いと思われる」「的外れと批判される」といったことを心配せずに意見を発信できます。
マネジメント側として、心理的安全性が高い環境を作ることが、メンバーの主体性を引き出すうえで大切になります。
考えて提案する機会をたくさん設ける
主体性があるとは、自ら積極的に考えて提案・行動することです。
したがって、「意見を発信する練習」と同じように、「考えて提案する機会」をたくさん設けることも重要になります。マネジメントするうえでも、上司がすぐに施策や方針を決めて指示するのではなく、メンバーに一度考えて提案させるといったことが大切です。
自分発で変化が起きた成功体験を持たせる
メンバーの主体性を引き出すうえでは、自分発の意見や行動が周囲に良い変化を起こした成功体験をしてもらうことが重要です。
逆に、意見の発信や提案をしたときに上司から頭ごなしに否定される経験が多ければ、「意見を発信したり、提案したりしても意味がない」とメンバーの主体性は下がっていきます。
一方で、自分の意見や提案によって成果が生み出された経験をすると、「次も提案してみよう」とメンバーの主体性が引き出されるようになります。大きな体験でなくても、小さなテーマや難易度が低い課題を使って、積極的にメンバーに成功体験を積ませることが大事です。
なお、マネジメントするうえでは「成功体験だと認識してもらう」こともポイントです。感謝や承認を通じて主体的に行動する楽しさを感じさせ、振り返りを通じて「自分の提案や行動が成果につながった」という認識を生み出す働きかけを行いましょう。
成功体験が重なると、目の前の困難や新たなチャレンジに対しても、失敗を恐れず挑戦できるようになるでしょう。
自己効力感を高める
自己効力感とは、「自分はこの仕事をできる」「自分はやり遂げられる」という有能感のことです。自己効力感が高まると、内発的動機が高まり、主体的に行動できるようになります。
自己効力感という概念の提唱者であるバンデューラは、自己効力感を決定づける先行要因として、先述の成功体験(達成体験)を含めた以下4つを挙げています。
- ①達成体験:過去に目標達成した経験
- ②社会的説得:自分の能力やスキルについて、他者から言葉で褒められる
- ③代理体験:誰かの目標達成を観察する
- ④生理的感情的状態:生理的・感情的にモチベーションが高まる
メンバーの自己効力感を高めるには、成功体験を積ませるほかに、上司やリーダーによるスキルの承認や強みへのフォーカス、ポジティブなフィードバックを与えるなどのフォローが効果的です。
また、心身の健康を維持するような習慣形成やチームの一員として目標達成を体験したりすることも有効です。
自己肯定感を高める
自己肯定感とは、「ありのままの自分を肯定し、好意的に受け止められる」感覚です。自己肯定感が高まると、物事や自分を肯定的に見ることができ、主体性の発揮につながります。
チームメンバーなどの他人の意見を尊重・肯定するうえでも、自己肯定感は大切なものとなります。マネジメントのなかで自己肯定感を高めるためには、「一個人」としての相手を尊重するコミュニケーションが大切です。能力や成果だけに注目すると自己肯定感は高まらないため、注意しましょう。
「自ら考え行動する」に関してよくある質問
Q.「具体的な主体性のある行動ってどんなもの?」
前提として、主体性とは「目的、目標を達成するために自分で考え、自分で行動すること」です。
具体的には、
- 率先して議事録を記録する
- MTG前に全体のアジェンダを用意する
- 目標達成に向けた施策を上司に提案する
- 売上を伸ばすための事業アイデアをプレゼンする
などが挙げられます。
Q.「主体性のある社員を育成する目的は?」
時代の変化に強い組織を作りあげることです。主体性の発揮は、新しい仕事へのチャレンジや柔軟に変化することを通じて、メンバーの成長にもつながります。結果として、決定した経営戦略や方針にスピーディーに対応できる組織作りが可能になります。
Q.「主体性が発揮できていない社員の行動は?」
主体性が発揮できていない社員の具体的な行動は、下記が代表的です。
- 指示された業務だけを行っている
- 不満だけで改善をしない
- 仕事に対する責任感が低い
などが挙げられます。
まとめ
主体性とは、「何をすれば良いかを自ら考え自ら行動する」ことです。ビジネス組織においては、上司の指示や同僚の意見を頼りにするのではなく、自分自身でしっかりと目的や目標から考えて、課題に取り組んだり、行動したりすることを指します。現在のビジネス環境においては、メンバーの主体性を引き出すことが、組織の競争力向上につながります。
メンバーの主体性を引き出すためには「仕事の価値や意味」「夢や目標」「意見の発信」「提案と成功体験」「自己効力感」「自己肯定感」などに働きかけることが有効です。
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